成り上がりの息子と赤龍帝     作:ケツアゴ

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オリジナルの方で遅くなりました

ハロウィン素材は集まった 100近くあるのが少し残ってるけどリンゴを使うまでもないな

クリスマスガチャってスキル石でしたっけ? 回すぞぉ!


利用価値と思惑

 貴族社会では顔が広いに越したことはない。例えそれが次期当主のスペアでしかない次男三男などであっても……。

 

「これからも良い関係を築きましょう」

 

 モリアーティ家が主催するパーティに招待した、とある家の次男と固く握手を交わす。このパーティに来ているのは才能が有りながら上の兄弟が居るというだけで肩身の狭い思いを強いられている人達……という事になっている。

 

 要は自己顕示欲やら承認欲求を持て余している次男三男に対し、特別な方だけとの名目で秘密のパーティに招待してるんだ。相手に気持ちよく話をさせる術に秀でている者達(孤児院で幼い頃から才能を伸ばした)に接待をさせ、取り入ると同時にその家にいないと分からない情報を引き出す。その情報はこれまたそっち方面に秀でた人によって精査される。

 

「いやいや、君とは長い付き合いになりそうだな」

 

「ええ、貴方との繋がりは此方としても重要ですから」

 

 大した情報も将来利用価値のある家に婿入りする可能性も低い男に愛想笑いを向け握手を交わす。だけどまぁ、彼が同じような立場の人に噂を広げ、その中に価値があるのが居れば儲けものだ。

 

「それでは皆様、僕は此処で一旦失礼いたします」

 

 僕が招待したが、此処にいるのは鬱屈した次男以下の人達。成り上がりだけど魔王の眷属で財力と多くの繋がりと実績を持つ僕は嫉妬の対象だ。だからこそ呼ばれたから来てやったという下らない自尊心を刺激しているんだけど、そろそろ専門職に任せよう。

 

 

 

(……今回は将来的に役に立つかもしれないのは少ないなぁ)

 

 数を熟すしかないと分かっていたけど費用回収を考えると頭痛を覚える。まだまだ僕は未熟だ、これは父さんからの小言を覚悟しておかないとね。

 

 

「よう。大変だったな。ほら、これでも飲め」

 

 パーティ会場を出て個室に入ると護衛でやって来ていたモードレッドが冷たい飲み物を差し出してくれる。プライドは高いけど才能の乏しい奴らのご機嫌伺いに話を続けたせいで少し喉が渇いていたんだ。

 

「本当、面倒臭いよ。ブリテンもこんな感じだった?」

 

「まーな。父上を理想の王だって持ち上げるのは民草と騎士で、内心見下している生まれ持った地位だけは立派な貴族なんざざらに居たぞ。だから俺が叛逆した時に寝返ったんだよ、糞共がよ」

 

 苦労しているのは何処も同じだと思うと少し心が軽くなる。血筋だけで勝手に周囲から近寄って来る純血貴族は兎も角、僕達みたいのは多くの繋がりを作り、その中から価値あるものを選択しなければならないから大変だよ、まったくさ。

 

 

「まっ、腹立たしいけど先日のゲームで大活躍した俺も後で挨拶回りに付き合ってやるから感謝しろよ?」

 

「モードレッドには何時も感謝しているよ」

 

「お、おう。なら別に良いんだ」

 

 あのゲームの後、参加した皆にファンが付きだした。圧倒的身体能力を持つゼスティに派手な赤雷と優れた剣の腕を持つモードレッド、人気が出て当然だ。一番人気はハムスケだけど仕方ないよね。なんかバ可愛いくて強いって凄い人気が出ている。父さんと母さんもその人気を利用して商売に使うとか。

 

 尚、眷属だからと純利益の5%が僕に入り、その中の三割が制作者のレライ、二割がハムスケに入る。娯楽が少ない事に目をつけて昔からシェアの多くを所有しているし、利益は期待出来そうだ。

 

 

『若様、予測通り襲撃が有りました。至急いらして下さい』

 

 個室に置いてあった連絡用の機器にガゼフからの通信が入り、座標も表示される。

 

「どうやら今回は利益の方が勝ちそうだな。んじゃ、行くぜっ!」

 

 二人一緒に窓から飛び出し、停めてあったバイクに飛び乗る。赤雷を放出しながら加速を続けるバイクは一直線に目的地まで向かっていった。

 

 

 

 

 

 

「お、おのれっ! 私を誰だと思っているんだ、平民如きがっ!」

 

 到着した時、既に勝負はついていた。周囲に転がるのは旧魔王派に傾倒した貴族と私兵の屍で、唯一生き残った敵に相対する警備隊には目立った死傷者は居ない。

 

「お前が誰かなど関係ない。俺は忠義を誓った旦那様達の為、そして領民の為に敵を切るだけだ」

 

 ガゼフは岐路飛ばされた片腕を抑えながら叫びぶ男に対し堂々とした態度で剣を向け、部下達も後に続く。もはや男、旧魔王クルゼレイ・アスモデウスの顔が真っ赤を通り越して蒼白にまでなった時、ガゼフ達の背後にバイクが停車した。

 

「おっ、結構な大物だね」

 

「お待ちしておりました、若様。……どうぞ」

 

 警備隊が左右に分かれ、僕とクルゼレイが相対する。切り落とされた腕の断面からは血液が流れ落ち、肩で息をするその姿は満身創痍。頼りだったオーフィスの蛇は切り飛ばされた腕に握られて転がっている。押せば倒れる状態で僕を呼ぶ必要はないと思うだろう。

 

「小僧、誰だ貴様は」

 

「モリアーティ家次期当主、ジェイル・モリアーティだ。その首、貰い受ける」

 

 もはや誰にでも倒せる状態だからこそ、僕が倒す必要がある。ガゼフは平民から取り立てられ、部下多くは孤児院から選抜されて厳しい訓練を受けた者達。仮にも魔王の血族を彼らが倒せば上層部はいい顔をしない。実績のある貴族の僕が倒す必要が有るんだ。

 

「かぁっ!!」

 

 

 少しでも血を止めようと切られた腕を押さえていた手から魔力が放たれる。そして僕が放った氷の魔力がその魔力ごとクルゼレイを凍らせた。次の瞬間、氷に罅が入り、首だけ綺麗に残して体は砕け散る。さて、これで僕が部下と共に旧魔王派の幹部を討ち取ったという事実が出来上がった。

 

「あとは裏切り者がパーティ会場の事をリークした証拠(既に収集済み)を集めたふりして提出しよう」

 

「若様。招待した貴族達が襲われる所だったと騒ぎませんか?」

 

「ああ、その辺は誘き寄せる為に勇気を出して罠を張ったって事にする予定だから大丈夫。称賛を浴びたいって奴らだし、そういうのを選別してるから。重要な客相手ならもっと警備に気を配るよ」

 

 じゃあアジュカ様に連絡するか。……胴体の一部だけでもレライに回せないか聞かないとね。

 

 

 

 

 

 

(……御使い(ブレイブ・セイント)ねぇ)

 

 先日コカビエルの件でやって来た悪魔祓いコンビだけど、なんと天使になって転校してきた。どうやら悪魔の駒の技術を応用したらしい。まさに技術に善悪はなく、使う人次第、って奴だ。先日まで冷戦状態だったのが嘘の様だよ。

 

 

「ええ、私もショックでした。でも赤穂浪士の皆さんを思い出してください生きている内は忠義に励み、亡き後は遺志を継ぐ。祈りが届くことが重要なのではなく、祈ることが重要なんです。見返りがなくても、行動を誰も知らなくても善行が尊いのと同じです」

 

「え、ええ……」

 

 神が死んだと聞かされてショックだったと語る紫藤イリナだけど、そんな彼女にアーシアは静かに語る。赤穂浪士が何か分かっていないって顔だね。

 

 

「赤穂浪士って何だ?」

 

「ゼノヴィアさん、知らないんですか!? では、語って差し上げます。そもそも江戸城では……」

 

 あっ、これは長くなる奴だ。モモンガさんに誘われて時代劇を見てすっかりはまっちゃったからなぁ、彼女。元々影響を受けやすい性格だしさ……。

 

 巻き込まれては堪らないから僕はこの場から立ち去る。もうすぐ体育祭もあるしレーティング・ゲームもある。成り上がりに活躍されては面白くないから実績が有るからとハンデを付けさせた上層部だけど、勝敗までは思い通りにしてはやらない。

 

 

「ソーナさんと戦わせた三人と違ってレライ達なら負けるだろうと判断したその目、節穴だったと教えてあげるよ」




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