IS×仮面ライダー鎧武 紫の世捨て人(完結)   作:神羅の霊廟

171 / 174
後編その4


オレ×ワレ×ワタシのラストステージ20XX(4)

 ー20XX年ー

 

 

 

 曇天の空に歪みが現れると、そこから巨大な機械が現れた。ソウゴ達二人を乗せた『タイムマジーン』だ。タイムマジーンはその場で滞空し、辺りを確認するかのように周囲を見回す。

 

 ソウゴ「さぁ到着。まずは牙也君を探さないとね」

 シュラ「うむ。早く見つけねばなーーっ、何だ!?」

 

 突然タイムマジーンが大きく揺れ、二人は辺りを見回す。と、シュラが何かに気づいて空を見上げた。

 

 シュラ「これは……!ヘルヘイムの森が、目前に……!」

 

 つられてソウゴも空を見上げる。と、空にはヘルヘイムの森が上下逆さまに出現しており、段々と地上に迫ってきていた。

 

 ソウゴ「嘘でしょ、こんな事が起きてたの!?」

 シュラ「マズイ、あれを止めねばこの世界はーー」

 

 シュラがタイムマジーンから飛び出そうとした時、ある方向から金色と漆黒の波動が大波の如く押し寄せてきて、空全体を覆い尽くした。あまりの眩しさにソウゴもシュラも目を背ける。二人が乗るタイムマジーンも、波動によって大きく揺れる。

 

 ソウゴ「うわぁぁぁぁ!!な、何が……!?」

 シュラ「分からん、分からんが……!」

 

 そして波動が晴れると、空に現れた筈のヘルヘイムの森は綺麗に消え去っていた。

 

 ソウゴ「一体何が起きたの……?」

 シュラ「……この力、まさか牙也が……?常磐ソウゴ、波動が来た方向へ向かうぞ」

 ソウゴ「分かった」

 

 ソウゴは急ぎタイムマジーンをその方向へ走らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 牙也「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

 ソウゴ達がタイムマジーンを走らせ始めた頃、ちょうどIS学園の真上にあたる空には、ロックビークル『ヒガンバライナー』に乗った牙也がいた。『仮面ライダー零 絆アームズ』に変身した牙也は、父・準也の形見である大剣を肩に背負い、ヒガンバライナーにドッカリと座り込んだ。大量に力を使ったせいか、牙也は既に疲労困憊状態だ。

 

 牙也「……や、やった……半分以上持ってかれたが、なんとか防げた……良かった……!」

 

 肩で息をしながら、牙也は安堵の表情を浮かべる。自分の役目を無事に果たす事ができた。今の牙也の脳内はそれだけだった。

 

 牙也「はぁ……はぁ……なんとか約束は果たせそうだな。さぁ、落ち着いたら帰ろう、皆が待ってる」

 ??「残念ナガラ、ソレハ叶ワヌ願イダ」

 牙也「!?」

 

 その声に牙也が振り向くと、その胸に何かが押し付けられた。すると牙也の体から青白いオーラが溢れ出てきて、押し付けられた物に吸収されていく。やがてオーラが全て吸収されると、牙也は変身が解除され膝から崩れ落ちた。何とか顔をあげると、牙也の眼前にはフード付きコートの人物がいた。その手にはアナザーウォッチが握られている。

 

 牙也「て、てめぇ……!何をしやがった……!?」

 ??「貴様二教エル必要ハ無イ。失セロ」ドカッ

 牙也「うわあっ!?」

 

 フードの人物は牙也をヒガンバライナーから蹴落とし、自身はヒガンバライナーを駆ってそれを追いかけた。蹴落とされた牙也は、木々がクッションとなって何とか怪我もなく着地したが、疲労等によってフラフラの状態だ。そこへフードの人物も降り立つ。

 

 ??「サテ、目的ハ果タシタ。後ハ貴様ヲ始末スルダケダ」

 牙也「て、てめぇ……!」

 ??「貴様ノ全テ、貰イ受ケル。今日カラ私ガ貴様ダ」

 牙也「ははは……笑わせんな……!お前は俺にはなれねぇよ……!」

 ??「減ラズ口ヲ……モウイイ、大人シクソノ首ヲ差シ出セ、敗者ヨ」

 シュラ「させぬ!」

 

 と、牙也の後方からシュラが飛び出してきて、『撃剣ラヴァアーク』を抜きフードの人物に斬りかかった。フードの人物はそれを容易く避け、一旦距離を取る。攻撃が当てられないと見たシュラは、一旦牙也に駆け寄る。

 

 牙也「シュラ!?なんで、お前は……!」

 シュラ「話は後だ!常磐ソウゴ、頼むぞ!」

 ソウゴ「任せて!」

 

 シュラが牙也を回収して後方に下がり、代わってソウゴがフードの人物の前に進み出た。

 

 ソウゴ「これ以上は、君の好きにはさせないよ!」

 ??「貴様、俺ノ邪魔ヲスル気カ……ナラバ消スマデダ!!」

 

 《ZERO》

 

 フードの人物はアナザーウォッチを起動すると、それを自身の胸に押し付けた。アナザーウォッチは体内に飲み込まれ、フードの人物の姿を変えていく。

 

 《ZERO》

 

 フードの人物は、アナザー零に変身した。

 

 牙也「な……!?零にそっくりの怪物だと……!?」

 ソウゴ「アナザーライダー誕生は止められなかったか……それでも、俺はあんたを止めなきゃいけないんだ!」

 

 《ジクウドライバー!》

 

 《ジオウ!》

 

 《グランドジオウ!》

 

 ソウゴは『ジクウドライバー』を腰に付け、『ジオウライドウォッチ』と金色の『グランドジオウライドウォッチ』を起動した。そしてそれをジクウドライバーにセット、ドライバー天面のロックを解除した。

 

 《(アークル音声)♪ (オルタリング音声)♪ ADVENT! COMPLETE! TURN UP! (音角音)♪ CHANGE BEETLE! SWORD FORM! WAKE UP! KAMEN RIDE! CYCLONE!JOKER! タカ!トラ!バッタ! 3・2・1! シャバドゥビタッチヘンシーン! ソイヤッ! DRIVE! カイガン! LEVEL UP! BEST MATCH! RIDER TIME!》

 

 音声と共にソウゴの背後に、地中から黄金の時計台と20人のライダーの石像が時計状の金の紙吹雪と共に現れた。そして石像の表層が剥がれ、20人のライダーの姿が現れる。そしてソウゴは時計の針のようなポーズを切る。

 

 

 

 

 ソウゴ「変身!!」

 

 

 

 《ライダータイム!仮面ライダージオウ!グランドタイム!クウガ!アギト!龍騎!ファイズ!ブレイド!!響鬼!カブト!電王!キバ!ディケイド!!W!オーズ!フォーゼ!ウィザード!鎧武!ドライブ!ゴースト!エグゼイド!ビルド!祝え!仮面ライダーグランドジオウ!!》

 

 

 

 ソウゴがドライバーを回転させると、20人のライダーは黄金のフレームに取り込まれ、ジオウの基本の素体に張り付き、アーマーを形成する。そしてフレーム内のライダーはそれぞれの決めポーズに定され、最後にジオウが決めポーズで定されると時計台から『ライダー』の文字が飛び出してジオウの眼にあたる場所にセットされた。これが『仮面ライダーグランドジオウ』だ。

 

 ソウゴ「さぁ……行くぞ!!」

 

 《鎧武!》

 

 ソウゴは左足中央の鎧武のフレームをタッチすると、『2013』の年代番号と共にゲートが現れ、中から『仮面ライダー鎧武 カチドキアームズ』が現れた。鎧武は『火縄大橙DJ銃』を構えてアナザー零に銃撃を仕掛ける。マシンガンの如く撃ち出される弾に、アナザー零は防御するので精一杯だ。

 

 ??「クッ、貴様ァ……!」

 ソウゴ「どんどん行くよ!」

 

 《龍騎!》

 

 《ブレイド!》

 

 《ディケイド!》

 

 ソウゴは更に右手首・右足中央・胸部中央のフレームをタッチし、『2002』『2004』『2009』の年代番号と共にそれぞれのゲートから『仮面ライダー龍騎』『仮面ライダーブレイド』『仮面ライダーディケイド』を呼び出した。龍騎は右手に『ドラグクロー』を付け、ブレイドは腰から『ブレイラウザー』を、ディケイドは『ライドブッカー』を抜き、アナザー零へ挑む。ドラグクローからの火炎弾、ブレイラウザーの雷を纏った斬撃、そしてライドブッカー・ガンモードの射撃がアナザー零を次々と襲う。更にそこへ鎧武も加わり、アナザー零は押されていくばかり。

 

 ??「クッ……何故ダ、何故コンナ事ガ……ッ!」

 ソウゴ「その力は君の物じゃない……その力ーー仮面ライダー零の力は、彼のーー雷牙也君の物なんだ!それを奪って歴史を改変させるなんて……!」

 ??「己ノ努力デ得タ力ヲ好キニ使ッテ何ガ悪イ!?」

 ソウゴ「君のそれは努力とは言わない!君のそれはーーただの盗品だ!!」

 ??「黙レ!!」

 

 アナザー零は激昂してソウゴに襲い掛かるが、ソウゴはいたって冷静に『サイキョーギレード』を召喚し、これを迎え撃った。青龍刀の斬撃を受け止め、振り払って斬り返し、

 

 ソウゴ「時間よ止まれっ!」

 

 更にグランドジオウの能力で一瞬だけ時間を止めて背後に回り込み、再び斬撃を繰り出す。これを行う事数回、予測不可能な攻撃にアナザー零は為す術なく追い詰められていった。

 

 ??「クッソォ……フザケタ真似ヲォォォォォォ!!」

 ソウゴ「もう時間が無いんだ……君の野望、今ここで終わらせる!」

 

 《フィニッシュタイム!グランドジオウ!》

 

 ソウゴはジオウライドウォッチとグランドジオウライドウォッチの天面スイッチを押し、ドライバーのロックを外して再び一回転させた。

 

 《オールトゥエンティ!タイムブレーク!》

 

 音声と共に、ソウゴの隣から『仮面ライダー龍騎サバイブ』が『ドラグランザー バイクモード』に乗って、アナザー零の背後から『仮面ライダー鎧武 イチゴアームズ』が、上空には『仮面ライダーブレイド ジャックフォーム』と『仮面ライダーディケイド コンプリートフォーム』がそれぞれ現れた。

 

 《ジオウサイキョー!》

 

 《覇王斬り!》

 

 ライダー出現を確認したソウゴはサイキョーギレードを操作し、トリガーを引いた。そして再び時間を止めてアナザー零に接近、サイキョーギレードで斬り上げた。抵抗の術のないアナザー零は大きく上空へ打ち上げられる。

 

 ??「ウワァァァァァ!?」

 ソウゴ「行っけぇー!」

 

 《FINAL VENT》

 

 《LIGHTNING SLASH》

 

 《FINAL ATTACK RIDE D-D-D-DECADE》

 

 《イチゴチャージ!》

 

 ソウゴの号令と共に、ドラグランザーの火炎弾と突進、ブレイラウザーの雷を纏った斬撃、ディケイドのライダーキック、鎧武のエネルギー状のイチゴクナイの雨がアナザー零を呑み込んでいく。あまりのオーバーキルな必殺技にアナザー零は耐えきる事すら許されず、

 

 ??「グワァァァァァァァ!!」

 

 終いに大爆発。そして地面に叩き付けられた。変身は解除され、アナザーウォッチが転がり落ちる。そしてウォッチは紫電と共に粉々に砕け散った。

 

 ??「グ……マダダ、マダ俺ハ……!コンナ簡単二ヤラレルナド、認メラレルカ……!」

 

 フードの人物は這いつくばりながらもその破片に手を伸ばす。しかしそれはソウゴによって静止された。

 

 ソウゴ「……もう止めようよ。これ以上戦っても、もう君と繋がる物は何もないんだ」

 ??「黙レ……!貴様二……貴様二俺ノ何ガ分カル!?」

 ソウゴ「分からないよ……俺も、そして彼らも」

 

 変身を解除したソウゴが目を向けた先には、シュラに支えられてようやく立っている牙也がいた。牙也はシュラの肩を借りてソウゴに歩み寄る。そしてソウゴを見、倒れているフードの人物を見た。

 

 牙也「……説明を頼む。突拍子過ぎて、どうにも理解が追い付かねぇんだ」

 ソウゴ「それはねーー」

 シュラ「我が説明する。今回の事、そして……さして遠くない未来で起こった出来事をな」

 

 シュラはこれまでの事を具体的に分かりやすく牙也に説明した。最初は疑心暗鬼だった牙也だが、

 

 牙也「成る程な。どうにも信じがたいが、俺の前にシュラがいる事を考えると、納得いく話だ」

 

 話を聞くにつれて納得を深めた。と、牙也は徐にフードの人物のフードを取ってその顔を覗き込んだ。そして顔を確認すると、二人に見せる事も教える事もせず、何も言わずそのフードを元に戻した。

 

 牙也「……成る程。こんな未来もあり得たのか」

 ソ・シ『?』

 

 牙也の言葉の真意を、二人は理解できなかった。と、フードの人物の体に変化が訪れた。その体が段々と灰のように崩れ落ち始めたのだ。

 

 ??「俺ノ野望ガ、貴様如キニ破ラレルトハ……ダガ忘レルナ、コレカラドウ足掻コウト『仮面ライダー零』ノ物語ハ消エル……俺ノ勝利ハ揺ルガナイ……ハハハハハ……!」

 

 そういい残し、フードの人物は灰となって消滅した。

 

 

 

 

 

 シュラ「……確かに奴の言う通りだ」

 

 フードの人物が消滅したのを見送り少し経った頃、シュラが口を開いた。

 

 シュラ「我等はアナザーライダーの誕生を止められなかった。それはつまり、これから先の物語も、それより前の物語も消える事を意味する……抗い切れなかったのか、我等は」

 ソウゴ「そうでもないよ」

 

 ソウゴのその一言に、牙也とシュラの目が釘付けになる。

 

 ソウゴ「まだそうと決まった訳じゃない。できる事はまだあるんだ、まぁ任せておいて」

 

 疑問符を浮かべる二人の事など露知らず、ソウゴは爽やかな笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 箒「アーマードライダー……!」

 

 傷付き、ボロボロになった箒が、目の前のアーマードライダーを睨み付けながら立ち上がる。腹部の出血激しく、少し動く度にプシュッと音を立てて血が飛び散る。しかしそれでも箒は戦う姿勢を崩さない。

 

 束「ほ、箒ちゃん!無茶しちゃ駄目だよ!」

 

 しかしそれを牙也(異)を抱きかかえた束が止める。

 

 箒「だ、大丈夫です……このくらい、なんとも……」

 束「大丈夫な訳ないじゃん、そんな傷で!でもなんで……!?ISには絶対防御があるから、使用者には直接ダメージは来ない筈なのに……!」

 ??「クク、我ガソノ事ヲ知ラナイトデモ思ッテイタノカ?奴等二巻キ付イタアノ蔦ニハ能力阻害効果ヲ持タセテイル。ツマリISノ絶対防御ナド無意味トイウ事ダ。マァ一撃デ死ヌトイウノモ面白クナイ故、威力ハ落トシテ撃タセタガナ」

 束「そんな……!」

 

 絶対防御が無意味。それはつまり、いつでも自分達を始末する事ができるという事だ。戦える者がいないも同然の今、その事実は絶望を加速させるには充分過ぎた。

 

 牙也(異)「う、うぅ……」

 

 とここで牙也(異)が目を覚ました。体を起こし、辺りをキョロキョロと見回す。

 

 牙也(異)「ここは……?」

 ??「フン、ヨウヤクオ目覚メカ、我ガ操リ人形ヨ」

 牙也(異)「っ!?その声、お前はあの時の……!お前、俺に何をしやがった!?」

 束「ち、ちょっと待ってよ!君、何も覚えてないの?」

 牙也(異)「覚えてないのって……どういう事ですか?それに貴方は……?」

 箒「話は後だ……!今はこいつを何とかしなければ……!」

 

 話を無理やり終わらせ、箒は再びアーマードライダーサタンを見据える。そして雨月と空裂を構えて突進した。二刀の斬撃がサタンを襲う。しかしそれをサタンは薙刀を使って涼しい顔で受け止め、薙刀の柄の部分で箒の怪我した腹部を叩いた。

 

 箒「ぐぎぁっ!?」

 ??「ホレホレ……動キガ随分ト鈍クナッタナ」

 箒「黙れ……!元はと言えば貴様のーーぐあっ!?」

 

 突然の全身への衝撃に箒は大きく吹き飛ばされた。その攻撃により、紅椿から警告のアラートが鳴る。彼女がなんとか顔をあげて衝撃が来た方向を見ると、鈴のIS武装『龍砲』がその砲身を箒に向けていた。

 

 鈴「箒、大丈夫!?」

 箒「大丈夫、だ……!この程度で、私は倒れん……!」

 ??「フン、無駄二頑丈ナ女ダナ。コレカラ死ヌトイウノニ」

 

 サタンはそう言って箒の首根っこを鷲掴みにした。そしてそのまま箒を思い切り放り投げた。箒の体は弧を描くように飛び、あの大木の前まで飛ばされ地面に叩き付けられた。その衝撃により、遂に紅椿は展開解除されてしまった。

 

 ??「ククク……サテ、ドウ始末ヲツケヨウカ?ン?」

 

 サタンは大木の根元に倒れ込んだ箒の髪を鷲掴むと、無理やり立ち上がらせた。そして満身創痍の表情をした箒の顔を覗き込む。そして何か考えたかと思うと、箒の体を大木に叩きつけた。

 

 ??「……決メタ、コノ大木ゴト消スカ。コレハ奴ガ存在シタトイウ象徴……コレガ無クナレバ、奴等ハ戦意喪失スルダロウカラナ」

 

 そしてそこから数歩下がると、手にした薙刀を構えた。

 

 束「箒ちゃん!」

 ??「煩イ奴メ、少シ黙ッテイロ」

 

 サタンは箒を助けようと駆けてきた束を蔦で縛り上げ、その場から動けなくした。同時に蔦で操っていた学園及び亡国企業の面々も同じように蔦で縛り上げた。

 

 ??「フン。サテ、ヤルカ」

 

 《ヘルヘイムオーレ!》

 

 そしてドライバーを操作して、構えた薙刀を高く振り上げた。薙刀に膨大なエネルギーが集束していく。

 

 『篠ノ之(さん)!!』

 『箒(さん)(ちゃん)!!』

 

 皆が助けようとするが、蔦に縛られ動けず、箒もまた満身創痍で逃げるどころか動く事すらできなかった。

 

 ??「オ前達ハ充分抗ッタ……イッソ一思イニ止メヲサシテヤロウ……サラバダ」

 

 哀れみの言葉と共に、サタンはその薙刀を振り下ろした。膨大なエネルギーで構成された刃が大木を背にした箒に向かっていく。

 

 箒(……せめ、て……この、大木だけは……牙也との思い出が詰まった……この、大木だけは……!)

 

 満身創痍であった箒は、最後の力を振り絞り、そのエネルギーの刃へ右手を伸ばした。その瞬間ーー

 

 

 

 

 

 

 

 束「箒ちゃーーーーーん!!」

 

 

 

 

 

 

 大爆発が、大木を襲った。爆風が大木も箒の体をも包み込み、呑み込んでいく。爆発の度に黒煙が上がり、辺りを黒く染めていく。それを見ながらサタンは薙刀を下ろし、皆を縛っていた蔦を解いて自由にさせた。

 

 一夏「ほう、き……?」

 シャルロット「そんな……」

 オータム「こんな、事……」

 

 拘束から解放された一夏達はその様子を呆然として見ていた。

 

 束「嫌だ……嫌だよ……箒ちゃんが……!嫌……嫌ァァァァァァ!!」

 

 同じように拘束から解放された束は、それを見て膝から崩れ落ち、泣きわめく事しかできなかった。

 

 ??「ハハハハハ……!コレデヤット念願ガ叶ッタゾ……!俺ガ雷牙也ダ!!俺コソガ仮面ライダー零ダ!!ハハハハハ!」

 

 サタンが高笑いしている間に、黒き爆風は段々と晴れてきた。

 

 ??「ハハハハハ、ハーッハッハッハッハーーン?」

 

 と、何か違和感を覚えたのか、サタンは高笑いを止めて大木に眼を向けた。そして爆風が完全に晴れると、

 

 

 

 

 箒「……?」

 

 

 

 

 大木と共に巨大なバリアに守られた箒が無傷の状態で立っていた。

 

 

 

 

 

 

 海東「……読み通りだね。さて」

 

 その様子を校舎の屋上から見ていた海東は、懐からタブレットのような物を取り出して何かを書き込んだ。

 

 海東「これでよし。さて、お宝も手に入ったし、帰ろうかな」

 

 タブレットをしまうと、海東は左手に数枚のライダーカードを、腰にいくつかのロックシードをぶら下げ、自身の背後にオーロラカーテンを開き、そのまま去っていった。

 

 

 

 

 『仮面ライダー零は、仲間達との絆の力によって再び甦った』

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。