ボクのモンハン見聞録!〜ただそれだけの、物語〜 作:リア充撲滅委員会北関東支部筆頭書記官
ヴォヴォヴォヴォヴォヴォヴォヴォヴォ↓↓↓
「いやぁぁあーっ!」
重苦しい羽音を響かせながら、クイーンランゴスタが迫る。それに従うようにランゴスタ親衛隊がボクを取り囲み、退路を無くしていく。
しかし、敵の数はクイーンランゴスタを入れてもたったの六匹しかいない。その程度の包囲ならば抜け出すのはそう難しいことではなかった。
ランゴスタの鋭い針は、そこに含まれる強力な麻痺毒もあって非常に危険だが、その使い方は単純。突進するか突き刺すだけだ。故に、五匹程度ならば気をつけていれば当たることはない。
一匹辺りの危険度はランポスに劣っているし、虫頭なため機械的な連携しかしない。その連携が精巧であるからこそそのスキマを突くことができる。
ランゴスタの包囲網を抜け出したボクは、再び迫る六匹と向き合いながら、対策を練る。
………。
……………ちょっと待って。
なんでアンタ等六匹しか居ないの?
ボクの記憶ではクイーンランゴスタ戦では数十匹ものランゴスタがひっきりなしに迫ってくるイメージがあったんだけど!?
親衛隊と女王しか居ないじゃん!雑兵はドコへ行った!?エリア6にいたランゴスタ達〜!女王陛下がお呼びですよ〜!
来なくて全然構わないけどね!!むしろ大歓迎。来ないでお願い。
そう考えている内に、五匹の親衛隊の中でも一番小さく素早い個体が針を突き出してきた。それを感じたボクは「焦げたドスバイトダガー(劣化型)」の盾を用いて防いだ。鋭い衝撃が盾を通して手に響くが、攻撃力そのものはそこまで高くない。二段階劣化とはいえドスランポスの素材で作られた盾を一撃で貫くほどの威力はランゴスタの針には望めなかった。
しかし、ボクが素早い個体の攻撃を防いでいる間に、腹部に傷を持った虫の癖にやたらと歴戦の戦士感を漂わせるランゴスタが、ボクの懐へと飛び込んできた。そのまま針を突き出すのかと思いきや、羽でボクの視界を遮るような動きをする。
目の前がランゴスタの羽で埋まるという悪夢のような光景を振り払うべく、ボクは歴戦ランゴスタ(仮)に「焦げたドスバイトダガー(劣化型)」の剣を振るう。ランゴスタの鋭い翅によって腕に少し傷がついたが、さして影響のあるものではない。
あまりになまくらな剣であるため、切るというよりは叩くという感じに歴戦ランゴスタ(仮)を吹き飛ばす。
だが、歴戦ランゴスタ(仮)がボクの視界を塞いでいる間に、ボクのすぐ目の前に、クイーンランゴスタに比べれば遥かに小さいが、ランゴスタの中では最も大きい個体がすぐ眼前に迫っていた。
大きい個体は尻尾を前に突き出しながら突進し、ボクはギリギリでそれを盾で防ぐことに成功する。しかし、その一撃は先程の素早い俊足ランゴスタ(仮)よりも遥かに重く、それを小さく弱い盾で受けた左手はその衝撃にビリビリと痺れるように震え、盾には小さな皹が入った。
見事な連携攻撃にボクが後退すると、そこで待っていたかのように真上からランゴスタが襲いかかってくる。
直前にその奇襲に気付いたボクは、慌てて身を屈める。結果、奇襲したランゴスタの針はボクには届かず、奇襲ランゴスタ(仮)はボクが反撃しようとした瞬間即座にボクの手の届かない上空へと退避した。
……改めてランゴスタ達を見る。
小さいのが俊足ランゴスタ(仮)。大きいのが剛力ランゴスタ(仮)。腹に傷があるのが歴戦ランゴスタ(仮)。羽がデカくて常に上空を飛んでいるのが奇襲ランゴスタ(仮)。そして、女王を守るように常に側に付いているのが騎士ランゴスタ(仮)だな。
俊足が先手を打ち、敵がそれに対応している間に歴戦がちょっかいを出して気を引き、そこに剛力が重い一撃を入れる。それでも仕留めきれなかった場合、奇襲が敵が安心した隙に上から攻撃すると……虫の癖に個性があって生意気だ。
しかも攻撃している間も女王は騎士が守るか。
まだ女王が手を出してないのにこいつ等強いぞ!?
毒けむり玉があれば良かったんだが…。無い物ねだりしても仕方がないな。
ただ、こちらは向こうを無理にでも倒さなければならない理由は無い。基本的には守りと逃げに徹すればいい。
防戦一方になるだろうが、下手に攻めると騎士と女王が出かねないと考えれば、その方がいいだろう。
問題は、いかにランゴスタ達の猛攻を掻い潜りながらエリア11に逃げ込むか…だ。
奇しくも先程のリオレイアと似たような状況だが、今回はクイーンランゴスタが直々に動かない限りはそこまでの絶望的戦力差は無い。仮にクイーンランゴスタが動いたとしても脅威度としてはリオレイアの方が上だろう。
ただ、問題はこのエリアが地上での戦いには向かないことである。今はエリア中央の障害物が少ない場所にいるが、戦いが激化すれば隅に追い詰められてしまうかもしれない。そうなったら非常に危険だ。
グルグルと思考を巡らすが、その間にもランゴスタ達は待ってくれている訳がない。四位一体の連携でひっきりなしにボクを攻撃し続け、だんだんと追い詰めていく。
もちろんボクも反撃を加えてはいるが、生憎武器が超なまくらなため、ランゴスタ達が斃れるよりもボクが疲れて腕が上がらなくなる方がどう考えても早いという状況だった。
そして、そんな状況に追い打ちをかけるように、彼女の攻撃が始まる。
さっきまでボクに猛攻を仕掛けていたランゴスターズが突然ボクから距離をとったと思うと、その間を貫くように黄色い腐食性のガスがクイーンランゴスタの腹の先から噴出された。
ボクも嫌な予感がしてランゴスターズと一緒に退避していたため直撃を受けずに済んだが、ローブの端が僅かに腐食性のガスに触れてしまった。……特にこれといって変化は無かったが。ローブェ…。
幸いにも腐食性のガスはすぐに無害化するが、それと同時にランゴスターズは再びボクに襲いかかる。
先程まではなんとか拮抗を保っていたが、これで戦局はあちらに傾いた。これからはクイーンランゴスタの行動を注視しつつランゴスターズ四匹を捌かなくてはならない。
盾と剣を振るい、ランゴスタ達を追い払うように弾く。
しかし、「焦げたドスバイトダガー(劣化型)」の名は伊達では無い。剣の先は欠けてもはや刃物として用は為さなくなり、盾は皹が入っていた割れても不思議では無い。
さっきまでは戦いながら少しずつエリア11の方向に動いていたのだが、今は完全にあちらのペースだ。自分の現在地さえよくわからなくなってしまった。
ランゴスターズの猛攻をなんとか捌いている時、突如として嫌な予感がし、俊足ランゴスタの攻撃も無視して、其方の方に盾を向けた。
ドッ!!
鈍い衝撃とともに、ボクの体はクイーンランゴスタの腹によって吹き飛ばされ、茂みの中に突っ込む。
盾は今のクイーンランゴスタの攻撃によって大きく凹み、俊足ランゴスタを無視した影響によって奴の針が掠った右腕が動かせないほどでは無いがピリピリと痺れる。
さらに、茂みに突っ込んだ事によって枝に引っ掻かれてボクの玉のお肌はボロボロになり、各所から血が滲んだ。それでもローブは無傷。
空腹も相まって、もはやボクは満身創痍。
そして、そんなボクを、奴らは逃しはしない。
俊足ランゴスタと奇襲ランゴスタが、素早くにボクに迫る。
枝が絡まって回避出来ない。いや、絡まっていなくとも今の状態では回避など出来ないだろう。
……もはやこれまでということか。
目を閉じる。
ランゴスタの羽音だけが、ボクの耳に残った。
キィィィィィィ……ジジ……
…ドサッ!
しかし、その羽音は突如として止まり、代わりにランゴスタの悲鳴のような甲高い音とともに、何かが落ちる音が聞こえてきた。
…目を開ける。
そこには、ボクに迫っていたはずの俊足ランゴスタと奇襲ランゴスタが無様に地面に落下していた。
顔を上げれば、後続の歴戦ランゴスタも、剛力ランゴスタも、同じように地面に落下し、ピクピクと足だけを動かしている。
空中に残っているのは、クイーンランゴスタと、騎士ランゴスタのみ。その騎士ランゴスタも、今にも落ちそうなくらい羽音が弱々しかった。
ランゴスタは、いや、多くの甲虫種小型モンスターは、その体の軽さと甲殻の脆さ故に、攻撃を加えると多くの場合は砕け散ってしまう。
もちろん例外もいるのだが、基本的に甲虫種の小型モンスターは死骸がしっかりと残りにくいのである。
では、甲虫種の死骸を四散させないで残すにはどうすればいいか?
その答えの一つが、毒だ。
毒によって内部から徐々にダメージを与えていけば、死骸を四散させることなく甲虫種達を倒すことが出来る。
そのため、多くのハンターは、虫型モンスター討伐には毒属性の武器や、毒けむり玉といったアイテムを使用するのだ。
では、毒を使わず、尚且つ死骸を四散させないで甲虫種を討伐することは出来るのか?
答えは、可能だ。
ただし、それを行うのはハンターではない。
……モンスターだ。
エリア10の空が、突然、暗くなった。
否、正確には空が暗くなった訳ではない。大きな飛行生物に遮られ影になったというのが正しい。
部下がなんの前兆もなく墜落し、突然エリアが暗くなったと思ったクイーンランゴスタは、混乱のあまりその場から動けていない。
そして、そんなクイーンランゴスタの巨体に、それを遥かに上回るサイズの影が、空中から飛びかかってきた。
その影は咄嗟にクイーンランゴスタを護ろうとした騎士ランゴスタともどもクイーンランゴスタを吹き飛ばし、翼になっている前足の鉤爪でその体を引き裂いてトドメを刺すと、嬉々としてクイーンランゴスタの体を貪り始めた。
ああ、なるほど。
ここに来るまでの全部、
全部キミの仕業だったのか……。
そうだよな?
––––––––
黒幕登場!?ただし戦闘は無し。