成り上がりの息子と赤龍帝     作:ケツアゴ

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ルフェイってゲオルクが作った空間にどうやって入ったんでしょうかね 無理に入ったら感づかれそうだし、隔離する能力なんじゃ絶霧って・・・・


格の違い

「これはチャンスかもしれない。上手く行けばテロリストとの戦いを終わらせられるぞ」

 

 無限龍オーフィスからの接触にたいし、アザゼルはオーフィスを暫く同行させる事を提案している。レライの監視魔法でそれを聞いた瞬間、俺は拳を机に叩きつけていた。

 

「……野郎、俺達を利用する気じゃねぇだろうな。責任は自分が取るだあ? かっ! そう簡単にいかないのが政治だろうが、ボケ!」

 

 今回の件が最悪の結果になった場合、堕天使との同盟によって今後得られる利益や、問題を起こすようなトップとの同盟をアッサリ結びやがった事による上層部への信頼失墜を考えれば、あのオッサンが何を言っても誰が切り捨てられるのか一目瞭然、成り上がりの俺達だ。

 

 上手く行けば純血を押さえて手柄立てまくってるモリアーティ家を潰せる上に莫大な財産や優秀な人員が手に入るんだ。お飾りの魔王共を無視してでも動く奴らは多いだろうよ。

 

「モードレッド、少し落ち着こう。ジェイル君なら馬鹿な真似はしないさ。ほら、既にモリアーティさんから連絡が来てる。もう知らせてあるみたいだよ」

 

 怒る俺の肩に手を置いて落ち着くように言ってきたモモンガのオッサンが見せてきたスマホにはモリアーティのオッサンからの指示がメールで来ていた。既にアジュカ・ベルゼブブに報告済みで、オーフィスを変に刺激しないように様子見との事だ。

 

「……彼奴が馬鹿じゃねぇってのは分かってるよ。ただ、アザゼルが分かっていて利用する気なら当然ぶっ殺してぇし、分かっていない馬鹿なら馬鹿で、そんなのに付き合わされるのがムカつくんだよ」

 

 トップが本部に不在でも組織が回っている所を見ると親分としては優秀でも政治屋は他の野郎に任せてんじゃとは思うが侮って足下をすくわれるのは間抜けだ。

 

「……そうだね。俺も少し自分を抑えるのに必死だよ。義娘のアーシアは当然だけど、ジェイル君も生まれたときから知っている甥っ子みたいな存在なんだ。……もしもの時は堕天使も上層部も滅してやる」

 

「落ち着け、オッサン」

 

 最後の方でゾッとするオーラを放ちだしたモモンガのオッサンの頭を鞘を着けたクラレントで叩く。俺もそうだけど、このオッサンは身内の事になると我を忘れるから困るぜ。でも、逆に俺が落ち着けたな。

 

「あっ、今回の件で前々から進言してた例の件を進めるらしいよ。私も候補の一人だから一旦冥界に帰還しろってさ」

 

 俺達が今いるホテルのルームサービスのメニューを見ていたレライだが、着信が入った携帯を見せながら呑気そうに言う。かなり重要な案件だから知ってる奴が少ない例のアレだが、今回の件をチャンスだと判断したのか。まあ、オーフィスは世界最強の力の上に神出鬼没だからな。居場所が割れてる今が絶好の機会だろうよ。

 

「それは良いな。テロの影響で延期になった映画や舞台が多いし、早く終わらせたいからね。……それにスペックの高さだけで好き勝手しても良いと錯覚しているのなら、存分に慢心を利用してやろうじゃないか」

 

 モモンガのオッサンがやる気を出して格好付けたポーズと口調になったのを見た俺が少し恥ずかしくなってジェイル達の様子を映し出している画面に視線を向けると、話をしているホテルを離れた場所から監視する奴の姿があった。

 

「……敵か? 随分とアナログな監視だけど魔法か神器は使わねぇのか?」

 

 幹部クラスは兎も角、ジークフリートは神器も持っていない下っ端団員の事まで記憶していなかったみてぇで情報が手に入っていない奴らも幾らか存在する。ただ、一般人には見えないが……。まさか囮かと思ったとき、モモンガのオッサンが何でもなさそうに言いやがった。

 

 

「新幹線の中で俺の攻性防壁に反応があったし、被害が出たから肉眼での監視に切り替えたんじゃない? 一応張らせている斥候能力持ちのアンデッドに監視させておくね」

 

 そう言や寝てる時に何か感じた気がしたけどそういう訳か。さて、これだけは言っておこう。

 

「……いや、そういう事は言っとけよ。情報共有は当然だろうが。味方が何が出来て何を準備しているかは把握しとくべきなんだからよ」

 

「京都来るの初めてで、楽しみにしててつい……」

 

 このオッサン、無茶苦茶強いくせに妙に人間臭いんだよな。少し照れた様子のモモンガのオッサンを見ながら俺は呆れ混じりの溜め息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

「ちょいと昼飯食ってくる。ルームサービスとか性に合わないしな」

 

 昼時分、モモンガのオッサンをホテルに残してハンバーガーを食いに行く。さっき見た映像では迷子になった遠い親戚の子だと偽って班行動に同行させたオーフィス(あの痴女みたいなヴァーリの趣味の服は着替えさせた)とジェイル達の姿があったが、思い出すだけで腹が立つ。ご当地限定メニューを流し込むようにして食べると握り潰した包装紙をゴミ箱に投げ入れた。

 

「あー糞っ! 俺が傍に居てやらねぇと本当に仕方ねぇな、全く。全く!」

 

 彼奴が修学旅行を楽しみにしていたのを俺は知っている。それがあんな奴らの為に台無しにされるなんざ本当にムカつくぜ。ポケットに手を突っ込んでイライラしながら適当にブラブラしていても気が晴れない。適当にゲーセンでも行こうかと思った時、不意に背後から殺気が混じった視線を感じた俺はショーウィンドの前で立ち止まった。

 

「……チッ」

 

 二重の意味で失敗したなと思う。ショーウィンドに飾られているのは今の俺くらいの女が好みそうなフリフリした服。こんなのに興味があると知らない奴にさえ思われたくねぇ物だ。そしてついでだが、俺に視線を向けて来ている女の姿がガラスに映っているんだが、変装するにも他のやりようが有ったと思う。ドラマとかで芸能人がするような如何にも顔を知られていますって変装だ。

 

 確か彼奴はジャンヌ。確か聖処女って呼ばれてた女の転生した存在だ……俺も前世の記憶が甦っているし、少し同情しないでもないまぁ敵は殺すけどな。同情と戦いは別もんだ。

 

 

 

 

 

「さぁて、温かいお風呂も柔らかいベッドも美味しいご飯も味わってないし、一人で出歩いてる悪魔を虐めてストレス解消しましょうっと」

 

 人気のない路地裏までやって来ると変装を解いたジャンヌが聖剣を手にやって来る。俺は公の場に出るときは鎧着てるし顔を知らないから、援軍で来たのにブラブラしてる無名な悪魔とでも……あっ。

 

 今の俺、まさしくそれじゃねぇ?

 

「あれ? 一体何処に……」

 

 俺の姿を探してジャンヌは周囲を見回している。だが、俺の姿が見えず首を傾げた時、飛んで上に隠れていた俺が着地と同時に袈裟懸けに切り裂いた。

 

「あぐっ!?」

 

 背中から血を流しながら前のめりに倒れ込むジャンヌ。俺はその頭を乱暴に踏み付けた。グリグりと踏み躙って唾を吐き掛けると血を吐きながらも睨んで来た。……浅かったか?

 

「はっ! ざまあねぇな、自称英雄さんよ。他人に褒められたきゃボランティアでもやってろ。自分で自分を誉めて悦に浸りたかったら自分が主人公の小説でも書いてろ。英雄ごっこに人を巻き込むんじゃねぇよ」

 

 クラレントの切っ先をジャンヌに向け、侮蔑の視線と共に足に力を籠める。その時、俺の背後から聖剣が飛んで来た。俺の心臓を串刺しにするべく放たれたジャンヌ最後の足掻きだ。

 

 

 

「でっ? 残念だったな。まぁ、相手はこのモードレッドだ。あの世で誇りな。俺に殺して貰えた事をな」

 

 だが、この程度俺には通じねぇ。振り向きもせずに柄頭を叩きつけて飛来した聖剣を叩き落す。不意を打ちたきゃ殺気と表情を隠すんだな。隠れていても察したけどよ。俺は唾を吐きかけるとジャンヌの腹に刃を突き刺した。

 

 

 

 

 

 

「は…ははっ。今頃…冥…界は私…達の部…下に襲わ…れて…るわ…。あん…た達の領…地には…ヘラ…クレ…スと神滅…具使い…の魔…女が…。ざまぁ…みな…さ…」

 

「うぜぇ。さっさと死ね」

 

 クラレントを通してジャンヌの体に赤雷を流し込む。痙攣する間もなく完全に炭になった体からは焦げた肉の香りが漂って来た。

 

「冥界に襲撃ねぇ。結構ボロボロだし暴動とかも起きそうだな。何せ父上にさえ不満を持つ奴らが居たんだしよ」

 

 クラレントを鞘に戻して異空間にしまう。ジャンヌが言った事は気になるが、動いたら少し腹が減ってきた。取り敢えずこの死体をどう始末するか、それが問題だ。

 

 




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次回ハムスケが活躍予定

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