IS×仮面ライダー鎧武 紫の世捨て人(完結) 作:神羅の霊廟
三人称side
牙也・夏煉ペア
遡る事数分前。
牙也「……さて、何処に行ったら良いのやら」
夏煉「……どうしましょうか?」
完全に迷っていた。
夏煉「牙也さんはここに入った事があるんですよね?」
牙也「ああ。だが入っただけで森の探索とかはしてない。だから俺らからすれば未開の地同然だな」
夏煉「当てがないってなかなか難しいですね……まして、迷い込んだのが誰なのかも分かりませんしね……」
牙也「何か手掛かりになるような物があればな……」
夏煉「そうですね……あれ?」
牙也「どうした?」
夏煉「あそこの木、何か引っ掛かってません?」
夏煉が言う通り、その木には服のような物が引っ掛かっていた。二人は木に近付き、それを手に取った。
牙也「コートだな。それもまだ新しい。買ったばかりのやつだな」
夏煉「手掛かりになるでしょうか……?」
牙也「さあな。だが、ついさっきまでここに誰かがいた事は間違いないな」
夏煉「という事は……」
牙也「よし、この辺りを探索だ」
コートは木に引っ掛け直しておき、二人は探索を開始した。
が。
牙也「誰もいねぇ……」
夏煉「駄目でしたね……」
数分後、また同じ場所に戻ってきた。周辺をくまなく探索したが、誰一人として見つからず、結局不発であった。
牙也「既にここから遠くに行ったんだろうな。恐らくこのコートは、戻ってくる時の目印ってところか。……待ち伏せしてみるか?」
夏煉「それが良いかもしれませんね。またここに現れるかもしれませんし」
牙也「よし、隠れて様子を見てmーー」
ピキュンッ!!
その途端、牙也の胸をレーザーが撃ち抜いた。
牙也「が…………はっ…………!?」
夏煉「牙也さん!?」
牙也はうつ伏せに倒れ、夏煉は慌てて牙也に駆け寄る。
夏煉「牙也さん!しっかりして下さい!」
牙也「ぐ……がっ……!くそっ、何処から……!?」
???『おやおや、しぶとく生きてたか。仕留めたと思ったんだけど』
夏煉「っ!誰!?何処にいるの!?」
??『怒らない怒らない。君に用は無いんだよ。そこに倒れてる奴に用があったんだけど……』
牙也「何……!?」
??『仕留め損ねたとなれば仕方がない。今日は大人しく退かせてもらうよ。また会おう』
そのままその声は聞こえなくなった。
牙也「や、野郎……!ごほっ、ごほっ!」ガクッ
夏煉「動いちゃ駄目です!ただでさえ怪我がひどいんですから!皆、出てきて!」
すると、次々とD眼魂が出てきてパーカー姿に実体化した。
夏煉「皆は陽太義兄さんと薫義姉さんに救援を頼んできて!別れてそう時間が経ってないから、まだ近くにいるはずだから!急いで!」
眼魂達は無言で頷き、鬼崎と薫の元へ飛んでいった。
夏煉「牙也さん、大丈夫ですか!?私が分かりますか!?」
牙也「馬鹿……頭打った訳じゃねんだからよ……それにあの野郎、わざと心臓や肺を外しやがった……相当の手練れだ……ごほっ!」
それでも撃ち抜かれた傷がひどいのか、咳をする毎に血を吐く牙也。
夏煉「陽太義兄さん……薫義姉さん……早く来て……!」
牙也「くそっ……こんな日に……限って、厄日だな……っ!?危ねぇっ!!」バッ
夏煉「え!?」
ザシュッ!!
牙也「ぐぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
春輝「ちぇっ!邪魔者が入ったか。ま、いいや。これで心置きなくお前を叩き潰せるよ」
白式を纏った春輝がそこにいた。
夏煉「貴方……あの時の……!」
牙也「ぐ……がっ……!てめぇ……!」
春輝「邪魔だよっ!」ドカッ
牙也「ごはっ!」
春輝に蹴飛ばされ、牙也は地面を転がる。そのまま気を失ったのか、牙也はピクリとも動かない。
夏煉「牙也さん!」
春輝「フン、前回はよくもまあ天才の僕を散々馬鹿にしてくれたねぇ……お前の仲間がいないのは残念だけど、お前を倒せば自ずと向こうからやって来るか。さて、あの時のお返しをするとしようか……!」
夏煉「くっ……ふざけないで!」
夏煉は腰に手を翳し、ゴーストドライバーを具現させた。ヘレナ眼魂を取りだし、スイッチを押す。
《アーイ!バッチリミトケー!バッチリミトケー!》
ドライバーのバックルを開いて眼魂を入れて閉じる。そしてドライバーのレバーを引いて押し込んだ。
夏煉「変身!」
《カイガン!ヘレナ!!デッドゴー!覚悟!キ・ラ・メ・キ!ゴースト!!》
仮面ライダーヘレナに変身した夏煉は、ドライバーからガンガンセイバーを出して構えた。
夏煉「もう一度、叩き潰してあげる……!」
春輝「やってみろ!僕は前回とは違うぞ!」
一方、千冬と薫は叫び声を聞き付けて急ぎ牙也達の元へ向かっていた。
千冬「くそっ、胸騒ぎがする……!何も無ければ良いのだが……!」
薫「夏煉、牙也、大丈夫かな……ん?あれは!」
そこへ、夏煉が使う眼魂の焔・澪・チンク・詠・未来・日影・カズラ・春花の八人が来た。
焔『大変だ!あの少年が誰かに銃撃された!』
千冬「牙也が!?」
薫「そんな……!夏煉は!?」
澪『夏煉は大丈夫よ、今あの少年と一緒にいるから』
千冬「案内してくれ!」
千冬と薫は焔達の案内の元、牙也達の元へ向かった。
同じ頃、シュラと鬼崎も羽衣狐・イカ娘・パティ・ノーヴェ・ディエチ・ウェンディ・狂骨の七人と合流し、報告を受けていた。
シュラ「織斑と兵鬼には伝わっているのか?」
羽衣狐『二手に別れたからの。今丁度伝えておる頃であろう』
狂骨『兎に角急ぎましょう、羽衣狐様。夏煉お姉さまやあの少年が心配です』
鬼崎「そうだね。皆、急ぐよ!」
シュラ達も、牙也の元へ向かった。
春輝は前回の失敗を考えてか、アサルトライフルとハンドガンを数丁持ってきていた。夏煉がガンガンセイバーとガンガンハンドの銃モードで攻撃して来るのに対し、春輝はそれを避けながら、アサルトライフルの銃弾を夏煉の周囲にばら蒔くように撃った。銃弾をところ狭しとあちこちに撃ち込んで来るので、夏煉は行動範囲を狭められ、身動きが取れない状態だ。
春輝「ハハハハハ、どうしたんだい!?君の実力はそんな物なのかい?」
夏煉「くっ、動けない……!四方八方に撃ってくるから余計に……!」
春輝「無様だねぇ……!僕に良いようにされるがまま……!そうだよ……これだよ!これを僕は望んでたんだ……!」
狂ったような笑みを浮かべながら、春輝はアサルトライフルをハンドガンに持ち替えて、さらに夏煉に向けて撃つ。夏煉もガンガンセイバーとガンガンハンドで応戦するのだが、近くで気を失った牙也が倒れている為にそちらにも気がいってしまい、なかなか決定打を出せない。ゴーストチェンジしようにも、全員救援を呼びに行かせたのでやりようがない。
春輝「考え事をしている暇があるのかい?」ドンドンッ
夏煉「くうっ!!」
春輝の銃撃が夏煉をとらえ始めた。銃撃の範囲を少しずつ狭めていき、逃げ場を無くしたのだ。
夏煉「貴方なんかに負ける訳にはいかない……!人を斬る事に何の躊躇いもない貴方には……!」
春輝「フン、僕を下に見たお前達が悪いんだよ……所詮凡才は天才に絶対に勝てはしないんだからね!」
夏煉「そう言って他の人の努力を否定し続けて来たの!?」
春輝「それの何が悪い?所詮君達が僕を否定するのは、生まれつき僕みたいな素晴らしい能力を持たなかった君達の嫉妬だろう?それを僕にぶつけられても、迷惑なんだよ!」
春輝はハンドガンの銃口を夏煉に向けた。
春輝「それじゃ、フィニッシュと行こうか……さようなら、愚かな凡才さん」ジャキッ
焔『愚かなのは、貴様だ!』
春輝「な!?ぐあっ!」
そこへ夏煉の所持する眼魂達が次々とパーカー姿で春輝にタックルをかました。そこへシュラ達四人が走ってきた。
千冬「牙也!夏煉!大丈夫か!?」
夏煉「私は大丈夫です!でも牙也さんが……私を庇って……!」
シュラ「牙也!しっかりしろ!」
牙也「こほっ……うる…………せえよ……後……救援……に、来るのが…………遅ぇん……だよ…………馬鹿……」
シュラ「くそっ、傷が大きい!向こうで手当てしないと不味いぞ!織斑!お前は先に戻って牙也の手当てを!篠ノ之にも連絡だ!」
千冬「分かった!あの大馬鹿の捕獲は任せるぞ!」
シュラがクラックを開くと、千冬は牙也を背負って元の世界へと戻っていった。
シュラ「さて、織斑春輝よ。我らの仲間に大怪我させた罪は重いぞ……!」
鬼崎「夏煉を殺そうとした貴方を、許す訳にはいきませんね……!」
薫「お前、ブッ潰すけど良いよね?答えは聞かないけどさ!」
三人はそれぞれゲネシスドライバー、隷汽ベルト、煉王ベルトを腰に付けた。
『イーヴィルエナジー』
『ロック・オン』
シ・鬼・薫「「「変身」」」
『血眼!イーヴィルエナジーアームズ!Blood Eyes!Blood Eyes!D-D-D-Deadly Souls!』
『Phantom Form』
『Dragon Form』
三人は赤零、隷汽、煉王に変身した。さらにここにヘレナも加わる。
シュラ「血の海に溺れるがいい……!」
鬼崎「さあ、饗宴の幕開けと行こうじゃないか……!」
薫「細かい事はどうでもいい。今だけは……怒りのままに刃を振るう!」
夏煉「貴方の命……焼き尽くす!」
一方千冬は、牙也を背負って学園に戻ってきた。そしてすぐに医務室に駆け込み、治療を行った。その結果、手術が必要となり、牙也はある程度の治療を行った後、すぐに大病院へ搬送された。連絡を受けた箒達も、慌てて病院に駆け込んだ。
箒「千冬さん!牙也は!?」
千冬「今手術が行われてる。医者曰く、出血が酷かったから予断を許さない状況らしい……」
セシリア「そ、そんな……!」
ラウラ「教官、牙也を斬った奴は何処に?」
千冬「シュラが捕獲に向かっている。私は牙也の治療の為に一旦戻ってきたのだ」
鈴「牙也は……大丈夫よね……?死なないよね……?」
シャルロット「だ、駄目だよ、そんな事考えちゃ!僕達が牙也さんの無事を祈らないでどうするのさ!?」
千冬「そうだ、だが私達には待つ事しか出来ん。願うんだ、牙也が無事に戻ってくる事を」
千冬達は無言で手術室を見つめていたーー。
三人称side end
多分次回が最終回ですね。最後までお楽しみ下さい!