IS×仮面ライダー鎧武 紫の世捨て人(完結) 作:神羅の霊廟
黄泉の食物は食べるにあらずーー二度とこの世に戻れなくなると言い伝えられているーー。
箒「ガアアアアアアアアアアア!!!」
『ヨモツヘグリアームズ』によって自我を失っているのか、箒はマスガンドを構えて赤零に飛び掛かった。そして赤零と取っ組み合い、互いの得物をぶつけ合う。しかし、
箒「ガアッ!!」
赤零「!?」
箒は唐突にどこからか『ブドウ龍砲』を出してマスガンドを持つ手とは反対の手に持ち、零距離から連射した。アーマーから大量の火花を上げて仰け反る赤零。怯んだのを見逃さず、
箒「ガアッ!!」
今度は『キウイ撃輪』を出して振り回し、連続で赤零を斬り裂いていく。そしてキウイ撃輪を赤零に向かって投げつけた。撃輪は空中を自在に飛び回り、赤零に何度も攻撃するそれを見た箒はマスガンドを取り出すと、不規則な軌道である撃輪の対処に気を取られていた赤零をマスガンドで斬り裂いた。
赤零「!?」
またも攻撃を受けて仰け反る赤零。しかし負けじとソニックアローから紅い矢を次々放って応戦する。が、次々と放たれていく矢を、箒はなんと背中から伸びた蔦を操り全て叩き壊してしまった。さらに蔦を赤零へと向けて伸ばし、連続で鞭のように打ち据える。そして大量に伸びるその蔦の一部は、ゼロに向かっても伸びていく。
ゼロ「私も他人事じゃないって!?」
ゼロは驚きながらも、自分に向かって伸びてきた蔦をソードブリンガーで斬り裂いていく。が蔦の数が多く、ゼロでさえもこれには苦労しているようであった。
千冬「篠ノ之……一体何がどうなっているのだ……!?」
一夏「千冬、姉……!」
鈴「千冬さん……!」
箒の変わり果てた姿に千冬が驚愕を隠せないでいると、怪我した箇所を押さえながら、一夏と鈴が近づいてきた。
千冬「二人共、大丈夫か……?」
一夏「いてて……思い切り撃ち抜かれたから、結構痛いな……」
鈴「誰か助けに来てくれれば良いんだけど……」
千冬「恐らくそれは無理だ……奴の出現と並行して、正体不明のISの軍団がここに接近していると報告があった……恐らく奴の配下のIS乗りだろうな……教員や専用機持ちのほとんどをそちらの鎮圧に向けているから、私達に気づく者がどれだけいるか……」
鈴「そんな……それじゃこっちへの援軍は……!」
一夏「期待出来ないって事かよ……くそっ!」
一夏は悔しそうな表情を見せ、今目の前で自我を失った状態で戦っている箒を見た。
一夏「それにしても、箒は一体どうしちまったんだよ……なんで箒の体から蔦が……!?」
千冬「それは分からん……が、何かしらの要因があったのだろう。私達で止めたいが、この怪我では……」
鈴「止めるのは絶対に無理ね……こうなったら、私達に危害が来ない事を祈るしかないわ……」
三人は、依然として暴走する箒を心配そうに見つめていた。
箒「グルル……ガアッ!!」
《ヨモツヘグリスカッシュ!》
カッティングブレードでロックシードを一回切り、キウイ撃輪を再び投げつけると、撃輪は片方が赤零に、もう片方がゼロに向かって飛んでいく。それをゼロと赤零は各々の武器で防ぐ。が、
ゼロ「この程度ーーがっ!?」
赤零「!?」
そこにマスガンドとブドウ龍砲の銃撃が襲った。思わぬ不意討ちに大きく仰け反る二人を、箒はさらに銃撃で追い込んでいく。ゼロはなんとかアップルリフレクターで残りの銃撃を防いだが、盾など持っていない赤零は残りの銃撃を全てその身に食らう事となった。赤零は大きく吹き飛ばされ、校舎の壁に叩きつけられる。
箒「ガアア……!ガッ!?グガッ!!」バチイッ
すると突然、箒が紫電を発しながら苦しみ始めた。アーマーから火花が立ち、フラフラと後ずさる。そして、
箒「あ…………がはっ…………」
変身が解除された。ボロボロになった箒が、膝から崩れ落ちる。
ゼロ「あはははは……!どうやらヨモツヘグリの力に、貴女の体が耐えきれなかったみたいね。残念だわ、楽しめると思ったのに」
ヨモツヘグリの力に多少は驚いていたゼロであったが、箒の変身が解除された事でその驚きも無くなり、クスクスと笑う。そしてソードブリンガーを構えて、動けない箒に向かってゆっくりと歩み寄っていく。
千冬「篠ノ之……!逃げろ……!」
一・鈴『箒……!!』
一夏達が箒に向かって叫ぶが、箒はヨモツヘグリの力の副作用なのか動こうとしても動けずにいる。やがてゼロは箒の目の前まで近づいた。
ゼロ「貴女との戦い、少しは楽しめたわ。でも、これで終わり。貴女の命、私が頂くわ……それじゃ、永遠に…………さようなら」
ゼロはソードブリンガーを高く掲げて、箒に向かって勢い良く振り下ろしたーー
《ザクロチャージ》
と、そこへ電子音声が響いたと思うと、ゼロの右手から火花が上がり、ソードブリンガーが手から離れて吹き飛ばされた。ソードブリンガーは吹き飛ばされた勢いそのままに空中で回転し、ゼロの後方の地面に突き刺さる。
ゼロ「っ!?誰だ!?」
ゼロがその方向を見るとーー
千冬「な……赤零が、二人……!?」
赤零に酷似しているが、ベルトが戦極ドライバーのアーマードライダーが、黒いソニックアローを構えて立っていた。
セシリア「お行きなさい、『ブルー・ティアーズ』!」
一方こちらは襲撃してきた謎のISを相手しているセシリア達。学園祭に来ていた客の避難はなんとか無事に終わり、そのままグラウンドにて戦闘している。が、数が圧倒的に敵の方が多く、
楯無「それにしても、随分と統率の取れた集団ね……!こっちの被害が大きくなっていってるわ」
簪「お姉ちゃん、早くこいつらを倒さなきゃ!ここも危なくなるよ!」
ラウラ「くそっ、切りがないな!デュノア、弾は大丈夫なのか!?」
シャルロット「正直まずいね、このままじゃ……弾切れ起こしかけてるんだ」
実力のある代表や代表候補生達を押していた。
セシリア「しかしここで倒れれば防衛線が崩壊します!ここはなんとか耐えなくては!」
シャルロット「そんな事分かってるよ、一層頑張らなきゃ……!」
簪「っ!デュノアさん、危ない!」
シャルロット「え?うわっ!!」
突然敵ISの後方からロケットランチャーが飛んできて、シャルロットに着弾。シャルロットは撃ち落とされて地面に激突し、ISが解除された。
ラウラ「デュノア!くそっ、まずい、このままでは……オルコット、避けろ!」
セシリア「きゃあっ!!」
今度はセシリアが撃ち落とされた。なんとか奮戦するも、その後も教員達が次々と落とされていく。段々と追い詰められ、セシリア達は怪我人を囲むように円陣を組んで応戦する。が、敵ISの攻撃はさらに激しさを増してきた。ほとんどの武装が損壊するなどして使えなくなっている今、この場を切り抜けるのは絶望的だった。
楯無「くっ、活路が……!」
ラウラ「怪我人も多い……これではおちおち移動も出来ん……!」
簪「このままじゃ本当にーーっ!?お姉ちゃん、危ない!」バッ
楯無「っ!?」
楯無が見た先には、先程のISが今度は楯無に向けてロケットランチャーを撃ち出したところだった。そこへ簪が楯無を守るように立ち塞がる。
楯無「ダメ、簪ちゃん!!」
楯無が叫ぶが、簪はボロボロの打鉄弐式でなおも立ち塞がる。
簪(ごめんね、お姉ちゃん。これが、私の最後の我が儘。皆には、お姉ちゃんから謝ってほしいの……ごめんねって)
飛んできたロケットランチャーがーー
ドオオオオオオンッ
簪に着弾する数m前で突如爆発した。すると、回りにいた敵ISもそれに連鎖して次々と爆発していった。
真耶「い、一体何が起きたんですか……?」
全員が辺りを見回すと、
ラウラ「あそこだ!」
ラウラが校舎の屋上を指差す。全員が屋上を見ると、そこには、
M「全く、なんで私がこいつらを纏めて駆除せねばならんのだ……」
オータム「文句言うなって。あいつの頼み事なんだし、我慢しろよ」
亡国企業所属の二人ーーオータムとMが立っていた。
ゼロ「貴方、何者?私の邪魔するって言うなら、容赦しないよ」
ゼロはソードブリンガーを謎のアーマードライダーに向ける。
??「……」スッ
しかしそのアーマードライダーは何も話さず、手に持った黒いソニックアローを構え、ゼロに向かってゆっくりと歩き出す。
赤零「!!」バッ
と、そこへ赤零がソニックアローを振るって飛び掛かった。しかしそれをアーマードライダーは黒いソニックアローで受け止め、鍔迫り合いを仕掛けてくる赤零を振り払うと黒いソニックアローで赤零のアーマーを斬り裂いた。攻撃を受けた赤零は反撃しようとするが、そのアーマードライダーから蹴りを入れられて吹き飛んだ。
赤零「!!」バッ
《ロック・オン》
《イーヴィルエナジー》
赤零は体勢を立て直すと、ドライバーからイーヴィルエナジーロックシードを外してソニックアローの窪みに装着し、弓をそのアーマードライダーに向けた。
??「……」スッ
《ロック・オン》
《ザクロチャージ》
対して謎のアーマードライダーも、ドライバーからロックシードを外して黒いソニックアローに装着し、弓を赤零に向けた。双方の武器にエネルギーが充填されーー
赤零「!!」
??「……!」
赤零は紅い矢を、謎のアーマードライダーは黒い矢を互いに向けて撃ち放った。矢は一直線に飛んでいき、やがて二本の矢がぶつかり合う。が、
ガシャアンッ!!
赤零「!?」
赤零が放った矢は謎のアーマードライダーが放った矢によって粉々に砕かれ消滅した。黒い矢はそのまま勢いが止まる事なく、
赤零「!!?」
赤零を撃ち抜いた。赤零はまたも吹き飛ばされ、遂に変身が解除された。
千冬「な……春輝!?」
一夏「嘘だろ……なんで春輝が赤零に変身してるんだ……!?」
なんと赤零に変身していたのは、少し前に脱獄したと報告があった春輝だった。
春輝「ぐあっ……!なんでだ……なんで僕がこんな奴に……!」
春輝は苦しそうに呻く。
ゼロ「あらあら、まさか彼を簡単に倒すなんてね……でも、私は倒せないわ!」
ゼロは笑みを浮かべ、ソードブリンガーを構えて走り出す。そしてその剣を思い切りーー
ゼロ「っ!?」グイッ
振り下ろす事は出来なかった。なぜなら、
ゼロ「な……蔦が……!」
小型のクラックが開いてその中から蔦が伸び、ソードブリンガーの刀身を完全に縛り上げてしまったからだ。そしてその蔦は全て、謎のアーマードライダーの左手から伸びていた。
ゼロ「くっ、生意気な真似をーーがっ!?」
力で振り払おうとすると、さらに蔦が現れてゼロを鞭のように打ち据えた。ゼロの手からソードブリンガーが無理矢理引き剥がされ、ゼロは蔦によって放り投げられた。しかしなんとか体勢を立て直し、
ゼロ「くそっ!なんなんだ、お前は!?お前は一体、何者だ!?」
ゼロがそう叫んだ時ーー
??「……おいおい、お前が殺そうとしてた奴の事、もう忘れちまったのか?薄情だねぇ……」
ゼロ「っ!?」
箒・千・一・鈴『!?』
その声を聞いてその場にいた全員は驚きを隠せなかった。なぜなら、その者は既に死んでいる筈だったから。既にこの世にいない筈だったから。
そして遂に、謎のアーマードライダーは変身を解除して、その顔をさらけ出した。
箒「き、ば…………や…………?」
目の前に、死んだと思われていた牙也の姿があった。
次回、早くも復帰した牙也が新たな力をーー。