IS×仮面ライダー鎧武 紫の世捨て人(完結) 作:神羅の霊廟
始まります!
牙也side
僕は寝ているとき、いつも同じ夢を見る。
久しぶりに家族みんな揃って、会社の一室で談笑していた。そこに届いた一報は、「ISの集団が襲って来た」というものだった。父さんは僕と妹に「逃げろ」と言い、慌てて部屋を出ていった。「僕も手伝う」と言うと、母さんは僕に「 を守れるのは、貴方だけよ。絶対に守りなさい」と諭して、父さんを追いかけていった。
妹は心配そうに僕を見つめている。そんな妹の頭をそっとなで「大丈夫」と言うと、妹の手を引いて急いで会社から逃げ出した。
僕と妹は、森の中を必死になって走っていた。その後ろからは、一機のISが追い掛けてきていた。
女「待ちなさいっ!」
牙也「待てと言われて待つ奴なんかいないよ!」
森の中を右へ左へ方向を変えながら逃げていく。しかしISを使う女も、周りの木々を避けながらこちらに迫ってくる。僕達と女との距離はほとんどない。
女「ああ、もうっ!面倒臭いわねっ!いい加減諦めなさいっ!」
そう叫ぶと、女はアサルトライフルを取りだしこちらに向けて撃ってきた。しかしそのほとんどは木々に阻まれ、こちらには跳んでこない。
牙也「よし、このまま逃げ切って――――」
??「お兄ちゃん、危ないっ!」
その叫びが聞こえて振り向いたとき、
次の瞬間、目の前は真っ赤な鮮血に覆われた。
牙也「 !しっかりしろ! !」
僕は必死になって に呼び掛けた。そして、知ってしまった。
妹は、僕を庇って撃たれて、死んでしまったのだと。
僕はそのとたんに、目の前が真っ暗になった。母さんから「貴方が守りなさい」と頼まれておきながら守れなかったこと、大切な妹を死なせてしまったこと。頭の中は、絶望に染まっていた。
そこに、先程のISを纏った女が近づいてきた。
女「ふんっ、やっと諦めたようね。それじゃあ、死になさい」
そう言って女は僕の頭にアサルトライフルを突き付けた。僕は、自分の死を悟った。
牙也「ああ、僕は死ぬのか、母さんとの約束を守れなかった愚か者のまま、死ぬのか」
と思いながら。
牙也「ごめんなさい、父さん、母さん。約束を守れない息子でごめんなさい。そして、さようなら―――」
そう心の中で謝りながら。
そして、女がアサルトライフルの引き金を―――――
引こうとした途端、僕の体は後ろに引っ張られた。振り向いて一瞬見えたのは、ジッパーの形をした裂け目であった。そして僕は、その中に飲み込まれた。
牙也side end
???side
私は今、実家の台所にて卵粥を作っている。それは自分が食べるものではない。また、家族が食べるものでもない。これは、今和室の布団で寝息をたてている少年に食べさせるものだ。
彼に会ったのは、ほんの偶然だった。剣道の大会に出場して優勝し、その結果を姉さん達家族に報告したところ、久しぶりにみんな揃って家にいる事を聞き、久々に家族に会える事を喜びながら家に帰っていた。すると、道の真ん中に何やら人だかりが見えた。覗いて見ると、なんと一人の少年が倒れており、周りの人はただ何をするわけでもなく、その様子を写真に撮っていたり、無視を決め込んだりしていた。私は慌てて駆け寄りその少年に呼び掛けた。
すると、空腹だったのかその少年のお腹から
「グキュルルル~」
という音が盛大に響いた。
そこに放置するわけにもいかず、家族に連絡してひとまずその少年を家に連れて帰って和室の布団に寝かせ、何か作っておこうかと考えて今に至る。
??「フム、これでいいかな」
私は作っていた卵粥を味見した後、様子を見るために彼が眠っている和室の方向を向いた。
??「やっほ~~~い、ほ~~きちゃ~~ん!」
目の前に世間から「天災」と呼ばれる姉、篠ノ之束が立っていた。
???side end
束side
はろはろ~~~、みんなのアイドル束さんだよ~~!
え?今どういう状況かって?しょうがないな~~、わからない人のために今の状況を教えてあげるよ。今私は――――
妹の箒ちゃんに包丁を突きつけられているのよ~~~
ガクブルガクブル
箒「一応病人がいるんですから、騒がないでください、姉さん」
束「わ、わかった、わかったからその包丁仕舞って~~~!」ガクブルガクブル
そう懇願すると、箒ちゃんはようやく包丁を片付けた。まったく、冗談が通じないねえ。
箒「本当に○りますよ?」
束「か、勘弁して~~!後ナチュラルに心読まないで!?」
そんな他愛ない会話をしていると、
??「ううん………」
かすかにうめき声が聞こえた。
私は箒ちゃんと頷きあい、卵粥の入った土鍋と器とレンゲを持って和室に向かった。
束side end
牙也side
目が覚めると、見知らぬ天井が広がっていた。寝転んだ状態で周りを見渡すと、どうやら和室のようであった。
束「やほやほ~~~!目が覚めたかな~~?」
箒「姉さん、もっと静かに入ってくれないか?はあ………すまないな、五月蝿くして」
突然向かって左側の襖が開き、二人の少女が入ってきた。最初のやけにテンションの高い少女は、白衣を纏い頭に機械でできているであろうウサミミをつけていた。彼女が動く度に、ウサミミはピコピコと動いている。その手には器とレンゲが握られている。
もう一人の少女は、長い髪をポニーテールにまとめ、鋭くとも柔和な目をしており、どこかの学校の学生服を着ていた。その手は土鍋を掴んでいる。
牙也「ここは…………」
箒「私達の家だ。お前は道端に倒れていたのだ。覚えているか?」
僕はただコクりとうなずいて答えた。
箒「そう畏まるな、気楽にしていればいい。食欲があるなら、卵粥を作ったから食べるといい。温まるぞ」
ポニーテールの少女はそう言って、土鍋を僕の近くにそっと置いた。そしてウサミミの少女が卵粥を器につぎ、レンゲと共に僕に差し出した。僕は震える手でそれを受け取り、レンゲですくって一口食べた。口にいれた途端、温かさが体をおおった。それは、世捨て人としての生活が長かったためか、久しく感じていなかった温かさであった。思わず二口、三口と次々口に運んだ。僕はいつの間にか涙を流していた。それでもその手は止まらなかった。泣きながら僕は卵粥をかきこんだ。そして僕の口からは、彼女達に対して思わずこの一言がでていた。
―――――ありがとう―――――
牙也side end
ひとまずこんなところで。
オリジナルロックシードなどは次回辺り出そうかな………
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