IS×仮面ライダー鎧武 紫の世捨て人(完結)   作:神羅の霊廟

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 さーて、どんなカオスな事態になるやら……




コラボ4 Avenger's Girl(2)

 

 箒「ゴホッ……ゴホッ……牙也……!」

 物陰に避難して呼吸を整えている箒は、牙也と黒コートの人間ーー椿との戦いを見守っていた。その近くにはカンナが控え、同じように戦いを見守っている。

 カンナ「牙也様、大丈夫でしょうか……何やら嫌な予感が致します……」

 箒「くそっ、こんな時にアーマードライダーの力が使えんとは……!」ガンッ

 牙也の戦極ドライバーが使えなくなっていたのと同じく、箒の戦極ドライバーもまた使えなくなっていた。物陰に避難した後でそれを知った箒は、忌々しそうに壁を殴り付ける。

 カンナ「どうやら牙也様は、蔦も出せなくなっている模様。これでは牙也様が圧倒的に不利でごさいます」

 箒「牙也……!」

 不安を拭えぬまま、二人は戦いを見守るしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 牙也「はっ!」

 椿「フッ!」

 

 ガキインッ!!

 

 牙也の持つ『撃剣ラヴァアーク』と、椿の持つ『煉獄刀・紅蓮』がぶつかり合い、その度に火花が散る。時に一旦距離を取り、時に正面からぶつかり合う。

 牙也「おらっ!」

 椿「はっ!」

 

 が、牙也のその顔には、珍しく焦りの表情が浮かんでいた。

 椿「随分と余裕のない表情だな……」

 牙也「良く言うぜ……お前の力で俺の力を抑え込んでるくせに」

 椿「気づいていたか……」

 牙也「他に誰がいるってんだよ。ったく、応戦しづらいったらありゃしねぇ」

 椿「そのような軽口を叩ける辺り、まだ余裕そうに見えるが……」

 牙也「戦いで余裕を見せたらお釈迦だ、少なくとも俺はそう思ってる。それに、下らない大口叩いてやられるよりはまだましだ」

 椿「なるほど……そこらの偽善者とは違うようだな」

 互いに攻撃の手は緩めずにいるが、小話ができる程度の余裕は互いにあるようだ。

 牙也「……お前、何かに恨みを持ってるな?」

 椿「」ピクッ

 牙也の言葉に、一瞬椿の動きが止まる。それを見逃さず、牙也はラヴァアークを振るって椿を攻め立てる。

 椿「……何故分かる?」

 牙也「俺はあいつに……箒に会うまで、ずっと一人だった。あの日俺は、親を奪われ、さらに妹を奪われた。一人になってから、俺はあちこちの街に住む人々を見てきた。そのほとんどは……お前のように、内心に怒りや憎しみを携えていた。そしてーー」

 椿「死んだ、もしくは殺されたか?」

 椿が代わりに答える。が、それに対して牙也は首を振った。

 牙也「半分正解だ。確かにその人達は死んだ。ただし、人間としてはな」

 椿「……?」

 何の事か分からず、椿は首を傾げる。

 牙也「これ以上はこちらの世界の事だ、お前が知る理由はないさ」

 椿「介入して欲しくない、とでも言いたげだな……まあ確かに、私の知った事ではないか」

 牙也「理解が早くて助かる……ぜっ!」ブンッ

 ラヴァアークが振るわれると、椿も紅蓮を振るって押し返す。そして鍔迫り合いになったところで、

 

 

 椿「そろそろウォーミングアップも終わりだ……本気で貴様を倒しにいくぞ。『紅影ノ舞(こうようのまい)』」

 

 先に椿が仕掛けた。目に見えない程の早さで牙也の目の前から消え、牙也の周囲をアクロバティックに動いて斬撃と蹴撃を交互に仕掛けていく。そのスピードは凄まじく、残像を生む程であった。

 牙也「なんの!」

 しかし牙也は椿の動き一つ一つを読み、的確に攻撃をいなしていく。

 椿「ほう、この動きを易々と読むか……ならば、『紅ノ一閃(あかのいっせん)』」

 椿はまた一旦距離を取り、紅蓮にエネルギーを纏わせた。そのエネルギーはどんどん集約し、最終的には太刀を思わせる形状に変化した。

 椿「この一撃を、受けてみろ……!」

 紅蓮を構える椿。対して牙也は、

 牙也「だったらこっちも……『血染ノ一閃(ちぞめのいっせん)』」

 ラヴァアークに同じようにエネルギーを集約させる。椿と違うのは、ラヴァアークそのものにエネルギーが集まって刀身をコーティングするようになっている事と、エネルギーの色が赤黒い事だろうか。

 椿「この刃で、貴様を倒す!」ダッ

 牙也「受けてたつ!」ダッ

 互いの得物を構えて二人は走りだし、同時に刃を交えた。エネルギーの塊とも言えるその二つの刃がぶつかり合うと、二人を中心に凄まじいエネルギーの奔流が発生し、辺りのソファやテーブルなどがそれに巻き込まれて次々と壊れていく。

 箒「くうっ……!なんという強さの奔流だ……!」

 カンナ「これ程の力を、あの黒コートの人間は持っているのですか……!」

 先程までいた場所から受付のある場所にこっそりと移動して隠れた二人も、この膨大なエネルギーの前に立ち上がれずにいる。やがて、

 

 ガキインッ!!

 

 椿「ちっ!」

 牙也「くっ!」

 互いの得物は同時に弾かれる。そしてまた接近してぶつかり合い、エネルギーの奔流が発生して辺りを破壊していく。刀の打ち合いが実に数十合続いた。が、

 

 牙也「ぜえ……はあ……」

 椿「どうした、もう息切れか?」

 先に牙也が息切れを起こし始めた。見ると苦しそうに胸あたりを押さえている。その胸あたりには、何やらじんわりと赤い何かが滲んでいた。

 椿(こいつ……怪我した状態で私と戦っていたのか。その状態で私と対等に渡り合えるとは、随分頑丈な体をしているのだな)

 牙也(くそっ、こんな時に傷口が開きやがった……!こいつの事だ、易々と逃がしてはくれないだろうし……絶体絶命って奴だな……だけど!)バッ

 牙也は一旦距離を取る為に空中に退避した。しかしそれを見逃す椿ではない。

 椿「逃がさん!」バッ

 牙也を追いかけて椿も跳躍し、牙也に掴み掛かる。その時、牙也は自分の左手をチラッと見る。見ると少しだが蔦が生えているのが見えた。

 牙也「やっぱりか……お前から一定距離離れると、俺の力はちゃんと使えるみたいだ!」バッ

 牙也は瞬時にクラックを開いてその中に飛び込んだ。椿がそれを追いかけようとするが、それよりも早くクラックは閉じた。そして、

 牙也「わあっ!」ドサッ

 箒とカンナがいる受付の場所に投げ出される形で現れた。

 箒「牙也、大丈夫か!?」

 牙也「傷口が少し開いただけだ、なんて事ないさ。ともかく、ここは撤退するぜ。ここまで劣勢だと巻き返しは無理だ」

 牙也が再びクラックを開き箒を招き入れる。と、

 椿「逃がさん!」

 椿が銃撃しながら飛びかかってきた。

 

 カンナ「させません!」

 そこにカンナが立ち塞がり、右手に左手を翳した。するとまばゆい光がカンナの右手を包み込み、光が晴れるとその手には、ゲームパッドのようなものが付けられていた。

 カンナ「はっ!」ドンッ

 カンナはゲームパッドの銃口部から光弾を放って、椿が撃った銃弾と相殺させる。途端に小規模の爆発が起こり、辺りを煙が覆う。

 カンナ「今です!」

 牙也「すまんな、カンナ。来い、箒!」

 箒「ああ!」

 三人がクラックに飛び込むと、クラックはすぐに閉じた。椿がその場所に走り寄ったが、既にそこには誰もいなかった。

 牙也「お前との戦いは楽しかったぜ。だから次に会った時は、互いの全力を尽くせる状態で会おうぜ」

 牙也のそんな声が響く。

 椿「……逃げられたか。私も詰めが甘いな」

 椿は紅蓮をしまうと、辺りを見回した。エントランスは牙也との戦いで大惨事となっている。

 椿「……後でスコールに怒られるな、これは」

 頭を抱えながら、椿は報告の為にその場を離れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 牙・箒・カ『わあっ!』ドサッ

 クラックに飛び込んだ三人はやがてクラックの外に投げ出された。

 牙也「ってて……ここどこだ?」

 辺りを見回したが、既に夜で辺りは真っ暗だ。

 箒「恐らく何処かの建物だろうな。貯水タンクのようなものがあそこに見える」

 箒が指差した先には、暗くて見えづらいが確かに貯水タンクのようなものが見える。

 牙也「やれやれ、今日はここで野宿か?」

 カンナ「それしかありませんね。ここは私が」

 そう言ってカンナは両手を空に翳す。すると、三人の周囲を緑色のドームが覆った。透明感のあるそれは、まばゆい輝きを放っている。

 カンナ「一晩しか持ちませんが、傷や疲労を癒したり敵の攻撃を防いだり出来ます。これなら一先ずは安心でしょう」

 牙也「何から何まで悪いな、カンナ」ナデナデ

 カンナ「ん……いえ////」スリスリ

 箒「」ムゥ

 牙也「箒もありがとな、心配してくれて」ナデナデ

 箒「んぅ……わ、分かっていれば良いのだ////」ゴロゴロ

 そこで牙也はふと、カンナの右手に装着されたゲームパッドのようなものが気になった。

 

 牙也「カンナ、そのゲームパッドみたいなのは何なんだ?」

 カンナ「これですか?これは最近になって使えるようになった自衛用の武器『ガシャコンバグヴァイザー』というものです。使ってみますか?」

 牙也「え、でもカンナ用だろ?俺が使えるのか?」

 カンナ「元々牙也様にお渡しするものでしたので……それを使えば、オーバーロードの力を最大限に発揮できるようになりますし、先程みたいにアーマードライダーの力が使えない時に便利です」

 牙也「ふーん……じゃあ試しに使ってみるか」

 カンナ「では、どうぞ」

 カンナはガシャコンバグヴァイザーを牙也に手渡した。

 

 カンナ「Aボタンを押して、持ち手と合体させて下さい」

 牙也「こうか」

 牙也がバグヴァイザーのAボタンを押すと、低めの待機音声が鳴り響く。それを持ち手と合体させると、

 

 

 

 

 

 

 《Infection! Let's Game! Mad Game! Blood Game! What's Your Name!? The OverLoad!!》

 

 

 

 

 音声と共に、牙也の全身は蔦に包まれた。そして蔦が弾けると、

 

 

 箒「牙也、お前……その姿は……!」

 牙也「なるほどな……こういう事か」

 

 牙也の姿は、オーバーロード・シュラそのものになっていた。

 

 カンナ「ガシャコンバグヴァイザーはビームガンとチェーンソーの二つのモードがあります。今はビームガンですが、逆に取り付ければチェーンソーが使えますよ。勿論今までの武器も使えます。解除する際は、普通に取り外していただければ良いです」

 牙也「ああ、大体分かったぜ」ガチャッ

 牙也はガシャコンバグヴァイザーを外して、元の姿に戻った。

 牙也「よし、それじゃ今日はもう寝よう。ここらの詳しい探索は、夜が明けてからだ」

 箒「うむ」

 カンナ「はい」

 

 こうして三人は、ドームの中で寄り添うように眠りについた。

 

 

 

 

 





 ガシャコンバグヴァイザーの音声はあえてオーバーロード仕様に変えてます、牙也はバグスターではないので。


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