IS×仮面ライダー鎧武 紫の世捨て人(完結)   作:神羅の霊廟

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 お久しぶりです。リアルが忙しくて執筆・投稿共にが停滞してました。今年もそろそろおしまい、体調に気を付けながら、元気に新年を迎えられるようにしていきましょう。
 では、久しぶりに始まります。




第84話 彼ガ背負ッタモノ

 

 牙也、箒、準也の三人が学園上空に現れた歪みを抜けて辿り着いた先は、草木がほとんど生えていない荒野であった。近くには切り立った崖がいくつも連なり、そこから数本だけ木が生え、後は広大で草木が疎らに生えただけの荒野のみである。

 

 牙也「コウガネの野郎は何処だ……?」

 準也「ここにいるのは確かだ。何処かに隠れているか、それとも……」

 

 三人はコウガネを探してひたすら荒野を歩く。と、

 

 箒「……近いな」

 

 突然一番後ろにいた箒が立ち止まったかと思うと、そう言ってソニックアローを構えた。それにつられて牙也は薙刀・緋炎を、準也も大剣を構え、周囲に意識を集中させて気配を探る。と、岩影から何かが飛び出してきた。

 

 牙也「そこっ!」

 

 飛び出してきたそれにいち早く牙也が反応し、緋炎でそれを斬り裂いた。飛び出してきたそれは体を斬り裂かれ、その場に倒れ伏す。

 

 準也「こいつはさっきのイナゴ……という事は……!」

 

 準也が辺りを見回すと、岩影や空から次々とイナゴ怪人が現れて牙也達三人を囲んだ。先程体を斬り裂かれたイナゴも立ち上がり、仲間に合流する。

 

 箒「さっきよりも数が多いぞ!」

 準也「ひぃふぅみぃ……多く見積もって、凡そ百ーーいや、二百はいるな」

 箒「さっきと同じように、物量で押し込むつもりか……」

 準也「こいつらを倒さなければ、コウガネの下に辿り着くのは不可能だな……牙也、早急に始末してーー牙也?」

 

 武器を構えた二人であったが、牙也が反応しない事に気づいて牙也を見ると、牙也はいつの間に呼び出したのか、絆羽扇を持って立っていた。牙也はそれを顔の正面に持ってきて、精神を研ぎ澄ましているのか一言も喋らない。

 

 箒「どうした牙也?」

 牙也「ーー見つけた」

 準也「見つけたって、何処にーー」

 

 《風化ノ計!》

 

 準也が聞き終わる前に、牙也はトリガーを引いて『風』の文字を扇ぐ。と、三人の体は突風に包まれて、あっという間にイナゴ怪人の群れの中から消え失せてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 コウガネ「消えた!?奴等、一体何処に……!?」

 

 先程まで牙也達がいた場所から遠く離れた岩影に潜み様子を伺っていたコウガネは、三人の気配が消えた事に驚きを隠せない。すぐさま岩影から飛び出してあちこちを見回し三人を探すが、影も形もない。

 

 コウガネ「くっ、奴等め、一体何処にーーむっ!?」

 

 コウガネが咄嗟に後ろを振り向くと、コウガネの後方から突然牙也が現れて無双セイバーを振るってきた。それをコウガネはギリギリの所で回避し、距離を取って構える。

 

 牙也「ちっ、完璧に後ろを取ったと思ったんだがなぁ……殺気が隠せてなかったか」

 

 牙也は舌打ちしながらコウガネに向き直る。その後ろからは、牙也を追い掛けるようにして箒と準也が現れた。

 

 箒「まさかイナゴ共を無視して、ダイレクトにコウガネを探し出すとはな」

 牙也「あのイナゴ共をまとめて相手してるよりは、そいつを呼び出してる奴ーーつまりこいつを探し出す方が余程楽だからな」

 準也「しかしその羽扇、意外と便利だな。様々な計を打てるあたり、流石は名軍師と言うべきか……」

 コウガネ「ぐぬぬ、忌々しい……葛葉紘汰と言い貴様と言い、何故こうも私の野望の邪魔をする!?」

 

 すると牙也は「フン」と鼻を鳴らしながら答えた。

 

 牙也「理由は簡単ーーこの世界が……俺達が存在する世界が、好きだからだよ」

 コウガネ「好き、だと?いつの時代も争いの絶えぬ、この世界が?そうだとしたら、貴様は随分とお人好しなのだな」

 牙也「お前はこの世界の素晴らしさを何も知らないから、そんな血も涙もない事を平気でほざけるんだな。関心を通り越して呆れるよ」

 コウガネ「知る必要が何処にある?どうせ私の手で滅びる運命にある、この世界の事を。至極どうでもいい事だ……すぐに何もかも忘れ去られるのだからな!」

 

 コウガネはそう言うと、右手を掲げて指を鳴らす。すると一瞬にしてイナゴ怪人がコウガネ達を囲むように現れた。更に続けて指を鳴らすと、今度はレデュエを始めとしたオーバーロード達も現れる。

 

 コウガネ「決着を付けよう……雷牙也。私の望む完璧な世界の創造の為、今ここで貴様等に引導を渡してやる!!」

 

 そう言ってコウガネはソードブリンガーを高く掲げ、そしてその切っ先を牙也達に向ける。

 

 牙也「その前にーーお前に聞きたい事がある」

 

 と、牙也が人差し指を立てて聞いた。

 

 牙也「お前は何故、神となる事にこだわる?神にならずとも、お前程の実力なら一国一城の主で充分じゃないのか?」

 コウガネ「フン、忘れたのか?私は貴様等フェムシンムに作られた存在……フェムシンム達が擬似的に禁断の果実を作り出そうとした、その結果が私だ。私が禁断の果実になれる存在だと言うのなら、なろうとするのが当たり前だろう。それが私に与えられた、唯一の力なら尚更な」

 牙也「ふーん……つまり、自分は選ばれた存在だから、神になろうとしても問題ない、と」

 コウガネ「その通り……得た力は、存分に使ってこそだろう、違うか?」

 牙也「いいや、お前の言う事にも一理あるね。けど……」

 

 牙也はそこまで言うと、緋炎の切っ先をコウガネに向けた。

 

 牙也「けどーーそれでも、俺達はお前の野望について行くつもりはない」

 コウガネ「ほほう……何故だ?」

 牙也「言ったろ……俺達は、この世界が大好きなんだ。この世界を滅ぼすと言われて、はいどうぞと言ってこの世界を見捨てるような俺達じゃないんだよ」

 

 そう言って牙也はコウガネを睨み付ける。と、コウガネは高笑いをし始めた。

 

 牙也「何が可笑しい?」

 コウガネ「ハハハハハ!!これが笑わずにいられようか!!忘れたのか、貴様は化け物だぞ!?そんな化け物が『この世界が大好きだ』と言って信じるような輩が果たしているのか!?いや、いる筈がない!!」

 箒「そんな事はない!少なくとも、ここにいる!私が、牙也を信じている!」

 コウガネ「フン、貴様とて化け物の類いだろうに、説得力の欠片もない」

 準也「なら、IS学園の生徒達ではどうだ?貴様を相手するのはISではどうにもならぬ事を、彼女らは分かっている。故に彼女らは、私達に希望を託した。私達ならやってくれると信じて」

 箒「それでも足りぬなら、亡国企業の皆もそうだ!ISの現状を一番理解し、尚且つ牙也の事も理解している!彼女達も私達を信じて、希望を託してきたのだ!」

 コウガネ「では他にいるか?それ以外に、雷牙也を信じている者を挙げる事はできるか?」

 

 しかしコウガネにそう聞かれ、箒と準也は押し黙ってしまう。

 

 コウガネ「そうだろう、他に名が挙がる者などいないだろう。結局そういう事だ、化け物の言う事を信じる者など指折って数える程度しかいないのだよ。人間とはそういう者だ、化け物の言う事に耳を貸す者などほんの一握りしかおらぬ。何故そんな人間達の生きる世界を守る必要がある?この世界を守る事に、果たして何の利がある?お前達はそれでも、こやつの言う事を信じると言うのか?」

 

 箒も準也も黙ったままだ。と、

 

 牙也「お前、何か勘違いしてないか?」

 

 ここで牙也が進み出て言った。

 

 コウガネ「勘違い?何をだ?」

 牙也「確かにお前の言う通りさ、化け物の言う事なんざ誰が信じるのかって話さね」

 コウガネ「そうだろう。ならばーー」

 牙也「でも、それに何か問題があるって言うのか?誰も聞いてくれない、信じてくれない。だから仕方ないで終わらせるのか?俺の答えは『否』だ。誰も聞いてくれない、誰も信じてくれない。だからこそ、俺は行動で示さなきゃいけないのさ、その言葉一つ一つが真実である事を。そしてそれを目で見、耳で聞き、信じ、理解した者達は、それを更に外へーー他の者達へと繋いでいく。そうして真実は広まり、そしてそれがやがて世界を一つに纏めていく……」

 コウガネ「何が言いたい?」

 牙也「つまりこう言いたいのさ……人間の団結力を嘗めんな、ってな!!」

 

 《水計!》

 

 牙也は絆羽扇のトリガーを引きながら振るうと、『水』の文字と共に激流が迸り、コウガネへと襲い掛かった。コウガネはそれを横へ回避し、カウンターでソードブリンガーから斬撃を飛ばす。その斬撃を無双セイバーで斬り飛ばし、牙也はコウガネにその切っ先を向ける。

 

 牙也「ま、人間が真に団結する時ってのはまだ先の事になりそうだが……けど、ある意味それで良いのかもしれないな。どこかいい加減で中途半端な所があるくらいが、ちょうど良く感じるものさね。さっきお前、完璧な世界の創造の為って言ってたようだが、人間は完璧にはなれないらしいのさ。だとしたらフェムシンムが作り出したお前も同じ事だ、完璧にはなれない、お前には完璧な世界など創れないよ」

 コウガネ「言ってくれる……ならば貴様には出来るのか?私の言う、完璧な世界というものを創れるのか?」

 牙也「俺が?無理無理、俺にはまだ上に立つ実力も人心もないからな。けど、少なくともお前よりかはマシだと自負してるぜ。それにーー」

 

 牙也はコウガネに向き直りながら続ける。

 

 牙也「別方向での信頼なら……いつの間にか得てるみたいだからな」

 

 そう言って牙也が右手の指を鳴らすと、牙也達三人の頭上にいくつものクラックが開いた。それはあの闇を吐き出すクラックであった。そのクラックから闇の瘴気が溢れ出すと同時に、瘴気で流されるようにゾロゾロとインベスが現れる。現れたインベスの体は皆黒く穢れ、時折見せる眼光が不気味さを物語る。

 

 牙也「こんな風にね。さあ、始めるか……終わらせてやるよ、長き因縁を、俺達の手で」

 コウガネ「やってみろ、餓鬼が」

 

 牙也とコウガネはそれぞれ、絆羽扇とソードブリンガーを高く掲げ、それぞれの相手に向けた。

 

 コウガネ「進め!!私の望む、完璧な世界の創造の為に!!」

 牙也「進め!!俺を信頼してくれた人間達と、彼らの世界を守る為に!!」

 

 それぞれが号令を下すと、後ろに控えていたインベスやイナゴ怪人達が一斉に突撃を開始する。最終決戦の幕は、今上がったのだーー。

 

 

 

 

 

 

 

 





 今年の投稿はひとまずここまで。今年も読者の皆さんにはお世話になりました。来年もよろしくお願いします。それでは皆さん、良いお年をーー。



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