IS×仮面ライダー鎧武 紫の世捨て人(完結) 作:神羅の霊廟
更なる強さを求めて、人は努力を重ねるーー彼女達もまた、努力を続ける。居場所の為、皆の笑顔の為、そしてーー
大好きな人の為ーー。
箒「さあ、私達も迎撃を始めよう」
暁「一人前のレディは、あんな奴等に臆さないんだから!」
雷「頑張るわよ~!」
箒達の前には、重巡リ級や雷巡チ級が旗艦となって率いる複数の艦隊、さらにフライングスマッシュやアイススマッシュなどのスマッシュも複数体見える。深海棲艦達は箒達の姿を確認するや否や、早速砲撃や雷撃を仕掛けてきた。
箒「そら、来たぞ!」
雷「てーっ!」
暁「や、やあーっ!」
敵艦載機は箒が担当し、マスガンドとブドウ龍砲の二丁(?)銃で順次撃ち落としていく。その間の深海棲艦達の攪乱は雷と暁の役目。暁が使うライトフルボトルの能力で強い光を発生させて怯ませ、雷がダイヤモンドフルボトルの能力で砲弾などの着水による水飛沫をダイヤモンドに変え、それを右手の『サドンデストロイヤー』で殴り飛ばす。ダイヤモンドの礫が深海棲艦の装甲を抉り、砲身に詰まって誤爆を起こし、スマッシュを蹴散らしていく。暁も負けじと右肩のアーマー『フューリーオクトパス』を撓らせて攻撃を仕掛ける。
暁「突撃するんだから!」
雷「私がいるじゃない、どんどん頼りなさいよ、暁!」
二人は滑るように海上を走り、深海棲艦の群れに突っ込んでいく。
箒「くっ、飛ぶ鳥は撃ち落とすのが難しいと聞いた事はあったが、これ程とはな……!だが……」
綺麗に整列し、時に不規則な動きで翻弄してくる艦載機の集団を、箒はじっと見つめる。そして精神を集中させるため、静かに目を閉じた。艦載機のエンジン音が耳に入っていく。そのエンジン音が段々と近くなって来るのが分かる。自身の周囲を艦載機が囲っていくのを感じる。ヒュウゥゥゥゥ――という音と共に、何かが落ちてくる気配がある。軽く体を動かし、落ちてくる何かを躱していく。箒の周囲には着水の後すぐに水柱が上がり、多少箒は水を被った。艦載機はどうやら爆撃を仕掛けてきたようだ。
箒(……オルコットとのISの練習で、ビット対策がよく出来ていたのが当たったな。分かる……どこから敵が来て、どう攻撃してくるのか)
アーマードライダーとしての使命がある故に隠れがちだが、箒の本職はIS学園の学生だ。だからIS練習は欠かさず行っており、特に前線に立って戦う近距離タイプの箒はセシリアの『ブルー・ティアーズ』のような遠距離系のISにはめっぽう弱い。なので遠距離武器対策の方法をセシリア達と協議した結果、「遠距離攻撃を防ぐ」のではなく「遠距離攻撃を避ける」という結論に至り、ひたすら練習を重ねてきた。
~回想~
箒「ぐあっ!」
セシリアの射撃を受けてアリーナの地面に墜落する箒。
セシリア「まだ詰めが甘いですわよ!篠ノ之さんは周りがよく見えておりません、私が言うのもですが、その調子では苦手な敵と戦う際に勝ち目の一つもありませんわ!」
レーザーライフルを箒に向けながら、セシリアが檄を入れる。その近くにはシャルロットがハンドガンを持って控えている。
箒「ああ、分かっている……オルコット、もう一度だ!」
セシリア「分かりましたわ。今度は同じミスを犯さないようにお願いしますわ!」
シャルロット「途中から僕も入るからね、篠ノ之さん。容赦なくやるから、覚悟しておいてね」
箒「ああ、どんと来い!」
装備を何も持たず、アーマーのみでそこに立つ箒に向かって、再びレーザーや銃弾が放たれていった。箒は自らその銃弾の雨に突っ込み、次々と避けていく。銃弾やレーザーが降り注ぐ逃げ場の無いフィールドを目一杯使い、ひたすら避けるだけ。ただそれだけだが、実際にそれを完璧に実行するのは難しいというレベルでは済まない。
箒「くっ……まだだっ!!」
被弾しながらも、箒は一心になって回避を続ける。
箒「っ!」バッ
突然背後に何かを感じ取り、箒は思わず回避する。と、さっきまで自分がいた場所を四本のレーザーが通り過ぎた。
箒(死角からの射撃か……っ、まだくるか!)
箒を追い掛けてレーザーが飛んでくる。さらに回避を許さないかのように弾丸が降り注ぐ。
箒(……何度でも失敗してやる。その度に、私は強くなるんだ!)
拳を握り締め、箒は再び弾丸の雨に突っ込んだ。
~回想 了~
箒「その程度の爆撃など――オルコットとデュノアの銃撃の雨と比べれば、私にはスローに見えるものだ」
セシリアの精密射撃、シャルロットの高速切替(ラピッド・スイッチ)。二種類の射撃の早さ・精密さをその肌で感じてきた。故に、
箒「間違いない……今ならはっきりと言える。今の私は、強いと!」
ただ投げ捨てるように降ってくる爆弾など、今の箒に当たる訳がない。最小限の動きだけで爆撃を避けていく箒。そこへ痺れを切らしたのか、艦載機の一部が確実に爆撃を当てようと機銃を撃ちながら突進してきた。
箒「我慢できなくなったか?残念だ……それがお前達の敗因だ」
《ヨモツヘグリスカッシュ!》
カッティングブレードでロックシードを一回切り、緑と黒が混じったエネルギーを右足に溜める。そして先頭を飛んできた艦載機を蹴飛ばし、残りはスルーした。すると蹴られた艦載機が緑と黒のエネルギーを吹き出しながら風船のように膨らみ、爆発。その爆発によって小型のエネルギーの球体が散らばり、球体が接触する事によって他の艦載機を誘爆させていった。
箒「よし、これで艦載機は大丈夫ーーっ!」ドクンッ
突然の立ち眩みに箒は膝をつき、心臓の辺りを右手で強く抑える。心臓を中心に鋭い痛みが箒を襲う。右目からは緑のエネルギーが煙のように漏れ、瞳の色が黒から緑に変わっている。その目をまた右手で抑え、箒はマスガンドを杖代わりにしてようやく立ち上がった。
箒「くそっ、自分一人で抑え込むのもこれが限界か……仕方ない」
《ヨモツヘグリエナジー》
《ロック・オン》
《ミックス!ヨモツヘグリアームズ!冥界・黄泉・黄泉・黄泉……ジンバーヨモツヘグリ!ハハァーッ!》
体がヨモツヘグリの力に耐えきれなくなったのか、箒はジンバーヨモツヘグリアームズにフォームチェンジした。多少気分が良くなったのか、ゆっくりと呼吸を整えてソニックアローを構える。
箒「牙也にあまり迷惑はかけられない……ヨモツヘグリ、もう少しだけ私と戦ってくれ」
深海棲艦やスマッシュの群れを引き付けていた暁と雷に加勢する為、箒も群れに突っ込んでいった。
雷「ええいっ!」
暁「や、やあーっ!」
敵の砲撃・雷撃を必死にかわす二人。だが、
雷「はあ……はあ……!」
暁「ふう……ふう……」
二人には明らかに疲れが見えている。それはそうだろう、何せ自分達よりも格上の艦を数十体の単位で相手しているのだから当然だろう。二人が頼まれたのは箒が艦載機を片付けるまでの敵の攪乱。が、駆逐艦である二人が限界まで粘ったとしても、攪乱可能な時間はあまりにも少ないし、駆逐艦の火力で重巡や雷巡をどうにか出来るのかと問われると、余程練度が高くなければ無理だろう。
雷「ちょっと暁……!はあ……はあ……大丈夫なの……!?」
暁「そういう雷こそ……!ふう……ふう……もう限界なんじゃないの……!?」
雷「私はまだ大丈夫よ……!そういう暁こそ、お子様なんだから……きついならきついって言いなさいよ……!」
暁「お子様言うな!」
息を切らしながらもギャアギャア騒ぐ二人に深海棲艦達は砲口を向け、スマッシュ達は各々の武器を構えて突撃してきた。
雷「来たわよ!」
暁「ぴゃっ!?」
突っ込んでくるスマッシュを見て思わず構える二人。と、
《ヨモツヘグリエナジー》
電子音声と共に二人の後方から、緑と黒のエネルギーを纏った矢が複数本飛んできて、スマッシュを次々と撃ち抜いていった。ろくに出番もないまま、スマッシュ達は爆散。
箒「暁、雷!大丈夫か!?」
暁・雷『箒さん!』
そこに飛んできた矢を追い掛けて、箒が合流した。
雷「私達は大丈夫よ。箒さんは?」
箒「私も大丈夫だが……それよりもそろそろ終わらせるぞ。流石に私が限界だ」
暁「あ、暁もちょっと……」
雷「もう、しょうがないわね……やるわよ!」
箒「ああ」
暁「暁が一番になってあげるわ!」
《Ready Go!》
《Voltaic Finish!》
《ジンバーヨモツヘグリオーレ!》
雷と暁はドライバーのレバーを思い切り回し、箒はカッティングブレードでロックシードを二回切り、敵からエネルギーを小型の球体にしてドロー。暁がタコサイドから球体状の墨を出して深海棲艦達を包み込み、その上から箒が敵からドローしたエネルギーを集めてドーム状に。さらに雷は周囲の水滴をダイヤモンドに変換して集め、三人の正面に分厚い壁を作り出す。
暁「ええいっ!」
箒「これで終わりだ!」
墨の球体に向けてライトを照射すると、光によって墨の球体が変質して大爆発を起こした。爆風に耐えた深海棲艦達は吹き飛ばされ、箒が出現させたドームに激突。装甲がボロボロの状態でフラフラと立ち上がったところに、箒がマスガンドのトリガーを引いて追撃の大爆発を起こした。ドームは深海棲艦ごと吹き飛び、残骸となって沈んでいく。
箒「はあ、はあ……こ、これで全部か……?」
雷「ちょっと待ってね、電探に何か……そこっ!」
電探に何かを感じ取った雷がダイヤモンドの壁を殴り付けると、砕けたダイヤモンドが飛んでいって敵艦載機を粉々に砕いた。艦載機はバラバラになり、誘爆して落ちていった。
暁「と、特攻仕掛けてきてたのね……」
箒「まだ仕留めきれていなかったのか……ありがとう雷、助かったぞ」
雷「ふふーん、もっと頼っても良いのよ!」ドヤァ
箒「ありがとう。さあ、他の艦の救援に向かおうか」
暁・雷『はーい!』
次回は迎撃部隊3 吹雪・夕立・響。ブレない夕立にご注目下さい。