IS×仮面ライダー鎧武 紫の世捨て人(完結)   作:神羅の霊廟

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 人が得る物は、人が失う物よりも小さい物であるーー。




第42話 積ミ上ゲル心、消エル心

 

 トントンーー。

 カンカンーー。

 

 IS学園の敷地内のあちこちから、ハンマーで釘を打つ音が響いている。生徒達は看板やプラカードなどの小道具や大道具の製作の為にハンマーを振るっている。

 学園祭まで残りあと数日というこの日は、本格的に出店や飾り付けなどの製作をはじめとした準備が最終段階を迎えようとしていた。学園の校門には巨大なアーチ型の門が建てられ、校舎外の壁や校舎内の各教室も色鮮やかな飾りが目を引くほどに付けられている。体育館では、演劇や合唱を行うクラスが最後の練習に取り組んでいる。

 

 

 そしてここ一年一組の教室では、メイド喫茶を開く為に準備が行われているのだが、

 

 『お帰りなさいませ、ご主人様!』

 ??「もっとハキハキとした可愛らしい声で!もう一度!」

 『はい!』

 

 何やら発声練習が行われていた。一組の生徒達の半分は、セシリアが実家から持ってきたお古のメイド服を着て、お古とは違いピシッとして綺麗なメイド服を着た女性から作法やらしゃべり方やらの指導を受けている。この生徒達は主に接客を行う事になっているのだ。

 

 本音「買い出しから戻ったのだ~♪」

 セシリア「ただいま戻りましたわ。チェルシー、どうですの?」ガラッ

 そこへ買い出しを終えてセシリア達数人が戻ってきた。

 チェルシー「お帰りなさいませ、お嬢様。最初よりかは皆さん良く出来ておりますわ。あともう少しといったところでしょうか」

 セシリア「そう。ではここからは私達も練習に参加いたしますわ。チェルシー、お願いね」

 チェルシー「畏まりました」

 静寐「チェルシーさん、ちょっと質問が……」

 チェルシー「はいはい、なんでしょうか?」

 チェルシーと呼ばれた女性は優雅な口調でセシリアに挨拶をして、再び練習を再開した。

 チェルシー「はい、ではもう一度。お帰りなさいませ、ご主人様」

 『お帰りなさいませ、ご主人様!』

 

 

 一方教室の後ろでは、美味しそうな匂いが漂っていた。

 シャルロット「よし、試作品できたよ。皆で味見してみて」

 こちらは料理担当の生徒達で、喫茶で提供する料理を試作していた。シャルロットがフライパンを華麗に操って次々と料理を綺麗にお皿に盛り付けていく。皿の上には、見事な焼き目がついたパンケーキが盛られている。

 ラウラ「ほう、見た目は問題ないな」

 清香「あとは味だよ、そこを見なきゃ」

 シャルロット「僕ってそんなに期待されてないの?」ショボン

 さゆか「いやいや、そういう事じゃなくて!」

 ラウラ「昨日オルコットが作った料理が思い出されてな……シャルロットは大丈夫だと思いたい」

 前日にセシリアが作った試作品を食べて悲惨な目に遭ったラウラは青い顔をして言う。

 シャルロット「むう……まあとにかく食べてみてよ」

 シャルロットに促され、ラウラ達はパンケーキを一口食べた。

 ラウラ「ムグムグ……うむ、旨いぞ」

 清香「美味しいねー!これなら大丈夫でしょ!」

 シャルロット「どれどれ、ちょっと僕も……うん、美味しいね。自分でも良く出来てると思うよ」

 さゆか「これならお客さんにも喜んでもらえるね」

 シャルロット「うん、そうだね……ってちょっとラウラ!他の人にも食べさせるんだから、そんなに食べないで!」

 勢い余って次々と試作品を食べていくラウラを、慌ててシャルロット達が止めにかかる。

 ラウラ「また作れば良いだろうに」モグモグ

 清香「試作品も予算の中に入ってるんだから、そんなに作れないわよ」

 ラウラ「む、そうか……名残惜しいが、ここまでにしよう」ゴクン

 

 鈴「おーい、こっちは進んでる?」ヒョコッ

 簪「様子を見に来ました……」ヒョコッ

 とそこへ、鈴と簪がやって来た。

 シャルロット「あ、鈴に簪さん。試作品あるけど食べてみる?」

 鈴「え、良いの?それじゃお言葉に甘えて……いただきまーす!」パクッ

 簪「え、えと……それじゃあ私も……」パクッ

 シャルロット「ど、どうかな?」

 簪「美味しい……」モグモグ

 鈴「うん、美味しいわよ。結構本格的なのができそうね。でもあたしのクラスだって負けてないわよ~!」

 ラウラ「凰のクラスは確か……」

 鈴「あたし達も喫茶だけど、出す料理は中華の軽食が中心ね。こことは方向性が違うから、良い勝負になるかもね。って事で、お返しにこれ!うちのクラスで出す肉まんよ、後で感想聞かせてね!それじゃ!」

 鈴はラウラに大量の熱々肉まんを渡すと、さっさと自分の教室に戻っていった。

 

 ラウラ「全く、嵐のような奴だな」フウ

 簪「でも一夏さんがいると、性格が変わる……」ウンウン

 シャルロット「あれは性格が変わるんじゃなくて、人間から猫になるんだよ」アハハ

 セシリア「デュノアさん、ボーデヴィッヒさん、貴女達もメイドの練習をしますよー?」

 シャルロット「あ、はーい。それじゃまた後でね、簪さん」

 ラウラ「メイドを極めなければ!」グッ

 二人はセシリアの元に駆けていった。

 本音「ラウにゃんやる気満々~」

 簪「ボーデヴィッヒさんのメイド服姿……見てみたいな」

 本音「当日までのお楽しみなのだ~♪」

 

 学園祭の準備は、着々と進んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 千冬「本当に大丈夫なのか?」

 会議室では、学園祭の間の警備についての話し合いが行われ、生徒からは楯無達生徒会メンバーに加えて箒も参加していた。その中で千冬は、まだ心の傷が治っていないであろう箒を心配していた。

 箒「大丈夫です、ですから私にも警備を手伝わせて下さい。今の私に出来るのは、それくらいですから」

 轡木「私としては、篠ノ之さんには学園祭を楽しむ方に回ってほしいんだけどねぇ……あまり無理はしないように、それだけ言っておくよ」

 箒「ありがとうございます。この学園祭を何事もなく無事に終わらせる事が出来るように頑張ります」

 轡木「よし、では各員の配置を決めようか」

 

 

 

 

 

 

 

 シュラ「……よし、これだけあれば大丈夫だろう……多分」

 ヘルヘイムの森の拠点。研究施設内でなにかを見つけたシュラは、それを厳重な場所に保管した後に戦極ドライバーやゲネシスドライバーの製造を急いでいた。そして今そのほとんどが完成し、シュラはとある場所に隠していた。

 シュラ「ここならそう易々とは見つけられん。黒幕にこれらが渡る事だけは避けなくては……む?」

 するとシュラは突如その目を外に向けた。

 シュラ「……来たか。望み通り、相手してやろう」

 シュラは外に出て、ゲネシスドライバーとイーヴィルエナジーロックシードを取り出した。

 シュラ「変身」

 

 《イーヴィルエナジー》

 

 《ロック・オン》

 

 《血眼!イーヴィルエナジーアームズ!Blood Eyes!Blood Eyes!D-D-D-Deadly Souls!》

 

 シュラはソニックアローを一本の木に向け、赤黒い矢を放った。矢は木を貫通し、その近くにいたインベスを巻き込んで爆発させた。

 

 ??「あらあら、随分と派手にやってくれるわね」

 

 すると煙が立つ中から、一人の女が現れた。その女は、あの黒髪長髪の女だった。

 

 シュラ「貴様か……ザックとギリアに、牙也の殺害を命じたのは」

 ??「ええ、そうよ。紫野牙也は、私にとって障害になる存在……だから殺すように命じた。でも残念ね、あのガキのせいで私達の手で紫野牙也を殺し損ねたのが悔やまれるわ……」

 シュラ「貴様……!」

 ??「あらあら、怒らない怒らない。さて、自己紹介させてもらうわね。私の事はとりあえず、『ゼロ』と呼んでちょうだい」

 シュラ「ゼロ、か……一つ聞こう、このヘルヘイムの森とあの世界を繋げたのは、貴様か?」

 ゼロ「ええ、そうよ。ある目的の為に、ヘルヘイムの森にある果実が必要だった。ただそれだけよ」

 シュラ「ならば、なぜ牙也を殺す必要があった……!?」

 ゼロ「なぜ、ですって?どうやら貴方は、まだ知らないみたいね……紫野牙也の真実を」

 シュラ「牙也の真実……?そうか、あの研究施設は貴様が使っていたのか……!」

 ゼロ「っ!?研究施設を見つけたの!?」

 シュラ「ああ。洞窟にカムフラージュしたようだが、中身が露になっていて簡単に見つかったぞ。それに、中に残されていた報告書もな」

 ゼロ「くっ……それなら!」

 ゼロはおもむろに懐から何かを取り出した。

 

 シュラ「ゲネシスドライバー!?なぜ貴様が……!?」

 ゼロ「詰めが甘いわね、貴方がヘルヘイムの森にいない間に設計図をコピーさせてもらったわ。そして……」

 ゼロはさらに懐から、金色に輝くエナジーロックシードを取り出した。

 ゼロ「貴方が保管していた金のリンゴ……返してもらったわ」

 

 《ゴールデンエナジー》

 

 エナジーロックシードを解錠すると、ゼロの頭上に金のリンゴが現れた。

 

 《ロック・オン》

 

 ゼロ「ふふ、貴方に絶望をプレゼントするわ……変身」

 

 

 

 

 

 《ソーダァ!ゴールデンエナジーアームズ!黄金の果実!》

 

 

 

 

 

 金のリンゴが回転して果汁を飛ばしながらゼロの頭に被さり、ゲネティックライドウェアの上に鎧として展開された。

 シュラ「黄金の果実だと……!?しかもエナジーロックシード……!あれは我が厳重に保管していた筈……まさか!?」

 ゼロ「ふふ、気づかなかったようね……拠点に隠しカメラがあったのに。さて、始めましょうか」

 ゼロが変身した『アーマードライダーマルス ゴールデンエナジーアームズ』は、巨大な盾『アップルリフレクター』から『ソードブリンガー』を抜いて、シュラに斬り掛かった。シュラはソニックアローで斬撃を防ぐが、そこにアップルリフレクターの打撃が襲い掛かり、シュラは大きく仰け反る。そしてゼロは追撃でソードブリンガーの斬撃を数回食らわせた。

 

 シュラ「ぐはっ!く、貴様……!」

 

 《イーヴィルエナジースカッシュ!》

 

 シュラはシーボルコンプレッサーを一回押し込んで、ソニックアローのアークリムにエネルギーを溜める。

 

 ゼロ「無駄よ、無駄無駄」

 

 《ゴールデンエナジースカッシュ!》

 

 対してゼロもシーボルコンプレッサーを一回押し込んで、ソードブリンガーにエネルギーを溜める。そしてーー

 

 

 

 シ・ゼ『食らええええええええええ!!』

 

 

 

 連続で斬撃波を飛ばした。周囲に斬撃波の激突による爆発が起こる。やがて爆発の煙が晴れると、

 

 シュラ「が……はっ……!」

 

 地面には変身解除されたシュラが倒れていた。

 ゼロ「ふふっ。さて、重大な秘密を知ってしまった貴方にはーー」スッ

 ゼロがソードブリンガーを掲げると、どこからともなく蔦が延びてきて、シュラを拘束した。

 シュラ「ぐ、があっ……!は、離せ……っ!」

 シュラは蔦から脱出しようともがくが、暴れるほどに余計に蔦がシュラを締め付ける。そんなシュラにゼロはゆっくりと歩み寄りーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゼロ「死の花束を、プレゼントするわ」

 

 

 ドスッ

 

 

 

 ソードブリンガーをシュラの左胸に突き刺した。

 

 シュラ「が…………っ!」

 

 ゼロがソードブリンガーを引き抜くと、途端に蔦が緩んでシュラは地面に叩き付けられた。

 ゼロ「ふふ、永遠にお休み……」

 倒れて動かないシュラにそう声を掛け、ゼロは落ちていたシュラのゲネシスドライバーとイーヴィルエナジーロックシードを拾い上げ、さらに拠点に火を付けてその場をあとにした。

 

 

 

 

 

 

 

 シュラ「我、は……ここ、までか……」

 ゼロが去った後、重い体を動かして体を仰向けにしたシュラは、空をじっと見上げていた。

 シュラ(まだ、死ねぬと言うのに……すまぬ、牙也……)

 

 

 

 

 

 

 タッタッタッタッーー

 

 シュラ「……?」ググッ

 

 森に聞こえる足音に気付き、シュラがその方向に顔を向けると、誰かが走り寄って来た。

 

 シュラ「お、お前は……!?」

 

 その人物をみてシュラは驚愕していた。その人物がシュラに何か耳打ちすると、

 シュラ「そう、か……分かった、後事は、全てお前に託そう……頼む……あの世界を、救って、くれ……」

 笑顔を見せたシュラの体は、やがて光の粒子に変換されてその人物に吸収されていく。その粒子が全て吸収されると、その人物は悲しい顔を見せながらヘルヘイムの森を後にした。

 

 

 

 

 

 





 次回、学園祭開幕。そして、ゼロが学園に牙を向くーー。


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