IS×仮面ライダー鎧武 紫の世捨て人(完結)   作:神羅の霊廟

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 コラボ第8話です。

 後二話入れるかな……話の量的に。



コラボ3 果実ノ勇士ト煉獄ノ使徒(8)

 

 三人称side

 

 千冬・薫ペア

 

 千冬「…………ふむ、ヒガンバライナーのセンサーにも引っ掛からないな」

 千冬はヒガンバライナーを右へ左へ操縦する。木々が入り交じった森の中を、縦横無尽に走り抜けていく。

 薫「ち、ちょっとお姉さん、もう少しスピード落とせませんか…………?」ウップ

 一方の薫は、千冬の荒っぽい操縦に振り回されて乗り物酔いを起こしていた。

 千冬「なんだ、情けない。この程度で弱音を吐くとは情けないぞ」

 薫「お姉さんと一緒にしないで下さいよ……」ウップ

 千冬「はぁ……仕方がない。一旦休むとしよう」ヤレヤレ

 千冬は一旦ヒガンバライナーをその場に止めた。

 薫「はぁぁぁぁ…………やっと解放されたぁぁぁぁ…………」グデーン

 薫はふらふらとヒガンバライナーから降りて、近くの木に寄りかかった。魂が抜けかけている状態だ。

 千冬は一旦ヒガンバライナーを元のロックシードの状態に戻し、同じように木に寄りかかった。

 薫「ところでさぁ、お姉さん。お姉さんの弟さんって、どんな人なの?」

 千冬「ん?それはどっちの事だ?」

 薫「えーっとね、あの愚か者じゃない方の弟さん」

 千冬「一夏の事か……そうだな、一言で言うなら《努力家》とか《優男》とかだな。私や春輝が優秀であった一方で、一夏は人並みの能力であったからな、周りからの期待を一心に受けていたんだ。だから、一夏は必死になって努力を重ねていた。私に、春輝に追い付く為に」

 そこまで言って、千冬は空を見上げた。

 千冬「だが、周りはそれを認めなかった。私や春輝という光が強すぎたのだろう、世間は一夏の本質に目を向けなかった。それどころか、一層一夏に期待を寄せるようになった。『ブリュンヒルデの弟なのだから、これくらい出来て当然』とか、『神童の弟に出来たのだから、その兄であるお前に出来ないはずはない』とかな。だが、その期待は徐々に歪んでいき、一夏を罵倒する物に変わっていった」

 千冬はおもむろに自分の右の手首を見た。そこには、手首を斬ろうとして止めた幾つもの躊躇い傷があった。

 千冬「だが、私にはほぼ何も出来なかった。ただただ一夏の努力を誉めてあげる事しか出来なかった。私も自分の事でいっぱいいっぱいだったのでな、一夏を気にする事さえほとんど出来なかった。それが、あの悲劇を呼んだ……」

 薫「あの悲劇……?」

 

 

 

 千冬「……時が過ぎてISがスポーツとして完全に認知された頃、私はISの日本代表として出場した。決勝まで進んだ時、私の元に一本の電話が掛かってきた。それはあるテロ集団からで、『春輝を誘拐した』という旨の内容だった。私は試合を棄権してすぐに救出に向かった。途中、ドイツ軍の協力を得て場所を特定し、そこへ向かった私を待っていたのはーー」

 

 

 一旦言葉を切って、千冬は言った。

 

 

 千冬「春輝に間違われて誘拐され、腹いせに両足を切断された一夏だった……」

 薫「……!」

 千冬「その後、束が来て急いで治療を施した。だが、ISによって焼き斬られた足は、束でも治せなかった。一夏は義足を付ける事も出来ず、車椅子での生活を余儀なくされる事になったのだ……」

 薫「そんな……」

 千冬「私は嘆いたよ。大事な家族一人救えない私を。何もしてあげられなかった私を。一夏の未来を奪ってしまった私を。それなのに、一夏はーー」

 

 また一旦言葉を切って、千冬は話した。

 

 千冬「それなのに一夏は、笑って私を許した。そしてこう言った。『千冬姉は悪くない。悪いのは、周りの期待に答えられなかった俺だよ。だから、悲しまないでくれよ、千冬姉』と。その時になって、ようやく私は気付いた。一夏は、たった一人で周囲の期待を抱え込んでいたんだと。私に迷惑をかけない為に、影で必死に努力してたんだと」

 千冬は手首の躊躇い傷を見た。

 千冬「私が一夏の手を取っていたら……私が一夏をしっかり守ってあげられたなら……その後悔ばかりが私を苦しめた。何度泣き叫んだか……何度自分を殴ったか……何度死のうとしたか……だが死ねなかった。いざ手首を斬ろうとしても、斬れなかった。その度に、躊躇い傷が増えていった」スッ

 千冬は右の手首に左手を重ねた。

 千冬「そしてまた私が手首を斬ろうとした時、一夏が必死になって私を止めた。その目は涙で濡れていた。一夏は泣きながら私に言ったよ。『俺の為に何で千冬姉が苦しまなきゃなんないんだよ!?何で千冬姉が死ななきゃなんないんだよ!?止めてくれよ……!俺を置いて行かないでくれよ……!』とな」

 薫「…………ずっと苦しんでたんですね。お姉さんも、弟さんも」

 千冬「ああ、ずっと苦しんでた。一夏の友人達にも殴られたよ。『あんたが死んだら、他に誰が一夏の支えになるんだ!?』って言われてな」

 薫「愛されてたんですね、弟さんに。そしてその友人達に」

 千冬「ああ。そして今、一夏は束の元にいる。私がIS学園の教師をする事になった時、束が申し出たんだ。『いっくんの事は束さんに任せて!ちーちゃんは安心して務めを果たしてきて。これ以上、私の作ったISが愚行を犯さない為にも』とな。一夏もそれを後押しした。『千冬姉だからこそ出来る事なんだろ?俺の事は心配しないで、行ってきてくれよ。もうこれ以上、俺のような被害者は出てほしくないからな……』と言ってな」

 千冬は懐からシークヮーサーエナジーロックシードを取り出した。

 千冬「だが、やはり私は弱かった。私はまた、手をとれなかった。私の教え子を、私の手で救えなかった。結局、私は弱いままだったんだ。そんな時、私はシュラからアーマードライダーの力を受け取った。だが最初、私は躊躇ったよ、これを使う事を」

 薫「なんで?」

 千冬「……今まで弱い存在だった私が、いきなりこれ程強い力を手に入れたのだぞ?しかも下手すれば自分自身に影響が出かねない物だ。……怖かったんだよ、私は。手に入れた力に溺れてしまう事が。今までいた多くのIS操縦者がまさにそれだったんだ。ISという力に溺れ、それの本質に目を向けなくなった。私はそれが怖かったんだ」

 薫「本質、か……」

 千冬「だが、この時に私を後押ししたのも一夏だったんだ。『学園には、牙也とか箒がいるんだろ?もし力に溺れそうになったのなら、二人に止めてもらえばいいだろ。同じアーマードライダーになるって事は、二人にとっては大事な仲間になるって事なんだから、大丈夫さ』と言って、私の背中を押してくれた。嬉しかったよ、とても。そして実感したよ。家族という物が、どれだけ大事な存在なのか」

 薫「……良い弟さんじゃない。良かった、あの愚か者と同じなんじゃないかと思ってたけど、安心したよ」

 千冬「ふっ……さ、話はここまでだ。そろそろ再開するぞ」

 薫「はいはーい。でもさっきみたいな運転は勘弁してよ」

 千冬「……はぁ、分かった分かった。早く行くぞ」

 こうして二人は、捜索を再開した。

 

 

 

 シュラ・鬼崎ペア

 

 シュラと鬼崎は、ヘルヘイムの森に流れる小川のほとりを歩いていた。

 鬼崎「こんな森にも小川が……」

 シュラ「世界観が向こうとは違うとは言え、ここはインベス達を育む場所だ。川の一つや二つあってもおかしくはあるまい」

 捜索をしている途中何匹かインベスが襲ってきたが、そこは戦い慣れしている二人。蹴りだけでインベスを追い払った。

 鬼崎「そう言えばシュラさん。インベスは元はーーであったと聞いたのですが、事実ですか?」

 シュラ「ああ……ここに迷い込んで、ヘルヘイムの果実を食した結果が、このインベス達だ」

 鬼崎「そうですか……何か、悲しいですね」

 シュラ「同情した所で、戻ってくる訳ではない。それは分かっている事だろう?」

 鬼崎「まあ僕も、仕事をする中で色々見てきましたが……ここの事情には中々慣れませんよ」

 シュラ「まあそうだろう。こんなのに慣れる奴と言えば、同類か、余程の狂人だろう」

 鬼崎「……手厳しい」

 二人は引き続き小川のほとりを歩く。すると、小川の一角にインベスが大量に集まっていた。

 シュラ「……どうやらあそこはエサが大量にあるようだな」

 鬼崎「あれだけインベスが集まってる訳ですからね。どうしますか?」

 シュラ「……襲ってこぬのなら、戦う必要はあるまい」

 しかし、一匹のインベスがシュラ達に気付き、それを皮切りに他のインベスが次々とシュラ達を見た。

 鬼崎「……気付かれちゃいましたね」

 インベス達は少しずつ二人に近付いてくる。

 シュラ「……鬼崎。少し下がっていろ」スッ

 鬼崎「どうする気ですか?」

 するとシュラは、

 

 シュラ「」ズオッ

 鬼崎「っ!?その姿……!」

 

 オーバーロードとしての姿を現し、腰にぶら下げたヘルヘイムの果実をインベス達に向かって次々と放り投げた。

 

 インベス達『フシャアッ!!!』

 

 インベス達は飛んできたヘルヘイムの果実に飛び付き、次々とそれを貪り食う。

 シュラ「今だ。ここを離れるぞ」

 鬼崎「あ、はい!」

 その隙に、二人はその場を離れた。

 

 

 

 

 シュラ「ふむ……ここまで離れれば大丈夫だろう」

 鬼崎「そうですね……ですが、貴方のその姿は……?」

 小川から大分離れ、拠点である一軒家の近くまで戻り、二人は木陰で休んでいた。

 シュラ「言ったろう。あれに慣れるのは、同類か、余程の狂人だと」

 鬼崎「同類、ですか……」

 シュラ「そういう事だ。我はあれと同類。そして、あれの頂点たる者よ……」

 そう言ってシュラは人間体に戻った。

 鬼崎「初めて会ったあの時から牙也さんにそっくりとは思ってましたが……そういう事でしたか」

 シュラ「この姿にするにあたっては、牙也に呆れられたよ」

 鬼崎「それはそうでしょう……本人なんですから」

 

 

 

 『ぐああああああああっっっっ!!!!』

 シ・鬼『っ!?』

 

 

 

 突然、ヘルヘイムの森に叫び声が響いた。

 シュラ「今の声は…………牙也か!」

 鬼崎「何かあったのでしょうか……?」

 シュラ「恐らくな。急いで合流するぞ!」

 鬼崎「はい!」

 二人は声のした方へ急いだ。

 

 

 

 一方その叫び声は、千冬と薫のいる場所まで届いた。

 千冬「っ!牙也の声が……!敵襲か!?」

 薫「分かんない!でもヤバい感じがする!」

 千冬「くっ!急いで牙也の元に行くぞ!しっかり掴まれ!」

 薫「は、はいーー!!」

 千冬達もヒガンバライナーを飛ばして牙也の元へ急いだ。

 

 

 三人称side end

 

 





 さて、牙也に何があったのか……!?

 次回をお楽しみに!

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