IS×仮面ライダー鎧武 紫の世捨て人(完結)   作:神羅の霊廟

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 始まります。




第80話 奇跡ハ起コス物

 束「じゅ、準也さん……!?なんで……!?」

 千冬「準也……まさか、あの『ファクトリー雷』の社長だった……!?」

 スコール「って事は彼は……」

 一夏「牙也の父さん!?」

 

 突然現れた牙也の父、準也を前に驚きを隠せない束達。

 

 準也「死亡扱いされてから何年経つかな……もう八年にはなるのか?こうやって束ちゃんと箒ちゃんの顔を見るのも久しぶりだね」

 束「な、なんで……準也さんは確かにーー」

 準也「んー、まぁ確かに一度は死んだよ、私は。けどね束ちゃん、僕の遺体を君は確認したかい?」

 

 束はそう言われて考え込む。確かに束はこれまで、準也の死亡は聞いても遺体を見た事は一度も無かった。

 

 準也「そうだろうそうだろう、まぁ単にその時だけ僕の運が良かっただけの事さ。会社が跡形もなく崩れ落ちてしまったから、遺体の回収なんて出来る筈もないしね。お陰で瑞穂以外は全員、今までこうやって生き延びる事ができた。そして今に至るんだよ」

 

 準也は苦笑いを浮かべながら軽くはにかむ。そしてふとあらぬ方向を見ると、気を失った牙也が倒れているのが分かった。準也は近づいて牙也の体を持ち上げると、それを束に差し出す。

 

 準也「牙也と後ろに倒れてる娘達を頼むよ、束ちゃん。ここは僕達で何とか抑えておくから」

 束「でも……!」

 準也「心配はいらないよ。それっ!」

 

 準也がそう言って左手を高く上げると、淡い緑の光が箒達を包み込んでいく。やがて光が消えると、箒達の体の傷はある程度治っていた。

 

 箒「これ、カンナが使っていたのと同じ能力……」

 一夏「体の痛みが、消えた……!」

 準也「これでしばらくは保つよ。後は君達の頑張り次第だ。僕が奴の攻撃を受け流すから、君達はただ攻撃に専念しておいてくれ。時間まで耐えれば、後はあの子がどうにかしてくれるさ」

 スコール「あの子って?」

 準也「すぐに分かるよ……すぐにね」

 

 準也はそこまで言うと、飛んできた火球をバリアで防ぎ、それをコウガネに向けて押し返した。火球は続けて飛んできた火球と相殺、爆発。

 

 準也「さ、早く行きなさい。犠牲者を出したくないのなら、尚更ね」

 束「……分かりました」

 

 束は悔しそうに俯きながらそう言い、紅椿を操作した。すると一瞬でその場に束作の無人機・ゴーレムが現れる。

 

 束「皆を乗せて。これから治療の為に退避活動を行うよ」

 

 束がゴーレムにそう命令すると、ゴーレムは頷いてセシリア達をまとめて抱えると、コウガネから距離を取るようにして校舎の向こう側へと飛び立つ。

 

 束「皆……必ず帰ってきてね」

 

 そう言い残し、ゴーレムを追い掛けて束も飛んでいった。

 

 箒「……必ず帰ります、姉さん」

 

 その後ろ姿に、箒もそう呟いて答える。そしてコウガネに向き直り、箒は徐にゲネシスドライバーを取り出して腰に付けた。

 

 千冬「……!?篠ノ之、お前そのゲネシスドライバーは……!?」

 箒「シュラが使っていた物です。話は後でしますから、今は奴をなんとかしましょう!」

 

 そう言って箒は淡い赤のエナジーロックシードを出して解錠した。

 

 箒「シュラ……お前の力、私に貸してくれ!」

 

 《リンゴエナジー》

 

 クラシック調の音声が流れ、クラックから巨大リンゴが現れる。箒はスッと目を閉じると、両手を大きく左右に広げ、次いでそこからエナジーロックシードを挟み込み拝むような姿勢になる。そして目をカッと開くと、その目は淡い緑に光る。

 

 箒「……変身!!」

 

 《ロック・オン》

 

 《ソーダァ!リンゴエナジーアームズ!》

 

 エナジーロックシードをロックしシーボルコンプレッサーを押し込むと、回転と共に果汁を吹き出しながらアームズは箒に被さり、ゲネティックライドウェアの上に展開される。『仮面ライダーレオン リンゴエナジーアームズ』の誕生だ。千冬達もそれに続けて変身し、武器を構える。

 

 スコール「私とザックが前線に出て戦うわ。貴方達は遠距離攻撃での援護をお願いね」

 一夏「それなら俺達も前線に出た方が良いんじゃ……」

 スコール「彼のバリアで防げる範囲も限度がある筈よ。まぁ実戦経験豊富な私達に任せておきなさいな」

 

 スコールとザックはフフッと笑いながらコウガネに向き直る。と、コウガネはちょうど次の火球を箒達に向けて放ったところだった。しかしその火球は、準也が張ったバリアに阻まれ跳ね返される。もう一度火球を放って相殺し、コウガネは準也を忌々しそうに睨み付ける。

 

 コウガネ『貴様……それほどの力を持ちながら、何故人間に味方する?私と共にいれば、この世界どころかこの世の全てを手に入れられるというのに……』

 準也「お前の傘下なんか誰が入るもんか。数百年前、私の仲間を滅びの未来に導いておいて、よくもまあそんな事が言えたものだな。しかも織斑春輝の精神に寄生する事で邪悪な意志を刺激し力を蓄えるとは……随分と狡い真似をするな」

 コウガネ『仲間……数百年前……?貴様、まさか……!』

 

 ここでようやくコウガネは準也の正体に気づくも、その表情は愉悦に満ちていた。

 

 コウガネ『ククク……そうかそうか。お前は私を作り上げたあのフェムシンム共の生き残りか……勘違いするな。私はただ貴様等にヒントを与えただけだ。禁断の果実を手にする為のヒントをな。結果貴様等が滅んだのは、単に貴様等の結論が愚かであっただけの事だ!!』

 準也「ああ……確かに私達フェムシンムが滅んだのは、『強き者が生き残り、他は切り捨てる』という結論に至ったからこそ起こった事象だ、それは認めよう……だかな、同じ手口で私達と同じ道を人間に歩ませるのは、流石に承服しかねるんだよ。牙也達に……今この世界で必死になって生きている人間達に、私達と同じ末路を辿ってほしくはないと考えてる。だからこそ、私は人間に味方する事を決めたのだよ。貴様の思い通りになってしまうのは、私達だけで充分なのさ」

 千冬「準也さん、何を言って……?」

 コウガネ『フン、どうせ上部だけなのだろう?所詮は他のフェムシンムを見捨てた化け物、また見捨てる気でいるのだろうに』

 準也「人間は生きる事から目を背けぬ限り、何度でもそこからのやり直しが効く。私がこの世界にーー人間の世界に来て、人間の生活に馴染む事で知った事だ。間違った道を一度進んだ事があるからこそ、それを正す方法が分かる。誰にも二度と同じ道は歩ませない。それが今の私の使命だ」

 

 準也は拳で胸を軽く叩きながらそう言った。しかしそれを、コウガネは鼻で笑い飛ばす。

 

 コウガネ『ハッハッハ、滑稽だな。人間を滅ぼそうとしたお前が、今度は人間を守るだと?笑わせるな!』

 準也「人間を滅ぼそうとしたのは貴様であって私ではない。が……部下が人間を毛嫌いしていた事は否定しようもない事だがな」

 コウガネ『フン……で、どうするつもりだ?真に黄金の果実の力を得た私を、貴様等はどうやって倒すつもりなのだ?教えてくれたまえ!』

 準也「すぐに分かるとも……すぐにな」

 

 準也がそう言った途端、準也との会話に気をとられていたコウガネの顔面が弾けて、その巨体が揺らいだ。見ると、スコールとザックがそれぞれの武器で顔面を殴打したようだ。

 

 コウガネ『小細工を……!』

 準也「馬鹿言うな、貴様が彼らの存在を忘れていただけの事だろう?炎を纏った馬になったようだが、熱くなり過ぎて脳が沸騰したか?」

 コウガネ『ほざくなッ!!』

 

 コウガネは再び火球を放って攻撃してくるが、準也が的確にバリアを張って無効化していく。

 

 準也「僕の事は気にせず、皆はバンバン攻撃しなさい!少しでもダメージを与えておけば、後々有利だろうからね!」

 千冬「わ、分かりました!一夏、篠ノ之、行くぞ!」

 一・箒『ああ(はい)っ!』

 

 千冬と箒はソニックアローの弓撃による攻撃を、一夏はスターカリバーの斬撃を飛ばして攻撃し、接近戦を仕掛けるスコールとザックを援護する。コウガネはその巨体を揺らして攻撃を対処していこうとするが、その巨体故に敏捷性は皆無、ましてや五人の同時攻撃を全て対処する等不可能……よって成す術もなく攻撃を受けるーー

 

 コウガネ『ちょこまかと動く羽虫め……私を誰だと思っているッ!!』

 

 と、そう叫びながら炎の馬が嘶く。と、ソニックブームの如き嘶きがバリアを粉々に破壊してしまった。そしてその嘶きは、接近戦を仕掛けていたスコール達二人を吹き飛ばし、二人を援護していた一夏達をも怯ませた。スコール達は何とか態勢を立て直し着地、再びコウガネに向かおうとするが、嘶きはまだ続いていた。その嘶きは辺りの木々をへし折り、薙ぎ倒し、更に暴風程の威力はあろう衝撃波を生み出していた。それが再度攻撃しようとする一夏達を無理矢理押し返していく。

 

 準也「くっ、予想外だね……まさかここまで強くなってるとは……!お陰でバリアが張った傍から壊されていくよ」

 コウガネ『フハハハハ……!やはりその程度か。ならばこれで終いにしてくれよう!!』

 

 コウガネは嘶きに加え、今まで以上に灼熱に燃えた巨大な火球を箒達に向けて放った。嘶きのソニックブームに邪魔されて態勢を崩しかけていた箒達は防御も間に合わず、火球の着弾によって辺りは大爆発に包まれる。その大爆発は地面を丸々抉り、大きな穴を空ける。そして爆風が晴れようとした時、

 

 コウガネ『おっと、やり過ぎたか……まぁどうせ消し炭にする予定だったのだ、問題なかろう』

 準也「……それが、大有りなのさ!!」

 コウガネ『何ッ!?ぐおっ!?』

 

 爆風を斬り裂いて準也が現れた。その手には2mはあろう大剣が握られている。準也はその大剣を馬の姿となったコウガネの喉に突き刺した。そして突き刺した状態からそのまま一気に縦一閃。予想外の攻撃にコウガネは大きく後退りする。

 

 準也「今だ、皆!喉元に一撃お見舞いしてやれ!!」

 

 《リンゴエナジースカッシュ!》

 

 《シークヮーサーエナジースカッシュ!》

 

 《スターフルーツスカッシュ!》

 

 《チェリースカッシュ!》

 

 《アンズスカッシュ!》

 

 そのまま地面へ着地した準也が後ろへ声を上げる。と、ドライバーを操作してそれぞれの右足にエネルギーを溜めた五人が、コウガネの目の前に現れた。

 

 五人『行ッけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』

 

 五人のライダーキックがコウガネの喉元へ突き刺さり、またも大爆発が起こったーー。

 

 

 

 

 

 

 




 次回もお楽しみに。


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