ボクのモンハン見聞録!〜ただそれだけの、物語〜   作:リア充撲滅委員会北関東支部筆頭書記官

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息抜き小説。
プロローグの段階で本編に入っています。


第1章【ボクの最も危険な森丘!】難易度:Easy
プロローグ〜ボク、転生しました!〜


今や知らない人の方が少ないだろう国民的ハンティングアクションゲーム、「モンスターハンター」。爽快なアクションと武骨で躍動感溢れるモンスターの姿が高い評価を受ける人気のゲームだ。

事実、ボクも、ボクの友人たちも皆プレイしていた。

……それで、なんでいきなりこんな話をしているかというと…。

 

 

人間のままの姿でモンスターハンターの世界に転生しました。

 

 

到底信じられないだろうが冗談ではない。ボクも理解するまで一時間近くかかった。

え?最近はよくあること?

……それって大丈夫なのかな………。

 

 

まあ、今は世界の心配よりもボク自身の心配だ。

 

 

ボクは確かにモンスターハンターの世界に転生した。

でも、「神様」なんかと出会ったような記憶はないし、それどころか、死んだ覚えすらない。

そしてなにより、一番の問題は………。

 

前世のボクの顔が、名前が、地位が…何一つ思い出せないのだ。

所謂、記憶喪失転生である。

 

 

ボクは一体どんな人間だったのだろう…。少なくとも人間ではあったはずだ。

記憶が消えたとしたら何故?……世界を超えるのに記憶の一部が耐えられなかった?

 

……わからない。

仮説を立てるには情報が足りなさすぎる。

 

 

 

わからないものを考えていても仕方がない。

今は…とにかく現在の事だけを考えよう。

 

まずは、状況を整理したいと思う。

 

記憶の無いボクは、おそらく前世と同じ顔であろう人間の姿でモンスターハンターの世界に転生した。鏡も持っていないし、前世と同じ顔というのは確証がある訳では無い。ただ、人間から人間になって顔がまったくの別人などということは………無い、のかな?

……いや、ありえなくは無いのか…。

 

ともかく、人間の姿で転生したボクは、現在、モンスターハンターの中でも最も有名な場所、「森丘」のエリア5と思わしき場所にいた。すぐ近くには親が留守の飛竜の巣……。

……なぜ呑気に状況整理してたんだボクは……。

 

慌ててエリア6と思わしき場所に移動する。小一時間あの場にいたのに、リオス夫婦に会わなかったのは奇跡としか言いようがない。

 

 

さて、気をとりなおして状況整理だ。

 

気付けば人間の姿で「森丘」のど真ん中に突っ立っていたボクは、現在所持品がローブ一枚。……即ち、武器も無い、お金も無い、そしてなにより服がない。裸ローブというメチャクチャ際どい格好になってしまっている。

 

誰得の極みだが、そんなことはどうでもいい。

 

むしろ何故ローブを持っているのかを問い詰めたい所だ。ありがたいから良いんだけど。

 

 

さて、そんな丸腰の人間が、尻尾を含めれば3メートル以上あるランポスが闊歩し、5階建てのビルと同じくらいの大きさの飛竜が上空から襲いくるこの「森丘」を歩いて、無事でいられるか…という話だ。

 

…絶対無い。

 

ゲームの奴でも勝てる気がしないのに、現実になったら所謂「手加減」抜きになる。ランポスだって威嚇で止まっていてはくれないし、キックで倒されて首の骨を折られて即死がいいところだ。

リオス?普通に死ねる。

 

ボクは断じてハンターを人類とは認めない。

 

 

ここまで悪い情報ばかりだが、一つだけいい情報がある。

 

それは俗に言う「転生特典」を所持しており、何故かその部分だけ記憶を残しているということだ。

そう、俺Tueeeeeeな転生特典である。

 

自分で選べるもののはずだけど、どうなんだろう?ボクは自分で選んだのだろうか?それとも記憶喪失の影響でランダムに決まってしまったのだろうか?

そこはわからないが、こういう転生モノで強いのは、「成長系」と「吸収系」だ。

 

どちらも最初は雑魚同然だが、戦えば戦うほどあっという間に強くなっていき、最終的には世界最強になったりする能力。

簡単に言えば「成長系チート」だ。

 

さて、そんな中で…ボクがどんな能力を持っていたかいうと…。

能力は全部で五つ。転生特典としては多い方だ。え?最近はそのくらいが主流?そうなの。

 

 

奪われた尊厳(スベテヲウバウモノ)

※対象の記憶、姿、存在を奪う能力。その者の生涯、そして命の尊厳をも犯す。嗚呼、罪深いナ。

 

禁忌の変質者(キメラ)

※身体の一部をエネルギーを代償に好きな姿に改変できる。禁断の秘術によって生み出されし怪物は、虚ろにこそただ生きる。

 

悪魔の誘惑(マインドコントロール)

※頭に触れた相手を意のままに操ることができる。醜き傀儡共は、己が操り人形だとは夢にも思わず、ただ愚かなる奴隷となりて…。

 

蠱惑の肉壺(ベニヒサゴ)

※幾千もの骸と怨嗟を封じし朱き肉壺。恒久とも思えし時を超え、数多の影は、数多の御魂は、ここに歿す。

 

処女(おとめ)の涙」

※貴方が涙を流す時、世界は動き出し、

貴方が真の涙を流す時、全ては…解放される。

 

 

………………。

 

……コホン。

 

 

皆様、喜んで下さい。

もしこれが記憶を失う前のボクが選んだ能力だとするならば、前世のボクについて一つ判明したことがありました。

 

…正真正銘のバカだっ!?

 

厨二臭い名前だけにつられて効果をよく見ずに選んだバカか、あるいは主人公と敵対して殺されたいという破滅願望持ちのバカか、あるいは何も考えていない純然たるたるバカ!

そのどれかでしょう。

 

少なくとも常識人では無い!!

成長系能力は無いのか!?吸収系能力は!?能力奪取系能力は!?

 

というか能力の名前がいちいちイヤラシイなっ!だれの趣味だ!

ボクか!?ボクなのか!?

 

 

……この転生特典一覧の中に、見事なまでに今の状況を打破でそうな能力が無いんだけど…。

転生ならモンスターが良かったなぁ。自由だし、強いし。

 

はぁ、記憶にも無いお家に帰りたくなった…。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜

 

だめだめ、いつまでも弱音を吐いてたってどうにもならない。

行動を起こさなければ道は開けない。

 

なんて、ちょっとカッコ良いこと言ってみたけど…正直な話。

 

 

クキュゥウ〜〜…

 

お腹が空きました。

なんだこのあざとい腹の虫は…舐めとんのかワレ!?

 

 

腹の虫に文句を言って気を紛らわそうとしても状況は動かない。むしろ時間が経つにつれて悪化していく。

さて、ここで一つ問題が発生する。

 

何を食べればいいのだ……。

 

モンスターでもあるまいしその辺にいるアプトノスをムシャムシャと食べるわけにはいかないし、地面に生えた草やキノコ、落ちた実なんかを食べるなんて自殺行為に他ならない。ましてやモンハンの世界には毒物がいっぱいだ。

 

転生早々食あたりで死ぬとか笑えない。

 

モンスターなら毒キノコくらい耐えられそうだが(ハンターも当然モンスターに分類)、ボクは生身の人間…であるはずだから、毒キノコなんて一発アウト、御臨終だ。

 

 

魚は寄生虫が心配だし……ん?

 

そうだ!魚だ!

サシミウオ!!

 

確かアレは寄生虫がいない(または人体に影響を及ぼさない)から生のまま食べられるって話だったっけ!

あれ?でも…水の中の細菌なんかはどうなっているんだろう?

 

……。

 

まぁ、安全度で言ったらサシミウオが一番無難だからなぁ。

美味しいらしいし、餓死するよりはサシミウオ先輩に賭けるべきだよな。ココット村の村長の大好物というくらいには美味いらしいし。

 

 

よし!ボクは決めた!

サシミウオを食べにいくぞ!

 

 

と、言うわけで、ボクはサシミウオの釣れるエリアを目指して……

…そうだった。ボクは今、飛竜の巣があるエリア5から、エリア6に退避しているんだった。

 

ゲームの世界だとこの崖を下ればエリア2に行けるんだけど、ボクにそんな度胸も体力も無い。山もそうだけど、崖は降りる方が難しい。

経験も無い素人が命綱無しで逆ロッククライミングなんて、紐なしバンジーや全裸スカイダイビングと同じベクトルのスポーツだ。スポーツ?

 

さて、崖を降りれない以上飛竜の巣を通ってエリア4に行かないといけないわけだが……。

 

チラッとエリア5を覗いてみる。

 

15メートルを軽く超える巨体を丸まらせて眠る、赤き甲殻に覆われた飛竜の王者。

全身を覆うゴツゴツとした鱗は、例え銃弾であっても貫くことが出来そうに無い。

そして、そんな鱗の下に僅かにみて取れる隆々とした筋肉。あの巨体を大空へと飛ばすその筋肉は、一体どれだけの膨大な力を秘めているのだろう。

 

リオレウス…。

 

モンスターハンターを代表する飛竜種モンスター。

そして、ティガレックスに並んで……否、ティガレックスよりもさらに敵の多い苦労人。…じゃない、苦労竜。

 

 

今は寝ているが、つい先程降りてきたばかりだ。まだ熟睡とは言えず、侵入者に気付けば起きてしまうだろう。

エリア5の隅から隅までの距離はゲーム時代のガララアジャラを参考として、目測で80メートル弱くらい。

 

死に物狂いの全力で走っても15、6秒はかかる。無論、そんなことをすれば一発で気付かれるのでやらないが…。

 

さらに、番いのリオレイア降臨という不確定要素がある。

 

 

 

………これじゃどっちが危険なのかわからん。

 

 

こうして、ボクの最も長い一日が始まった。

 

 

 

 

 

長い、長ーい…一日が。

 

 

 

 

今、始まる。




次回、主人公無双(大嘘)
本作品の主人公は戦闘力がイマイチです。くれぐれもご注意下さい。

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