IS×仮面ライダー鎧武 紫の世捨て人(完結)   作:神羅の霊廟

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 最終回ですね。読者の皆様、この世界の結末に、最後までお付き合い下さい。


最終回 新シイ世界ノ幕開ケ

 三月。

 

 あっという間に時は流れていき、季節はいつの間にやら卒業の季節を迎えた。最上級生であった虚さん達が卒業していき、来月には私達も進級する。生徒会の人員も次の世代へと代わり、既に運営を始めている。虚さんが抜けた穴である会計には、一学年全員の推薦によりセシリアが入った。楯無さんいわく、

 

 「あの子虚ちゃんより厳しすぎるわよ~!!誰なのよあの子推薦したのは~!!」

 

 との事。まぁたまに虚さんが様子を見に学園を訪れるらしいし、大して変わらないだろうな。ちなみにこの一年間で唯一空いていた副会長の椅子は、結局虚さんの推薦によって簪が座る事になった。虚さんから普段の様子をよく見張り、逐一報告するように、と言われたらしい。楯無さん、頑張れ。

 

 さて、他の皆だが、現在の様子を一人ずつ順番に説明していこうか。

 

 まずセシリア。さっきも言ったが、進級に際して生徒会会計に就任、学園の行事や部活動における活動費用の諸々を厳しくチェックしつつ、生徒会長である楯無さんを除いた代表候補生の筆頭として私達を統率する日々を送っている。それと同時に、学園で初の生徒による実技試験の担当に選ばれた。現在は入学試験の準備に駆り出され、てんてこ舞いのようだ。趣味となった人形作りは、生徒会の活動の合間を縫って継続しているとの事。

 

 次に鈴。あの戦いの後、姉さんが修理中に甲龍のISコアに劣化を見つけ、一旦休学という事で姉さんを連れて中国に帰国、現在は甲龍の修理・改造と筋トレ等に時間を費やしているらしい(授業代わりとして学園からは数日に一回纏めてプリントが送られてくる)。本人いわく、進級するころには戻ってくるとの事。

 

 次にデュノア。戦いが終わってからは、経営が傾いていた実家を立て直す為、奨学金制度で学園に通いながら、新しいフランス製の第三世代機のプラン作りに力を入れている。ラファール・リヴァイブの後釜を製造するという大事な事業の為、最近のデュノアは寝不足なのか目に隈が大量にできていた。本人は大丈夫と言っていたが、同室のボーデヴィッヒは何とかしてデュノアを休ませようと躍起になっているとか。

 

 そのボーデヴィッヒは、変わらず学園に通いながら『シュヴァルツェア・ハーゲン(通称黒ウサギ隊)』の隊長を続けている。元々日本に来る際に、黒ウサギ隊の副隊長に日本について色々教えてもらっていたのだが、最近になってそれが全て日本の漫画の受け売りである事を知り、携帯電話越しにその副隊長を叱っているのを見た。隊長も大変なんだな……

 

 簪と本音は簪が生徒会副隊長に就任したと同時に、なんと更識家を出るという驚きの行動に出た。後で本人から聞いたのだが、更識の分家としてこれから姉である楯無を補助していきたいと言っていた。あの戦いで、何か思うところがあったのだろうか。両親や楯無さんは当初は分家を立てる事に反対したが、簪が何やら「秘策」というものを使ったところ、それがあっさり了承されたらしい。何だったのだろう、簪の言っていた「秘策」とは……?

 

 千冬さんと山田先生は、変わらず学園の教員を務めている。あの戦い以来、学園の教員部隊の加入条件は一層厳しくなったそうで、あれからほぼ毎日千冬さんは隊長として、山田先生は補佐として教員部隊の指導に励んでいる。時々スコール達元亡国企業の人達もその指導に参加しており、教員部隊のレベルは代表候補生を凌ぐほどに成長していた。以前ラウラがその中の一人と手合わせしたのだが、両者共に互角の戦いを繰り広げ、最終的にラウラの辛勝に終わった。だがその戦いでAICを何度も看破されたラウラは「私もまだ伸び代がある、という事か……」と呟き、後日から指導に自主参加していた。今度私達も参加する事にしている。

 

 一夏は姉さんの補助を続ける傍ら、「鈴と一緒に店を出す」という目標の為、鈴の母親に弟子入りして、居候しながら中華料理を習っている。要領の良い一夏は鈴の母親の指導にしっかりついていっており、「いずれすぐに抜かされるかもね」と母親に言わせる程だったと鈴が言っていた。店ができたら、私も食べに行こうか。

 

 スコール達亡国企業は、戦いの後で姉さんに雇われて、姉さん専属のIS搭乗者として活動している。各地に散らばるISの様子を見に行かせたり、新しく作った武装の試運転をしたり、IS最大の欠点である『男性が乗れない』点の原因調査(一夏も協力)の手助け等だ。スコールもオータムも姉さんと仲良くしているし、Mはクロエと仲良くなったと姉さんが嬉しそうに話していた。

 ちなみに亡国企業が姉さんに接収された際、ゼローー牙也の母親の茜さんが経営していた企業『メシア・ロード』も同時に姉さんに接収され、一先ず姉さんが実質上の社長として経営している。秘書には鳳榛名さんという人が選ばれた。聞いたところによると、元はゼロの専属秘書であった人だと言う。実際に会ってみたが、とても綺麗でお淑やかな人だった。いつか私もああなれるだろうか……

 

 皆、思い思いの道を選んで、一歩一歩進んでるんだな……え、私か?簡潔に言うと、私は今、日本の代表候補生になる為に勉強している。既に候補生には簪がいるが、あくまで候補生なので新参者の私にもチャンスはある。頑張るぞ!

 

 さて、さっきまでこうして学園の一部の生徒教員について話している私だが、今私はある場所へ向かっている。右手に花束を、左手にスポドリのペットボトルを持ち、ある場所へ続く道を歩く。と、

 

 簪「あ、篠ノ之さん……行くの、あそこへ?」

 

 簪と本音がいた。二人の手にも花束が、本音の手には更に小さなジョウロがある。

 

 「ああ。簪と本音もか?それなら一緒に行こうか」

 本音「うん、そ~しよ~。牙っちに沢山話したい事、あるからね~」

 

 こうして私達は揃ってそのある場所へ向かう。歩くこと五分、到着したのは正面にグラウンド、背後に校舎のある木々が疎らに立っているエリア。そこに、多くの花束や飲み物が置かれている場所があった。そこには準也さんが愛用していた大剣が突き刺さっている。私達はそこに同じように花束と飲み物を置き、本音がジョウロで水を掛け、揃って手を合わせる。

 

 「牙也。また来たぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 さて、気づいている人もいるだろうが、ここであの戦いの顛末を簡潔に語る事にする。

 

 まず結果から言うと、私達の世界とヘルヘイムの森の衝突による滅亡は免れた。牙也が最後に衝突をさせない為に尽力してくれたお陰だ。しかし滅亡を免れた事による代償は、私達にとってはあまりにも大き過ぎた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 牙也は、消滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 いや、消滅したと言うより、眠りについたという表現の方が良いだろうか。

 

 二つの世界の衝突を牙也は防ぐ事ができた。しかし衝突を防ぐ為に、牙也は自身の体内にある黄金の果実の力全てを使い切ってしまったのだ。ヒガンバライナー共々ボロボロになりながらもなんとか私達の元へは戻ってこれたが、戻ってくるーーというより学園のグラウンドに墜落するーーまでが限界だった。墜落によりヒガンバライナーは大破、牙也も墜落する前から既に全身大怪我を負っており、最早手遅れとしか言い様のない有り様……更にその体は力が無くなったせいなのか、粒子となって今にも消滅しようとしていた。私達の必死の呼び掛けには辛うじて応じる事は出来ていたが、体はほとんど動かせず腕が少し動かせる程度で、何と言うか……見ていられなかった。それでも、私達の呼び掛けには答えてくれた。

 

 

 

 

 

 

 ~回想~

 

 牙也『あぁ……守れた、のか……守り切れた、んだな……良かっ、た……』

 

 牙也『生きてる……皆、生きてる、な……約束、果たせ、たな……』

 

 牙也『でも……半分、だけだ……果たせなかった、約束が……ある……』

 

 牙也『俺、は……無事に、帰って来れ、なかった……』

 

 徐々に消えていく牙也を見て、私達はただ泣く事しか出来なかった。そんな私達に、牙也は途切れ途切れにこう答えた。

 

 牙也『泣いて、くれんなよ……俺は、やるべき事を、やった、だけさ……』

 

 本音『でも……!牙っち、体が……!』

 

 牙也『心配、すんな……死ぬんじゃ、ない……少しの間、眠る、だけさ……また、皆に会える、時まで……』

 

 その時、牙也の体が本格的に消え始めた。

 

 簪『牙也さん……!』

 

 牙也『俺が、いない間……箒達を、この世界を、頼んだよ……皆……』

 

 牙也『んだよ……湿気た面は、止めて、くれ……っての、皆……また、必ず会える、から……だから……待ってて、くれるか……?その時、まで……』

 

 『牙也……!ああ、待つさ!何年でも待ってやる!だから……!』

 

 思わず私は、消えていく牙也を抱き締めた。簪と本音も牙也の両手を握り、涙を流す。

 

 牙也『あぁ……暖かい……悪く、ないな……』

 

 簪『牙也さん……!私……私……!』

 

 簪が何か言おうとしたが、牙也が辛うじて動く手でそれを遮った。

 

 牙也『それは……まだ取っといて、くれ……また会えた、ら……その時に……本音も、だぞ……』

 

 簪『ッ……はい』

 

 本音『うん……』

 

 牙也『それで、良い……最後に、箒……顔を、見せてくれる、か……?』

 

 『……ッ、あぁ……!』

 

 私が顔を近づけると、牙也は手をそっと私の頬に寄せた。

 

 牙也『ありがとう、な……俺の側に、ずっといて、くれて……感謝、しきれない、な……』

 

 『牙也……!』

 

 牙也『あぁ、満足、だ……これで安心、して……ゆっくり、眠れる……』

 

 牙也『じゃあ……新しい、未来で……また会おう、な……』

 

 その言葉を最期に……頬に寄せていた手はゆっくりずり落ち……抱き締めていた体は世界に溶け……

 

 

 

 牙也は、私達の前で、私の両腕の中で……ゆっくり静かに、消えていった。

 

 

 

 完全に牙也が消えてしまった後で、何かがポトリと落ちた。拾い上げると、何かの種のようだったーー

 

 

 

 ~回想 了~

 

 

 

 

 

 

 

 私達はその種を先程の場所に植え、日夜様子を見守っている。まだ芽が出る気配はない。けど、いつか芽が出て、大きく立派に成長してくれるだろう……。それが「いつなのか」は分からないけどな。

 

 手を合わせ終え、私達はそこに突き刺さった大剣を見る。

 

 簪「……また会える、よね……?」

 

 徐に簪がそう呟く。

 

 「……会えるさ。きっと」

 本音「いつ?」

 「さあな。けど、そんな気がする。根拠はないがな」

 簪「……何ですか、それ?でも……そうですよね。いつかまた、会えますよね」クスクス

 「ああ。牙也は基本的に、約束は破らない男だからな!」フンス

 本音「早く会いたいな~。いっそ土の中からいきなり出てきてくれないかな~?」

 簪「ま、まだ先の事だろうしそれはそれで怖いよ……でも、私も……」

 「皆考える事は同じだな……これも全て、牙也が紡いできた信頼の証、か」

 

 私はそう言って、いつもの変身の仕草をなんとなくやってみる。

 あの戦いの後、私達が今まで使用していた戦極ドライバー・ゲネシスドライバー・ロックシード及びそれらをモチーフとしたIS武装は全て行方不明になってしまった。役目を終えたら全て消滅するように設定してあったのか、はたまた何か別の原因か……それは私にも分からない。けど今分かるのは、アーマードライダーの世界は終わり、これからはまたISが跋扈する世界へと戻る、という事くらいか。あの戦いで一度世界は区切られ、そしてここからまた始まるんだ、新しい世界が。

 

 

 \オーイ、サンニントモー/

 

 

 簪「この声、ボーデヴィッヒさんかな?」

 「そうだな……っと、デュノアやオルコットの声も聞こえるが、そろそろ千冬さんの指導の時間のようだな。行くか?」

 本音「うん!またここに来ようよ、今度は皆揃って一緒にね!」

 「ああ!」

 簪「うん!」

 

 私達はもう一度手を合わせてから、皆がいる方へと駆けていく。

 

 

 (牙也……お前は今まで必死に頑張ってくれた。私達の為に、私達の世界の為に……今までよく頑張ってくれた。だから今は……今だけは、ゆっくりとその体を休めてくれ。大丈夫、心配しないでくれ。お前が守り抜いた世界を、今度は私達が守る番だ。次にお前が起きる時まで……絶対に私達が守り抜いてみせる。何せここは……お前の居場所なんだからな)

 

 そう心に決め、私達は駆ける。

 

 

 

 

 ありがとうーー

 

 

 

 

 そんな声が、聞こえた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 箒達が去った後の献花場所。そこにはまだ小さいが、既に立派な芽が出始めていた。そしてその隣には、

 

 

 

 

 

 

 

 

 何やら紫と紅、それと蒼と緑の二つのストップウォッチのようなものが転がっていたーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                  Fin

 

 

 




 これにて『IS×仮面ライダー 紫の世捨て人』は一旦終了です。読者の皆様、最後までこの駄作にお付き合い頂き、ありがとうございました。前話の後書きで言いましたが、この後は『ラストストーリー』を書いていきます。その他の小説については、『ラストストーリー』執筆完了後活動報告にて今後の動きを発表しますので、そちらをご覧下さい。

 それでは、最後までご愛読ありがとうございました。またお会いしましょうーー。


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