IS×仮面ライダー鎧武 紫の世捨て人(完結)   作:神羅の霊廟

75 / 174

 敵の敵は味方、味方の敵は敵とはよく言うが、味方の敵が味方になるとはこれ如何にーー。




第47話 悪鬼ノ鼓動

 

 M「よし、これで全部だな」

 オータム「みたいだな。けどあれくらいなら、あたし達だけでもなんとかなる数だったな」

 

 グラウンドの隅の方では、学園の面々が亡国企業の面々によって治療を受けていた。怪我が軽かった人も念のため治療を受け、引き続き警戒にあたっている。オータムとMは先程まで、治療を部下に任せて残っていた敵ISを全て掃討していた。

 

 隊員A「お疲れ様です。治療は先程全員終わりました」

 オータム「おう、お疲れ。引き続き警戒にあたってくれ」

 隊員A「はっ!」

 

 隊員が警戒任務に戻っていくのを確認したオータムとMは、一旦ISを解除してセシリア達に歩み寄った。

 楯無「亡国企業……どうしてあなた達が学園に加勢したの?」

 すると楯無がオータム達の前に立ち塞がり、オータムを睨み付けながら聞いた。

 オータム「いや、なんでって……あいつとの約定さ。『もし自分に何かあったら、学園の事を頼む』ってな」

 M「奴め、頭を下げてまで頼んでくるから、スコールも断れなかったではないか……」

 オータム「まあまあ、スコールにも考えがあるんだろ」

 楯無「あいつって誰?」

 オータム「あれ?そっちには話してなかったのか……あー、そうだよな。あたし達と繋がりがあるって公表すると逆に怪しまれるもんな」

 楯無「質問に答えて。あいつって誰なの?」

 オータムは頭をポリポリ掻きながら答えた。

 

 

 

 

 

 

 オータム「オーバーロード・シュラだ」

 

 

 

 

 

 楯無「っ!?シュラが……!?」

 オータム「まあ詳しい事は後回しだ。ここはあたし達に任せて、お前達は早く校舎の裏手にいる仲間の加勢に行きな。今多分苦戦してるだろうからな」

 ラウラ「ふざけるな!テロリストの貴様等の言う事など、誰が信じるか!」

 楯無「ラウラちゃん、落ち着いて。その情報は、本当に確かなのよね?」

 M「ああ……スコールとあともう一人向かっているから、多少は押し返しているだろうがな」

 楯無「そう……」

 楯無は少し考えていたが、

 

 

 楯無「皆は校舎の裏手に向かって。私はここに残って、こいつらを見張っておくわ」

 

 

 簪「お、お姉ちゃん!?危険だよ……!?」

 楯無「大丈夫。簪ちゃん達は早く皆の加勢に行って。山田先生、皆の事をお願いします」

 真耶「……分かりました。皆さん、一旦ここを離れましょう」

 シャルロット「え!?で、ですが山田先生……!」

 真耶「今私達がすべきなのは、一人でも多く仲間を救う事です。今だけは、この人達の言う事を信じましょう」

 オータム「ここはあたし達に全部任せな。絶対に防ぎきってやるよ」

 真耶「お願いします……行きましょう。織斑先生達が心配です」

 セシリア「くっ……ここは仕方ありませんわね……!」

 ラウラ「チッ……今回だけだぞ!」

 シャルロット「皆は大丈夫かな……?」

 簪「行こう……早く皆を、助けなきゃ……!」

 

 こうして学園の面々は、真耶を先頭にして千冬達の救援に向かった。残った楯無はそれを見送り、今度はオータムを見る。

 楯無「じっくり見張らせてもらうわよ」

 オータム「好きにしな」

 

 

 

 

 

 

 

 牙也はゼロと相対していた。互いに武器を構えて動かず、敵の様子を探っている。

 ゼロ「『アーマードライダー零』……私と同じ、ゼロ」

 牙也「ああ、不本意だがな」

 ゼロ「……なぜだ。なぜ貴様は私の邪魔をする?なぜ亡国企業を味方につける事ができた?そして……なぜ貴様が、オーバーロードの力を持っている!?」

 牙也「……シュラが残したあの報告書さ。あれが、俺の全てを物語っていた」

 ゼロ「何!?馬鹿な、あの報告書は拠点と共に灰となった筈だ!」

 牙也「馬鹿だな、お前も。確かに拠点は灰になった。けど、シュラの奴がその可能性を考えてないとでも思ってたのか?」

 ゼロ「……まさか!?」

 牙也「察しの通り。隠していたのさ、拠点の地下に。シュラが最後に作り上げた、戦極ドライバーとゲネシスドライバーと共にな」

 ゼロ「くっ、奴め……最期まで私を邪魔するのか……!」

 牙也「シュラの最期を看取った後、拠点の地下から報告書を引っ張り出して、全部目を通した。やっと分かったぜ、俺が何者で、なぜこうなったのか」

 ゼロ「くっ……報告書の中身を知られたのなら、仕方ない……貴様には死んでもらう!」バッ

 

 ゼロがソードブリンガーを掲げると、さらに大量にクラックが開き、インベスが現れた。

 

 ゼロ「押し潰されろっ!」

 ゼロの命令で次々とインベスが牙也に襲い掛かっていく。が、牙也は左手から蔦を出して鞭のようにしならせて襲ってくるインベスを払いのけていく。

 牙也「物量で押し潰すのは、物量だけだぜ。さてとーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おっさん、出番だぞ」

 

 途端にザクロロックシードが鈍い輝きを放ち始めた。そしてその鈍い光は、牙也の隣に集まりはじめて人の形を形成する。そして光が晴れるとーー

 

 

 

 

 

 

 ??「漸く私の出番か。随分長かったな」

 

 黒いスーツに身を纏った中年の男が現れた。

 牙也「悪いな、狗道のおっさん。待たせちまって」

 狗道「気にするな。シュラからの頼みだ、お前のサポートをしっかりやらせてもらうぞ」

 

 狗道という男はそう言って、ゲネシスコアが装着された戦極ドライバーを腰に付け、二つの赤いロックシードを出した。

 

 狗道「変身」

 

 《ブラッドオレンジ》

 

 《ザクロ》

 

 《ロック・オン》

 

 《ハッ!ブラッドザクロアームズ!狂い咲き・Sacrifice!ハッ!ブラッドオレンジアームズ!邪ノ道・On・Stage!》

 

 狗道の正面と右側に展開済みのザクロアームズが、後ろと左側に展開済みのブラッドオレンジアームズが現れ、ライドウェアを纏った上から装着された。

 

 ゼロ「アーマードライダーセイヴァー……!?」

 牙也「そういう事。さて、俺も本気出そうかな」

 

 狗道が変身し終えたのを見て、牙也は懐からブルーベリーロックシードを出した。それは今まで牙也が使っていた物ではなく、新しく牙也がヘルヘイムの森で採取してきた物であった。さらにそれと追加でゲネシスコアを取り出し、フェイスプレートと交換した。

 

 

 牙也「さて、ゼロ。お前に、本当の零を見せてやるよ」

 

 《ブルーベリー》

 

 そう言って牙也はブルーベリーロックシードを解錠し、

 

 《ロック・オン》

 

 ゲネシスコアにロックした。そしてカッティングブレードで二つのロックシードを切る。

 

 

 

 

 

 

 

 《ハッ!ディープザクロアームズ!狂・乱・舞・踏!ハッ!ディープブルーベリーアームズ!冥土道・Dark・Stage!》

 

 

 

 

 

 牙也が纏っていたザクロアームズの後ろと左側のアームズが消え、代わりにその部分にブルーベリーアームズが装着された。背中から腰回りにかけてを黒いマントが覆い尽くし、風に揺られてはためく。

 

 ゼロ「何ですって……!?なぜお前もそのシステムが使える!?」

 牙也「俺は最初からこのシステムは使えてたよ。お前が知らなかっただけだ」

 そう言い捨てて、牙也は紫炎を、狗道はブラッド大橙丸をそれぞれ構えた。

 

 狗道「さあ……かかってこいよ……」

 牙也「一思いに消してやるからさ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 箒「はあっ!!」

 春輝「おらっ!」

 

 ソニックアローとマスガンドがぶつかる音が響く。インベスが大量に発生している状態ではさすがに戦いづらく、箒が上手く誰もいないアリーナまで春輝を誘導して戦闘している。

 春輝「箒ィ!お前も僕の邪魔をするのか!?こんなに君の事を思っていたのに!」

 箒「貴様の思いなど知るか!貴様が一夏や牙也にやった事を私は忘れた事はない!己の名声の為に他者を切り捨てるような貴様など、私は好きにもならないし顔も見たくない!」

 春輝「そうかよ……だったらお前を倒して、お前の目の前であいつを殺してやる!」

 箒「やってみろ!貴様が私を倒せたらな!」

 春輝がソニックアローから矢を放ってくるのに対し、箒は背中から蔦を伸ばして迎撃。放たれた矢を次々と叩き落としていく。さらにそれと並行して、隙のできた春輝にマスガンドとブドウ龍砲で銃撃していく。

 春輝「くそっ!こんな欠陥品でよくもまあ今まで戦えたもんだな……!」

 被弾した春輝は体勢を立て直しながらブツブツ文句を垂れるが、箒はそれを鼻で笑った。

 箒「フン、何を馬鹿な事を……ゲネシスドライバーではなく、貴様こそが欠陥品だろうに」

 春輝「何だと!?」

 箒「そうだろう、名声の為に他者を切り捨て、勝利の為に他者の命をなんとも思わない貴様の事を、欠陥品と呼ばないでなんと呼ぶ?まあ私としては、貴様の事を呼ぶとすれば……せいぜい『屑』か?」

 

 

 

 

 

 

 春輝「てめぇ……粋がってんじゃねぇぞ!!」

 

 

 《ロック・オン》

 

 《イーヴィルエナジー》

 

 イーヴィルエナジーロックシードをソニックアローに装着して弓を引く春輝。しかし箒は驚きもしない。

 

 《ジンバーヨモツヘグリスパーキング!》

 

 カッティングブレードでロックシードを三回切り、マスガンドを高く掲げると、マスガンドの刀身からエネルギーが溢れ出てきて、マスガンド全体を覆っていく。それはやがて、5mはあろう巨大な刃となった。箒はそれを正面に向けて構え、

 

 

 箒「私の魂が……貴様を倒す!」

 春輝「黙れェェェェェェェ!!」

 

 

 春輝がエネルギーを充填した矢を放ったのとほぼ同時に、マスガンドを袈裟斬りの要領で振るった。春輝が放った矢は、マスガンドの刃の前にあっさりと粉々に砕かれた。

 春輝「ば、馬鹿な……!?ぐあっ!!」

 矢を砕かれた事に呆然としていた春輝にマスガンドの刃の一撃が入る。そして、

 

 

 

 

 箒「人の命を軽々しく扱う貴様が、アーマードライダーを名乗る資格はない……これで終わりだ」

 

 

 

 箒は上段にマスガンドを構え、思い切り振り下ろした。エネルギーの刃はアーマーを豪快に斬り裂き、ソニックアローさえも破壊した。

 春輝「い、嫌だ嫌だ嫌だ……!僕は……僕は、まだ……!」

 アーマーから火花が飛び、アーマーを押さえながらなんとか立とうとするが、立つ事は出来ず、変身は解除され、春輝は意識を失った。箒は春輝に近寄ってイーヴィルエナジーロックシードとゲネシスドライバーを回収し、

 

 箒「最後に止めを指しておこうか……私は、貴様が大嫌いだった」

 

 止めの一言を投げ掛け、箒は春輝の体をこれでもかとがんじがらめに縛り、引き摺るようにしてアリーナを後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一夏「うおおおおっ!」

 一夏が変身した『アーマードライダー閃星(きらぼし)』は星型の盾『スターシールド』でインベスの攻撃を防ぎつつ、星型の鍔の付いた剣『スターカリバー』でインベスを次々と斬り裂いていく。

 スコール「ハッ!ハッ!」

 スコールが変身した『アーマードライダーシグルド』は専用武器『サクラン棒』でインベスを殴打しながら、徒手空拳を用い、大量のインベス相手に有利に戦闘を進めていく。

 ザック「ハッハッハァ!この感覚、久しぶりだぜ!」

 ザックが変身した『アーマードライダーバルカン』は『アンズクラッシャー』でインベスをぶん殴り、投げ飛ばし、引き摺り回す。豪快に腕を振り回してインベスを蹴散らしていく。

 

 千冬「しかし数だけは多いな……纏めて片付けるぞ!」

 

 《ミラベルエナジースパーキング!》

 

 一夏「行くよ、千冬姉!」

 

 《スターフルーツスパーキング!》

 

 スコール「うふふ……終わりにしましょうか」

 

 《チェリーオーレ!》

 

 ザック「ぶっ飛ばしてやるぜぇ!」

 

 《アンズスカッシュ!》

 

 ドライバーを操作し、千冬と一夏が右足にエネルギーを溜めて跳躍したのと同時に、スコールとザックがそれぞれサクランボ型エネルギーの塊とアンズクラッシャーをインベスに向けて撃ち出した。エネルギーがインベスを包み込み、それを千冬と一夏のライダーキックとアンズクラッシャーが纏めて葬り去った。

 

 

 

 インベスを掃討し終え、四人は一息つく。そこへ、

 

 真耶「織斑先生~!」

 

 真耶が専用機持ちや他の教員を引き連れて合流した。

 千冬「ああ、山田先生か。皆無事か?」

 真耶「はい、亡国企業の皆さんに助けられて……」

 一夏「とにかく皆無事で良かったよ……あとはーー」

 

 そう言って一夏達はある方向を見つめる。その方向では、牙也と狗道がゼロと刃を交えていた。

 

 

 





 次回、ゼロとの戦いに決着。そして、牙也の出生の秘密が明らかにーー。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。