IS×仮面ライダー鎧武 紫の世捨て人(完結)   作:神羅の霊廟

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 投下します。




第54話 崩レ行ク均衡

 

 「はぁ……はぁ……」

 

 磔状態から蔦を伸ばして無理矢理体を壁から引き剥がす事で、ようやく解放された私だが、体はあちこちボロボロで怪我も酷い。やむを得ず壁にもたれ掛かって座り込む。

 目の前を見ると、先程の少女がイチカを圧倒している。手に持った歪な形の剣を振るい、イチカが生成する武器を次々と壊していく。更に隙有らば一気に接近して攻撃を当てる。しかもその動きは、とても視認できるものではない。イチカもその俊敏なーーいや、俊敏という言葉では足りないかーー動きについて行けないようで、防御の暇さえもなくなすがままだ。

 

 イチカ「てめぇこのクソガキ……何者だ!?」

 ??「……クソガキ?誰の事?私にはお前の言うクソガキは、お前以外には見当たらないんだけど」

 イチカ「んだと!?」

 ??「ほら、そう言うところ。ちょっとからかえばすぐ怒る。クソガキの特徴そのものだよ」

 イチカ「てめぇ……!この最強の神に向かって……!」

 ??「最強?神?笑わせないで。お前みたいなのが神なら……世界はとっくに滅びてるよ。それにーー」

 

 少女は話しながらも攻撃の手を緩めない。イチカは生成した武器を少女に放って応戦するが、少女の神速の動きを見極められず、ただただ無様に攻撃を受け続けるだけ。最後に少女が腹部に豪快な蹴りを入れてイチカを壁に叩き付け、変身を解除させた。

 

 ??「……こんな弱過ぎる神なんかいる筈がないから」

 

 無様に地面に倒れ伏したイチカを侮蔑の瞳で見ながら、少女はそう吐き捨てた。

 

 イチカ「野郎……次会った時は、そのひねくれた頭を叩き割ってやる!」

 

 そう吐き捨てると、イチカはノイズのようになって消えた。奴め、何処かに逃げたか……と、先程の少女が私を見るなり急いで駆け寄ってきた。

 

 ??「……大丈夫?」

 「ああ、大丈bーーぐっ!」

 

 なんとか立ち上がろうとするが、全身に痛みが走り、立ち上がれない。すると少女が私の肩を持って立ち上がらせてくれた。

 

 「すまないな……手間掛けさせて」

 ??「別に……これくらい、何ともないから」

 「それでも礼だけは言わせてくれ……ありがとう」

 ??「……どういたしまして」

 

 少女は淡々と言って私を肩に担ぐ。

 

 ??「……出口は何処?」

 「こっちだ……そうだ、牙也は……!牙也を、助けないtーーぐっ!」

 ??「無理しないで。大怪我してるから」

 「だが……!」

 ??「おーい、誰かいないか!?」

 

 と、正面から少年らしき声が聞こえた。牙也の声ではない、となると誰だ……?すると正面から走ってきたのは、全身をエメラルドのアーマーて包み、額の二本角が目を引く姿の人物だった。肩に誰か担いでいるが……ッ!?

 

 「牙也……!?牙也ッ!」

 

 担いでいるのが牙也だと気づき、慌てて駆け寄ろうとするが、うまく歩けず転んでしまった。慌ててアーマーを付けた人物が変身を解除して駆け寄ってくる。

 

 ??「君、この人の知り合い?だったら何処かに病院か何かない!?大怪我してるんだ、早く病院に連れて行かなきゃまずいよ!」

 「大丈夫だ……ここはIS学園、医療設備は整ってるから……」

 『IS学園?』

 

 少年と少女はそれを聞いて首を傾げた。この二人、IS学園を知らないのか。二人はどうやら異世界の人間らしい。後で話を聞かなければ……

 

 ??「取り敢えず、一旦外に出よう……道を教えて?」

 「分かった……そこの通路に入ってくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は牙也に頼まれて篠ノ之を呼んだ後、この第二アリーナの正面入口で一夏達や黒影トルーパー達と共に待機していた。第二アリーナは牙也の命によって立ち入り及び接近禁止となり、回りには生徒達が野次馬状態でアリーナを見ている。が、あれから三十分は経つのだが、一向に牙也達から連絡が来ない。何かアクシデントでもあったのだろうか?

 

 スコール「千冬、どうする?試しに踏み込んでみる?」

 「……いや、敵の実力が未知数な以上、何の用意も無しに突入するのは危険だ。もう少し待ってみよう」

 

 スコールは突入を提案したが、私は却下した。牙也が私達を撤退させたという事は、奴は相当強いのだろう。恐らくだが、今の私達では太刀打ちできないと理解して私達を下げたのだと思う。牙也ならそう易々とは負けないとは思うが……

 

 隊員「隊長!誰かが来ます!」

 スコール「銃火器準備!いつでも撃てるようにして!」

 

 スコールが部下に命令を下し、部下達は素早く動いて隊列を組み、出入口に銃口を向ける。

 

 スコール「合図を出したら撃ちなさい」

 

 そう言ってスコールは鋭い目を同じく出入口に向ける。私もすぐに動けるようゲネシスドライバーを用意して待つ。やがて人影が見えた。

 

 「ッ!?牙也!?篠ノ之!?」

 スコール「撃ち方止めッ!銃を下ろしなさい!」

 

 出入口から出てきたのは、一夏と同い年くらいの少年と全身を黒いパーカーで包んだ誰かだ。二人の肩にはボロボロになった牙也と篠ノ之が担がれている。スコールが慌てて部下に命じて銃を下ろさせる。私はスコールと共に二人に歩み寄った。

 

 「牙也と篠ノ之を助けたのは、お前達か?」

 ??「はい!二人は大怪我を負っています、すぐに治療を!」

 スコール「分かったわ。誰か担架を二つ持ってきなさい!それと治療用具を医務室に準備しなさい!急いで!」

 

 スコールの部下が慌てて担架を取りに行く。二人に牙也と篠ノ之を地面に寝かせるように言うと、二人はそっと二人を寝かせて楽な姿勢にさせた。

 

 「牙也と篠ノ之を救ってくれた事、感謝する。だが、お前達には後で色々聞きたい事がある、大人しくついて来てくれるか?」

 ??「はい、分かりました」

 ??「……」コクリ

 

 少年は元気よく返事し、パーカーを被った誰かは小さく頭を縦に振った。OKサインだろう。するとちょうど担架が運ばれてきた。牙也と篠ノ之をそれぞれの担架に乗せて医務室に向かわせ、私は何があったのか話を聞く為に牙也達を担いできた二人を念のため拘束した。

 

 「ではついて来てくれ」

 

 二人を連れ、私はスコールと共に医務室へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 医務室に着いた時、室内は大混乱状態だった。やや狭めの室内を束を含めた数人の医者が駆け回り、牙也と篠ノ之は束作の治療用カプセルに放り込まれて治療を受けている。束がなにかブツブツ呟きながらカプセルとコードで繋がったパソコンに色々打ち込んでいく。

 

 「束。二人の容態は?」

 束「あ、ちーちゃん。二人とも生きてるのが奇跡なレベルの大怪我だよ……出来る限りの事はするけど、二人ともしばらく意識は戻らないだろうし、余談を許さない状況はしばらく続くと思う……」

 「そうか……二人の目は覚めるか?」

 束「……正直言うと、五分五分。さっきも言ったけど、二人の怪我は常人なら即死レベルだったからね……でも束さんは信じてる。牙君も箒ちゃんも、必ず目を覚ますって」

 「そうだな……頼んだぞ、束」

 束「任せといて!」

 

 サムズアップを見せて再びパソコンに向き直る束。しかしその顔は大分沈んでいた。牙也、篠ノ之……お願いだ、死なないでくれ……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、生徒達の方も混乱を見せていた。突然第二アリーナが立ち入り禁止になったのだから当然かもしれないが、

 

 「ねぇねぇ、牙也さんが大怪我したって本当!?」

 「本当本当!さっきボロボロになった牙也さんと篠ノ之さんが運ばれていくのを見た人がいるみたい!」

 「嘘!?牙也さんも篠ノ之さんも死なないよね……!?」

 「だ、大丈夫よ!前だって大怪我しても生きて戻ってきたじゃない!」

 

 何処の教室もこの騒ぎの事で持ちきりだ。そして箒の所属クラスである一年一組も例外ではない。

 

 ラウラ「牙也程の強者をいとも簡単に倒すとは……どれだけ強いのだ、その人物は?」

 鈴「確かにそうね……あんなボロボロになってる牙也、初めて見たわ」

 シャルロット「二人とも、大丈夫かな……?」

 セシリア「お二方……どうかご無事で……!」

 

 何も出来ない自分達を呪いながらも、ただただ牙也と箒が目を覚ましてくれる事をひたすらに祈るしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方ーー

 

 

 

 「ぎゃあああああ!!」

 「な、何なのよこいつ!?なんで攻撃がーーぐはっ!?」

 「て、撤退、撤退ー!!」

 

 とある国に建つビル。海沿いに建つビルのその内部は、まさに死屍累々の有り様であった。あちこちに死体が転がり、ISの残骸が壁に突き刺さり、大量の血が辺り一面を覆っている。生き残った女性達は既に戦意喪失し、慌てて逃げ出していく。

 

 イチカ「ああ~……気分が良いぜ。最高にHighって奴だ……!」

 

 その原因は、学園から撤退したイチカであった。あの後エナジーアイテム『回復』を使って傷を癒したイチカは、再び学園襲撃を画策し、その尖兵として使うためにそのビルを襲撃した。何故他のビルではなく、ここと決めて襲撃をしたのか。

 それは、元々イチカがいた世界ではこのビルが亡国企業の本部だったからだ。かつて亡国企業を襲撃してスコール達を傘下に引き入れたイチカ、だからこそ今回もそうしてスコール達を傘下に加えてやるつもりだったーーのだが、いざ行ってみるとそこは亡国ではなく、ゼロが社長を務める会社『株式会社メシア・ロード』であった。自身が知っている組織ではなかった事にがっかりしたイチカだが、探りを入れてみると、亡国以上の物がそこに隠れていた。これにはイチカも狂喜乱舞し、すぐに襲撃を実行に移した。

 そしてーー

 

 

 

 ゼロ「あ、貴方……何者……!?まさか、雷牙也の刺客!?」

 イチカ「はあ?誰だよそれ?ま、俺にとっちゃどーでも良い事だけどなぁ……!それじゃ、今日からここは俺の物だ。お前は用済み、ここには必要ない。消えな」

 

 イチカはそう言うと、ガシャコンバグヴァイザーⅡをビームガンモードにし、Bボタンを二回押した。

 

 《キメワザ!》

 

 《Critical Judgement》

 

 バグヴァイザーから極太のビームが放たれ、アーマードライダーマルスに変身したゼロの体を飲み込む。やがてビームが止まると、そこにはゼロの姿はなく、ゼロがさっきまでいた場所の後ろには、ビームによる大きな穴がぽっかり開いていた。それをイチカはガシャットの力で直し、社長の椅子にドカッと座り込む。

 

 イチカ「さあて……始めッか。この世界全てを手中に収める、第一手をなぁ……!」

 

 あまりにも気持ち悪い笑みを浮かべながら、イチカは『God Mighty Creator IX』のガシャットを見つめる。更にポケットから別のガシャットを取り出して起動した。

 

 

 

 

 

 『NOISE SOLOMON』

 

 

 

 

 





 ゼロは果たしてーー?


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