IS×仮面ライダー鎧武 紫の世捨て人(完結) 作:神羅の霊廟
今回はいつもよりちょっと短めです。
カルマ「う……ううん……」
ようやくカルマが目を覚ました時、時刻は既に夜7時になっていた。カルマが寝かされていたベッドの脇には先に目を覚ましたデネブと刀奈が心配そうにしていたが、カルマが目を覚ますと、
刀奈「カルマ様!」
デネブ「カルマ!」
二人揃ってカルマに抱き付いた。
カルマ「ちょ、刀奈、デネブ!痛い痛い!」
牙也「ああもう、一旦離れろ!彼は一応怪我人なんだから!」
カルマに抱き付く二人を、その後ろにいた牙也が首根っこを掴んで引き剥がす。刀奈はブー垂れていたが、牙也に「彼の怪我を酷くする気か?」と言われると渋々離れた。
千冬「牙也、最後の一人は目を覚ましたか?」
そこへ千冬が箒とカンナ、楯無を伴って医務室に入ってきた。
刀奈「織斑先生!?それに……私!?」
楯無「え、嘘!?なんで私が!?」
千冬「やはりそうか……カンナの予想通りだったな」
カンナ「一番可能性のある予想でしたから」
千冬はため息を吐いて刀奈に向き直った。
千冬「目が覚めたばかりで悪いのだが、まずはお前達三人が何者なのかを聞きたい。あの列車についても嘘偽りなく全て話してくれ」
カルマ「……分かりました。私はカルマ・アガレスと言います。こっちが相棒のデネブ、そして皆さんもご存知でしょうが更識刀奈です」
刀奈「よろしくね」
デネブ「よろしく頼む。ところで、飴食べるか?」
千冬「結構だ。それで、あの列車は?」
カルマ「あれは『ゼロライナー』と言います。私達はあの列車に乗って時の流れに異常がないか見回りしていたんです。その時に蔦が巻き付いた線路を見つけて調べていたら……」
デネブ「突然ゼロライナーが制御不能に陥って、気がついたらここで寝かされてたって事だ」
千冬「時の流れ?」
束「ほ~ほ~、成る程ね~。つまりあの列車はタイムマシンみたいなものなんだね~」
突然医務室の窓から束が顔を出した。
千冬「束」
束「ちょーっと調べさせてもらったよ~。とは言っても、特に異常らしい異常は無かったけどね~」
カルマ「異常なし?そんな筈は……」
デネブ「確かにあの時、ゼロライナーに異常が起こったのだぞ?」
束「う~ん、束さんにもさっぱり……牙君、何か分かるかな?」
牙也「え、俺ですか?うーん……もしかすると、そのゼロライナーが通ってきた線路自体が原因じゃないかな。大量の蔦が絡まってたって話だし……多分その蔦、ヘルヘイムの植物かも」
カルマ「ヘルヘイム……ですか?」
牙也「ああ。この世界はな、ヘルヘイムの森っていう異世界と意図的に繋がってしまっているんだ。恐らくアガレス達三人が見た蔦はヘルヘイムの森に生える植物で、その蔦が絡まってた線路が、ゼロライナーを使って入れるこの世界への入り口だったんだろうな」
カルマ「成る程……ではゼロライナーに異常が出たのは?」
牙也「それは俺もさっぱりだ。あくまで推測だが、その線路を通る間だけ異常が起きてたのかもしれないな」
カンナ「もしかすると、最初からアガレス様達をここに呼び寄せる事が目的で、その線路が敷かれていたのではないでしょうか」
デネブ「上手く誘き寄せられたという事か……だがだとしたら、あの線路を敷いたのは誰なんだ?」
牙也「それは俺達でも分からんよ。調べようがない」
カルマ「そうですよね……ところで束さん、先程ゼロライナーを見たと言いましたが、ゼロライナーは今動きますか?」
束「う~ん、束さんが点検した限りじゃあの列車は暫く動かせないよ、車輪が欠けてたりしてたし……動かしたら危険かも。それに線路が無いんじゃ、あの列車が動いたとしても帰れないんじゃないかな?」
デネブ「そうか……どうする、カルマ?」
カルマ「どうすると言われてもねぇ……動けないならどうしようもないよ。暫くはゼロライナーを修理しながらこの世界で生活するしか……」
千冬「それなら、暫くここの寮の空き部屋でも使うか?」
すると悩んでいたカルマに千冬がそう提案した。
カルマ「え、良いんですか?」
千冬「部屋は沢山余っているからな。泊まる人間が一人や二人増えたところで、別に何ら変わりはせん。ゼロライナーとやらが直るまでは、ここでゆっくりすると良い。学園長には私から話を通しておく」
カルマ「千冬さん……ありがとうございます」
千冬「ただすぐには部屋は用意できん、部屋の掃除等が必要だからな。それにお前達は一応怪我人だ、今日は念のため医務室で一夜を過ごせ」
デネブ「何から何まですまない」
刀奈「ありがとうございます」
千冬「では私は一旦戻るが、何か用件があるなら篠ノ之かカンナに頼め。牙也と楯無はちょっと来い」
そう言うと千冬と牙也、それに楯無は医務室を出ていった。
千冬「ところで牙也、何故お前達があのゼロライナーに乗っていたのだ?」
牙也「ああ、それなんですけどね……」
職員室に戻る途中、千冬は牙也に何故ゼロライナーに乗車していたのか聞いた。
牙也「クラック使って旅してる途中で、あのクラックがゼロライナーの二両目にたまたま繋がったんですよ。それでその後あの事故が起きて……」
千冬「成る程、偶然乗ってしまったのか」
牙也「まあ皆無事で良かったですよ、ほんと。下手すりゃ惨事だった」
楯無「そうね、列車内にいた牙也君達もそうだけど、もしあの列車が現れた場所に誰かがいて下敷きになった……なんて事になったら……」
楯無のその言葉に三人揃って身震いする。
牙也「……今回はほんと運が良かったな」
千冬「そうだな……話を変えるが牙也。明日寮三階の空き部屋を二つ程きっちり掃除してくれ、あの三人を泊めるからな」
牙也「分かりました」
千冬「楯無は明日も私とともに彼らの事情聴取だ」
楯無「はい」
千冬「では私からは以上だ。今日はしっかり休めよ」
千冬はそう言うと職員室に入っていった。
牙也「ところで楯無。さっきの彼女の名前、刀奈っつってたよな?もしかして、あれがお前の本名なのか?」
楯無「ええ。楯無という名前は、更識家当主が代々受け継ぐ名前なのよ」
牙也「成る程ね……一ついいか?」
楯無「何よ?」
牙也「……お前当主としての自覚あんの?」
楯無「失礼ね!ちゃんとあるわよ!」
牙也「仕事を虚に押し付けたりしておいてか?」
楯無「うっ!」
牙也「……まあ迷惑掛けない程度にしっかりやれや。じゃないと簪に愛想つかされるぞ」
楯無「……分かってるわよ」
カルマ「私達を助けていただき、ありがとうございました」
カンナ「顔をお上げ下さい、アガレス様。実を言うと、私達も助けられた者なのですよ」
デネブ「どういう事だ?」
カンナ「それはですねーー」
カンナはその経緯を逐一話した。
カルマ「そうですか……巻き込んでしまって申し訳ありません」
箒「謝らなくて良い、私達がたまたま乗り合わせた事にアガレス達は気づかなかったんだ。それにどう転んでも、あの事故は防げなかっただろう」
カルマ「そう言っていただけると、多少気持ちが楽になります……」
刀奈「二人ともありがとうね。カルマ様や私達を助けてくれて」
カンナ「いえ、お気になさらず……ところで刀奈様、先程アガレス様の事をカルマ様とお呼びに……」
刀奈「ええ。だってカルマ様は私がお仕えしているお方だからね」
箒「更識家の事はうちの会長や簪から少し聞いていたが……アガレスはそんなに重要な人物なのか?」
刀奈「勿論よ!だってカルマ様は皇族であり、私と結婚の約束もしているからね!」
カルマ「ちょ、刀奈!?」
カルマが慌てて止めたが、既に遅い。刀奈の思わぬカミングアウトに、
箒「( ゚д゚)」ポカーン
カンナ「( ゚□゚)」アングリ
二人はこの表情のまま固まってしまった。
カルマ(やれやれ、これから大変になりそうだな……)
カルマはそう思いながら思わず頭を抱えてしまうのであった。
現在ヒグマチキンさんの『IS×仮面ライダー 仮面ライダー炎龍』とコラボ中です、そちらもお読み下さい。
コラボして下さる作者の方を引き続き募集中なので、よろしくお願いいたします。ではまた次回!