IS×仮面ライダー鎧武 紫の世捨て人(完結)   作:神羅の霊廟

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 最新話です!

 VTシステムの話はひとまずここまで。福音の話は現在構成中の為、投稿が遅くなります。その代わり、番外編をいくつか先に投稿しますので、楽しみにお待ちください!

 それでは、どうぞ!





第22話 届イタ言葉ト映ッタ記憶

 

 

 三人称side

 

 ラウラ(…………っ、ここは、何処だ?)

 あの会議が終わって数時間は経たない頃、ラウラは目を覚ました。最初に見えたのは、何処かの部屋の天井。そして右隣にあるベッドを見ると、シャルロットが眠っていた。

 ラウラ(……確か私は、タッグトーナメントでシャルロットごと織斑春輝に攻撃され、その後………………)

 千冬「目が覚めたか、ラウラ」

 その声に反対を見ると、千冬が心配そうに椅子に座っていた。

 ラウラ「…………き、教官…………」

 千冬「ここでは………………まあ良い。何があったか思い出せるか?」

 ラウラはコクリと頷いた。

 千冬「お前のISには、VTシステムが積まれていた。それが、今回の騒ぎを引き起こした。VTシステムについては、分かるな?」

 ラウラ「はい、通称『ヴァルキリー・トレース・システム』…………私が、強さを望んだから……」

 千冬「うむ。だが、問題はその後だ」

 ラウラ「その後、ですか?」

 千冬「……お前の体には、何故かロックシードが埋め込まれていた。それが、お前が強さを望んだことに反応し、VTシステムを更に暴走させた」

 ラウラ「!?」

 ラウラは愕然とした。自分の体にロックシードが埋め込まれていた事にも驚いたが、自分が強さを望んだことでそれが反応し、状況を悪化させてしまったのだから尚更だ。

 千冬「心配するな。お前に埋め込まれていたロックシードは、既に取り出してある。VTシステムも然りだ。ただ暫くは上手く動けないから、ここで寝泊まりになるがな」

 ラウラ「そうですか……シャルロットは、大丈夫なのですか?」

 千冬「……実はな、シャルロットにもロックシードが埋め込まれていた。それがお前の暴走に反応し、同じように暴走したのだ」

 ラウラ「な!?」

 ラウラには、にわかに信じられなかった。まさかシャルロットにもロックシードが埋め込まれていたとは、思いもしなかった。

 千冬「牙也達が素早く動いていなければ、お前達はロックシードに飲み込まれ、消滅するところだったらしい……」

 ラウラ「奴等が……」

 千冬「私は、何故何も守れないのだろうな……モンド・グロッソで優勝して、世界最強(ブリュンヒルデ)の称号を得た私が、こんなにも弱い存在だったとは……」

 ラウラ「教官……」

 千冬のその目には、うっすらと涙が浮かんでいた。

 千冬「……すまない、ラウラ。守ってやれなくて」

 千冬はおもむろにラウラに頭を下げた。

 ラウラ「そ、そんな!教官が謝るような事では…………!」

 千冬「それでもだ。私の役目は、教え子達をその体を張ってでも守ることだ。そんなことも出来ぬ私など…………!」

 千冬は知らぬ間に、両手の拳を握りしめていた。

 千冬「……ともかく、すまなかった、ラウラ。今日は、ゆっくり休め」

 千冬はそう言って、医務室を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 牙也「……なんだ、強いじゃないか、あんたは」

 医務室を出た千冬が、その声に横を向くと、ドアの近くに牙也が腕を組んで寄りかかっていた。

 千冬「気休め等必要ない。私は――――」

 牙也「ある人が言っていた。『本当に強い者とは、己の弱さから目を背けない者。弱さを知らぬ限り、人が強くなるなどあり得ない』と。あんたは、己の弱さに気づいた。あんたはまだ強くなれる」

 千冬「牙也……」

 牙也「あんたは以前、一夏を守れなかった。それは、あんたが『心の弱さ』に気づいていなかったからだ。ただただ強さを求めていたからだ。だが、今のあんたは違う。己の弱さと向き合い、そして変わろうとしている。そんな人が、逆に弱くなるなんてあり得ないさ」ナデナデ

 そう言うと、牙也は千冬の頭を軽く撫でた。

 千冬「な、な、な、なっ!?」ボフンッ

 突然の牙也の行動に、千冬は顔を真っ赤にして狼狽えた。

 牙也「ククッ、やっぱあんた、面白い人だな。これからが楽しみだ」

 千冬「~~~~~~~~~ッ!」

 千冬は猛ダッシュでその場を後にした。

 牙也「……意外と脳内ピンク色なのかな?」

 牙也は不思議そうにそう言って、医務室のドアをノックした。

 

 

 

 三人称side end

 

 

 

 

 

 

 

 

 ラウラside

 

 私は、さっきまでの教官の悲しそうな顔を思い出していた。やはり、まだ織斑一夏の事を引き摺っているようだった。

 今まで私が見てきた教官は、あんな悲しい顔など絶対に見せなかった。私達の教官として、尊大に振る舞ってきた。それが、己が抱える悲しみを隠すための仮面だと気づいたのは、教官の家族について何となく調べてみたときだ。教官の弟の一人――織斑一夏――が、第2回モンド・グロッソの時に誘拐され、両足を切断された事は、私も捜索に加わっていたから知っていた。だが、調べてみて分かったのは、それ以前の織斑一夏を世間がどう見ていたかだ。

 織斑一夏は、優秀であった教官や下の弟と常に比べられ、常に低く評価されていた。曰く「織斑家の恥」、曰く「出来損ない」、曰く「不良品」など。追い付くために行ってきた努力も、ろくに見てもらえなかったようだった。私は、彼に――織斑一夏に共感を覚えた。私も、『同じ』だったからだ。

 私は『遺伝子強化試験体(試験管ベビー)』だ。生体兵器としてあらゆる兵器の使用法や戦略、体術などを習得し、いずれも良い成績を修めた。しかし、私への風向きが変わったのは、ISが世に普及した時。IS適合性向上の為に行われた『ヴォーダン・オージェ』の失敗の影響で、私は今まで良かった成績を大きく下げ、周囲から『出来損ない』の烙印を押された。

 私と織斑一夏は、そっくりなのだ。形は違えど、周りからのバッシングをずっとその身に受けていた。だから、私は織斑一夏に共感を覚え、織斑春輝には怒りとも言える感情を持った。生まれつき素晴らしい能力を持った人間が優遇され、逆に必死になって努力を重ねてきた人間が不遇な扱いを受けることに、憤っていた。

 今思えば、その怒りが、私が力を欲する要因だったのかもしれない。何時からだろうか、私が力を欲する理由を忘れてしまったのは――――――。

 

 シャルロット「う、ううん……」

 「!」

 隣のベッドを見ると、シャルロット・デュノアが目を覚ましたようだった。

 「シャルロット、大丈夫か?」

 シャルロット「……ラ、……ラウラ…………?」

 意識はまだおぼろげだが、私が誰かは分かるようだ。

 シャルロット「………………ここは?」

 「医務室だ。あの後、私達はここに運ばれた」

 シャルロット「そう……」

 

 コンコンコン――――――

 

 「…………誰だ?」

 

 牙也『紫野だ。入って良いか?』

 

 「……ああ」

 

 ガチャッ、キイ――――――

 

 

 牙也「よう、黒兎と金髪貴公子殿」

 

 

 

 ラウラside end

 

 

 

 

 三人称side

 

 牙也は医務室に入り、ラウラのベッドの近くにあった椅子に座った。

 牙也「シャルロットも、目が覚めたみたいだな」

 シャルロット「うん。ありがとう、僕達を助けてくれて」

 牙也「礼はいらねえよ、当然の事をしたまでだ」 

 そう言って、牙也は何処からかスポーツドリンクを二本取り出して机に置いた。

 牙也「……何があったかは、聞いたか?」

 ラウラ「ああ、教官が話してくれた。シャルロットはまだ起きてなかったから、話していない」

 シャルロット「アリーナで気絶してからの記憶がないんだよね……何があったの?」

 牙也「ああ、実はな――ー―」

 牙也はアリーナで起こった事の全てを話した。

 牙也「――――と、言うことがあった」

 シャルロット「……僕達の体に、ロックシードが……」

 シャルロットは自分の胸の辺りで、ギュッと拳を握った。

 牙也「ロックシード自体は既に二人から取り除いたから、もうあんなことは起きない。けど、二人ともしばらくロックシードの副作用で上手く動けないから、覚悟しとけよ」

 ラウラ「そのようだな、今も上手く体を動かせない。いくら体を鍛えていても、こればかりはどうしようもないな」

 ラウラはそう言いつつ、手でグーやパーを示していたが、その動きはぎこちなかった。

 

 牙也「突然だがラウラ。俺がお前に言った言葉、覚えてるか?」

 ラウラ「……ああ。『力が欲しければ、力を欲するな』だったな。今回の騒ぎで、どれだけ私が愚かだったかよく分かったよ……」

 牙也「はっきりと理解してくれたようだな」

 牙也は更に続けた。

 

 

 

 牙也「力を持つってのは、確かに生きるためには必要なことだ。でも、人一人が持てる力にはどうしても限界がある。人は、その限界を超えることで更に強くなる。だが、更に多くの力を一気に身に付けようとすると、やがて体がその力を抑えきれなくなる。例を挙げるなら、鍋だ。鍋に入れられる水の量は限界がある。限界以上に水を入れると、溢れてしまう。それと同じだ。欲張って多くの物を入れようとすると、入りきらずに溢れたり、落ちたりしてしまう。今回は、必要以上に求めた為に溢れた力に、ラウラ自身が押し潰されてしまったから起きたことだ」

 

 

 

 シャ・ラ「「…………………………………………………………」」

 二人は牙也の話を黙って聞いていた。

 牙也「日本の言葉に、『過ぎたるはなお及ばざるが如し』ってのがある。これは、物事を行う時は、その量が多すぎてはいけない、逆に少なすぎてもいけない、何事もちょうど良い量で行うのが良いって意味だ。ラウラの場合は、量が多すぎた。その結果は、言うまでもあるまい」

 牙也はそこまで言って、懐からブルーベリーロックシードを出して机に置いた。

 牙也「このアーマードライダーの力は、俺にとって―――いや、今生きている全ての人間にとってあまりにも大きすぎる力だ。しかし、俺はこれを難なく使いこなしている。何故だと思う?」

 シャルロット「……自分で調整しているから?それを充分に使いこなすために自分の力をコントロールしているから?」

 牙也「正解だ、シャルロット。使う力が大きいなら自分の力を抑え、反対に小さいなら自分の力を存分に引き出す。人間なら、誰でも普通に出来て当然で、しかし無意識に行っている動作。強大な力を使う奴ってのは、大抵そうして実力を100%発揮するんだ。それは、ISもアーマードライダーも同じこと。『兵器』とも見てとれる物を使う時は、どれだけ全力を出したとしても、どうしても人は無意識にストッパーをかけたり外したりする。出来ない奴は、まだその力、もしくは自分自身を信じきれていないか、ただの馬鹿かのどちらかだ」

 牙也はブルーベリーロックシードをしまって立ち上がり、医務室のドアへと歩いていった。

 牙也「ラウラ、軍人のお前には分かるだろう、ISやアーマードライダーという『兵器』を使う意味が」

 ドアに手をかけた時、牙也は思い出したように言った。

 

 

 

 牙也「『兵器』を使うということは、『人殺し』にもなるって事だ。例え口では殺さないと言っても、一つ間違えればその瞬間犯罪者だ。二人とも、早く力のコントロールを上手に出来るようになっとけよ」

 

 

 牙也はそう言って、医務室を出ていった。

 

 

 

 三人称side end

 

 

 

 

 

 

 シャルロットside

 

 牙也さんが医務室から出ていき、暫くの間医務室は静寂に包まれた。僕は彼が言っていた言葉を思い返していた。

 (『力が欲しければ、力を欲するな』………………あの言葉、やっぱり何処かで―――――あ、あの時だ………………)

 僕の実家であるデュノア社は、IS産業では世界シェア第3位の会社だ。その分、下請けの会社もたくさんあった。その中でも、たった2年だったけど会社の下請けとして会社に貢献してくれた会社があった。僕が当時まだ幼かったこともあって会社の名前は覚えてないけど、そこの社長さんが実家を訪れたことがあった。その時に、僕はその社長さんと話をした。そこで社長さんが言っていた言葉に、彼の言葉はよく似ていた。

 

 

 

 『力は一つ間違えれば暴力になる。力は、例えどれだけ欲しくても、欲してはいけないんだ』

 

 

 

 ずっと引っ掛かっていたけど、あの時の言葉だったんだ。あの時の言葉にそっくりだったんだ。

 (…………………………ありがとう…………………………)

僕は、無意識に牙也さんとその社長さんに、心の中でお礼の言葉を言った。

 

 

 

 

 シャルロットside end

 

 

 

 

 

 三人称side

 

 その日の夜。千冬は屋上で月を見ていた。

 千冬(……また、手放してしまったか……手を伸ばせば、ちゃんと届く距離だったにも関わらず……)

 千冬は、己の未熟さを嘆いていた。どれだけ力を持っても、きちんと発揮出来なければただの宝の持ち腐れ。無意味なものになる。

 千冬(……もう、手放したくない……もう、同じ過ちを繰り返すのは、嫌だ。だが、私には……)

 シュラ『苦しんでいるようだな、織斑千冬』

 千冬「!?」

 千冬が後ろを向くと、そこにはクラックが開いており、中からシュラが出てきた。

 千冬「オーバーロード・シュラ…………何の用だ?」

 シュラ「……お前の覚悟を問いに来た……お前は何故、力を欲するのか……?」

 対して千冬は、少し考えて答えた。

 

 

 

 千冬「……守りたい友がいる……守りたい仲間がいる……守りたい家族がいる……私は、私の手が届く範囲の人々を守りたい……。だが、私には――」

 

 

 シュラ「力がない、か?確かにな。今までずっと、無意味な力しかお前は持たなかったからな……」

 シュラはそう言って、懐から何かを取り出した。

 シュラ「お前の覚悟、よく分かった。己の弱さを知ったお前なら、これを渡しても良いかもしれん……」

 シュラは、手に持った何かを千冬に差し出した。

 それは――――――

 

 

 

 

 

 

 

 ゲネシスドライバーと、表面に黄緑色が塗られたエナジーロックシードだった。

 

 

 

 

 

 

 『シークヮーサーエナジー』

 

 

 

 

 三人称side end

 

 

 

 






 言い忘れてましたが、番外編は牙也を始めとした登場キャラのとある一日を書きたいな…………と考えています。とは言え、上手く書けるかは心配なところ…………拙い文章になったら、ごめんなさい!
 では、また次回!

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