成り上がりの息子と赤龍帝     作:ケツアゴ

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父と子

 この日、何時もの時間に目が覚めた。少しだけ残った疲労感が目を閉じていろと訴えるけど閉じるなんて勿体ない。だって僕の腕を枕にして眠る愛しいフランの寝顔を眺めていたいからね。

 

「……うん。凄かった。兎に角凄く良かった」

 

 昨日の余韻に浸っているとフランが身動ぎし、何やら寝言を言っている。レーティング・ゲーム完全勝利のご褒美にフランと二人だけで泊った別荘の朝は今までで最高に幸せな気分だった。

 

 まあ、『昨日はお楽しみでしたね』って奴だよ。来たばかりの時は変に意識して互いに顔を見る事が出来なかったけど、お風呂に入ってベッドに隣り合って座っていると彼女から手を重ねてきて、何度も好きって言ってくれて……。

 

「ゥ…ス…キ…」

 

「うん。僕も君が好きだよ」

 

 まだ寝ているフランの唇にキスをする。最初は恥ずかしがって顔を隠していたのに途中から甘えてきて……あ~。今日一日は顔をちゃんと見れないかも。

 

 

 

「……ウ」

 

「いや……」

 

「ウ!」

 

 二人で用意した朝食の時間、フランがスープを救ったスプーンを僕の口元に持ってくる。昨日あれだけのことをしたから恥ずかしくって顔を背けようとしたら怒られちゃった。怒ってるフランも可愛いなぁ。後でキスしても良いかな?

 

「そろそろ天気予報の時間だよね」

 

 ご飯を食べながらテレビを観るのは行儀が良くないけど、お昼から二人で周囲を散策するからとテレビを付けると結婚式が決定したってニュースをしていた。えっと、誰と誰が……ああ、リアスさん達か。

 

「結婚後は貴族らしく家を守る為に冥界に戻るってさ。でも来月末って急だよね」

 

「……ウー」

 

「彼女は幸せそうじゃないから可哀そう? まあ仕方ないよ。両想いの僕達は幸せだけど、貴族の結婚は個人と個人じゃなくて家と家だから」

 

 特にグレモリー公爵家みたいなところはね。だってアーシアの一件の時期辺りであと少し何かあったら即結婚させる事になりそうなくらいに公爵家のお家事情って逼迫してたからね。魔王を輩出して大王家から嫁を貰って純潔で財政も悪化していなくて当主の弟とかお家騒動の種もいないのに逼迫するとかある意味凄いよ。

 

 今まで慌ただしかったから先延ばしになったけど、こうなるのは当然の結果って事だね。

 

 

「僕達は幸せになろうね。まあ、愛って育む物だし、大丈夫じゃない?」

 

「アー?」

 

「大丈夫大丈夫。僕達の愛はこれからも育み続けるからさ。今以上に君を愛するよ」

 

 ……この後の散歩だけど延期かな? 

 

 

 

 

 

「オーディン様が来日? へぇ、日本神話との会談があるんだ」

 

 もうすぐ修学旅行が迫るといった頃、休日の日課である実家での仕事を終えた僕は食事の席で父さんから聞かされた話に驚く。ハーデス様が言ったとおりに禍の団構成員って殆どが三すくみの勢力の不始末によるものだし、話を合わせて一斉に同盟代わりに不平等条約を迫って来なけりゃ良いけど……。

 

「それなんだがね。会談の日より少し早く来日し、観光がしたいそうなんだよ。まあ、完全に足元を見られているね。接待をしろという事だ。堕天使側は護衛と接待役に総督と雷光のバラキエルが出てくる大盤振舞だ」

 

「観光かぁ。襲撃があれば一般人を巻き込むかもしれないし、護衛は大変だよね。主神の接待に相応しい相手なら外交担当のセラフォルー様の眷属だけど……」

 

 堕天使がトップや最高幹部を出すなら悪魔や天使もそれなりの者を出さないといけないよね。じゃないと”うちはアレだけの方を出したのに、お前のところはその程度の奴かっ!”って不満が爆発しちゃう。和平を結んでもしがらみが消えた訳じゃないし……。

 

 でも、地位の高い護衛に怪我人が出たらそれはそれで揉め事の種になりそうだ。

 

「天界からはガブリエル殿が出るそうだ。ギリシャの主神ほどじゃないけどオーディン様も好色だからね。元気な老人だよ」

 

 ああ、あの天界一の美人って噂の。フランの方が可愛くって美人でセクシーで愛嬌があって優しいに決まってるけどさ。オーディン様のセクハラの矛先が向かなければいいけど。反発したら外交に影響が出る可能性があって、セクハラされるがままなら侮られる。大変だよね。

 

 それと元気だって言うけど、父さんも転生したのも今の見た目もアラフィフだよね。母さんが弟と妹のどっちが良いかって訊いてきたし、十分元気だよね。どっちも欲しいけど選ぶとなると妹かな? 可愛がる自信あるよ。

 

「まあ、悪魔にばかり手柄を取られているし、此処で外交に貢献したってアピールしたいんだね。……それで僕達は誰を出せば良いの? モモンガさんは決定としてさ」

 

 パーティ会場でハーデス様と同様にオーディン様もモモンガさんを興味深そうに眺めていた。それに実力的にあの人は間違いないだろうさ。

 

「おや、分かったかね。関心関心」

 

 ……白々しい。父さんが態々話すってことは何か有るって事だろ? 大方ゲームの観戦で興味でも持たれて……。

 

 

 

「ハムスケとゼスティ君をご指名だ」

 

「モモンガさんに黙祷。あっ、あの人アンデッドか」

 

 なにその問題児コンビ。いや、悪い奴らじゃないよ? 頭以外は…。モモンガさん、精神的な疲労はするんだよなぁ……。

 

 

「今度猫カフェでも連れて行こうか? それとも柴犬カフェ? あの人どっち派だっけ?」

 

 ハムスケも癒されるんだけど、ストレスの原因を使って解消ってのもなぁ。

 

「確かどっちも好きなはずだったが。やれやれ、友人に苦労を掛けるのは好きじゃないんだがネ」

 

「息子には平気でかけるよね」

 

「息子だからネ。親心からの試練だよ」

 

 絶対嘘だ。この人、絶対楽しんでやってるよ。……あっ、悪魔側からは他に沖田総司さんも来るんだってさ。あの人か……大丈夫かな?

 

 

 

 

 

 

「……マジっ!? いや、ゼスティちゃんは成績は悪いけど機転は効くし問題は……無いと言えなくもないけど、ハムスケはちょっと困るなあ」

 

 早速話を持っていくとモモンガさんも困った様子。多分胃があったらキリキリ傷んでるんじゃ……。僕がさすがに悪かったかなと思っているとアーシアがお茶を運んできた。

 

 

「お義父さんなら大丈夫です。頑張ってくださいね」

 

「よし! 張り切って二人をフォローするよ。頑張って来るからね、アーシア」

 

 養女に励まされた途端これって……良かったなぁ。父さんは友人だし、僕は甥っ子みたいに思われてもあくまで友人の子でしかなかったし、モモンガさんにも家族が出来てさ。

 

 

 

 

 ……うん。僕も少し感動したし、上手く行きましたって顔しないで、アーシア。助かったけどさ、色々台無しだから。




あそこまで恵まれたのに逼迫してるとライザーにいわれていた公爵家 一体何が 恵まれていたからこそ何とか貴族としての体面を保てていたのか?


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