IS×仮面ライダー鎧武 紫の世捨て人(完結) 作:神羅の霊廟
オリジナルオーバーロード、登場っ!
IS学園は、さらに混乱に巻き込まれる…………
三人称side
驚愕・憤怒・好奇。そんな感情が、IS学園の会議室を支配していた。
インベスの襲撃を受けて結局中止となったクラス対抗戦から二日たった。結局のところ、他の会場にはインベスは現れず、被害が出たのは一年生のクラス対抗戦を行っていた第1アリーナのみであった。
理事長の轡木はその日、会議室に千冬を始めとした教員部隊・楯無を始めとした各国代表や代表候補生(+箒)を集め、会議を開いた。教員や代表候補生の目は、現在報告を行っている一人の男に向けられていた。
アーマードライダー蝕――――紫野(旧姓雷)牙也である。
牙也「―――――と言うことで、俺からの報告は以上。詳しくは各々に配った報告資料を読むなり、スクリーンに流していた映像を見るなりしておいて欲しい」
轡木「牙也君、ありがとう。それでは、報告を元に今後の怪物対策を話し合っていこうと思いますが、その前に何か質問はありますか?」
すると、真っ先に手を挙げた者がいた。織斑春輝だ。
春輝「理事長、こいつは一体誰なんですか?いつからここにいるんですか?こいつはあの怪物と繋がりがあるんじゃないですか?」
轡木「まあまあ落ち着きなさい、織斑君。牙也君、皆に自己紹介を」
牙也は面倒臭そうに立ち上がって、自己紹介を始めた。
牙也「先月からこの学園に用務員として雇われた、紫野牙也――――――またの名を、『アーマードライダー蝕』という。よろしく頼む」
室内がざわめき出した。無理もないだろう。『アーマードライダー』という見たことも聞いたこともない単語がでてきたのだから。
「アーマード…………ライダー…………?」
「あれISじゃないの………………?」
「一体何がどうなって………………」
会議室は、困惑の声が目立つ。一方で、
「ISを越える力ですって………………!?」
「認めない…………認めないわ…………!」
ISを最強の力と考えていた一部の女尊男卑の教員や生徒は、これに憤りを覚えていた。
しかし、牙也はそんなことは気にもとめずさっさと着席した。
春輝「おい!まだ最後の質問に答えてないぞ!お前、あの怪物を知ってるだろ!あの怪物をここにけしかけたのもお前だな!?」
春輝はさらに牙也に噛みついてきた。対して牙也は、無表情で答えた。
牙也「ああ。確かに俺は、あの怪物を知ってる。だが、怪物をけしかけたのは俺じゃあない」
会議室にどよめきが起こった。
春輝「嘘つくな!お前以外に誰がこんな事するっていうんだ!?」
轡木「織斑君、気持ちは分かるが落ち着きなさい」
轡木がこれを止めにはいった。
春輝「理事長!?でも―――――」
轡木「牙也君、皆に説明してあげなさい。貴方が知っている全てを」
牙也「はい」
牙也はスクリーンの横に立って近くにあったパソコンを操作し、一つの写真をスクリーンに映した。そこに映っていたのは、アリーナに現れた丸っこい怪物だった。
牙也「皆が見たであろうこの怪物。これは名を『インベス』と言う。こいつらはアリーナにも開いたジッパー型の裂け目『クラック』の中に住む怪物だ。クラックの中に入ると、『ヘルヘイムの森』と言う森林が広がっている」
そう言って、牙也はパソコンを操作して新たにクラックの写真とヘルヘイムの森の写真をスクリーンに映した。
牙也「『ヘルヘイムの森』は、いわばインベスの住みかだ。いつもはインベスはここで暮らし、森の木に実っている実を食べているが、たまに今回みたいにクラックを開いて別の世界に現れて人を襲うんだ。そして、この丸っこいインベス―――俺らは下級インベスと呼ぶが、こいつらが大量のヘルヘイムの果実やロックシードを食べると、異形に進化する」
再びパソコンを操作してスクリーンに映し出されたのは、下級インベスと共に襲ってきたコウモリインベスだった。これを見た鈴はガタガタと体を震わせ、近くにいたセシリアに介抱されていた。
牙也は次に、懐から『戦極ドライバー』と『ブルーベリーロックシード』を取り出して、皆に見えるように高く掲げた。
牙也「これは、『戦極ドライバー』。アーマードライダーに変身するためのベルトだ。これに、この『ロックシード』を施錠して変身する。原理に関しては知らん。束さんでも解析出来なかったからな」
そう言って牙也は箒を見た。
箒「以前姉さんが私が使っている『戦極ドライバー』の解析を試みたことがあった。だが、あまりにもオーバーテクノロジーの塊であったために解析不可能となった。これには姉さんも匙を投げていたよ」
箒は自身の『戦極ドライバー』を見せながらそう言った。
箒「ちなみに『ロックシード』だが、『戦極ドライバー』を装着した状態でヘルヘイムの果実を手に取ることで変化する。これも原理は分からないがな」
そう付け加え、箒は戦極ドライバーをしまった。
セシリア「私からも、質問よろしいでしょうか?」
続いて、セシリアが手を挙げた。
セシリア「イギリス代表候補生のセシリア・オルコットと申します。以後お見知りおきを」
牙也「丁寧な自己紹介痛み入る。して、質問は?」
セシリア「はい、その『インベス』と言う怪物が一体何なのか、ということです」
それを聞いた牙也は、困ったような顔をして頭を抱えた。
牙也「それを聞いてくるか………………」
そう言った牙也の顔はどこか悲しげで、なおかつ苦しげであった。
セシリア「失礼しました、あまり話したくない事でしたか?」
そうセシリアが聞くが、
牙也「いや、知るべきだとは思うが、聞いていい気分になるようなものじゃないんだ」
牙也はそう言って顔を背けた。
轡木「私達にも教えてくれないか、牙也君」
そう言ったのは、轡木だった。
轡木「知っておくべき事なら、話したほうがいい。何も知らずに戦って、後で正体を知って後悔するのは………………」
そこまで言って、轡木は口を閉ざした。
牙也「分かりました、お教えします。ただし、この事は他言無用でお願いします」
そう言って、牙也は話し始めた。
牙也「『インベス』の正体、それは―――――――」
三人称side end
牙也side
俺は一人部屋に戻って来ていた。入室初日に千冬さんが涙目で片付けた部屋は、一人だったためか広く感じた。千冬さんは、理事長とまだ話をしていて帰ってくるのはもう少し遅くなるだろう。俺はベッドに腰掛け、ブルーベリーロックシードを握り締めた。
??「………………来たか」
「!?」
その声に正面を向くと、そこには――――
??「………………久しぶりだな、少年よ」
俺を変えた存在――――『オーバーロード・シュラ』が、向かいのベッドに腰掛けていた。
牙也side end
次回、牙也に新たな力が託される―――――