IS×仮面ライダー鎧武 紫の世捨て人(完結) 作:神羅の霊廟
牙也「……んぁ?」
目を覚ますと、そこは以前にもカンナに導かれたあの白い背景の庭であった。体を起こして牙也は辺りを見回す。
牙也「またカンナの仕業か……?それにしては妙だな……」
状況を鑑みて、牙也は首を傾げた。今カンナは実体化しているから、こんな事をしなくても普通に声を掛けて来れば良いだけの話だ。
牙也「今度は誰が俺をここに……ん?あれは……」
牙也が見つけたのは、初めてカンナと話をした白い小型テーブルだった。その上に何かが複数置かれている。手に取ってみると、
牙也「これ……確か、フルボトル……?」
すると、突然目の前が真っ暗になった。
牙也「……はっ!?」ガバッ
牙也が飛び起きると、時刻は昨日より早い午前5時半だった。思ったより早く目覚めてしまったようだ。見回すとカンナはまだスヤスヤと眠っており、箒はいつもの素振りに行ったのか既にベッドにはいなかった。
牙也「今の夢は一体……ん?」
布団の中から這い出そうとした時、何か左手に硬い物が握り締められている事に気づいた。見てみると、
牙也「これ……夢に出てきたフルボトル……!」
それは夢で見つけたフルボトルだった。牙也の左手には二本のフルボトルが握り締められている。一本は黄土色でボトルに何やら踊る人のような意匠が施されており、もう一本は濃い紫色でボトルにナイフの意匠が施されている。
牙也「はて……誰が何の為にこれを……?」
暫し牙也は考える。が、
牙也「……後で氷室達に聞いてみるか」
答えは出ないので諦めた。
影徳「はぁ……まさかお前以外にベストシップドライバー完璧に作れる奴がいたとはな……」
惣輔「そうなんだよ……しかも設計図見ずにだぜ、ショックなんてもんじゃねぇよ……」ズーン
朝の工廠では、昨日牙也が製作したベストシップドライバーを見ながら影徳と惣輔が話していた。惣輔から話を聞いた影徳はとても驚き信じられずにいたが、牙也が実際に作ってみせた実物を見て納得の表情を見せた。
影徳「驚いたよ、ここまで完璧に作り上げて見せるとはな。しかも石動よりも短時間で……今後のベストシップドライバーの増産、あいつに任せれば充分なんじゃ……」
惣輔「エイトてめぇ!俺の傑作をあいつに売り渡す気か!?」
影徳「売り渡しはしない、タダで渡すだけだ」
惣輔「余計に質が悪いだろうが!?」
箒「何を騒いでいる?」
とそこへ、箒がやって来た。
惣輔「あ、箒ちゃん聞いてよ!エイトの奴、俺が作ったこのベストシップドライバーを牙也にタダで渡そうとしてるんだぜ!?」
箒「そうかそうか、ありがたくもらってやろう」
惣輔「この子も薄情だったよ畜生!この危機に歯止めを掛けてくれる優しい子はいないのかぁ!?」
カンナ「どうしましたか?」
そこへカンナもやって来た。
惣輔「カンナちゃん聞いてよ!エイトの奴がさぁ、このベストシップドライバーを牙也にタダで渡そうとしてるんだぜ!?酷いと思わないか!?」
カンナ「駄目ですよ氷室様、人が作った物を勝手に渡したりしては」
惣輔「そうだそうだ!カンナちゃんの言う通りだ!」
カンナ「ちゃんと石動様から許可を得て、お安く売らなければなりませんよ」
惣輔「この子の方が質が悪かっただと!?」
影徳「大丈夫、許可なら確実に(物理で)下りるから」
カンナ「それなら大丈夫ですね」
惣輔「大丈夫な訳あるかぁ!?」
箒「諦めろ」カタポンッ
惣輔「畜生ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
散々弄られた惣輔は、泣きながら何処かへ走り去っていった。
影徳「ところで二人はなんでここに?」
カンナ「私は鎮守府を散歩していましたらいつの間にかここに」
箒「私は……駆逐艦の子達から逃げてきたのだ」
影徳「何故……と聞くのは野暮か」
箒「察してくれ」
夕立「あー!箒さん見つけたっぽい!」
箒「!?」ギクッ
三人が工廠の外を見ると、夕立を先頭に鎮守府の駆逐艦全員が立っていた。
電「今日も箒さんのお胸を触りに来たのです!」
夕立「同じくっぽい!」
雷「電から聞いたわ、箒さんのおっぱいは柔らかいって!どうやってそんな風になったのか秘訣を教えて!」
吹雪「私達にも教えて下さい!どうやったらそんなに胸が大きくなるのか!」
睦月「知りたいにゃしい!」
暁「一人前のレディとして聞くわ!どうしたら胸を大きく出来るのか!」
響「私は単に箒さんの胸に興味を持って一緒に来ただけだよ」
箒「やっぱりこうなるのか……氷室とカンナは……」
~影徳・カンナ、既に逃走~
箒「やっぱりな……ではここは……逃げる!」ダッ
夕立「あー!逃げたっぽい!」
雷「皆で追い掛けるわよ!」
『おー!!』ダッ
逃走した箒を、駆逐艦達が追い掛けていく。
川内「頑張って~……ふああ……」
そしてそれを呑気に見守る川内。
箒「暇そうにしてるなら止めてくれぇ!」
川内「無理」
箒「薄情者がぁぁぁぁぁぁ!!」
牙也「……?誰か助けに行かないといけない感じが……行ってみるか」
その後、箒は様子を見に来た牙也に匿われて、何とか駆逐艦達を振り切った。
影徳「それにしても凄いな、牙也ってさ。石動が長時間掛けて作り上げたベストシップドライバーをあっさりと設計図なしで作り上げるなんてさ」
こちらは影徳とカンナ。面倒事から逃走に成功した後、すぐに工廠に戻ってきていた。
カンナ「牙也様は、私達の世界にて戦極ドライバーの設計を引き継がれておりますので、その辺りに関しては石動様にもひけをとらないかと」
影徳「へぇ、あのドライバーをね……ん?今引き継いだって……」
カンナ「元々あるお方が作っていたのですが、戦死致しまして……その人と縁があり、製造能力を持ち合わせていた牙也様が引き継いだ次第です」
影徳「そっか……聞いちゃいけない事聞いちゃったね、ごめんよ」
カンナ「いえ……牙也様も、箒様も、そして私達の世界の皆様も、それを乗り越えて強くなろうとしてらっしゃいます。勿論、そのお方との別れは辛く悲しい事ではありましたが……」
影徳「そうだよな、仲間が死んでしまって悲しまない奴はいないよな……」
カンナ「氷室様はありますか?お仲間を亡くされた事は……」
影徳「今は無いね。でもカンナちゃんの話を聞いていると、怖くなってくるね。誰かを、あの子達の誰か一人でも、そして家族、友人を亡くしてしまう事が」
カンナ「牙也様達は、それを幾度も乗り越えて参りました。何故強いかと問われますと、それが理由かと」
影徳「失った人・物の大きさ、か……」
カンナ「私は信じております。氷室様達がいずれそれら全てを乗り越え、蔓延る悪を討滅なさるであろうと」
影徳「……ありがとう」
カンナ「ところでつかぬことをお聞きしますが……牙也様が作られたドライバーはどちらに……?」
影徳「ああ、これだよ。見るかい?」
カンナ「拝見させて頂きます」
カンナがベストシップドライバーを手に取ったその時ーー
ウ~ウ~ウ~!!
影徳「っ!?」
カンナ「ひゃっ!?」ガチャンッ
突然けたたましくサイレンが鳴り響いた。
『非常事態発生!非常事態発生!東都第六鎮守府に敵深海棲艦及びスマッシュが接近中!東都第六鎮守府に敵深海棲艦及びスマッシュが接近中!鎮守府の行動可能な艦娘は直ちに出撃ポートに急行せよ!』
影徳「敵襲か……!急いで出撃ポートにーーって、カンナちゃん、腰のそれ……!」
カンナ「ふえ?」
影徳に指摘されたカンナが腰を見てみると、
カンナ「ふええっ!?なんでドライバーが巻かれてるんですか!?」
いつの間にかベストシップドライバーがカンナの腰に巻かれていた。
カンナ「サイレンにびっくりして、思わず腰に持ってきてしまったのでしょうか……?」
影徳「多分そうだろうね。って、こんな事してる程暇じゃない!」ダッ
カンナ「え!?ちょ、ちょっと待って下さい~!」
影徳が工廠を飛び出すと、カンナは慌ててそれを追い掛けた。
影徳とカンナが出撃ポートに着くと、既に全員が集合していた。
夕立「てーとくさん、遅いっぽい!」
影徳「悪い悪い。皆、いつでも行けるな?」
『はいっ(ぽいっ)!!』
影徳「よし、ではこれより、鎮守府に接近中の敵深海棲艦及びスマッシュを迎撃に向かう。牙也達は残っていtーー」
箒「牙也、何か見えるか?」
牙也「ちょっと待て、もう少しで……見えた!」
牙也が目を凝らして敵を見ていると、
牙也「あれが深海棲艦とやらか……なんか魔法使いみたいだな」
影徳「お前どんな風にーーちょっと待て、魔法使い?」
牙也「ああ……なんか杖みたいなの持ってて、頭の上にでっかい口があって……」
影徳「……おいおい、マジかよ……!空母が来てんのかよ……!」
惣輔「マジか!?うちの鎮守府はまだ正規空母どころか軽空母さえもいないんだぜ!?」
影徳「くそっ、不味いな……!」
牙也「だったら、俺がその敵空母を抑えておいてやろうか?」
影徳「な!?無茶言うな!相手は空母だぞ、一人で行くn「一人だと誰が言った?」っ!?」
牙也「俺は一人じゃない。俺には、ちゃんとした仲間がいる。安心して背中を任せられる、仲間が。それだけで充分だ」
惣輔「お前……」
牙也「それに、これは数日泊めさせてもらった礼って奴さ、今借りを返さないでいつ返すんだい?」
箒「全く……私達まで巻き込んでくれるな」
牙也「なんならここに残るか?」
箒「まさか。私も手伝わせてもらうぞ」
カンナ「私にも手伝わせて下さい。何もせずに終わりなんて、私には出来ません」
影徳「お前ら……」フゥ
影徳「……分かった。石動、シースライドシューズを貸してやれ」
惣輔「あいよ!」
惣輔はポートの隅に置いていたシースライドシューズの予備を持ってきて、三人に渡した。
惣輔「それを履けば、海上を地上と同じように動けるぜ。活用してくれ」
牙也「サンキュ。ところで……なんでカンナがベストシップドライバーを?」
影徳「ああ、実はな……」
~カクカクシカジカ~
箒「要するに事故、か」
惣輔「装着出来たって事は、フルボトルが使えるって事だが……今ボトル持ってないんだよな」
影徳「俺もだ」
牙也「あ、そうだ。フルボトルって、これか?」
牙也は思い出したかのようにポケットを探り、二本のフルボトルを出して見せた。
影徳「な!?なんでお前が!?」
牙也「その話は後だ。とにかく使ってみようぜ」
箒「それなら、私が持っているフルボトルも使うと良い」スッ
カンナ「あ、あの……実は、私も……」スッ
惣輔「嘘だろ、三人共持ってたのか!?」
牙也「話は後で!とっとと行くぞ!」
牙也と箒は戦極ドライバーを装着。
影徳「はあ……こうなったら、何だってやってやるよ!」
惣輔「おーし皆、行くぜ!」
『はいっ(ぽいっ)!!』
影徳と惣輔はトランスチームガンを出し、艦娘達はベストシップドライバーを装着。
《ザクロ》
《ヨモツヘグリ》
《Bat》
《Cobra》
《ラビット!タンク!》
《ゴリラ!ダイヤモンド!》
《タカ!ガトリング!》
《ニンジャ!コミック!》
《ライオン!掃除機!》
《海賊!電車!》
《フェニックス!ロボット!》
《オクトパス!ライト!》
《ホワイトラビット!ブラックタンク!》
《ロック・オン!》
《Best Match!!》×8
《Chaos Match!!》
牙也達はロックシードをドライバーにロックし、影徳達はフルボトルをそれぞれトランスチームガンとベストシップドライバーに装着。続けて艦娘達がドライバー右側のレバーを力一杯回し、カンナもそれを真似する。するとドライバーから二本のパイプが伸びて彼女達の前後に形成され、ドライバーからはさらに様々な色の液体が流れてきた。それはパイプを伝って彼女達の前後に回り、カーテンのように薄い水幕が現れる。
そして、全員が叫んだ。
牙・箒・カ『変身!!』
影・惣『蒸血』
艦娘達『抜錨!!』
《Mist Match……!》
牙也達二人にはアームズが被さって展開し、影徳達二人を黒い靄が覆い尽くす。艦娘達とカンナは薄い水幕に前後から挟まれたと思うと、白煙が噴出して周囲を覆う。
《ザクロアームズ!乱れ咲き・Sacrifice!!》
《ヨモツヘグリアームズ!冥界・黄泉・黄泉・黄泉……》
《Bat……Ba、Bat……Fire!!》
《CoCo、Cobra……Cobra……Fire!!》
《鋼のムーンサルト!ラビットタンク!!》
《輝きのデストロイヤー!ゴリラモンド!!》
《天空の暴れん坊!ホークガトリング!!》
《忍びのエンターテイナー!ニンニンコミック!!》
《たてがみサイクロン!ライオンクリーナー!!》
《定刻の反逆者!海賊レッシャー!!》
《不死身の兵器!フェニックスロボ!!》
《稲妻テクニシャン!オクトパスライト!!》
《混沌のムーンサルト!ラビットタンクカオス!!》
《Yeaaaaaaaaaaah!!》
総勢13名のライダーが、ここに集結した。
総勢13人は多すぎる……!欲張りすぎたかな……?