IS×仮面ライダー鎧武 紫の世捨て人(完結)   作:神羅の霊廟

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 嘘をつく事は悪と言えよう。だが、真実を知る事は善と言えるのかーー?




第48話 真実ノ先ニ

 

 牙也と狗道はゼロを挟み撃ちにして、それぞれの武器に加えて牙也の出す蔦で攻撃する。そして隙有らばその蔦でゼロを拘束しにかかる。が、ゼロは華麗なステップを踏んで二人の攻撃を回避し、逆にソードブリンガーで斬りつける。三人の武器がぶつかり合う毎に火花が散る。

 狗道「ほう……なかなか骨のある奴ではないか」

 牙也「しかし、なかなか手応えがない……このままって訳にはいかないぜ」

 牙也は狗道とそんな事を話しながら、ゼロの攻撃をいなしていく。さらに二人は、互いのセイヴァーアローから矢を放ってゼロを牽制した。

 ゼロ「くっ、ちょこまかと……!手間取らせてくれるわね……!」

 牙也「お前を相手するなら、手間取らせておく方が何かとやりやすいもんでな。お前……顔に焦りが見えるぜ?」

 狗道「こいつの顔に焦りが見えるのは今に始まった事ではあるまい。そもそもこいつにとって、牙也が生きていた事自体予想外だったのだからな」

 牙也「それもそうか。ま、俺達には関係ないがな」

 ゼロ「ふん、その余裕がいつまで続くかしら!?」

 

 《ゴールデンエナジースカッシュ!》

 

 ゼロ「はあっ!」

 再びソードブリンガーから斬撃波が放たれた。

 狗道「ここは私がなんとかしよう」

 

 《ザクロスカッシュ!ブラッドオレンジスカッシュ!》

 

 対して狗道もセイヴァーアローとブラッド大橙丸から斬撃波を放った。三つの斬撃波がぶつかり合い、爆発を引き起こした。

 ゼロ「馬鹿な!なぜ黄金の果実の力が、何とも知れぬロックシードの力と同士討ちに……!?」

 狗道「私達が使うロックシードは普通のそこいらにあるロックシードとは違う。しかし、何やらこれも予想外だったと見えるが……」

 牙也「何だって良いだろ、何だってさ。今はあいつをぶっ飛ばす事を考えようぜ」

 ゼロ「ふん、やってみなさい!」

 

 《ゴールデンエナジースパーキング!》

 

 ゼロ「はああああ……!」

 

 牙也「野郎、これで決めるみたいだな」

 狗道「それなら、返り討ちにするまでだ」

 牙也「怪我じゃすまない一撃、くれてやる!」

 

 《ザクロスパーキング!ブラッドオレンジスパーキング!》

 《ザクロスパーキング!ブルーベリースパーキング!》

 

 牙・狗『はああああ……!』

 

 互いに右足にエネルギーを溜めて、

 ゼロ「これでも食らいなさい!」

 牙也「てめぇが食らえ!」

 狗道「地獄を見せてやろう……!」

 高く跳躍し、

 

 

 

 

 

 牙・狗・ゼ『はあああああああああ!!!』

 

 

 

 

 

 お互いのライダーキックがぶつかり合い、大爆発を引き起こした。

 

 

 

 

 

 ゼロ「ぐあっ!!ば、馬鹿な……!?」ドサッ

 

 軍配は牙也と狗道に上がり、ゼロは地面に激突。が変身は解除されず、

 ゼロ「くそっ!いつか貴様を殺してやる……覚えていろ!」

 自身の背後にクラックを開くと、その中に飛び込んだ。ゼロがクラックに入ると、クラックはすぐに閉じた。

 

 牙也「あっ、野郎!……っ、くそが、逃げやがった」

 狗道「あと一撃食らわせれば倒せただろうが、詰めが甘かったか……我ながら甘いな」

 牙也「とにかく、脅威は去った。今はそれを祝うとするか」

 牙也と狗道は変身を解除し、一夏達の方に向きーー

 

 

 

 

 『牙也(さん)!!』

 牙也「うおっ!?」

 

 

 

 

 直った途端に、学園のメンバーが全員飛びかかってきた。牙也は抱き締められたり頬擦りされたりバシバシ叩かれたりされており、それを狗道と千冬が苦笑いしながら見ていた。

 セシリア「牙也さんよくご無事で!」

 シャルロット「生きてたのなら連絡くらい出来たでしょ!?」

 簪「心配、かけ過ぎです……!」

 ラウラ「貴様のような奴はこうしてやる!」

 牙也「痛ぇ痛ぇ!悪かった、悪かったから止めてくれ!」

 

 

 /チョ、マッ……ンギャー!\

 

 

 狗道「感動の再会、というものか……」

 千冬「そうだな。ところで貴様は何者だ?」

 狗道「すぐに分かる。すぐにな」

 それだけ言って、狗道は未だもみくちゃにされている牙也を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間は少し進んで、ひとまず学園の全員で片付けが行われた。結局学園祭は中止になり、生徒達は残念そうであったが、逆に牙也の帰還という嬉しいニュースに沸いていた。その後、轡木が鎮圧作戦に参加した全員と、一夏から知らせを聞いて飛んできた束とクロエ、それに牙也、狗道を会議室に召集して、今回の件についての報告会議が行われた。

 

 轡木「全員集まったかな?さて、まずは牙也君、よく帰ってきてくれた。君が無事に帰ってきてくれた事、学園の生徒教員全員が喜ばしく思っているよ」

 轡木はそう言って、束に抱き着かれて頬擦りされている牙也を見た。

 牙也「ご心配おかけしました。重傷を負った俺を、密かにそこにいる亡国企業のMって子が助けてくれましてね。亡国企業本部で傷を癒してました」

 M「ふん……礼など必要ない。スコールの命令でお前を助けただけだ」

 牙也「そうであったとしても、お前には助けられた。本当にありがとう」ペコリ

 牙也が頭を下げると、Mは少し恥ずかしいのか顔を背け、スコールとオータムがそれを見て苦笑していた。

 轡木「亡国企業の皆さんも、私達に加勢してくださり、本当にありがとうございました。お陰で誰一人として死者を出す事なく、ここを守り切れました」

 スコール「お気になさらないで。約定を果たしたまでですので」

 楯無「亡国企業とオーバーロード・シュラとの間に約定があったなんてね……牙也君は知ってたの?」

 牙也「いや、これを知ったのは、ここに戻ってくる直前だ」

 スコール「坊やには秘密にしててって口止めされてたのよ。申し訳ないわね」

 千冬「しかし、残念でなりません……シュラという大きな仲間を失う事になりましたから」

 轡木「そうだね……シュラ君が進めていたヘルヘイムの森とこの世界の強制連結の件も、これで藪の中、か……」

 

 

 

 牙也「いえ、そうでもないです」

 

 

 

 千冬「どういう事だ?」

 牙也「ゼロによって灰になった拠点の地下室を調べたら、シュラの捜査結果を書き残した報告書と、ヘルヘイムの森にあった奴等の研究所の報告書を見つけました。これで全て分かりましたよ、強制連結の原因に加えて、俺が何者なのか」

 鈴「どういう意味よ?」

 

 

 牙也「今回の件に加えて、今まで起こったインベスの襲撃やISのインベス化。それら全ての出来事が起こる事となった本当の原因。それはーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺自身だったんです」

 

 

 『!?』

 

 その報告に、その場にいた全員の目が真剣になって牙也を見た。

 束「ど、どういう事なの?牙君が、今までの出来事の原因って……」

 牙也「少し話が長くなりますので、心して聞いて下さい。あと束さんは一旦離れて下さい、真面目な話なんで」

 束「むー……分かったよ、後でね」

 束が離れて近くのパイプ椅子に座ると、牙也はその全てを話し始めた。

 

 

 牙也「実は、ここに戻ってくる少し前、俺の実家があった場所にオータムと共にこっそり向かって、色々探してたんですが……分かった事がいくつかあります。まず最初に、俺はまだ5歳にもならない頃に、不治の病に掛かっていた事が分かりました。本来なら俺は既に死んでいる筈だったんですが……」

 シャルロット「え?ちょ、ちょっと待って。それじゃあ牙也さんは……!」

 牙也「そう。俺は死人、言うなれば、人としての自我が残ったゾンビだ」

 ラウラ「馬鹿な……!そんな筈ーー」

 牙也「無い、と俺も言いたいんだが、これは紛れもない事実。覆せねぇ」

 セシリア「ですが、それならばなぜ紫野さんは今生きておられるのですか?既に死んでいるとなれば、どのようにして生き返ったのですか?」

 牙也「そこだ。俺がこうやって今生きている理由こそが、一連のインベス騒ぎに関連しているんだ」

 轡木「詳しく説明願います」

 牙也「勿論。学園長、ちょっとこれを見て下さい」

 

 そう言って牙也は数枚の紙を轡木に渡した。

 

 轡木「これは?何やら報告書みたいだけど」

 牙也「それは、シュラがヘルヘイムの森の研究所から見つけた報告書です。そこに書いてある事、読んでみて下さい」

 轡木「分かった。ええっと、なになに……」

 轡木はその報告書を読み上げ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 『10月1日 本部より運び出された被験体が到着。まずは体全体を時間をかけて入念に消毒し、それと並行して実験の準備を進めていく』

 

 

 『10月11日 新たに所長の息子の体が被験体として到着。こちらも消毒し、実験の準備を進める』

 

 

 『11月24日 初めて被験体にヘルヘイムの森から採取した果実の成分を注射。被験体に過度の拒絶反応あり。拘束してなんとか事なきを得たが、今後も一定期間毎に果実の成分を注射し、様子を見る事にする』

 

 

 『12月19日 被験体より多量の蔦の発生を確認。隔離室に被験体を移し、蔦の成分及び被験体の様子などを調べる事にする』

 

 

 『1月8日 被験体Kより謎の生物の出現を確認。蔦は全て消え失せたが、被験体Kは未だ生存。謎の生物はそのままクラックを開いてヘルヘイムの森に逃走した。調査班をおいて行方を調べる事にする』

 

 

 『2月17日 一月経つにも拘らず、調査班から何の情報も来ない。新たに調査班を組織して捜索を進める事にする』

 

 

 『3月1日 生物及び調査班の行方は依然として知れず。所長の命により、本日付けでこの研究所を閉鎖し、被験体Kは所長預り、他の被験体は殺処分とする』

 

 

 

 

 

 

 報告書を読み終え、轡木は嘆息しながら牙也に聞く。

 轡木「牙也君、これは一体何なのだ?一体どんな実験をしていたのだ?」

 牙也「次の資料の表紙をご覧下さい」

 轡木は言われた通りに次の表紙を見た。

 

 

 轡木「な……!?『人工的なオーバーロード覚醒実験に関する資料』だって……!?」

 『!?』

 それを聞いた人々は皆驚きを隠せない。

 

 牙也「あの研究所では、オーバーロードを人工的、かつ大量に生み出す実験をしていました。がしかし実験は失敗に終わり、情報が漏れないように密かに閉鎖されたのです」

 千冬「しかし、それと牙也に何の関係があるのだ?聞いた限りでは、関係と言える情報は何も無かったが」

 牙也「まあそう焦らずに。楯無、お前俺の事密かに調べてたよな?」

 楯無「え?ま、まあ一応は……調べてるの分かってたの?」

 牙也「バレバレ」

 楯無「」orz

 

 牙也「それで学園長。その資料の上の方に、確か所長の名前があった筈ですが」

 轡木「ああ、あったね。えっと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 雷茜(いかづちあかね)って人だね」

 

 

 楯・束『え!?』

 その名前を聞いた束と楯無はとても驚いていた。

 千冬「どうかしたのか、束、楯無?」

 束「う、嘘……そんな……!」ヘタッ

 信じられないような顔で、束はその場にへたり込んだ。

 牙也「束さんと楯無は分かったみたいだな……」

 楯無「信じられない……まさか、そんな……!」

 一夏「束さん、どういう事なんだ?教えてくれよ、俺達にも分かるように」

 一夏がそう聞くと、束は震える声で話した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 束「雷茜は…………私の恩人でもあって…………牙君のお母さんなんだよ」

 

 

 

 

 千冬「な……なんだと!?」

 簪「じ、じゃあ牙也さんのお母さんは……!」

 鈴「まさか、自分の子供を実験材料にしたの!?」

 牙也「ああ……全ては被験体Kとなった俺の体にヘルヘイムの果実の力を流し込んで抗体を作り、俺を生かす為にやった事だ。だが、実験が失敗した事で、母さんは壊れてしまった……そして実験が失敗したにも関わらず、なんとか生き残った俺を処分しようとしていた矢先、あの事件が起きた……」

 楯無「『ファクトリー雷襲撃事件』ね」

 牙也「そう。知ってる人は少しはいるんじゃないかな」

 シャルロット「……あ!僕の実家と交流のあった会社だ!」

 牙也「その襲撃事件で俺はシュラに助けられて、アーマードライダーの力を得た。これが、一連の流れだ」

 

 牙也によるあまりにも残酷な説明に、全員が顔を背ける。

 

 牙也「それともう一つ、俺から生まれた謎の生物の事だ」

 ラウラ「そう言えばそうだったな。そいつは何なのだ?」

 牙也「実を言うと、臨海学校の頃から俺は夢の中で、シュラの記憶が見れるようになったんだ。亡国に助けられて眠っている間にも勿論その記憶が見えていた。だが、ここに戻ってくる直前、最後に見た夢で、俺は自分の目を疑ったよ。それは俺とシュラ、二人揃って知らなかったであろう事だった」

 轡木「一体何が……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 牙也「シュラは…………俺から生まれたオーバーロードだったんだ」

 

 

 

 

 

 

 





 次回、牙也がある決意をするーー。


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