・血縁者有り
・百年以上の付き合いの友人
・多趣味でプライベート充実
これと全巻購入特典小説での反応を見るに……って事で
「さて、こんなものだね。……紅茶のお代わりを。今度はアイスで。砂糖は要らないよ」
存在を忘れていたハムスケを迎えに行ってナザリックに帰還した私は、父さんと昔の仲間の為のスイートルームの一室で書類仕事を終えていた。私にだって領地があるから運営に必要な書類は存在するし、契約している魔法使いが提出した研究資料にも目を通さなくちゃならない。……後は父さんの魔王としての仕事もこっそり私が引き受けた。
今回は調査を口実にした休暇だし、あの人は精神的な疲労は溜まるからね。ああ、私って実に親孝行な娘だよ。
「お嬢様、お待たせいたしました」なぁ
「ありがとう。美味しそうだ」
「御礼などとんでも御座いません。私達は至高の御方に仕えるべく創造された存在ですので」
部屋に常駐するメイドは随分と忠誠度が高いけど、元々は意志のない存在が異世界転移で変化したらしいし、父さんのコレクションの魔獣創造で生まれた存在程度の認識だ。紅茶を飲みながら部屋を見回すけど調度品も作り自体も豪奢で高級感溢れている。
「……まあ、実家も割とこんな感じだけどね」
だって父さんは魔王だし、私も貴族な上に父さんの第一夫人は冥界でも有数の商会のトップ。母さんは第二婦人で第一とは不仲だけど、どっちも子供には分け隔て無いし。
だから今いる部屋に不満も不便さも無いけど特に驚きもしない。
「……ああ、でも」
ちょっとだけ守護者連中には要注意って印象かな? 取り敢えず父さんに念話しようっと。
「……ふむ」
骨の指先でページをめくって本を読み続ける。昔の仲間が持ち込んだ膨大な量の著作権切れの本のデータの中には俺が住んでる世界では存在しない『シャーロック・ホームズ』シリーズも収められていた。
「最初は不快かもと思ったが……」
対決の末に滝に落ちてしまったという事に腹が立つと思ってたけど、実際は悪魔になって生き長らえた上に今や親戚だからなぁ。ほんと、あの頃は俺に孫が出来るなんて想像もしなかったよ。孫と言えばアーシアも妊娠が発覚したし血が繋がっていなくても娘は娘。お祝いは何が良いかと思っていると血が繋がっている方の娘からの念話が届いた。
『父さん、ちょっと良いかな? 守護者連中だけど……注意した方が良いよ』
『……確かにな。どうも忠誠心が振り切ってるって言うか、抱く理想像で本来より大きく見えてるって言うか……』
サラリーマン時代の俺なら兎も角、形だけだったとはいえ貴族を経験し、子供に恵まれ、魔王なんかになって趣味の時間を削りながら頑張っている今の俺なら向けられている感情について少しは察する。幼い頃の長男が周囲の噂を聞いて本来の俺より凄いイメージを持ってたみたいに凄い存在だって思われている。……うーん。ギャップから失望されたら危険かな? 万が一の時は冥界に逃げれば良いけど、他の調査員に被害が出たら外交上の問題になるし。
でも、思い出の場所だし、昔の友達が創った存在だしなあ。子供達が幼い頃に描いてくれた絵とか今も保存してるし、此処を捨てるのも抵抗がある。
『それもあるけど……アルベドとシャルティアって見た目の特徴に共通点が多いけど、性格も母さん達と同じっぽい。蝙蝠を残して会話聞いたけど……まあ、第三第四婦人に関しては私はノータッチで行くから頑張って』
……あっ、存在しない胃がキリキリ痛む。俺は本を閉じるとハムスケの毛皮を触り出す。モフモフしていて気持ち良い。連れてきて良かった。一時凌ぎにしかならないけどねっ!
よし! 取り敢えず仕事をしよう。そうすれば合法的に逃げられるから。あー、でも俺が外で行動するって言ったら反対しそうだよな。説得は……ドロシーに任せるか。
「……つまりだ。あえて不自由を体験するというのも娯楽の一つとして存在するんだよ。そうでなければ父さん程の存在が調査なんて仕事をすると思うかい? 事前調査で驚異は薄いと分かっているんだがね」
「ですが、モモンガ様とお嬢様……そしてご親戚のペットであるハムスケだけと言うのは。せめて一個師団を護衛として……」
「ふむ。君達の忠誠心に感服した。ならば此方も妥協して護衛の同行を許可しよう。人間社会に溶け込める者のリストを頼めるかい? 本来なら元の世界から連れてくる所だが、君達の忠義に報いようじゃないか」
「感謝致します、お嬢様。では、早速ご用意を」
俺達が冒険者として活動する事は案の定反対された。アルベドはなんか私情を挟んでいるっぽいけどね。でもドロシーが上手く説得してくれて助かるよ。……ぶっちゃけ俺より交渉力が上だ。一応元営業なんだけどな、俺。ま、まあ、娘が優秀なのは嬉しいことだよな。
地位を振りかざしつつも相手の気持ちを汲んだようにして同行者の数を抑えているドロシーの姿を眺めつつ俺はこの世界の娯楽に胸を躍らせる。あっ! まだ釣りに行ってなかった。
ちなみに作者の技量で泣く泣くカットしたけど説得の詳細は凄かったとだけ言っておこう。
「……さて、確認しておこう。お前達はどの様な設定だ?」
「はっ! 偉大なる魔術師であらせられるモモンガ様のしも……新弟子のナーベで御座います」
「自分は一緒に旅してたクレリックのルプーっす」
「……うむ。まあ、良いだろう」
時間は少し経過してエ・ランテルの宿に戻った俺は護衛として同行したプレアデスの二人と会話をしていた。正直言ってアウラを選ぶと思ったのだが、アスモデウス家の方のアウラちゃんと見た目も似ているのとボーイッシュ系は食指が動かないとか。
ってか知り合いに似てるの多いな、ナザリック!
それはそうと選抜を任せたが悪くないチョイスだ。まずナーベラルだが当初の予定では畏まった口調は止めさせる予定だったが、そういう風に作ったのは我々だし無理をさせるのはパワハラだと言われ、いっそ敬語でもおかしくない設定にしたらと提案された。これならば現地で会ったからとメンバーが増えた理由になるし、第五位階が使えるからと弟子入りを望まれても断る口実が出来る。
ルプスレギナは回復魔法のデータを取ることでレライが再現、修得できるように研究する予定だ。
……しかし、こうやって関わると今後放置するには情が邪魔しそうだな。今の友人や家族が一番大切だが、意志を持っている以上はな。でも冥界にナザリックを転移させるのは危険だし、俺が常駐するわけにも。だからって別荘みたいにして偶に顔を見せるのは……。
「……いっそ誰かを彼奴の嫁にしてナザリックに常駐させるか?」
「モモンガ様、彼奴とは?」
「ああ、下の息子だ。まだ今後どうするか決まっていなくてな。母親の商会は長女が継ぐ予定だし、領地は長男に任せているし、どっちかの下につくか婿養子に出すか悩み中で……」
ドロシーは分譲した領地の運営や私の秘書で才覚を発揮しているが、彼奴はどうすべきか。優秀ではあるんだが、ウチの家って親戚のモリアーティ家との関わりもあって戦力や財力の影響力が凄いからな。下手に決めればバランスが……。
この時、依頼を受けに冒険者組合に向かっていてドロシーが不在であり、止める者が居ないせいでの失言で面倒な事になるとは思っても居なかった……。
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