IS×仮面ライダー鎧武 紫の世捨て人(完結)   作:神羅の霊廟

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 始まります。




第71話 紡グ思イ出

 

 牙也「……暇っ!」

 

 牙也は自室で暇をもて余していた。この日、牙也は既に用務員としての仕事を全て終わらせていた。が、箒は久しぶりに束と共に買い物に出掛けて不在、千冬は真耶と共にIS委員会に出向いており、一夏は鈴とデートと言った風に、一番良く話しているメンバーが出払っている為に、非常に暇なのだ。

 

 牙也「やれやれ……誰か他の奴等で暇潰ししようかな」

 

 そう言って牙也は立ち上がると部屋を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 セシリア「あら牙也さん、ごきげんよう」

 牙也「よぉ……って、なんだその大量の人形は?」

 

 誰か暇潰しになりそうな人を探して寮内を歩いていると、セシリアと出くわした。両腕に沢山の人形を抱えており、よく見るとどうやら牙也や一夏、それに箒や鈴等の学園のメンバーそっくりに作られていた。

 

 セシリア「アリスさんの人形を以前直してあげたのですが、あれ以来人形製作にはまってしまいまして。こうして作った人形を皆さんにお配りして回っているのですわ」

 牙也「なるほどなぁ。にしても、本当そっくりだな」

 

 牙也は自分そっくりの人形を手に取りまじまじと見る。細かい所まで精巧に作られており、完成度の高さが窺える。

 

 セシリア「牙也さんそっくりのその人形、よかったら差し上げますわ。それと箒さんにもこちらの人形を渡して頂けませんか?」

 牙也「お、これは箒そっくりだな。分かった、わざわざありがとな」

 セシリア「お礼を言われる程の事ではありませんわよ。それではまた」

 

 セシリアは優雅に一礼すると、人形を抱えてホクホクとした顔で行ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 シャルロット『ほらラウラ、動かないで!服が破けるから!』

 ラウラ『嫌だぁぁぁぁぁ!!こんな服着たくなぁぁぁぁぁい!!』

 

 今度はシャルロットとラウラの部屋の前を通り掛かると、中から何やらラウラの叫び声が聞こえた。

 

 牙也「はぁ……また着せ替え人形にされてんのか?」

 

 牙也は頭を抱えながらドアをノックする。

 

 牙也「煩いぞ、ラウラ!静かにしろよ!」

 ラウラ『そ、その声は牙也か!?助けてくれ!こんな姿、お前には見せられない!!』

 シャルロット『あれ、良いの?牙也さんが助けに入ってきたら、その格好見られるよ?』

 ラウラ『あああああ!!こ、こうなったら……牙也、少し待て!』

 シャルロット『え、ちょ、ラウラ!?何すんのさ!?』

 ラウラ『ええい、こうなったらお前も道連れだ!デュノアも私と同じものを着ろ!』

 シャルロット『ま、待って!僕が悪かったから、それだけはーー』

 ラウラ『ええい、散々着せ替え人形にしておいて許してもらおうなどと……!着せ替え人形にされた私の気持ちになれ!』

 シャルロット『嫌ぁぁぁぁぁ!!』

 

 牙也「……逃げるが勝ち、か?」

 

 何やらカオスな事になっているようなので、牙也はさっさと退散する事にした。後でこっそり教えてもらったのだが、どうやら二人揃ってバニー服を着ていたのを、後から訪れたクラスメイトにもろに見られて発狂してたらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 簪「えっと……それでここに逃げてきた、って事?」

 

 場所を更に変えて、簪と本音の部屋。騒ぎに巻き込まれるのを避ける為に二人の部屋に逃げ込んだ牙也は、本音に膝枕して色々構いながら簪と話していた。

 

 牙也「そう。ラウラが着せ替え人形にされるのは今に始まった事じゃないけど、今回は接触を控えろと勘が働いてな……ほれ」つお菓子

 本音「あむあむ……う~ん、ひあわへ~(幸せ~)♪」

 簪「もう、本音ったら……だらしないよ(羨ましいな……)」

 

 牙也にお菓子を餌付けされている本音に、簪はやれやれと呆れ返るばかり(本心では自分もやってもらいたいと思ってるのだが)。

 

 牙也「……ほれ」つお菓子

 簪「ふぇ?あ、ありが、とう……」パクッ

 本音「も~、かんちゃんも素直になれば良いのに~」

 簪「本音はオープン過ぎるの!」

 牙也「は~いはい、喧嘩しない喧嘩しない」ナデナデ

 本音「んにゃ~♪」

 簪「あぅ……はぅ……////」

 

 二人を宥める為に牙也が二人を撫でると、本音は気持ち良さそうに顔をすり寄せ、簪は恥ずかしいのか顔を真っ赤にしている。

 

 ラウラ『牙也ぁぁぁぁぁ!!何処にいる!?私を放って逃げ出しおって、よくも恥をかかせてくれたなぁぁぁぁぁ!!』

 シャルロット『牙也さん何処!?こうなったら牙也さんにも恥をかいてもらうんだから!!』

 

 部屋の外からシャルロットとラウラの騒ぎ声が聞こえる。どうやらさっきの事を根に持って追い掛けて来たようだ。

 

 牙也「やれやれ、八つ当たりする気満々だな……んじゃそろそろ行くわ、迷惑掛けたくないしな」

 本音「またおいで~」

 簪「えっと……ご無事を祈ってます」

 牙也「簪、それ死亡フラグだから止めて」

 

 牙也はその場にクラックを開いて飛び込んだ。そしてクラックが閉じたのと同時に、シャルロットとラウラが部屋のドアを蹴破って入ってきた。

 

 ラウラ「更識!布仏!牙也は何処にいる!?」

 本音「二人の声聞いてさっき逃げてったよ~」

 簪「クラックを使って逃げたから、行き先までは分からない……」

 シャルロット「くっ、一歩遅かったみたいだね……!行くよラウラ!」

 ラウラ「ああ、絶対に逃がさん!」

 

 二人は急いで部屋を飛び出した。

 

 簪「ああ……せめてドアを直してから……」

 本音「もう遅いよかんちゃん」

 牙也「行ったか?」

 

 またクラックが開き、逃げた筈の牙也が顔を出した。

 

 本音「あ、お帰り~」

 簪「お帰りなさい……ドア、壊されちゃった……」

 牙也「ドアは俺が直すよ。原因は俺だからな」

 本音「お願いね~、頑張れ~頑張れ~♪」

 

 こうしてすぐにドアを直した牙也は、取り敢えず他に避難出来そうな場所を探しに行く事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 M「……で、ここに来たと」

 牙也「おぅ」

 M「一言言おう……帰れ」

 牙也「んだよ、釣れねぇな」

 

 という訳で見つけたのが、学園の敷地の隅に小さく建てられた亡国企業の臨時支部。そこに避難した牙也は、居合わせたスコールとMと話していた。

 

 スコール「あらあら、災難ねぇ。貴方は何もしてないのに」

 

 スコールがお茶を持ってきて牙也に差し出すと、牙也はそれを一啜りしてから話を続けた。

 

 牙也「まったくだ、俺はたまたまそこに居合わせただけだってのに……しかも静かにしろって言っただけなのによぉ……」

 M「……ある意味不幸体質だな、お前は」

 牙也「……否定出来ないのがなんか悔しいわ」

 

 項垂れる牙也にスコールは「まあまあ」と言って隣に座る。

 

 スコール「でも貴方は、降りかかってくる不幸なんてものともせずに進み続けてるじゃない。その度に貴方は生き残ってきた。ある意味幸運なんじゃないの?」

 牙也「……家族を犠牲にしてまで得た命が幸運?そんな訳あるかよ」

 スコール「っと、失言だったわね……そうね、家族が犠牲になったのに、自分はノコノコと生きてる……私の命も貴方の命も、ある意味不幸に近いものよね」

 牙也「……何が言いたい?」

 スコール「私も家族を亡くしてるのよ。弟をね」

 牙也「っ!あんた弟がいたのか?」

 スコール「ええ。もう何年経ったかしらね……年が大きく離れた弟だったんだけど、大学の卒業旅行で行った先で、ISを使用した戦闘に巻き込まれてそのまま……遺体として見つかったのは頭部の一部と右腕だけで後は見つからず、死亡と判断されたわ」

 牙也「そうか……亡国に入ったのも、ISを憎んでの事か?」

 スコール「ええ。本心を言うと、今まではISを憎んでるのにISに乗る事がおかしく思えてたのよね。けど、アーマードライダーの力を手に入れてからは、その考えも改まったわ。力を抑える為には、それと同じかそれ以上の力を持たなければいけない……核兵器をある国が一つ持つだけで、他国への抑止力になるようにね」

 牙也「ある意味最強の壁だよな、力ってのはさ。ある力に対抗する為に同じ力を持つという矛盾……本当皮肉だよな」

 スコール「そうね……そうだわ、そろそろあの子の墓参りに行かないといけないんだったわね」

 牙也「墓参りか……俺も久しぶりに行ってみようかな。最近バタバタしてたから、近況報告も兼ねて」

 

 ラウラ『牙也ぁぁぁぁぁ!!何処だぁぁぁぁぁ!!』

 シャルロット『絶対に逃がさないよ!!』

 

 外からシャルロットとラウラの大声が聞こえてきた。

 

 牙也「げ……もうここまで来たのかよ。仕方ない、それじゃそろそろお暇するぜ」

 M「まったく……さっさと行け、面倒事はごめんだ」

 牙也「へいへい。スコール、お茶ご馳走さま」

 スコール「またいつでも来てね」

 

 牙也がまたクラックに飛び込むと、オータムがシャルロットとラウラを連れて入ってきた。

 

 オータム「おいスコール、この二人が牙也を探してるんだと……あれ、さっきまでここにいなかったか?」

 M「一足遅かったな、たった今クラックで逃げたぞ」

 スコール「二人の大声がここまで聞こえたんだから、そりゃ彼だって逃げるわよ」

 ラウラ「ぐぬぬ、また逃げられたか……!」

 シャルロット「ラウラ、早く行くよ!牙也さんに取り敢えず女装してもらわなきゃ、僕達の気が済まないよ!」

 

 二人は牙也がいない事が分かると、バタバタと出ていった。

 

 M「ようやく行ったか……スコール、私は寝る」

 スコール「はいはい」

 

 Mはそう言って奥の部屋に引っ込んだ。と思うとすぐに顔だけ出して、

 

 M「……嘘を教えて同情して、何の意味がある?奴に同情したところで、何か変わる訳でもあるまい」

 スコール「……何か彼のこれからのヒントになるかと思って言っただけよ。彼、何か思い詰めてた感じがしたから」

 M「……そうか」

 

 それだけ言ってまた引っ込んだ。

 

 オータム「何の話だよ、スコール?」

 スコール「彼の話よ」

 

 スコールはそう言って片付けを始め、オータムは何の話かさっぱり分からず首を傾げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 牙也「墓参り、墓参り……と思ったけど、今日はもう遅いしな……明日で良いか」

 

 シャルロット達から逃げ回っている間に夕方になってしまい、牙也は一旦部屋に戻る事にした。

 

 牙也「お供えはいつもの饅頭にして、墓に供える花はーー墓?」

 

 と、『墓』というワードに何かを感じ取った牙也は、ゼロが遺した言葉を思い出した。

 

 ゼロ『葬送の地へ行きなさいーー』

 

 牙也「葬送ーー墓?まさか……そうか、そうだとすると母さんが言いたかったのは……」

 

 ここでようやくゼロの言いたかった事を理解した牙也。一先ず明日も休みを貰う為、牙也は轡木の元へ向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ダークネス『よぉ、準備は出来てるな?』

 

 とある廃屋。そこからはIS学園は電車を使って数分という近場にあり、しかも近々取り壊される予定の為、隠れるにはもってこいの場所であった。そこに春輝とダークネス、そしてダークネスが呼んだオーバーロード達がいた。

 

 春輝「ああ、いつでも行ける。ところで本当なんだろうな?学園の何処かに、その『禁断の果実』ってのがあるって情報は?」

 ダークネス『ある……と言うよりは、必ず現れる、と言った表現が正しいか。心配するな、黄金の果実はこちらの手中にある。奴等がどう足掻こうと、最後にはお前の手に黄金の果実も、禁断の果実も握られる……俺を信じろ』

 春輝「フン、命令されるのはいけ好かないが、最強の力が手に入るのなら……俺はお前を信じてやるよ」

 ダークネス『それで良い……ならば行くぞ。今こそ、世界を手中に修める時だ!!』

 

 ダークネスの号令の下、彼らは動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 





 次回もお楽しみに!


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