IS×仮面ライダー鎧武 紫の世捨て人(完結) 作:神羅の霊廟
ともかく、楽しんで読んで頂けると嬉しいです。
三人称side
旅館の大広間に、専用機持ちと教員達が集まった。
千冬「では、現状を説明する」
牙也「その前に一つ良いっすか?」
千冬「何だ?時間がないから手短にな」
牙也「じゃあ一言。なんでーー」
牙也「なんで俺と箒がここにいるんでしょうか?」
箒「牙也の言う通りです。ここには専用機持ち以外はいてはならないはずですが、織斑先生」
千冬「うむ、それはなーー」
??「私が呼んだのだよ」
千冬の後ろにある二つの巨大スクリーンの内の一つから声がする。すると、スクリーンに映ったのは、
セシリア「学園長!」
シャルロット「シュラさんも!」
学園長の轡木とシュラであった。
シュラ「前回のタッグトーナメントの件もあるからな。まだそうと決まった訳ではないが、念には念を入れてお前達二人も呼んだのだ」
牙也「そうだったのか……」
轡木「すまないね、折角の休みなのに」
牙也「お気になさらず。それよりも千冬さん、現状はどうなってんですか?」
千冬「ああ、これから説明する」
そう言って千冬はもう一つのスクリーンにある映像を映した。
千冬「今から二時間前、アメリカ・ハワイ沖で試験運用中だったアメリカとイスラエル共同開発の第3世代軍用型IS【銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)】が、突如アメリカ軍の制御下を離れて暴走した。現在福音は太平洋を日本に向けて超高速で進んでいる。今日本空軍が出動しているが、福音のそのスピードに追い付けず、取り逃がす可能性もある。そこで福音が通るであろう予想ルートに一番近い場所にいる我々に、福音を鎮圧・搭乗者を救出せよと学園上層部から指令が届いたのだ」
牙也「軍用ISか……!」
セシリア「織斑先生、鎮圧対象の基本スペック情報の開示を求めます」スッ
千冬「ああ、だがこれは決して他者に口外するな。もしこの情報を漏らした者は、厳罰に加えて二年間の監視付きとなる。よく覚えておけ」
そう言って千冬は福音の基本情報の書かれたプリントを全員に配った。
セシリア「私の【ブルー・ティアーズ】と同じ特殊射撃タイプのIS……」
鈴「厄介なのは、この【銀の鐘(シルバー・ベル)】って武装ね。36の砲口を持つ新型ウイングスラスター、しかも全方位を広域射撃出来るから余計にね……」
シャルロット「機動力も侮れないね。常時瞬間加速(イグニッションブースト)状態とも言える性能だよ」
ラウラ「私のレーゲンのAICでこれを捕らえるのは難しいな……隙を見て発動するのが懸命か……」
専用機持ちは、各々の意見を並べていく。
牙也「千冬さん、福音との戦闘って時間制限とかあるのか?」
千冬「うむ。福音の性能の高さ故、接触可能時間が余りにも短すぎる。もって一時間と言ったところか……」
簪「短い……となると、出し惜しみは出来ない……」
箒「そもそも軍用ISだから出し惜しみも何もないだろう。どう見る、牙也?」
牙也「うーん、まず持久戦はダメだな。福音のスペックの高さを考慮すると、勝てる要素がない。しかも接触可能時間も短すぎる。となると……一撃必殺、か?」
鈴「一撃必殺?」
牙也「短期決戦だ。時間が無いなら、そうするしかないだろう。短時間で一気にダメージを福音に叩き込む。俺が考える限りでは、それしか手立ては無いな」
箒「短時間で、大ダメージ……」
牙也「問題はそれが可能な機体だ。今この中で、『短時間で大ダメージが可能』という条件を満たした機体、もしくは武装を持ってるのは……」チラッ
牙也のその言葉と共にーー
春輝以外『』ジー
春輝「ぼ、僕かい?」
春輝の方を見た。
牙也「逆に聞くが、お前以外に誰かいるか?」
春輝「他にって……僕じゃなくてもお前が行けば良いんじゃないか?アーマードライダーの力を持ってすれば、すぐに片が付くと思うけど」
牙也「……悪いが、今回俺は……いや、俺達は力を貸せない」
セシリア「ど、どうしてですの!?」
鈴「そうよ、なんで力を貸せないの!?」
轡木「彼らアーマードライダーと学園との間で結んだ協定に、理由があるんだ」
口を開いたのは、轡木だった。
轡木「彼らと協力関係になった時、いくつかの約定を取り決めたんだよ。その内の一つに、『アーマードライダーが出撃するのは、あくまでインベス関連の事案のみ。IS関連の事案に関しては、これを認めない』というのがあるんだよ」
シャルロット「そんな……!」
牙也「仕方ないさ。ISの問題はISに関わりのある者に任せる方が一番安全だからな。『餅は餅屋』って事だ」
牙也は「それに、」と言って続けた。
牙也「IS関連の問題を俺達アーマードライダーが解決しちまったらどうなる?学園が女利権や委員会、果ては大衆からバッシングを受けるのは目に見えてるんだよ。面目丸潰れってやつだ。俺はなるべくそれを避けたい。今の世はISあってこそ成り立ってるんだ。そこにアーマードライダーが入り込んでISをあっさりと倒す。もしそうなったとしたら、『ISを越える兵器が現れた!』って事で世界は大混乱だ。アーマードライダーの力は本来、あってはならない物。隠しておくべき物なんだよ」
ラウラ「牙也……」
牙也「ま、その代わりと言ってはなんだが、何か困り事があったら尋ねてこい。出来る限りそれに答えよう」
千冬「皆、理解したな?では、作戦を急いで建t束「ちょーっと待ったーーーー!」束、どうした?」
束「実はね、最近完成した機体があるんだけど、それが多分今回の作戦に役に立ちそうなんだよね。今日ここで発表しようと思って持ってきてたんだよ。準備するからちょっと待っててね!」ビューンッ
そう言って、束は窓から飛び出していった。
轡木「新たな機体ですか……」
牙也「今回の作戦に役に立ちそうって言ってたな……とすると、白式の補佐がメインの機体か……?」
シュラ「恐らくそうだな。白式の『零落白夜』は大量のエネルギーを消費する。だが攻撃が外れればエネルギーは無駄骨だ。本来ならそれは避けたい所だが、篠ノ之束はどうするつもりだ……?」
千冬「束の事だから、その辺りが分からない訳はあるまい。一夏、束はその機体について何か言ってなかったか?」
一夏「ああ、確か『白式の弱点を補う存在のIS』って言ってたな。俺も詳しくは分からないけど、エネルギーがどうのこうのって言ってたよ」
束「お待たせ~~!」ゴオッ
そこへ、束が紅いISを纏って中庭に降り立った。
束「これがその新機体!名前は『紅椿』だよ!」
簪「綺麗……!」
千冬「束、その紅椿はどんな機体なのだ?」
束「これはね、エネルギー供給が可能な機体だよ。使いこなせれば無限にエネルギーを生成出来て、それを他の機体に分け与える事が出来るんだ!」
シュラ「エネルギー供給か……!考えたな」
束「後特徴なのと言えば、展開装甲かな。展開して攻撃を自動でサポートしてくれたり、防御シールドになってくれたり、スラスターになってくれたりするんだ。ただ紅椿は白式と同じく装甲面に問題があってね、エネルギー供給能力に特化させ過ぎてピーキー機体になっちゃったんだ」
牙也「それ、大丈夫なのか?」
束「大丈夫!だからこその展開装甲だよ!その辺りは束さんも抜かりないよ!」
轡木「しかし篠ノ之博士。その機体は一体誰が使うのですか?」
束「あ……しまった、そこまでは考えてなかった……」アワワ
牙也「現状を考慮すると、『戦闘経験が豊富』『ISの実技で充分な成績を出している』の二つが条件だな。それを満たす奴は……」チラッ
箒以外『』ジー
箒「……え?」キョトン
今度は全員が箒の方を向いた。
箒「わ、私か?確かに実戦経験はあるが……」
真耶「ですが、実技面で篠ノ之さんが充分な成績を出しているのは確かですね。それに他に動かせる人がいない事も考えると……」
シュラ「選択肢はおのずと限られるな」
轡木「さて、どうする?君自身が決めたまえ」
箒「……」
暫し箒は考えていたが、
箒「……分かりました。力になれるかは分かりませんが、精一杯の力で皆を補佐します。姉さん、一時的だけどこの力を借りるね?」
束「うん。じゃあ箒ちゃんはこっちに来て。急いでフィッティングするから」
箒と束は一旦その場を離れた。
牙也「よし、今の内に作戦を立てよう。今回重要なのは、織斑の白式。これが落とされると、福音の鎮圧は不可能になる。となると……」
轡木「如何に被弾を抑えるか、だね」
牙也「ええ。それに、福音の所まで向かうのに使うエネルギーも、なるべく最小限に抑えたいところ。となれば、白式は紅椿とセットで向かわせるのが妥当かな?」
千冬「それしかあるまい。紅椿のスペックを見た限りでは、今ある機体の中で機動力が一番高い。エネルギー消費を抑えるなら、それが妥当だ」
牙也「皆の新しいパッケージはなんだ?」
セシリア「私は『ストライク・ガンナー』ですわ。ビットをスラスターとして使用し、機動力を上げるパッケージですが、ビットでの射撃は一切出来なくなります」
鈴「あたしは『崩山』。龍砲の増設と威力強化って所かな」
シャルロット「僕は『ガーデン・カーテン』だよ。実体とエネルギーの二種類のシールドを二つずつ張るんだ。高速切替があるから、シールドを張っている間も攻撃出来るよ」
ラウラ「私は『パンツァー・カノニーア』。レールカノン二門と物理シールドの増設だ」
簪「私は『不動岩山』……広範囲防壁を張る事が出来ます……」
牙也「うーん……今回はセシリアのパッケージは封印だな。無理に機動力上げるより射撃に集中させた方が良いだろ。むしろ攻撃力と防御力を上げておくべきだ」
真耶「だとすると、織斑君達二人の後ろは凰さんとボーデヴィッヒさんが良いかと。近距離と中距離をカバー出来る機体ですから」
牙也「念を押すなら簪もだな。山嵐と新型パッケージが役立つだろう」
千冬「ではオルコットとデュノアは後陣だな。遠距離武装による援護が中心になる」
シュラ「決まりだな。後は篠ノ之姉妹を待つだけだが……」
束「お待たせ~~!」
箒「フィッティング、終わりました」
そこへ束と箒が戻ってきた。
牙也「どうだ、やれるか?」
箒「まだ少し不安だがな。武装や展開装甲については頭に入った。後は、これをどこまで実戦で役立てる事が出来るか……」
そう言って箒は心配そうに、紅椿の待機状態である、手首に巻いた金と銀の鈴がついた赤い紐を撫でた。
牙也「てい」ビシッ←チョップ
箒「痛っ!牙也お前ーー」
牙也「気を楽にしろ。いつも通りでやれ。始める前から失敗に恐怖してたら、出来る事も出来なくなる」
箒「!」
牙也「今まではアーマードライダーとして戦ってきたから、勝手が違って不安なのは分かるさ。だが、アーマードライダーもISも同じ物だ、人を守る事が出来るって事ではな」
箒「……そうだな。やるしかない、か」
牙也「おう、その意気だ」
千冬「よし、今から30分後に作戦を開始する!各自海岸にて準備せよ!」
『はいっ!』
M「……福音が暴走?」
スコール「ええ。IS学園の面々が鎮圧に向かったわ」
一方亡国企業でも、ある作戦が始まろうとしていた。亡国の戦闘部隊が各自のISを起動し、出撃の準備を進めている。
M「そこに私達が乱入すれば良いのか?」
スコール「いえ、私達の目的はただ一つ。乱入する必要は無いわ。無闇に突っ込んでこちらに被害が出ないとも限らないし」
スコールはそう言って、自身のIS『黄金の夜明け(ゴールデン・ドーン)』を展開した。それに次いでMが『サイレント・ゼフィルス』を展開する。
スコール「さあ……始めるわよ。謎解きの旅を」
三人称side end