IS×仮面ライダー鎧武 紫の世捨て人(完結)   作:神羅の霊廟

106 / 174

 正直言って美食屋にはなりたくないわ。




コラボ6 飯テロ!(7)

 

 牙也「……んあ?」ムクッ

 

 牙也が目を覚ました時一番に見えたのは、暗い部屋に小さく灯りを灯している電球だった。体を起こして回りを見回すと、どうやら牢屋の中にいる事がすぐに分かった。ぼんやりとだが、鉄格子のようなものが見える。鉄パイプのベッドから這い出して、暗い牢屋の中を一先ず手探りする。そしてあらかた終えると、今度は自身が着ている服をゴソゴソし始めた。

 

 牙也「あれ、戦極ドライバーとロックシードがない。バグヴァイザーもだ。没収されたかな?」

 

 戦極ドライバーとロックシードが無くなっている事を確認し、牙也は辺りを見回す。自分以外誰もいないのか、他の牢屋は真っ暗であった。

 

 牙也「さーて、どうしたもんかな……?」

 ??「ありゃ、起きたんだね」

 

 その声に牢屋の外を見ると、白衣にウサミミ型のカチューシャを付けた女性がいた。

 

 牙也「この世界の束さんか」

 束「そのとーり!それにしても、本当に異世界の人間なんだね~君。この変なベルトとか錠前とか、束さんも見た事ないよ」

 

 そう言って束は懐から戦極ドライバーとロックシード、それにガシャコンバグヴァイザーを取り出した。

 

 牙也「あ、束さんが持ってたのか。解析でもしたの?」

 束「まぁね~。いや~、本当にオーバーテクノロジーの塊だね、これ。いっくんのいた異世界とはまた違うものなんだね」

 牙也「この世界の一夏が何処の世界に飛ばされたかは知りませんが、少なくとも束さんが思っている世界とは違うと思います」

 束「なるほどね~。てなわけで、これ頂d「駄目です」じゃあ技術だけd「駄目です」ケチ!」

 牙也「何とでも言って下さい。この技術を安易にばら蒔かれたら堪りませんよ」

 束「そんなに危険なの?」

 牙也「それ自体がとんでもないパワーを秘めてますから。それこそ、ISを凌駕する……いえ、最悪この世の兵器さえも凌駕するでしょうね」

 束「うそーん……なんか負けた気分……」

 牙也「だからこそ、これはこの世界に置いておく訳にはいかないんです」

 

 そう言う牙也の手には、いつの間に束から回収したのか戦極ドライバーとロックシード、それにガシャコンバグヴァイザーが握られていた。

 

 束「え?ちょ、いつの間に盗ったの!?」

 牙也「盗ったって人聞きの悪い……元々俺のなんですよ、分かってますか?」

 束「あ、あはは……べ、別にそれを盗ーーパクって研究して使おうなんて思ってないからね、あはは」

 牙也「……束さん、後で地獄万力の刑に処しますからそのつもりで」

 束「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

 

 束が土下座で謝っている時、

 

 牙也「!」ピクッ

 

 牙也は何かを察知した。

 

 牙也「束さん。今箒達は何処にいますか?」

 束「え、箒ちゃん達?えっと、確かこの時間は第二アリーナにーー」

 

 そうして土下座状態の束が顔を上げた時、既に牢屋の中に牙也の姿はなかった。

 

 束「え、嘘!?ど、何処に行っちゃったの!?」

 

 束は何が起こったのか分からず、慌てて地下牢を飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『グオオオオオオオ!!』

 

 

 咆哮を上げる緑色の龍。それを見た千冬達の動きは素早かった。

 

 千冬「春十と凰、ボーデヴィッヒはあの龍を惹き付けろ!一夏が来るまで何とか耐えるんだ!」

 『はい!』

 千冬「オルコット、デュノア、篠ノ之は他の生徒達をここから脱出させろ!終わり次第春十達を救援だ!」

 『はい!』

 

 今まで散々事件が起こったIS学園。さすがに緊急時の対応は最早ザルではなく、その対応の早さも充分過ぎるものであった。千冬の素早い指示を受けて専用機持ちが素早く行動に移り、他の生徒達を次々とアリーナから脱出させていく。

 

 一夏「千冬姉!」

 千冬「一夏か!ちょうど呼ぼうとしていた所だ、あれが何なのか分かるか?」

 

 そこへ千冬が連絡するよりも早く、一夏が到着した。一夏は目の前で暴れる龍を見て目を見開いた。

 

 一夏「あれは……!確か『ドラゴーヤ』!」

 千冬「ドラゴーヤ?」

 一夏「ああ。あいつは捕獲レベルが100近いから、春十兄達だけじゃあいつの相手はキツいかもしれない。俺も加勢するぜ!千冬姉は引き続き皆の避難を!」

 千冬「分かった!」

 

 千冬が残りの生徒を避難させに行ったのを確認して、一夏は自身のIS『食欲悪魔(ブラッドディアボロス)』を展開し、愛用する二本の包丁を取り出した。名をそれぞれ『黒星』『白海』という。

 

 一夏「誰がお前をここに寄越したのかは知らねぇが……ドラゴーヤ、お前を調理してやる!」

 

 ドラゴーヤに向けて駆け出した。

 

 一夏「春十兄達、離れて!無限の料理術・高山分け!」

 

 一夏の声に反応して三人が素早くドラゴーヤから離れると、一夏が持つ二本の包丁から巨大な斬撃が放たれた。しかし危険を察知したのか、ドラゴーヤはその巨体を大きく捻らせて斬撃を華麗に回避した。そして尻尾を振るって春十達を叩き落とそうとする。大振りな尻尾攻撃を掻い潜るようにして回避する三人。

 

 一夏「ドラゴーヤは確か、体の何処かに必ず一つ弱点がある。そこを狙えば簡単に倒せるけど……問題はそれが何処なのか、なんだよな」

 

 ドラゴーヤを捕獲及び生きた状態から調理する場合、ドラゴーヤの体の何処かにある弱点部位に攻撃を仕掛けてノッキングをしなければならない。そうしなければ大事な旨み成分が体から全て流れ出してしまうのだ。

 しかし実を言うとその弱点部位というのが厄介で、個体毎にその弱点部位が異なり、ドラゴーヤ一匹捕獲する毎に毎回弱点部位を探さなくてはならない。しかもその部位を目視だけで探すのは、ある地点から一㎞離れた場所にいる蟻一匹を見つけるくらい難しいのだ。ドラゴーヤの捕獲レベルが高いのは、元々の強さに加えてこの弱点部位を見つけるのがとても難しい為だ。

 

 一夏「……ああもう、悩んでても仕方ない。とにかく、他の皆に極力目を向けさせないようにしながら、弱点部位を見つけなきゃな!」

 

 とにかくドラゴーヤを止めなくては。そう自分に言い聞かせ、一夏は包丁を再び構える。

 

 一夏「無限の料理術・竜巻微塵切り!」

 

 一夏は二本の包丁を回転させ、竜巻の形をした斬撃を飛ばした。渦を巻く竜巻はドラゴーヤに真っ直ぐ突っ込んでいき、ドラゴーヤの特徴的なゴツゴツした緑色の甲殻を削り取っていく。しかし削られる甲殻は微々たるもので、ドラゴーヤには大したダメージにもならなかった。

 

 『グアアアアアアア!!』

 

 逆に一夏の攻撃を受けたドラゴーヤは怒り始め、口から火球を周囲に吐き散らし始めた。火球の雨をまたも掻い潜るように回避する春十達。一方の一夏も、

 

 一夏(まな板シールド!)

 

 まな板の形をしたエネルギーシールドを張って火球を防いでいく。すると春十達から通信が入った。

 

 春十『一夏!あの龍は何なんだ!?』

 一夏「春十兄か。あれはドラゴーヤっていう龍だ、捕獲レベルは100近いぞ」

 鈴『100近いって……じゃあどう倒すのよ!?』

 一夏「落ち着け、鈴。まずは奴の弱点部位を見つけるんだ、そこを重点的に攻撃すれば奴を倒せる」

 春十『どうやって見つけるんだよ?』

 一夏「そりゃあ勿論……目視で?」

 春十『無茶言うなよ!どうやって目視で見つけるんだよ!?』

 一夏「心配するな、弱点部位は俺が見つけ出す!春十兄達は取り敢えずこいつの動きを止めてくれ!一分でも長くだ!」

 春十『ああもう、分かったよ!!ラウラ、AICだ!』

 ラウラ『任せろ、嫁!』

 春十『俺と鈴はあのドラゴーヤって奴の動きを制限する!一夏とラウラに攻撃の手を向けさせないようにだ!いずれすぐに箒達も救援に来る!』

 鈴『任せなさい!』

 

 春十は雪片弐型を、鈴は双天牙月を構え、ドラゴーヤに突進した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 牙也「えーと確かこの辺り……あった、ここだ!」

 

 こちらはクラックを開いて脱獄してきた牙也。元の世界で用務員をしてきた牙也なので建物一つ一つの場所なら分かるのだが、地下牢屋の場所までは知らなかった為に現在地が分からず道に迷ってしまった。漸く辿り着いた時には既に騒ぎになっているのか次々と生徒が脱出してきていた。

 

 牙也「ちょっと遅かったか……!一夏達が何とかしてるだろうが、俺も加勢しないときついか……?」

 

 そう考え牙也が第二アリーナに入ろうとしたその時ーー

 

 

 

 

 

 

 

 『ガアアアアアアアア……!!』

 

 「っ!?」

 

 低い唸り声に牙也が後ろを振り向くと、

 

 

 

 

 「何じゃこりゃ!?」

 

 体が鰐で顔が鮫、前足の付け根から蟹の鋏が伸び、尻尾がウツボの怪物がそこにいた。まだアリーナから逃げている生徒達はこの怪物の存在に気づいていないようだ。

 

 「おいおい、何だよこいつ……属に言う『キマイラ』って奴か?」

 

 その怪物は牙也を見るなり、鋏を構えてファイティングポーズを取る。鮫の顔と尻尾のウツボの顔も鳴き声を上げて牙也を威嚇する。

 

 「やれ、こいつ倒さなきゃ箒達の救援には行けないな……しゃあない、本気出そうかね」

 

 牙也もファイティングポーズを取る。

 

 「起きたばっかだからさぁ、今腹減って仕方がないんだよ……お前、その蟹の鋏食わせろやぁ!!」

 

 

 

 

 





 ドラゴーヤ 捕獲レベル98

 ゴーヤのようにゴツゴツした甲殻が特徴の龍。しかしその甲殻の強度は高く、並みの刃物や銃弾では傷一つ付かない程。上記の通りに捕獲・調理すると甲殻はゴーヤそのものになる。強い苦味と甘味が特徴。肉も食べる事ができ、ほのかな苦味が癖になる味。

 最後に出てきたキマイラは次回解説します。ではまた次回!


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。