IS×仮面ライダー鎧武 紫の世捨て人(完結) 作:神羅の霊廟
計略一つで、戦場の優劣は簡単に逆転するーー。
??「……!この気配は……!」
ここは、牙也達の世界と繋がったヘルヘイムの森とは別のヘルヘイムの森。ヘルヘイムの植物は既にいくつかの世界を侵食し、そこにある文明を滅ぼしていた。だが、このヘルヘイムの森はそれを何とか回避し、繋がっていた世界との分離に成功し、他の世界へと移っていった。そしてそれが出来たのは、今何かを感じ取っていたこの白銀の鎧に身を包んだ一人の青年ーー今は神かーーのおかげでもあった。
??「紘汰、どうかしたの?」
そこへ一人の少女が、紘汰と呼ばれたその青年に駆け寄る。青年は少女を見て軽く頷くと、再びその何かを感じ取った方向を見ながら言う。
紘汰「舞……いやな、今少しだけど、黄金の果実の気配がしたんだ」
舞「黄金の果実……!?紘汰のだけだった筈じゃ……!?」
紘汰「多分、次が生まれたんだ。そしてそれを手に入れた人がいる……」
紘汰はそこで言葉を切り、舞と呼ばれた少女と共に再びその方向を見る。その方向には、ある一つの惑星が見えていた。
比類なきその風格、そして圧倒的存在感。今の牙也を例えると、まさに『王』と言えよう。しかし彼は今、ここに将達を導く軍師として存在する。揺らぐ事の無いその漆黒と金色の瞳でコウガネ達を見据え、かつ大きな何かを背負っているであろうその漆黒と紫の鎧で箒達を守るように聳え立つ。
箒「これは……!?」
一夏「な、なんだよ……あの姿は……!?」
スコール「新しいロックシード!?どうやって……!?」
ザック「名、軍師……?」
箒達が思い思いに呟くのを背後に、
《紫炎!》
牙也は鍵型のロックシードーー絆ロックシードを捻った。音声と共に、空から零の基本武器、紫炎が現れる。それを掴み、偽デェムシュに向けて構えた。
偽デェムシュ『コケオドシダッ!!』
偽デェムシュはそう叫んで、剣を構えて突進する。対して牙也も、紫炎を構えて突進した。二つの斬撃がぶつかり、しかし太刀筋は牙也に軍配が上がる。一撃、二撃と斬撃を当て、その度に優雅にマントが翻る。そして三撃目を当てると、偽デェムシュは一旦後ろに下がってから再び突進して来た。それを見て牙也は絆ロックシードを捻る。
《サクラン棒!》
音声と共に、牙也の後方からサクラン棒が飛んできて連続で偽デェムシュを殴打する。
スコール「あ!それ私と同じ武器!」
驚くスコールを尻目に、牙也はサクラン棒を掴んで殴打攻撃を叩き込んだ。息もつかせぬ連続攻撃を浴びせて、偽デェムシュを大きく吹き飛ばす。
偽デェムシュ『オ、オノレ……!!』
と、受け身を取って態勢を立て直した偽デェムシュは、肩部の二本の角から雷の球を飛ばした。それを見逃す牙也ではなく、
《スターシールド!》
絆ロックシードを捻りスターシールドを呼び出してこれを防御、
《グァバライナー!》
雷の球を弾き飛ばすと、三たび絆ロックシードを捻ってグァバライナーを呼び出し、偽デェムシュへ矢を撃ち出した。矢は次々と偽デェムシュに深々と突き刺さり、火花を上げながら怯ませる。
ザック「一夏の盾に、ギリアのボウガンまで……!」
千冬「あのアームズ……まさか、他のロックシードのアームズウェポンを呼び出せるのか?」
《マスガンド!》
牙也「はぁぁぁぁ!!」
今度はマスガンドを呼び出し、偽デェムシュに向けて振るう。マスガンドで斬り裂き、突き、撃ち、そしてスターシールドで殴打、タックル。更に他に呼び出した武器で打撃、斬撃、射撃を繰り返し、偽デェムシュに攻撃の隙さえも与えず吹き飛ばした。
偽デェムシュ『オ、オノレ……オノレェェェェェッ!!』
よろめきながら立ち上がった偽デェムシュだが、突如その体がボコボコと音を立てて変質し、その姿を変えていった。次の姿は、玄武をモチーフとしたオーバーロード、シンムグルンであった。偽シンムグルンはその巨体を丸めて、タックルの姿勢で突っ込んできた。
《王子鎚(ジャックハンマー)!スイカ双刃刀!マンゴパニッシャー!》
それをかわし、牙也は王子鎚とスイカ双刃刀を呼び出して偽シンムグルンに向かわせ、自分は切ったマンゴーの形をしたハンマー、マンゴパニッシャーを持って殴打攻撃を浴びせる。王子鎚とスイカ双刃刀、二つの巨大武器は意志を持つかのように動いて偽シンムグルンの甲羅に攻撃を加えていく。牙也が思い切り殴打すると、偽シンムグルンはよろめきながら後退りし、するとまたもその体がボコボコと変わり始めた。次に変わったのは、牛をモチーフとしたオーバーロード、グリンシャだ。
《スネークサリガマ!キウイ撃輪!ブラッド大橙丸!》
偽グリンシャが大剣を構えて突進してきたのを見て、今度はスネークサリガマを呼び出して投げつけ、大剣に巻き付ける。こうして大剣を封じ込むと、次にキウイ撃輪を投げつけてからブラッド大橙丸で攻撃し始める。スネークサリガマが巻き付いた大剣に気を取られ、偽グリンシャは二種類の武器の攻撃を立て続けに受ける。
《影松!》
その後それらの武器を一旦しまい、牙也は影松と影松・真を呼び出し、二槍流攻撃で偽グリンシャを追い詰めていった。
偽グリンシャ『貴様……許サン……許サンゾ……!!』
二槍の攻撃を受けて後退を余儀なくされた偽グリンシャがそう呻き、またも姿を変えていく。今度は朱雀がモチーフのオーバーロード、デュデュオンシュ。偽デュデュオンシュは火球を複数発生させて牙也に投げ付けた。
《メロンディフェンダー!ドンカチ!ブドウ龍砲!》
牙也はメロンの意匠を施した盾、メロンディフェンダーで火球を止め、ドングリを模したトンカチ、ドンカチを偽デュデュオンシュへと蹴飛ばした。ドンカチは偽デュデュオンシュの頭にクリーンヒットし、偽デュデュオンシュをよろめかせる。そこへブドウ龍砲の顔への射撃、顔を滅多撃ちにされて偽デュデュオンシュはまたも後退する。
《ソニックアロー!セイヴァーアロー!》
次いでソニックアローとセイヴァーアローを呼び出し、偽デュデュオンシュへと向かっていく。偽デュデュオンシュの反撃を掻い潜っての二つの弓による怒涛の連続攻撃が、劣勢であった偽デュデュオンシュをさらに追い詰めていく。すると二弓の攻撃で飛ばされた偽デュデュオンシュの体がまたまた変化していく。その姿は中華風の鎧を纏ったオーバーロード、レデュエとなった。偽レデュエは戦斧を構えると、戦斧から光弾を放って攻撃してきた。
《アップルリフレクター!アーモンドリル!》
牙也は光弾をアップルリフレクターで防ぎ、アーモンドリルで応戦。突き攻撃をしようとすると、その攻撃は偽レデュエの体をすり抜けたーーいや、攻撃を加えようとした偽レデュエそのものが消滅した。牙也が辺りを見回すと、突如牙也を囲むように次々と偽レデュエが現れた。
箒「レデュエが分身した!?」
束「違う……あれは多分、幻術の類いだね」
束が機械的な見た目の眼鏡をかけて、その様子を観察しながら言う。この眼鏡は対象の生体反応を感知できる物なのだが、今束が見ている光景には、偽レデュエは一体しか映っていない。
束「牙君、斜め左後ろ!」
束が指摘した方向から偽レデュエが光弾を放ってきた。牙也は振り向く事なく、アップルリフレクターをその方向に向かわせて光弾を防御、更に振り向く事をせぬままアーモンドリルの先端を射出して偽レデュエを攻撃した。咄嗟にそれを戦斧で弾き、偽レデュエはまた後ろへ下がる。
偽レデュエ『オノレ……イラヌ邪魔ヲシオッテ……!!』
偽レデュエがそう呻いて戦斧を束に向ける。と、束達の目の前にクラックが開いて、そこから沢山のインベスが顔を出した。ぞろぞろと現れるインベスに、箒達は距離を取ってから臨戦態勢に入る。が、
一夏「くっ、ここは俺達が《絆軍配!》あ、あれ?」
それは杞憂となった。臨戦態勢を一番に取った一夏の前に、電子音声と共に突如巨大な鎧武者ーーいや、全身黒タイツの搭乗者が乗ったスイカアームズが複数現れたからだ。アームズ達は双刃刀、槍、グローブをそれぞれ構えて、次々と現れるインベスを蹴散らしていく。
箒「牙也……」
牙也「さっきまで必死になってコウガネ達を抑えてくれてたんだ。皆には今はしっかり休んでもらわないとな」
そう言う牙也の手には、表面には様々なフルーツや木の実が描かれ、裏面に『絆』と書かれた黒い軍配ーー絆アームズ専用ウェポンの一つ、絆軍配が握られていた。この絆軍配、どういう能力があるかと言うとーー
《オレンジアームズ!バナナアームズ!ブドウアームズ!メロンアームズ!》
牙也が軍配のトリガーを四回引くと、音声の後に全身黒タイツのような姿の人形が現れ、それぞれにオレンジ、バナナ、ブドウ、メロンの鎧が被さって展開、アーマードライダー(擬き)となった。そう、絆ロックシードが任意のアームズウェポンを呼び出せるなら、絆軍配は任意のアームズそのものを呼び出せる武器なのだ。これによって四つのアームズを呼び出し、スイカアームズと共にインベス対処に向かわせる。
牙也「さて……これでタイマンだな」
偽レデュエ『ホザケッ!!』
牙也がそう言って偽レデュエに向き直ると、また偽レデュエの体がボコボコと音を立て始めた。
束「また姿が変わるの!?」
しかし今度は、偽レデュエの体からドロドロした液体のようなものが溢れ出てきて、それが人の形を成していく。やがてそれらは、先程まで戦っていた偽オーバーロード達の姿となる。偽オーバーロード達はそれぞれの武器を構えて牙也を囲む。しかし牙也の顔に焦りなど微塵もない。ただ絆ロックシードを何度も捻り始める。
《大橙丸!パインアイアン!イチゴクナイ!ソードブリンガー!ドリノコ!オリジン!ライムラッシュ!イチジグレネード!炎刀鬼灯丸!スターセイバー!》
音声と共に牙也の周囲に現れたアームズウェポンは、牙也が小さく「行け」と言い絆軍配を偽オーバーロード達に向けると、アームズウェポンが一斉に偽オーバーロード達に襲い掛かる。次々と襲い掛かるアームズウェポンによって、生み出された偽オーバーロード達はあっさりと倒され偽レデュエの体へ戻っていく。
《クルミボンバー!マロンストライカー!アンズクラッシャー!カキアロー!》
それを追い掛けるように三種のグローブを呼び出し偽レデュエに向かわせ、牙也はカキアローの射撃で攻撃する。怒涛の打撃攻撃とそれをサポートする射撃で、偽レデュエに反撃の隙すら与えない。
《バナスピアー!》
《ソイヤッ!絆スカッシュ!》
そして偽レデュエが吹き飛ばされたのを確認すると、牙也はバナスピアーを呼び出してからカッティングブレードでロックシードを一回切り、バナスピアーを地面に突き刺した。すると、偽レデュエの周りからバナナの形をしたエネルギーが伸びて偽レデュエを拘束した。
偽レデュエ『アリ得ン……アリ得ン!!何故コノ私ガ、貴様等ノヨウナ人間二、コウモ簡単二……!?』
牙也「あんた達の事は父さんから聞いたよ、あんた達、父さんの元部下なんだってね。父さんの代わりに、その質問に答えてやろうか?答えは至って簡単な事ーー俺とお前じゃ、背負ってる物の重さが違う。単にそれだけの事だ」
《火縄名冥DJ銃!無双セイバー!》
牙也は火縄名冥DJ銃と無双セイバーを呼び出し、二つを合体させて大剣モードにし、
《ソイヤッ!絆オーレ!》
牙也「じゃあな、オーバーロード・レデュエーーいや、織斑春輝……ゆっくりと眠りなよ」
カッティングブレードでロックシードを二回切り、火縄名冥DJ銃・大剣モードにエネルギーをチャージ、二つ斬撃を飛ばして、エネルギーによる拘束で動けない状態の偽レデュエを斬り裂いた。
偽レデュエ『私ノ心ハ……カツテノ仲間ト共二ーー』
偽レデュエは最期に一言そう静かに呟き、火花を上げながら爆発四散した。
牙也「……父さんを裏切ったお前に、ちゃんと仲間意識があったとはね……敵ながら感服するよ」
大剣を地面に刺しながら、牙也は燃え上がる炎に向けてそう呟くに留めるだけだったーー。
次回もお楽しみに。