IS×仮面ライダー鎧武 紫の世捨て人(完結) 作:神羅の霊廟
牙也はヒガンバライナーを駆って、福音の元へ急いでいた。
牙也「ったくあの大馬鹿野郎が、余計な仕事増やしやがって……救出したら捻り潰してやろうか……」イライラ
千冬『怒りたい気持ちは分かるが、今は抑えておけ。こっちはまだ見つけられていないが、牙也はどうだ?』
牙也「反応なし。このままだと、あの馬鹿見つける前に福音に接触するけど」
千冬『その時は福音撃破に集中しろ。あ、ちなみに接触まであと数分といった所だ』
牙也「了解。一先ず通信切りますんで」
千冬『ああ、気を付けてな』
牙也は通信を切り、その場で滞空して辺りを見回した。
牙也「あの馬鹿らしき姿はなし……妙だな、俺より先に福音の元に行ったなら、既に交戦しててもおかしくはないんだが……」
牙也は暫し考えていたが、
牙也「……考えてたって仕方がない。とにかく今は、福音の撃破に全力を尽くそうか」
そう割り切って、牙也は福音の元に急いだ。
そして数分後。
牙也「……いた。が、あの馬鹿はいないな……おこぼれでもくすねようとしてんのか?」
日本のある方角に向けて飛んでいる福音インベスの姿をようやく見つけた。ちょうどまだ牙也には気づいていないようで、のんびりと空を飛んでいる。
牙也「よし……<ピッピッ>こちら牙也、福音と接触しました。これより戦闘に入ります」
千冬『了解、敵の攻撃にはくれぐれも注意しておけよ』
牙也「分かってます。それでは<ピッ>ふう……さて、まずは奴の目をこっちに向かせないとな」
牙也はソニックアローを構えて一気に福音インベスに突進した。
牙也「食らえコラァァァァァァァァァ!!」
その大声に福音インベスがようやく牙也の存在に気づくが、既に遅し。ソニックアローの斬撃は、インベスの腹部を的確に捉えた。
『ガアアアアアア!!』
インベスは攻撃を受けて苦しそうに悶え、エネルギー体の翼脚を振り回す。それを回避して、牙也は一旦距離を取ってからソニックアローを再び構えた。
牙也「これでも食らっとけ!」
ソニックアローから紅い矢を放ちインベスを牽制しながら、攻撃の機会を伺う牙也。ソニックアローから放たれる多数の矢は、インベスに突き刺さったり、インベスには突き刺さらずにそのまま海に落ちていったりであった。
牙也(矢の練習しようかな……)
そんな事を考えている間にも、インベスは翼脚を振り回して牙也に襲い掛かってきた。
牙也「あ、やっべ」
翼脚の一撃が、遂に牙也が乗るヒガンバライナーを捉えた。翼脚が振るわれ、牙也の姿が消える。
『グアアアアアア!!』
勝ち誇ったような咆哮をあげるインベス。が、
ヒュンッ
『ガアッ!?』
インベスのすぐ横を、紅い矢が掠めた。矢が飛んできた方向をインベスが見ると、
牙也「そいつは影武者だよ、残念だったな」
先程と同じくヒガンバライナーに乗った牙也がいた。先程インベスが攻撃したのは、マスカットエナジーの能力で作った分身であり、本物はそれより前にインベスの後ろに回避していたのだ。
牙也「さーて、お仕事開始だ」
牙也がそう言ったと同時に、
『ガアッ!?』
マスカットエナジーの能力で、牙也の分身が次々と現れた。その数は最終的に十人となり、それぞれがソニックアローをインベスに向けて、攻撃の構えをとる。
牙也「撃破対象、福音インベス……Mission Start!」
そう言うと、牙也はヒガンバライナーのエンジンを吹かして分身と共にインベスに突撃した。
『ガアッ!』
対してインベスは翼脚を牙也に向けて振り下ろして攻撃してきた。が、大振りな攻撃はヒガンバライナーの前にはスローモーションでしかなく、あっさりと回避される。
牙也「軽い軽い。それ、食らいな!」
そのまま分身の内の半分は海にスレスレで低空飛行する等インベスより下に展開し、残りと本体はインベスより上から攻撃を仕掛け始めた。上下から挟み撃ちにする作戦だ。上下から絶え間なく矢が飛んできて、インベスはなかなか攻撃が出来ない。
『グルル……ガアッ!!』
するとインベスは完全に怒ったのか、翼脚からエネルギー弾を全方位に向けてがむしゃらに放った。
牙也「うおっ!?」
牙也と分身はあちこちから飛んでくるエネルギー弾を全力で回避していく。
牙也「これが箒達が言ってた全方位攻撃か……やれやれ、近づくのは骨が折れるな」
ぶつぶつと呟きながら、牙也はエネルギー弾を鮮やかに回避し、被弾しそうな弾だけをソニックアローで叩き落としていく。が、数が数なだけに全てをさばくのには一苦労している。実際、分身の一部が攻撃を受け止め切れずに消滅してしまっていた。
牙也「くそっ、無尽蔵にブッ放してくるから厄介なんだよな……まずはインベスと福音を切り離さなきゃな」
牙也は面倒臭そうに呟くと、新たに分身を呼び出して何か合図を送った。分身達は頷いて、それぞれの戦極ドライバーからマスカットエナジーロックシードを外してソニックアローの窪みに装着する。
《ロック・オン》
そして、一斉に福音インベスに向けてソニックアローの弦を引き絞った。
《マスカットエナジー》
音声と共にそれぞれのソニックアローから緑色の矢が放たれ、一定距離を進んだ後に無数に分裂してインベスに襲いかかった。インベスもエネルギー弾を無数に放って迎撃する。矢とエネルギー弾がぶつかり合い、次々と爆発が起こり、視界を遮っていく。やがて視界が晴れていくとーー
『グルルルル…………!』
そこに残っていたのは、福音インベスのみであった。
『ガアアアアアア!!!』
再び勝ち誇ったような雄叫びを上げるインベス。周囲に誰もいない事を確認したのか、再び日本に向かう為にエネルギーの翼脚を羽ばたかせーー
牙也「やっと……やっと隙を見せてくれたな」
『ガアッ!?』
ようとした時、突然牙也が現れてインベスを斬り裂いた。突然の奇襲に対応出来ず、福音はあっさりと強制解除されてしまった。解除された事で、福音は待機状態のペンダントに戻り、海に向かって落ちていく。
牙也「頼むぜ!」
牙也がそう言うと、分身の一体が急降下してペンダントを空中でキャッチし、それを牙也本体に投げ渡した。
牙也「投げ渡すなよ……まあ回収出来たから良かったようなものの……」パシッ
『ガアッ!!』
牙也「やばっ!」
しかし福音が解除されても、インベスは牙也に攻撃を仕掛けてきた。一瞬の隙を突かれ、ヒガンバライナーはエンジン部に一撃を受けて損傷する。エンジン部からは火花が上がり、煙も出始めた。
牙也「不味いな……こういう時こそ、か」
《グレープフルーツエナジー》
《ロック・オン》
《ミックス!ブルーベリーアームズ!侵食者・Hell・Stage!ジンバーグレープフルーツ!ハハァーッ!》
牙也はジンバーグレープフルーツアームズにフォームチェンジして、ヒガンバライナーをロックシードに戻して飛翔し、再びソニックアローから矢を放つ。福音に頼って戦っていたインベスなど、福音が使えなくなれば牙也程の実力なら余裕で倒せる。
『ガアアアアア!?』
今までは余裕で避けられていた矢も、福音解除によって機動力が減り、被弾が多くなった。
牙也「さてと……難所は抜けた。後片付けだ」
《ジンバーグレープフルーツオーレ!》
カッティングブレードで二回切り、正面にサッカーボールぐらいの大きさのブルーベリーが現れる。
牙也「必殺シュート、食らえっ!」シュート!
そして牙也は、現れたブルーベリーをインベスに向けて蹴飛ばした。勢い良く飛んでいったブルーベリーはインベスの腹にめり込み、反動で牙也の元に戻ってきた。
牙也「まだまだ続くぜ!」
牙也は戻ってきたブルーベリーを再びインベスに向けて蹴飛ばした。今度はそれが腕に当たって跳ね返ってくる。それを牙也がまたインベスに向けて蹴飛ばす。手に、肩に、膝に、足にブルーベリーが当たり、その度に牙也の元に戻ってくる。そして、
牙也「これで……止めッ!」
その場でフィギュアスケートのジャンプのように高速回転して、インベスの頭に向かってシュートーー
春輝「もらったァァァァァ!!」
ーーしたちょうどその時、何処からか春輝が現れてインベスを斬り裂いた。顔を斬り裂かれ、インベスが大きく仰け反る。
春輝「ハハハハハ!!これで僕の実力が証明されたぞ!これで僕の事を誰もが尊敬するdーーぐはっ!?」
一撃与えた春輝が高笑いを上げていたところに、先程牙也がシュートしたブルーベリーが背中に直撃して、春輝はインベスに向けて勢い良く吹き飛ばされていく。
春輝「うわああああああ!!」
そのまま春輝はブルーベリーごとインベスの頭に激突しーー
ドオオオオオオオオンッ
大爆発を起こした。爆発によって上がった限りなく黒に近い黒煙が辺りを覆っていく。牙也は一旦煙から距離をとり、引き続きソニックアローを構えて警戒する。必殺技が当たったとは言え、確実に仕留めたとは言い難い。その為、完全に撃破した事を確かめねばならなかった。するとーー
『ガアアアアアーー…………』
辺りを覆っていた煙からインベスが現れ、鳴き声を上げながら力なく海へと落ちていくのが見えた。そして大きな水飛沫を立てて海に落ちると、
ドオオオオオオオオンッ
二度目の大爆発が起こった。やがて爆発に煙は収まり、辺りは静寂が包んだーー
春輝「て、てめぇ!この僕にまで攻撃するなんて、どういう了見だ!?」
と思ったら煙の中から春輝が現れて、インベス共々攻撃した事について牙也に噛みついた。
牙也「はぁ…………突然俺とインベスの間に現れたお前が悪い」
春輝「ふざけんな!僕が奴を倒そうとしていたんだぞ!それを勝手にお前が横取りしたんじゃないか!」
牙也「」ヤレヤレ
牙也は呆れたように首を振ると、春輝に近づいてその顔にアイアンクローをかけた。
春輝「あだだだだだだ!!痛い痛い痛い痛い!!」ミシミシミシ
牙也「お前はインベス討伐の命を受けていない。そしてお前はそれにも関わらず学園長の命を無視し、勝手に出撃した。お前が犯した罪は重いぜ。とっとと旅館に戻って、相応の裁きを受けるこったな」メキメキメキ
牙也は引き続きアイアンクローを春輝にかけ、その力を徐々に上げていく。すると、
牙也「っ!」バッ
春輝「うわっ!?」
突然何かを感じたのか、牙也がアイアンクローをかけていた春輝をぶん投げて、自分は軽くバックステップした。するとーー
ピュンッ!!
牙也達がいた場所に、レーザーが通る。それは以前、牙也を撃ち抜いたあのレーザーであった。
??「おや、また仕損じてしまいました」
??「ハッハッハァ!だったらこれから叩き潰せば良いだけだろ!?」
その声が聞こえた方に牙也が顔を向けると、
??「確かにそうですね、では、後は頼みますよ」
??「ハッハッハァ、任せな!数撃で終わらせてやるよ!」
空母にある滑走路のようなフィールドが浮遊し、その上に二人の男が立っていた。一人はプロレスラーのようにガッチリ鍛えられた体を上半身裸にして見せつけており、もう一人は細身ながらしっかりと鍛えられた体で、左手にはレーザーライフルを持っていた。
どうやら戦いは、まだ終わらないようでーー。
次回、謎の男達とのバトルーー。