IS×仮面ライダー鎧武 紫の世捨て人(完結)   作:神羅の霊廟

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後編その5


オレ×ワレ×ワタシのラストステージ20XX(5)

 箒「……?」

 ??「……バ、馬鹿ナ!何故アノ一撃ヲ受ケテ無傷ナノダ!?ソレドコロカ、傷ガ癒エテイルナドト……!」

 

 必殺技を放ったサタンも、その様子を目の前で見ていた者達も、そして当の箒本人でさえも、何が起きたのか理解出来ていなかった。箒と彼女の背後の大木は、突如出現した巨大なバリアによって守られ、更に箒がサタンから受けていた諸々の傷もそのほとんどが回復していた。

 

 束「ほ、箒ちゃん……?い、生きてるん、だよね……?」

 

 涙目であった束がそう問いかける。箒はまだ状況を理解出来ていないのか、右手をサタンに向けた状態で首を軽く縦に振るしかなかった。

 

 ??「……クッ、ナラバ再ビ消スマデ!!」

 

 《ヘルヘイムオーレ!》

 

 サタンが再びドライバーを操作して必殺技を放った。しかしその必殺技はまたも出現したバリアに阻まれた。そして箒が右手を降ろすと、バリアは一瞬で消えていった。

 

 箒「この力は、牙也と同じ……?私にも使えたのか……?いや、この土壇場で使えるようになったというのか……?」

 

 どうやらバリアは、箒が無意識に張った物であった。そしてその力に、箒だけは覚えがあった。かつてコウガネとの最終決戦の際、牙也がコウガネが呼び出した炎の馬の攻撃を防御する際に張ったバリアとその性能が似ているのだ。

 

 箒「……まさか」

 

 と、箒が何かに気づいたのか後ろの大木に向き直る。そして右手で大木に触れた。すると大木は淡い光を一瞬だけ放ったかと思うと、箒に向けて何かを落とした。箒がそれをキャッチしてみると、それはサタンに奪われた筈の『零ライドウォッチ』と『レオンライドウォッチ』だった。

 

 箒「……」

 

 箒はそれを見て何を確信したのか、『零ライドウォッチ』を大木にそっと供えた。すると、供えたライドウォッチが目映く輝きだした。

 

 M「な、何が起きている……!?」

 ラウラ「きょ、教官……!これは一体……!?」

 千冬「分からん、分からんが……!」

 牙也(異)「ちょ、ちょっと何が起きてるの!?」

 束「ま、眩しいーー」

 

 そして瞬く間に、その輝きは周囲を呑み込んだーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やがて、輝きが晴れてきた。眩しさにより失われていた視界も、時間が経つ毎に開けてきた。箒はゆっくりと目を開ける。

 

 箒「……ここは、ヘルヘイムの森?」

 

 いつの間にか、箒はヘルヘイムの森にいた。いや、箒だけではない。箒が後ろをみると、学園の面々、亡国企業の面々もまたそこにいた。

 

 楯無「凄く眩しいと思ってたら……なんで私達ヘルヘイムの森に?」

 一夏「何がどうなってんだよ?」

 スコール「少なくとも、私達の予想の範疇には収まらない何かが起こったのよね……」

 本音「ああっ!?あれ見て、あれ!」

 

 本音が何に気づいたのか、岩場の方を指差す。全員がその方向を見ると、そこには巨大な玉座のようなものが置かれており、

 

 箒「っ!牙也!!」

 牙也(異)「お、俺……!?」

 

 更にその玉座には、蔦に身体のほとんどをからめとられた状態の牙也が鎮座していた。箒が急いで牙也に駆け寄り、遅れて他の面々も駆け寄った。玉座に座った牙也は、頭部と右手のみ蔦が絡んでいない状態だった。

 

 箒「牙也!!」

 束「牙君!!」

 

 箒と束が呼び掛けるが、牙也は何の反応も示さない。まだ意識が戻っていないのだ。

 

 箒「目を覚ませ、牙也!私だ、篠ノ之箒だ!分からんのか!?」

 束「牙君お願い、目を覚まして!皆待ってるんだよ、牙君の帰りを!」

 

 二人は牙也の右手を握り締め、必死になって牙也に呼び掛ける。しかし反応はない。二人はなおも牙也に眼を覚ますよう呼び掛ける。その目は涙に濡れ始めていた。

 

 箒「牙也……!お願いだ、目を覚ましてくれ……!私達はまたお前と一緒にいたいんだ……!」

 束「牙君、目を覚ましてよ……!束さん、牙君にまだ恩返しできてないんだよぉ……!」

 

 涙目になりながらも、二人は必死に牙也に起きるよう呼び掛ける。と、

 

 簪「牙也さん……!お願い、起きて……!約束、まだ果たせてない、から……!」

 本音「牙っち!起きろー!早く起きて一緒に遊ぼーよー!」

 

 簪と本音も駆け寄ってきて、牙也に呼び掛け始めた。身体を揺すったり、頭をベシベシ叩いたり、色々起こす方法を試している。

 

 一夏「……頼む、起きてくれよ牙也……!またお前の力が必要なんだ……!」

 鈴「起きなさいよ牙也!あんた箒をまた一人ぼっちにするつもり!?ふざけんじゃないわよ!とっとと起きなさいったら!」

 ラウラ「起きんか牙也!まだ貴様との勝負がついていないのだぞ!忘れたのか!?」

 セシリア「起きて下さいませ牙也さん!人形の感想、まだ聞いていませんことよ!?」

 シャルロット「起きてよ牙也さん!ISの武装談義、まだ続きがあるんでしょ!?僕まだ聞き足りないよ!」

 

 いや、簪や本音ばかりではない。一夏達もその場から牙也に向けて起きるよう呼び掛け始めた。

 

 千冬「起きろ牙也!皆がお前の帰りを待っているぞ!」

 スコール「起きなさい坊や!まだ貴方の助けが必要なのよ!」

 真耶「起きて下さい牙也君!起きてまた私のお仕事手伝って下さい!お願いですから!」

 M「私事混じっているぞ貴様……さっさと起きろ、雷牙也!私との勝負もまだ途中だっただろうが!」

 オータム「私事混じって当然だろ!起きろよ牙也!アタシとゲームやる約束だったろ!」

 ザック「起きろよコラァ!起きてまた一緒に仕事しようぜ!なぁ!」

 楯無「起きなさい、牙也君!簪ちゃんをこれ以上泣かせないでよぉ!」

 虚「起きて下さい牙也さん!簪お嬢様達の為、ここにいる皆さんの為にも!出来るだけ早く、早く!」

 

 千冬やスコール達もそれぞれが声を張り上げて、牙也に呼び掛け続ける。

 

 『起きて下さい、雷さん!!』

 『起きろー!』

 『起きろ牙也さーん!』

 

 それにつられて、他の面々も声を張り上げ始める。その中には牙也(異)の声も混じっていた。それは合唱のようにヘルヘイムの森に響き渡った。たとえ声が枯れようと、彼ら彼女らは呼び掛け続ける。牙也が眼を覚ます事を信じて。

 

 

 

 

 

 

 箒「起きるんだ、牙也ッ!私達は、お前が目覚める事を心から信じているぞ!!」

 

 

 

 

 

 箒のその一言がヘルヘイムの森に響き渡ったその時、眠っている状態の牙也の全身が目映く輝きだした。突然の輝きに、牙也の近くにいた箒達四人が怯んで玉座から落ちそうになった。なんとか態勢を立て直し、四人は一旦玉座から降りる。そして全員が牙也に釘付けになる。と、牙也の身体に絡んでいた蔦が、意思を持ったかのように動き始め、牙也の拘束を解き始めた。

 

 ギリア「な、何が起きているのでしょうか……?」

 

 ギリアの疑問を他所に、蔦はやがて全て牙也の身体から離れた。すると、牙也の輝きは更に増し始めた。

 

 箒「帰ってこい、牙也ッ!!」

 

 箒の叫びと共に、その輝きは再びその場の全員を呑み込んだーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 箒「はっ!?」

 

 次に意識が覚醒すると、箒達は皆学園へと戻ってきていた。時計を見ると、輝きに呑み込まれてからほとんど時間は経っていないようだった。

 

 ??「何ダ、今ノハ……!?貴様等、一体何ヲシタ!?」

 

 唯一サタンだけは状況が呑み込めず困惑してるようだった。箒達は決意に満ちた表情をしてサタンに向き直る。

 

 ??「クッ、貴様等ァァァァ……ソンナ目デ俺ヲ見テンジャネェヨ!!」

 

 サタンはそう叫んで薙刀を振るい、エネルギーの刃を箒に向けて飛ばしてきた。

 

 束「箒ちゃん!」

 

 束の声に箒がそれを右に避けようとすると、突如左手を掴まれて引っ張られ、無理やり左に避けさせられた。刃はさっき箒が避けようとした右方向へ飛んでいき、そのまま空中へ飛んでいった。そして箒は何者かに左腕で身体を支えられている状態からその人物の顔を見た。箒の顔からは、涙が止めどなく流れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 箒「牙也ッ!!」

 

 

 

 

 牙也「帰ってきたぜ、皆ァ!!」

 

 

 

 

 

 

 漆黒の袴に紺の軽装の鎧、そして右目の眼帯ーーそこには、人々の絆によって生まれた一人の名軍師が、大事な家族を守るように悠然と立っていた。

 

 『牙也(さん)!』

 『牙君(っち)!』

 『雷さん!』

 

 皆の呼び掛けに、牙也は右手に持った羽扇を高く掲げて答える。そして皆の声援は更に大きくなった。牙也は箒を立たせると、箒の額に自身の額をコツンと合わせた。

 

 牙也「必死になって頑張ってくれたんだな、ありがとう。そしてーーただいま、箒」

 箒「お帰り、なさい……!牙也、会いたかった……!」

 

 箒は感極まってまた泣き出し、牙也に抱きついた。まるでこの二年間の空白を埋めるように、箒は牙也の体温を感じ取っていた。そして牙也もまた箒を抱き締め返す。その目には、喜びの涙が浮かんでいた。

 

 

 

 

 ??「フザケルナ……フザケルナフザケルナフザケルナァッ!!」

 

 その声に、牙也達は我に帰った。見るとサタンが怒りに満ちた声を上げながら牙也を睨んでいた。

 

 ??「コンナ事アリ得ルモノカ!雷牙也、貴様ハ私ガ始末シタ筈ダ!黄金ノ果実ノ力ヲ全テ奪ワレタ貴様ガ、何故甦ル事ガデキタ!?」

 

 サタンは納得いかないのか大声で喚き散らす。すると、

 

 ??「当然だ。そいつが甦る事が出来たのは、至極当然の事象だ」

 

 その声にサタンが振り向くと、そこには首に二眼トイカメラを提げた青年ーー『仮面ライダーディケイド』門矢士がいた。

 

 ??「何ダト!?」

 士「そいつは自らの身に危険が及んだ時の為に、黄金の果実のごく一部を種の形にして残していたんだ。そいつは黄金の果実そのもの、果実の一部でも残っていれば、そこから時間を掛けて復活するのも不可能ではない、と言う事だ」

 ??「ソンナ事ガアッテタマルカ!」

 士「別に信じようと信じまいとお前の勝手だ。だがな……こいつらはこの二年間、ずっと待ち続けていた。こいつが復活する事を信じて」

 ??「……何ガ言イタイ?」

 士「『信じる』という行為はとても危険なものだ……信じていた奴に突然裏切られて絶望に落とされたり、信じていたもの全てが嘘っぱちだったり……大抵ろくなもんじゃない。簡単に踏みにじられたり、ポイ捨てされたりもする」

 

 そこまで言って、士は箒達に目を向けた。

 

 士「だがあいつらは、それでも愚直に信じ続けた。あいつらは、こいつが戻ってくる事を信じ続け、またこいつも皆がーー仲間や家族が自分を助けに来てくれる事を信じていた。こいつらの絆は何よりも堅く、何よりも暖かい……お前はその絆を、土足で、平気で踏みにじった……お前はこいつにはなれない。所詮お前は、ただの愚か者だ!」

 ??「フン、怪物ト人ノ絆ナド、所詮ハスグ破レルダケノ偽物ダ、偽善ダ!ソコニ何ノ意味ガアル!?」

 

 サタンが反論すると、牙也と箒が進み出て言った。

 

 箒「偽物だと?意味がないだと……!?貴様は何も分かっていない!」

 牙也「偽物だから何だよ?意味がないから何だよ?だからって、怪物と人が絆を紡いじゃいけない理由にはならねぇだろ」

 ??「ナラバ雷牙也!何故貴様ハ絆ナドト言ウ偽善二シガミツク!?」

 牙也「簡単だよ……それが、人だからだ!!」

 

 牙也の剣幕に、サタンは思わずたじろぐ。

 

 牙也「人は誰しも、一人で生きていく事は出来ない。誰かと繋がり、誰かと支え合い、誰かと絆を結ばなけりゃ、生きていくなんて不可能なんだ……全てを失ったあの日から、俺はずっと一人ぼっちだった。だから俺は、生きる為に人と絆を結ぶ事を選んだ。そして出会ったんだ……俺を信じて背中を押してくれる、大事な仲間や、家族に」

 箒「牙也……」

 

 牙也は後ろを振り返り、そこにいる学園の皆を、亡国企業の皆を見た。そして持った羽扇を掲げると、皆一様に武器を掲げたり「頑張ってー!」等と声援を送ったり、様々な反応を示した。牙也はそれに笑顔で応えると、再びサタンを見た。

 

 牙也「俺はこれからも、この絆を信じ続ける。そして戦い続ける……たとえ世界の全てを敵に回しても……俺は、この絆を守り続ける。お前ごときに、俺が必死になってチマチマ積み上げてきた絆の重みが分かるもんかよ!」

 ??「貴様ァ……偽善ヲ語ル怪物ノ癖ニィ!!」

 士「あぁそうさ、所詮は偽善だ。けど、偽善と知ってなおもこいつを信じる……それもまた、悪くないもんだ。そうだろ?」

 

 士の問い掛けに、箒達は笑顔で頷く。

 

 ??「コノ野郎ガ、偉ソウニ説教垂レヤガッテ……!何様ノツモリダァ!?」

 士「通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ……変身!!」

 

 《KAMEN RIDE DECADE》

 

 士は腰のライドブッカーからディケイドのカードを抜き、『ネオディケイドライバー』にセットして『仮面ライダーディケイド』に変身した。

 

 牙也「お前に真の零を見せてやる。変身!」

 

 《ブルーベリー》

 

 《ロック・オン》

 

 《ソイヤッ!ブルーベリーアームズ!侵食者・HELL・STAGE!》

 

 牙也もまた戦極ドライバーを腰につけ、ブルーベリーロックシードを解錠。ドライバーにロックして『仮面ライダー零』に変身した。

 

 牙也「久々の零だ。派手にやらせてもらうぜ」

 ??「嘗メルナァ!!」

 

 サタンが薙刀を高く掲げると、周囲にクラックが開き、大量のインベスが溢れ出てきた。そして二人の仮面ライダーを大軍で囲む。二人の仮面ライダーは背中合わせとなって迎撃に備えた。

 

 士「行くぞ。帰る場所、意地でも守りたいんだろ?」

 牙也「ディケイド、訂正しとけ……『帰る場所』だけじゃない。俺は……俺にとって大事な『絆』と『家族』を守りたいんだ!」

 

 そう言って牙也は薙刀『紫炎』を構える。と、ライドブッカーから三枚のブランクカードが飛び出してきた。士がそれらを掴むと、ブランクカードは一瞬にして色を持ち、三枚のカードに変化した。一枚は零が写ったカード、一枚は零の象徴たる鬼に似たエンブレムが写ったカード、一枚は半分が零、もう半分が巨大な『火縄冥冥DJ銃』が写ったカードであった。

 

 士「あぁ……ならやるか!」

 

 《FINAL FORM RIDE Z-Z-Z-ZERO》

 

 士「ちょっとくすぐったいぞ」

 牙也「ん?おう」

 

 士は三枚のカードの内、零と火縄冥冥DJ銃が写ったカードをドライバーにセットした。そして牙也の後ろに立ち、その背中を開くような動作をした。すると牙也の身体が変形し始めた。体の構造を無視したかのような変形の後、士の目の前には火縄冥冥DJ銃そっくりの『零式火縄冥冥砲』が佇んでいた。士はそれを持ち上げると、空に向けて一発弾を放った。放たれた弾は空中で爆ぜると、雨に如く降り注ぎインベスを次々と葬った。しかしそれでも三分の一が生き残った。それを確認し、士は冥冥砲を持った状態で零のエンブレムが写ったカードを取り出してドライバーにセットした。

 

 《FINAL ATTACK RIDE Z-Z-Z-ZERO》

 

 そして冥冥砲を残りのインベスとサタンに向けた。

 

 ??「グッ……!ドケッ、ドケェェェェェ!!」

 

 サタンはこれが危険と判断したのかインベスを盾にこれを避け、更にそのまま逃げ出そうとした。しかしそうは問屋がおろさない。士がサタンに向けた冥冥砲を構えてトリガーを引くと、漆黒に染まった膨大なエネルギーの奔流が銃口から放たれ、残りのインベスを一瞬にして呑み込み、大爆発を引き起こした。そしてそのまま奔流は逃げようとしたサタンをも呑み込んでいった。

 

 ??「ヤ、止メロ!コッチニ来ルナーーグワァァァァァァァ!!」

 

 エネルギーの奔流が直撃し、サタンは大きく吹き飛ばされ変身も解除された。サタンに変身していたフードの人物が地面に転がる。

 

 士「……ほれ」

 

 士が冥冥砲を放り投げると、冥冥砲は変形して再び零に戻った。牙也は優雅に着地し、「やれやれ」と頭を掻く。

 

 牙也「地味に痛かったぞ、今の」

 士「俺に文句を言うな。それよりあれだ」

 

 士が指差した先には、フードの人物がいた。痛みを堪えてフラフラと立ち上がるところだった。

 

 士「あいつをどうするつもりだ?」

 牙也「あぁ……後は俺の手でケリをつける。あんたは手出しするなよ」

 

 そう言うと牙也は変身を解除してフードの人物に歩み寄っていった。そして倒れていたフードの人物の首根っこを掴むと、そのフードを強引に取っ払った。

 

 『え!?』

 

 フードの人物の素顔を見て、その場にいた牙也と士以外の面々は驚きを隠せなかった。何故ならフードに隠されていた素顔はーー

 

 

 

 

 

 

 

 牙也「気分はどうだ?『異世界の俺』」

 

 

 牙也(サ)「……ッ」

 

 

 

 

 

 こちらもまた、牙也であったからだ。つまり今ここには、『仮面ライダー零としての牙也』『アナザー零に変身させられ操られていた(と思われる)牙也』『仮面ライダーサタンに変身した牙也』と、三人の牙也がいる事になる。

 

 束「え?え?え?なんで?牙君が三人……?」

 千冬「……これはまさか、そう言う事なのか?」

 士「おい、どういう事だ?」

 

 困惑の表情が皆隠せない中、牙也(零)は話を続ける。

 

 牙也「お前は所謂、『別の未来から来た』俺だ。そっちでは俺は、仮面ライダー零の力を手に入れることが出来ず死にかけていたが、何の因果か生き残る事が出来た。そして何らかの方法で別の未来を知ったお前は、アナザーウォッチの力を使い自分が仮面ライダー零になろうと考えたんだろ?が……ここで一つ問題が起こった」

 ザック「問題って何だよ?」

 牙也「俺の予想なんだが……アナザー零のウォッチが、こいつと適合しなかったんだろ。仮面ライダー零の力が奪えても、自分が使えないんじゃ宝の持ち腐れ。そこでお前は、また別の未来からある人物を拐ってきた。それがあそこにいる三人目の俺だ」

 

 牙也が指差した先には、困惑の表情を浮かべた牙也(異)がいた。

 

 牙也「あいつをこっちに連れてきてアナザーウォッチを使わせ、時間稼ぎさせてる間に自分は他の方法を探していた。そこで辿り着いたのが、この『仮面ライダーサタン』という訳だ。そうだろ?」

 

 牙也は地面に転がった戦極ドライバーと『ヘルヘイムロックシード』を片手で拾い上げながらそう言った。牙也(サ)は図星だったのか顔を伏せたままだ。

 

 牙也(異)「そうだ、段々思い出してきた……俺はあいつに唆されたんだ。『俺に協力してくれれば、お前に最強の力をやろう』って……!なんで俺はあの時二つ返事で了承しちまったんだろ……!」

 牙也「仕方ないさ……家族を皆殺しにされて、そんな時にやって来た甘い誘いだ、正常な判断なんてできるわけないだろ。非はあるだろうが、全てお前のせいって訳じゃない」

 牙也(異)「でも……」

 

 牙也(異)は正常な判断が出来なかった自分を心の中で責めているようだった。

 

 牙也「もう気にするな。俺もここにいる皆も、お前の事を責めるつもりはねぇよ」

 

 その言葉に牙也(異)が周囲を見ると、皆一様に首を縦に振った。牙也(異)は申し訳なさそうに顔を伏せる。

 

 牙也「さて、こっちは片付いた。後はお前だけだが……」

 

 そう言うと牙也は牙也(サ)を地面に放り捨て、更に持っていた戦極ドライバーとヘルヘイムロックシードを地面に落とすと、両足で思い切り踏み潰した。しかし、戦極ドライバーもロックシードも壊れるどころか傷一つついていない。

 

 牙也「やっぱ駄目か。となるとーー」

 

 牙也が一瞬目を反らしたその時、牙也(サ)が全力で駆け寄ってきて、戦極ドライバーとヘルヘイムロックシードを奪い返してしまった。

 

 牙也(サ)「ははははは!油断したな、これは返して貰ったぜ!今度こそお前を倒す!」

 

 牙也(サ)は勝ち誇ったような笑い声を上げ、再び戦極ドライバーを腰につけた。そしてロックシードを解錠しようとしたその時、

 

 バチッ!!

 

 牙也(サ)「ぐっ!?な、何だ!?」

 

 突如ロックシードが紫電を発生させたかと思うと、ロックシードからアナザーウォッチが二つとも弾き出された。そしてロックシードは元のブランクロックシードに戻ってしまった。

 

 牙也(サ)「な、なんで……!?」

 ??「君の野望は、俺が潰えさせたよ」

 

 その声に全員が空を見上げた。そこには、

 

 箒「ソウゴか!」

 

 タイムマジーンに乗ったソウゴとシュラがいた。

 

 

 

 

 

 

 

 


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