IS×仮面ライダー鎧武 紫の世捨て人(完結)   作:神羅の霊廟

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 真実を知った牙也と箒。二人はどんな答えを出すのか……?




第74話 語ラレル真実(後編)

 

 「父さんが……ヘルヘイムの……」

 

 俺は父さんーーロシュオのその姿をじっと見つめる。ヘルヘイムの王たる風格溢れるその姿に俺は見入っていた。

 

 ロシュオ「数百年前、まだ葛葉紘汰が人間であり、アーマードライダー鎧武として戦っていた頃……私は彼とその仲間を相手に戦っていた。ヘルヘイムを束ねる長として、知恵の実を守護する存在として。そして何より……私が愛した妻の為に戦っていた。しかし私は部下の裏切りによる不意討ちによって敗れ、一度は消滅した。だが……ヘルヘイムの王たる私の運命は、そこで終わらなかった」

 

 ロシュオは一旦話を止め、呼吸を整えた上でまた話し始めた。

 

 ロシュオ「死後の世界で私は最愛の妻と再会を果たしたのだが、そこで妻から二つ目の黄金の果実の存在を聞かされた。そしてそれを付け狙うコウガネの存在をも知った。このままでは人間は私達の二の舞となる……そう気づいた私はコウガネの野望を阻止すべく、十五年前にこの世界へとやって来た、後は先に説明した通りだ」

 

 俺はロシュオの説明をただ黙って聞いていた。そして思い出していた。かつてあちこちの世界を旅していた際に訪れた、とある世界。そこにいたアーマードライダーーー炎竜と共闘した時に現れた南蛮風の甲冑のアーマードライダー。そうか、あの人が葛葉紘汰……。

 

 ロシュオ「そしてあの事件ーー私が興した会社の襲撃事件を境に、私は裏の世界を生きてきた。人間界とヘルヘイムの森を行き来し、裏社会を渡り歩いた。そしてついに、コウガネがどこにいるのかを突き止める事が出来た。が、その時コウガネはまだ完全に目覚めていなかった。だから奴が目覚める前に一芝居うつ事にした。これから奴が起こすであろう戦乱を逆手に取る為に」

 「その芝居の一つが、俺……」

 ロシュオ「ああ。黄金の果実からお前を産み出し、更にコウガネ捜索の最中に偶然ヘルヘイムの森で発見された三つ目…禁断の果実を瑞穂の体内に隠す事で二つの果実をカモフラージュしたのだ」

 「瑞穂にも……!?瑞穂が生きてるのか!?」

 ロシュオ「生きている……というよりは、禁断の果実を体の中に入れた事で、辛うじて生きている状態だな。だがお前の嫁……束ちゃんの妹で箒ちゃんだったな、彼女に禁断の果実の一部を分け与えた為に、瑞穂は身体の維持ができなくなり始めている。近い内、瑞穂は消えてしまうだろう」

 

 瑞穂が、禁断の果実を……。

 

 「てか瑞穂の体に埋めた禁断の果実は一体何処から来たんだ?父さんが見つけた黄金の果実は俺だし…」

 ロシュオ「本当に偶然でな…ヘルヘイムの森を探索している時に三つ目が実り始めていたのを収穫してきたのだ。熟す前に収穫したから内包する力はそこまでではない、だから身体の維持こそ出来たが完全な復活までは不可能なのだ」

 「……瑞穂の消滅は、父さんでも止められないのか?」

 ロシュオ「無理だ。元々死んだ体に無理やり果実を入れたものだから、瑞穂の体は常に不安定な状態だったのだ。だが今回の事でその不安定さが増した、最早私でもどうにもならん」

 「そうか……」

 ロシュオ「さて、話をお前の事に戻すが、実を言うとお前の体内にある黄金の果実は、まだ不完全な状態だ。その理由は、私があえて黄金の果実の一部をお前を産み出すのに使わず、このようにして所持している為だ」

 

 ロシュオはそう言うと左手を差し出した。淡い金色の光が手から溢れ、光が収まると芯の部分だけの黄金の果実が手に握られていた。

 

 「なんでわざわざそんな事を?」

 ロシュオ「シュラが生まれたからだ。お前が産まれた際にシュラが目覚めたのだが、その時にシュラは意図せず黄金の果実の力の半分を持っていってしまったのだ。だからこの残りの果実を入れようとすると、お前の体が保たずに壊れてしまう。故に一部を残しておいた」

 「じゃあ俺がバグヴァイザーを使わないとオーバーロードになれないのは……」

 ロシュオ「それが原因と考えれば良い。だがシュラの全てをその身に宿した今のお前なら……これを取り込んでも大丈夫だろう」

 

 ロシュオはその芯だけの黄金の果実を俺に差し出す。が、俺は手を出そうにも出せなかった。

 

 ロシュオ「……どうした?」

 「……それを食べれば、俺は身も心も完全にオーバーロードになるのか」

 ロシュオ「まあそうだな……やはり、まだ抵抗があるのか?」

 「当たり前だ……今の今まで人間に戻ろうとしていた俺が、人間に戻るんじゃなく人間を捨てようとしている……いや、元々人間じゃなかったんだ、人間に戻るも何もあったもんじゃないな」

 ロシュオ「人間としての己を得たが故に、か?」

 「そうしたのは他でもない、あんただろ?ま、別に恨んではいないさ。信頼に足る仲間を沢山得たし、何よりーー愛し、そして守るべき人に会えたからな」

 

 箒に会えた事だけは感謝してるーーそれだけを伝え、俺はロシュオから黄金の果実を受け取る。

 

 「これは、今はまだ食べない。本当に必要になったその時に、俺はこれを口にする。それが、俺が選んだ道だ」

 ロシュオ「なるほど……では返してもらうぞ、ザクロを」

 

 ロシュオがそう言うと、懐にしまっていたザクロロックシードがするりと懐から抜け出てロシュオの手元に納まる。そしてそのザクロから、狗道のおっさんが出てきた。

 

 狗道「あまり力になれなかったが……私の役目もここまでのようだな」

 「おっさん……」

 狗道「かつて私も、葛葉紘汰と戦い、そして敗れた。そして人たる者のーー神たる者の決意を心に刻んだ。お前もいずれ、それを知る時があるだろう……それまで、精々くたばらない事だな」

 「分かってるって。臨海学校の時は助かったよ、おっさんがいなかったらの垂れ死んでた」

 狗道「私はお前の力を引き出す事以外何もしていない、お前が助かったのはひとえに亡国企業のおかげだろう」

 「それはそうだが……まあとにかくありがとな」

 

 俺は狗道のおっさんに頭を下げる。

 

 ロシュオ「さて、牙也。お前確か茜からロザリオを受け取っていなかったか?」

 「ロザリオ?ああ、受け取ってるけど……」

 ロシュオ「そうか、それを持ってすぐに学園に戻れ。奴はついさっき目覚め、IS学園へと侵攻を開始した。急ぎ止めに行かねばならん」

 「何だと、学園が……!?分かった、ありがとな!」

 ロシュオ「礼はいい。行け、私も後で合流する」

 

 ロシュオは自分の背後にクラックを開き、俺は急いでそのクラックに入る。今行くぜ、皆……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「瑞穂……お前は私に禁断の果実を渡して、どうしようと言うのだ?」

 

 私は目の前にいる少女ーー瑞穂にそう問いかける。

 

 瑞穂「私の役目は、お姉ちゃんに禁断の果実を渡す事、ただそれだけ。さっきも言ったけど、私は禁断の果実に生かされてるだけの人形。でもその人形も、もう全身ボロボロで使えなくなってる有り様。だから私は、お姉ちゃんにこれを託して消える。ただそれだけ」

 「兄に……牙也に会いたいとは思わないのか?」

 瑞穂「会いたいよ……会って、お兄ちゃんに思い切り抱き締められたい。頬擦りしたい。けど、もしここでお兄ちゃんに会ったら……私は未練を残してしまいそうで……だから、会わないって決めてるの」

 「そうか……牙也も会いたかっただろうに」

 瑞穂「……お姉ちゃんはどうなの?」

 「何がだ?」

 瑞穂「これを受け取って、良いの?お姉ちゃんだって、人間でありたいって思ってたんじゃないの?」

 

 私は少し考えた後、瑞穂の目をしっかり見ながら言う。

 

 「前はそうだったさ。けど、今は違う。牙也の為に何か私に出来る事をしたい、牙也の支えになりたいーーそう決意して行動した結果がこれだ。別に後悔も無いし、それにーーこんな私を信頼してくれる人達がいて、こんな私を愛してくれる人に会えたから」

 瑞穂「そっか……良かった。本当は凄い怒ってるんじゃないかって思ってた……」

 「瑞穂も良かれと思ってした事だろう?ならば誇りに思えば良い。別に私は怒ってはないからな」

 瑞穂「えへへ……」

 

 瑞穂は嬉しそうに微笑む。うむ、やはり兄妹だな。

 

 瑞穂「それじゃ、はい!」

 

 瑞穂は嬉しそうな顔をしながら、自分の体から淡く輝く果実を取り出して私に差し出した。そうか、瑞穂が今差し出したこれが禁断の果実……と、瑞穂の体が少しずつだが消えていっている事に気づいた。

 

 「瑞穂!」

 瑞穂「えへへ……牙也お兄ちゃんを、どうかよろしくお願いします、箒お姉ちゃん」

 

 私に一礼し、瑞穂は粒子となって消滅していった。消えていった瑞穂の手からこぼれ落ちた禁断の果実は、一瞬空中で止まったかと思うと、ゆっくりと浮遊して私の体へと吸収されていった。そして完全に吸収されると、やがて私の体も粒子化し始めた。ふとさっきまで瑞穂がいた方向を見ると、

 

 「シュラ……?」

 

 うっすらとだが、シュラの姿があった。

 

 シュラ『……我も、力を貸そう。行け、篠ノ之箒。最後の戦いへ』

 

 シュラがそう言って、私に何かを投げ渡してきたのと同時に、私の意識はそこで途絶えたーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……はっ!?」

 

 次に目を覚ますと、そこは私達の部屋だった。時計を見ると、部屋に戻ってきた時からはあまり時間が経っていない。急げば間に合うか……と、左手に何か握られている事に気づいた。見てみると、それは『E.L.S.TABOO』と書かれたエナジーロックシード。それからはうっすらとだがシュラの魂が感じ取れた。

 

 「……行こう、シュラ。私達の手で、この戦いを終わらせるぞ」

 

 私は自分用の戦極ドライバーと、保管していたシュラのゲネシスドライバーを掴むと部屋を飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 





 次回、アーマードライダー&ISvsコウガネ。


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