IS×仮面ライダー鎧武 紫の世捨て人(完結)   作:神羅の霊廟

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 また5000字だよ畜生メェ!ああもう、どうしても長くなるな……頑張ろ。

 じゃ、始まります。




第67話 重キ代償

 

 「……う、ううん……」

 

 俺が目を覚ました時、俺の近くには一夏さんと千冬さん、それにスコールさん達が倒れていた。重く感じる体をゆっくりと起こして周囲を見回すと、何やら緑色のドームのようなもので周囲が囲われていた。しかも気づけば、あれだけダメージを受けた筈の体の傷が治っている。

 

 「一体これは……?何が起きてるんだ?」

 

 訳も分からずキョロキョロしていると、そのドームがゆっくりと消え始めた。ドームはやがて完全に消え失せ、周囲の景色がようやく見えるようになった。辺りは戦闘によって出来たのであろう傷痕が生々しく残り、所々煙が上っている。

 

 「う……うう……」

 

 うめき声に気づいて後ろを向くと、一夏さん達が次々と目を覚まし、起き上がってきた。良かった、皆も無事だったんだな。

 

 一夏「夜、月……?」

 「一夏さん、大丈夫ですか?」

 一夏「これくらい何て事……いてて」

 

 痛そうに肩を押さえる一夏さんを支え、その場に寝かせる。傷が見当たらないとは言え、完全に怪我が治ってる訳じゃないだろうから、今は一先ず安静にしてもらわないと。

 

 千冬「夜月、お前は大丈夫なのか……?牙也達は……?」

 「いえ、俺もさっき目を覚ましたばかりなんで……」

 スコール「うう……酷い目に遭ったわね」

 ザック「ハッハッハァ……皆ボロボロだなぁ……!」

 ゼロ「全く……私以上にとんでもない悪党だったわね」

 

 千冬さん達も起き上がってきて、それぞれ思い思いに言葉を交わす。と、

 

 牙也「おーい!皆無事か!?」

 

 向こうから牙也さん達が走ってきた。あれ?なんか一人増えてね?鈴さんよりも気持ち背が低いくらいの白い髪の女の子がいる。

 

 ザック「おう、牙也か……奴はどうしたよ?」

 牙也「心配すんな、さっき無事に撃破したぜ。これで一応は大丈夫だ」

 千冬「倒せたのか、良かった」

 スコール「なんか、今回不甲斐ないわね私達」

 アリス「……仕方のない事だ。お前達ではまだ役不足だったのだからな」

 ゼロ「ぐぬぬ……言い返せないのが悔しい……」

 

 ゼロがなんか悔しそうにしている。まあ皆良いとこなしだったし、仕方ないのかな……

 

 牙也「取り敢えず治療からか、カンナ?」

 カンナ「そうですね。箒様は束様にお電話を繋いで、事情を話して担架を複数持ってきて下さるようお願いして下さい。他の方で怪我が比較的浅い方は、重傷者を運ぶのを手伝って下さい」

 

 カンナと呼ばれた女の子が的確に指示を出していく。あんな小さな子が的確に指示を出してる……凄いな。

 

 数分後、箒さんから連絡を受けた束さん達が合流し、負傷者を次々と医務室に運んでいく。俺も怪我がそれなりに酷かったので、担架に乗せられて運ばれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「はい、重傷者はベッドの方に行ってー、軽傷者はこっちな」

 

 医務室に着くなり、急いで治療を開始する。重傷者は束さんと晴岡先生が中心になって治療を急いでいる。何せ今回は教員部隊に重傷者が多い。黒影トルーパーは元々スペックの低いマツボックリを使うから、防御力は他のロックシードより低め。大ダメージを受ければ、それだけ体に来る負担もデカイからな。今後はエナジーの方のマツボックリの導入も検討するかな……ともかく今は、負傷者の治療を終わらせよう。俺はカンナを手伝って軽傷者の治療を行う。軽傷なら俺やカンナの治癒能力だけでもなんとかなるしな。問題は、今回の一件で大きなダメージを受けた教員部隊や亡国戦闘員達だ。トラウマが植わってなければ良いんだが……

 

 鈴「一夏ッ!!」

 一夏「ん?ああ、鈴kーーゴフッ!?」

 

 突然大きな音を立てて医務室のドアが開き、鈴が飛び込んできた。鈴は椅子に座って治療を受けている一夏を見つけるなり、勢い良く一夏にダイブした。当の一夏は、ダイブの勢いで椅子から転げ落ちる。おい鈴、一夏は一応怪我人なんだからな……?女性陣は「あらあら」といった顔で苦笑い。

 

 鈴「良かった……!一夏が大怪我したって聞いて、いてもたってもいられなくて……!」

 一夏「ははは、大丈夫だってこれくらいーーいてて」

 

 大丈夫アピールをしようとしたが、痛みで肩を押さえる一夏。鈴はそれを見るなり、優しく一夏の肩を擦ってあげていた。

 

 雅樹「それよりも牙也さん達は大丈夫なんですか?剣が思い切り心臓に突き刺さってたでしょ?」

 カンナ「ご心配なく。私が治療致しましたので」

 

 夜月が俺達の怪我を心配してそう聞いてきたが、カンナがそう言って夜月に治癒能力を施す。

 

 カンナ「それで牙也様。確かこちらの夜月様は、別世界から来られたという事で間違いないのですか?」

 「ああ。クラックに吸い込まれてここに来たんだと」

 カンナ「そうですか……そちらに立っておられるアリス様もですか?」

 アリス「……まあな」

 

 カンナの質問にアリスは素っ気なく返す。

 

 カンナ「なるほど……それでしたらお二方、私が元の世界までお送り致しましょうか?」

 雅樹「え、良いんですか!?ありがとうございます、是非お願いします!」

 アリス「……頼む」

 カンナ「お任せ下さい、主の元へ帰る道中、お二人の世界に寄りますので」

 スコール「帰る?」

 

 スコールがカンナの言葉に引っ掛かりを覚えたのか、カンナにそう聞いた。カンナは「はい」と頷いて続けた。

 

 カンナ「私が本来お仕えしている主が、これ以上の介入をせぬよう申されまして……私はこの度、元の世界に帰らなくてはならなくなりました」

 千冬「そうか……私としては、もう少しここにいてほしかったのだがな」

 カンナ「申し訳ありません、これ以上力になれず……」

 「仕方ねぇさ、主の命令だってんなら尚更だ。後の事は俺達でなんとかするさ」

 カンナ「はい。牙也様、箒様、そして皆様方。私がいなくなってからの事、よろしくお願い致します」

 

 カンナはそう言って頭を下げる。これからは、カンナの手は借りず俺達だけでヘルヘイムの騒ぎを収めなければいけない。一層奮起しなくちゃな……

 

 箒「……!牙也、すまないが一旦席を外す。ここは頼むぞ」

 「はいよ」

 

 すると何に気づいたのか、箒が医務室を出ていった。慌てているようにも見える箒のその髪をチラッと見た時、俺は箒の異変にすぐに気づいた。

 

 「あの髪の色……副作用がもう現れたのか……?」

 

 ほんの少しだが、箒の髪が白くなっていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は急いでトイレに駆け込み、自分の髪を鏡で見た。自分でも惚れ惚れするくらいだった黒髪が、ゆっくりとだが白く変色を始めていた。さらに私の両目も、蒼と緑のオッドアイになりつつあるのが分かる。この変色はもう止められないだろう……そうだと理解した。すると、ポケットから淡い光が漏れているのに気づいた。その原因たる光るロックシードをポケットから取り出して見つめる。

 

 「『神のロックシード』か……アダムとイブの話をちょっとだけ姉さんから聞いた事はあったが、禁断の果実とはここまで人を変えてしまう代物なのか……」

 

 自分がゆっくりと変わっていってしまうその光景を鏡を通して見ながら、私は自分の体の変化を直に感じていた。しかし、怖くはなかった。自分が変わっていってしまう事への恐怖を感じなかった。何故だろうか?

 そんな事を考えている内に、私の顔の外見はすっかり様変わりした。髪はすっかり白く染まり、目は右目が蒼、左目が緑というオッドアイになった。最早普通に見ては私が篠ノ之箒だとは気づけないだろう。

 

 ??「篠ノ之……さん?」

 

 後ろから微かに聞こえた声に振り向くと、簪がそこにいた。避難していた皆が少しずつ戻ってきているのか。

 

 簪「そ、その髪……どうしたの?あんなに綺麗な黒髪だったのに……それに、目も……」

 

 私の外見の大きな変化に驚きを隠せない簪。私は「ちょっと訳有りでな」と言って、簪には後で自分から皆に話す事を告げた。簪は何処か納得していないようだったが、「……分かった」と言って戻っていった。やれやれ、事情を説明するのが面倒だな……そんな事を考えながら、私も医務室に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「よし、これで全員の治療はできたな」

 

 最後の怪我人の治療を終え、俺は一息つく。箒が席を外してからは、教員部隊や亡国戦闘員の皆さんの治療を行いながら彼女らに今回の事を謝罪していたが、誰も俺達の事を責めはしなかった。むしろ「今回の件で、自分の弱さを思い知った」というような意見が多く、「これからも宜しくね」とも言われた。信頼されてるのかな……今まであまり実感は無かったけど、今になって実感が沸いてきた。

 とは申せ、いつまでもこの戦いを長引かせる訳にもいかない。いずれはこの戦いを収めて、ドライバーとロックシードは全てヘルヘイムの森で管理しておかなくてはいけなくなる。何故って?元々これらは、あってはならない物だからさ。この世界は本来ISで成り立ってるから、異端たるアーマードライダーの力がいつまでもあってはならない。少しでも早く、この戦いを収束に向かわせないと。その為には……

 

 ゼロ「あら、どうしたの?」

 「……いや、別に」

 

 一瞬だけ隣にいるゼロを見て、すぐに目線を戻す。いずれはゼロをーー母さんを倒さないといけない。この手で、この力でーー。

 

 箒「すみません、戻りました」

 束「あ、お帰り箒……ちゃん?」

 

 そこへ箒が戻ってきた。しかしその顔は大きく変わってしまっていた。あの美しい程に黒かった髪は白く変色し、目は蒼と緑のオッドアイになっている。あまりにも変わり果てた顔になった箒に皆は驚きを隠せずにいる。

 

 ゼロ「あ、あら?えっと……箒ちゃんで、合ってるのよね?」

 箒「はい」

 千冬「牙也!これはどういう事だ!?」

 束「箒ちゃん、一体何があったの!?」

 

 千冬さんに掴み掛かられるが、俺は何も言えなかった。代わりに当事者の箒が全てを話した。二人揃って気を失っている間に、精神世界の中でカンナの主に会った事、箒が持つオーバーロードに酷似した能力を治す方法として、禁断の果実の力の一端であるシャインマスカットの力が必要だと知らされた事、その代償として箒は不老不死になってしまう事、箒はもしもの時は皆が止めてくれるのを信じ、その力を自分から受け取って使用した事。事情を聞き、皆は唖然としていた。

 

 箒「私の顔がこのように変化したのは、その副作用の一つだと思います。何せ『神のロックシード』を自らの意思で使ったんですから」

 束「箒ちゃん……」

 箒「天罰を受けたんですよ……神様の私物を勝手に使って、怒られない訳ないですし」

 スコール「……後悔は?」

 箒「してません。私が決めた事ですから、後悔なんてしませんよ。それに、牙也も共犯で罰を受けたから……そうだろ?」

 「ああ。俺自身の闇をその一身に纏い続ける。それが俺への罰だ」

 

 懐からゼロロックシードを出して、俺はそう呟く。

 

 「俺は他人を心から信じていなかった。全て己の手で解決しようとし、心の内を晒さなかった。その結果がこれさ……馬鹿だよな、俺……一番先頭に立って戦ってる奴が、皆を導くような存在だった俺が、皆をきちんと信じていなかった事に今の今まで気づかなかったとはね……」

 

 俺は自嘲気味にそう呟いた。思わず溜め息が零れる。

 

 ゼロ「でも、それに気づけたのなら良かったんじゃないの?」

 「……あ?」

 ゼロ「他人から教えてもらったとは言え、自分に何が足りないか分かったんでしょ?それならそれで万々歳じゃないの。はっきり理解出来たのなら、そこから挽回する事だって不可能じゃないわ、そうでしょ?」

 

 うーん、確かに……てかゼロはさ、敵に塩送ってるの気づいてないのか?

 

 ゼロ「自分の事がちゃんと分かったのなら、そこから直していきなさいな。それでこそ私の子よ」

 「……今は敵同士だろうに」

 ゼロ「あら失礼、ふふ……それじゃ私は失礼するわね」

 束「もう行くんですか?」

 ゼロ「ええ。奴を倒したから同盟を続ける意味は無くなったし、これ以上塩は送れないわよ」

 

 ゼロはそう言って立ち上がる。と、何か思い出したかのように俺に顔を近づけてきた。何、「ちょっと耳を」だと?渋々耳を近づけると、

 

 

 

 

 ゼロ「ーーーーーー」チュッ

 

 

 

 

 ……あ?

 

 ゼロ「ふふ……それじゃあね、IS学園と亡国企業の皆さん」

 

 ゼロはクラックを開くと、ささっと去っていった。おかしいな、今額から変な音がーーってまさか……?

 

 スコール「あらあら、敵の筈の母親からキスなんて貰っちゃって……ふふ」

 箒「牙也……?」ユラァッ

 

 箒がハイライトオフの状態ですり寄ってくる。

 

 「……後でな、箒」

 

 今はもうこうとしか言えねぇ……複雑な思いを抱えながら、俺はすり寄ってくる箒をあやしつつも、頭も抱えるしかなかった。けどそれ以上に気になったのは、ゼロの一言だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゼロ『葬送の地へ行きなさいーー私達が眠るその地へ行きなさい』

 

 

 

 

 

 

 

 





 次回でこの章は最後ですかね。そろそろこの小説も終わりになるかな……(ネタ切れ気味なので)?


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