ボクのモンハン見聞録!〜ただそれだけの、物語〜 作:リア充撲滅委員会北関東支部筆頭書記官
思い返せば、今まで気にする余裕など無かったけど、不自然な所は多々あった。
例えば、ランポスの群れが半壊状態であったこと。
普通に考えれば、いくらリオス夫婦が定住したからといって、普通ならあそこまで急激に飢餓状態にはならない。
リオス夫婦が進入できない領域での狩りもランポスなら普通に可能だし、なんだったら縄張りを引っ越すという選択肢もあったはず。なのに彼等は既に、リオス夫婦の食べ残しを漁らないと生きていけないほど困窮していた。
理由は簡単。外敵に襲われたことで群れの殆どが死に絶え、生き残った者も傷を負っていたからだ。
新天地を探す余裕など残されておらず、慣れない少数での狩りはなかなか成功しない。そんな状況だったのだろう。
リオレウスの機嫌があそこまで悪かったのもそうだ。リオレウスの、空の王者の敵足り得る存在が現れたことにより、巣を守るために最大限警戒しなければならなかった。
リオレイアがやたらと攻撃的だったのも同じ。場合によっては長期の間卵を守り続けなければならないのだ。少しでも食い溜めしておこうとしていたのであろう。
そして、ランゴスタの群れがほぼ全滅し、クイーンランゴスタが少数のみ連れて出てきたのも不自然と言えば不自然だ。
大量に存在するランゴスタを、たった数匹程度まで壊滅させるなんて、通常の手段じゃあ到底達成できない。
違和感だらけ。
そして、その疑問はたった今氷解した。
全部、全部コイツが元凶だった訳だ。
なんとなく予想はしていたんだ。
ランゴスタ、ランポス、リオス。この三種の共通して敵と言える存在など、そうそう多くない。
一つ目はやはりハンターだろう。
だが、いくらハンターであっても、リオス夫婦の縄張りの中でランポスの群れを半壊状態にさせた上で、ランゴスタの数を数匹単位まで減らすなど不可能だ。
もう一つは、全生命体の天敵、イビルジョー。
しかし、イビルジョーが出没したのならばランポスが生き残っていることが今度はおかしくなる。それに、奴は基本的にたくさん食べられるもの…つまり大きい相手から襲うはずだから、リオス夫婦がまだ無傷なのもおかしい。
では、それ以外に、ランゴスタ、ランポス、リオスに共通して敵と言える存在は?
………ライゼクスだ。
またの名を電の叛逆者。
その性格は極めて好戦的で、残忍かつ凶暴。
「空の王者」たるリオレウスと空中でタメを張り、地上でもリオレイア以上に暴れまわる。さらに、リオス種の弱点属性の雷を得意属性としているために、戦いになればリオス夫婦でも無傷とはいかない。ましてや、卵を守りながらなど……。
動くものにはなんでも襲いかかるほど超好戦的であり、ランポスはおろか、端くれとはいえ大型モンスターであるドスランポスさえも一撃の下に倒してしまう恐ろしい攻撃性を誇る飛竜。
また、特殊な電磁波を発生させ、貧弱な甲虫種をショック死させてから食らうという特異な性質も持つ。
「空の悪漢」の異名も持つ特異なワイバーン。それがライゼクスだ。
つまり、何が言いたいかというと………
ボクがここまで散々苦労してきたのって…ほとんどコイツの所為なんだよねぇ〜〜っ!!
そんでもって何?最後にはご本竜が立ちはだかってくれちゃうわけ?
ふざけないでくれない?
ライゼクスは未だクイーンランゴスタを貪っており、こちらに気づく様子はない。「食うよりも狩れ!」なライゼクスの事だから、気付いたらすぐに襲いかかってくるだろうから、そこは良いんだけど…。
当たり前のことだけど、ライゼクスに襲い掛かられればボクは流石に死ぬ。リオレイアやリオレウスよりも更に死ぬ。ましてや今はかなり傷だらけだし疲れたし腹減ったし……。
本当なら、ライゼクスがボクに気付かずにこのまま去ってくれることを切に願うはずだ。
でもさ、この温厚で無垢で人畜無害なボクもね、流石にちょっと怒っちゃったんだ★
だからね….
………来い、リオレウス。キミの敵だぞ。
《さあ、目の前の敵が隙を晒しているぞ、今がチャンスだ!ブレスを放てっ!焼き尽くすのだ!》
その瞬間……、
上空から、クイーンランゴスタの骸を貪るライゼクスに向けて、三発の紅蓮の火球が降り注いだ。
ライゼクスは直前でそれに気付き、素早く後ろに跳んで火球が頭に直撃するのは防いだが、それ以外の二発は確かにライゼクスの隙だらけの背中を穿った。
紅蓮の業火が巻き上がり、エリアの一角を焼き滅ぼす。それは、空の王者にして火竜たるリオレウスの、本気のブレス。
弱っているとはいえドスランポスをも簡単に焼き殺した必殺の火球。
しかし、それでも電の叛逆者は揺るがない。
紅蓮の業火に包まれながらも、まるでダメージが無いかのように振る舞い、蝶の羽のような薄くて美麗な翼を広げて王者の領域たる大空へと飛び上がり、王者への叛逆を始めた。
雷攻撃を主軸とするライゼクスは、その飛行さえも一条の雷光に見まごうほどに鋭く、悠然と空を舞う火竜と比較してもその飛行能力はまったく見劣りしない。
だが、ライゼクスの攻撃がリオレウスに届くことは無い。
……なぜならば、
《侵入者を打ちのめせ、女王の誇りを取り戻すのだ!》
森に溶け込むような緑色の影が颯爽と飛来し、天を翔けるライゼクスにその猛々しい尻尾を叩き込んだ。
驚くべきはそれでもライゼクスが墜落しなかったことだが、突如飛来した緑色の影…リオレイアの妨害に、さしものライゼクスもリオレウスへの攻撃を中止せざるを得ない。
森丘、エリア10の上空でライゼクスとリオス夫婦が睨み合う。
その様子はさながら怪獣大戦争と言うべきものであり、半端な雑魚など介入も出来ない戦いが、今まさに始まろうとしていた。
リオレウスとリオレイアがここに現れたのは、偶然では無い。
なぜって、そもそもボクが呼んだのだから。
ボクの転生特典の一つ、「
・対照の思考を誘導し、意のままに操る能力。
・コントロールする対照の頭に一度は触れる必要がある。
・本人が心の奥底から嫌がる行動は強制出来ない。(自害しろや子供を殺せ等。)
・操られている側にその自覚は無い。
・コントロールする際は対照の思考を単純化するので、普段思慮深い相手だと他人から見ればあっさりとわかる。
・普段はコントロールせずに、特定の条件下のみで行動を操ることも可能。(自分の任意でオンオフを切り替えることもできる。)
悪役の能力で出たとしたら、攻略法など幾らでもある。
まず、瞬間的にかけたコントロールではそこまで強制力のある能力では無いので、主人公サイドの説得で冷静な思考を取り戻してしまうと解ける。
次に、「なんか今日のコイツはおかしいな」と言う感じに、操られている者を意外とあっさり看破できる。
さらに言うならば。そもそも頭に触られなければ発動しない。
そして、本人の意思の力が強ければご都合主義的に自力で解除できる。(ばっ…ばかな!自力でコントロールを解除しただと!?みたいな展開もある訳だ。)
わりと欠陥の多い能力だ。
しかし、今回の場合、リオレウスに命令したのは《敵をブレスで焼き払え》。リオレイアに命令したのは《縄張りに侵入した外敵を攻撃せよ》。どちらも縄張りを守るために
この場合は、コントロールが解けることは滅多に無い。何故ならば自主的にやってくれるのだから。
では、そもそもいつの間に「
リオレウスの方は簡単だ。そもそもこちらの任意で
では、リオレイアの方は?
いつの間に頭に触れたのか……お分りいただけるだろうか?
ボクは確かにリオレイアとのダンス(逃走)中に、彼女の頭に触れたのである。
……そう、
もちろん、この事態を予測して、その時にあらかじめ掛けていた訳ではない。もう一度発動条件を確認するとしよう。
・コントロールする対照の頭に
そう、誰も触れながらしか発動出来ないなどとは言っていないのだ。
過去に一度でも頭に触れれば、「
結構凶悪な性能とも言える。
まあ、転生特典としては大人しい方だろう。
ボクが自らの能力を確認している間にも、空中では大激戦が繰り広げられていた。
戦力的にはリオス夫婦の方が多いが、どちらも優勢とは言い難いのが現状だ。まず、属性の相性がリオス夫婦にとってよろしくない。
リオス夫婦の弱点属性が雷。ライゼクスの得意属性が雷。一方で、リオス夫婦の使う火属性はお世辞にもライゼクスに効きやすいとは言い難い。
それでもライゼクスの優勢にはなっていないのは、やはり二対一ということもあったのことだろう。
リオレウスの火球が、ライゼクスを掠める。しかし、ライゼクスはそれを空中で華麗に回避し、お返しとばかりに尻尾の先から線状の緑色の雷を出した。
だが、発動の遅いそれはリオレウスには通用せず、リオレウスはいとも容易くその攻撃を躱すと、反撃のブレスを放とうと口元に炎を溜めた。
しかし、それこそがライゼクスの狙いだった。
反撃を放とうとしたリオレウスに、突如として遡る雷が襲いかかる。ライゼクスが予め放っていた停滞、分裂する雷ブレスだ。
火球を放とうとして体勢が不安定だったリオレウスは、その攻撃に思わず大きくバランスを崩す。
ライゼクスはすかさず隙を晒した王者に襲いかかろうとするが、それはライゼクスの背中に飛びかかったリオレイアによって阻止される。
空中の大激戦。
時々落ちる流れ弾が物凄く心臓に悪い。
何度も輝く空を見て、ボクは思うのだ。
……さて、そろそろ逃げますかね。
書き溜めが尽きてきた……。
そして、最近気付いたんですが、この「ボクのモンハン見聞録」、モンスター転生無双モノの作品が好きな人にとっては展開が遅くて主人公が弱すぎるのでウケず、逆に弱い成長系主人公が好きな人には転生が嫌いな人が多いのでこれまたウケず、人間転生系にはハーレムが付き物なのに主人公の性別さえ存在しないので人間転生が好きな人にもウケず……見事に需要を外しているような。
まあ、これはサ・クーシャの勝手な偏見なのですが……。
単に面白くないだけかもしれないしね。