成り上がりの息子と赤龍帝     作:ケツアゴ

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ミニスーファミで時間がぁ……


父親の気持ち

「うんうん。フェンリルと戦いたいんだね。却下」

 

 悪神ロキによるオーディン様への襲撃に乱入したヴァーリ一味はモモンガさんが捕縛し、今は別々に隔離して話を聞き出している。本当なら情報吐かせた後、民衆の不安を取り除くために公開処刑って所なんだけど、黒歌は兎も角として旧ルシファーの末裔と斉天大聖……いや、今は別の呼び方だった、の子孫だから簡単にはいかないんだ。

 

 ……まあ()()見張りの者が見逃した隙に自害されたり、()()()()()()で逃亡を図って抵抗したから始末した、とかなら話は楽なんだけどさ。

 

「おいおい。俺達は強いぜぃ」

 

「うん、そうだね。特にヴァーリなんかフェンリルみたいなのと戦わせたら神器がどんな進化をするか分からない。重要案件だし不確定要素は取り除かないと」

 

 話を持ち掛けてきた美侯だけど、僕はそんな提案に乗る気はない。大体裏切り者のテロリストだよ? 信用できないし、したくてもしたら駄目だ。陣営が疑われる。元の所属先に条件付きで引き渡すか処刑が基本。無辜の民が安心して暮らせるようにするのが貴族の務めだもんね。

 

 ……にしてもゼスティも容赦ないなぁ。大勢の前で変態呼ばわりされて固まった瞬間に金的だから怖い怖い。騒ぎに乗じてロキ達は逃げたけど浮遊機雷を食らったはずだし、次に襲って来るであろう会談時に多少なりともダメージが残っているだろうしね。

 

 

「……おや、アザゼル総督」

 

「お前か……」

 

 同じ施設に来ている父さんに呼び出しを受けているので向かう途中、ヴァーリと話をしに来ていたアザゼル総督とバッタリ出会う。少し意気消沈した様子だね。育ての親らしいし、それが裏切った上に捕縛されたんだから仕方ないけど。

 

 その上にルシファーの末裔を匿っていた事を責められたり、育て方に問題があったのではないか、って老害が喚き散らしたりしたからね。

 

「この度は大変でしたね。でも大丈夫。恩知らずは捕縛されました。処刑になるか生涯幽閉されるかのどちらかでしょうが、これ以上問題を起こす心配がなくなって幸いでしょう」

 

 ……あれ? 少しだけ怒気が出てるけど僕何か間違ってこと言ったかな? 拾って育てて貰った恩を忘れ、これから同盟を結ぼうって時に裏切りテロリストになったんだ。問題を起こすほどに堕天使への風当たりは悪くなるし、自陣営で捕まえたかっただろうけど捕まったなら喜ぶべきだけどなぁ。

 

「あの、何か失言がありましたか? でしたなら後日改めて正式な謝罪を……」

 

「いや、何でもねぇ……」

 

「そうですか。なら私はここで失礼させていただきます」

 

 アザゼル総督に一礼し僕はその場を去っていく。背後から壁を強打するような音が聞こえたけど、ヴァーリの態度に腹でも立てていたんだろうね。

 

 

「皆さんお久しぶりですね。ご健勝な様で何よりです」

 

 アザゼル総督との会話後に向かった部屋には父さんだけではなくアジュカ様の眷属が全集合していた。一緒に呼ばれていたイッセーは緊張した様子で立っているし、モモンガさんも本性を知らない相手が多いので魔王ロールを続けている。今度、香木でも贈ろう。存在しない胃が壊れるだろうしね。

 

「前置きは結構。次の襲撃に対しての護衛とロキの相手だが……モモンガ君にフェンリルの相手を頼みたい。我々は万が一でもグレートレッドが反応して出て来ない為に総掛かりで結界を張る」

 

「モモンガさん一人で……ああ、成る程」

 

 イッセーが一緒に呼び出された理由が判明した。うん、流石にアジュカ様達魔王が出るわけには行かないからね。じゃあ、残りでロキと追加戦力の相手かな? 

 

 

 

「悪魔ばかり活躍しては同盟の意味がないと騒ぐものがどの陣営からも出るだろうし、ジェイルには私達の手伝いを頼もう。堕天使と天使、他の派閥の悪魔……若手あたりからサイラオーグ君達にでも出てもらおう。じゃあモモンガ君。当日はタイミング見て最高位の魔法を発動してくれたまえ。事前に連絡して所定の場所に飛ばすからさ」

 

「……それで何回ほどだ? 結界の耐久性も調べなくてはな」

 

「その辺りも実験しようかネ。イッセー君、禁手後の再使用までの期間や負担は分かっているかナ」

 

「は、はい! レライさんがデータを取ってくれています」

 

 

 話を振られたイッセーも作戦を理解したのか少し引いた表情だけど、まだまだ甘いね。戦いってのは如何にして有利な条件を押しつけるかだよ?

 

 実験の打ち合わせを行い、結界について手助けをして貰う為にレライの所に僕達は向かい、父さん達は部屋に残っていた。

 

 

 

「……それにしても息子さんは立派になったな」

 

「将来的には第二の悪のカリスマでも目指すのかしら?」

 

「いやいや、我が息子ながら未熟な上に優しくてね。精々が良き領主良き夫良き父……ああ、良き兄もあったか。まあ、その程度になれはするかネ?」

 

「え!? 二人目生まれるのかよ。言えよ、水臭いなぁ」

 

「三日前に妻の妊娠が分かってね。息子には秘密で頼むヨ? ギリギリまで自力で気付くかテストしているのだ。さて、何時気付くのやら……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「モモンガさんの全力に耐えられるだけの結界ぃ? ジェイル君……最高じゃないか! 所でフェンリルの処分許可は出たのだろうけど、出来ればサンプルが欲しいなぁ。ハムスケに神殺しの力を付与させるんだ」

 

「これから多くの神話と同盟を結ぶ予定だから大丈夫かな?」

 

 話を持って行くなり喜色満面で張り切りだしたレライだけど、フェンリルのサンプルはアジュカ様に相談しないとね。まあ、同盟を結ぶからこそ必要になるかもしれないけどさ。テロリストと繋がっている神も居ることだし……。

 

 

 

 

 

「って事で暫くは施設に泊まり込んで実験と訓練なんだ。こうやって内緒で一緒に寝るのも暫くはお預けだね」

 

「……ウアー」

 

 その日の夜、明日から泊まり込みだとフランに伝えたら寂しそうな声と共に袖をギュッと掴まれる。分かる、僕も辛いんだ。……だから今日は恥ずかしがらずにフランを抱きしめたまま眠ろう。キスもして、愛の言葉も何度も交わして……。

 

 

 

 

 

「って、フラン!? 流石にそれは……ああっ!? 久し振りに感情の制御が出来て……」

 

「ダイ…ジョウブ……。ジェイル…ハ…シタク…ナイ…?」

 

 ……卑怯だと思った。抵抗とか出来ないじゃないか。……でも、事前に見越したかのように色々と準備がしてあったのは何故だろう? 一緒に寝ているのは内緒の筈なんだけどなぁ?

 

 

 

 

 

「……来るネ」

 

 そしてオーディン様と日本神話の会談当日、父さんの合図と共に僕達は全力で結界を張る。レライも術式の開発者として調整に加わり、ゼスティ達や数名の悪魔が警護に就く中、僕の視線の先には巨大な魔法陣を展開させたモモンガさんが……更に正確に言うのなら腕に赤い布を巻いたモモンガさんの姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

『今回の作戦だけど……ロキとは別に転移させたフェンリルに何十倍にも強化したモモンガ君の魔法を転移と同時に叩き込もう』

 

 

 

 

 

 

 

「……よく見ておけ、アーシア。これが私の切り札の一つ超位魔法だ。『失墜する天空(フォールンダウン)』!!」

 

 発動と共に超高温の熱源体が膨れ上がり、範囲内の全てを焼き尽くす。転移の瞬間に発動した魔法をフェンリルは避けることが出来なかった……。

 

 

 

 

 

 

「いやー、養女の前だから張り切っているね、彼。所で結界がヤバいのだが!?」

 

「全力で抑えろ!? 間違いなくグレートレッドが来るぞ!?」




作戦 超強化したモモンガ様が敵が現れた瞬間にぶっ放し 他は被害でないように結界


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