成り上がりの息子と赤龍帝     作:ケツアゴ

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今回、少しアンチ的な内容含みます キリの良いところまでで短め

キャラ設定 7

fate より

モードレッド  騎士

この世界のモードレッドの生まれ変わりにしてペンドラゴン家の長女。幼い頃から僅かにあった記憶に苦しみ、完全に思い出して姿をくらませ、色々あって眷属になった。仲間の世話を焼くことが多く、ジェイルを弟分と扱う。

女扱いを嫌うのは前世が男だったからか、女だったから後継者に選ばれなかったと思っているのか、そのどちらなのかは不明


他者と身内

 書類仕事の手を止め、ふと時計を見れば何時もと寸分違わない時間にお茶が運ばれてくる。オフの時間は少々......軽いにも程があるメイド達だが、こうして仕事になると仕事ぶりには感心させられるので結構な事だ。

 

「今日は......ああ、例の茶葉か」

 

 嗅ぎ慣れない香りに茶葉の種類を判別させられる。息子に任せた領地で新しく栽培された新種の紅茶はやや甘みが強く、甘さが強いお菓子には合わなさそうだ。だが、屋敷で焼かれたお茶請けのシフォンケーキは紅茶に合わせて甘みを抑えているので問題がないだろう。

 

「さて、時間的にはそろそろか」

 

 指を鳴らせば床の一部が開いて巨大な鏡が床から迫り出す。私を映し出している鏡に手を翳せば一瞬景色が歪み、別の場所が音付きで映し出された。

 

 

 

 

『俺の夢は魔王になる事です』

 

 この鏡はレライ君の改造により、ハムスケの見聞きした物を映し出す。勿論風呂などは無理だが、こうして若手の顔合わせの様子を見聞きできるのは有り難いね。しかし、今発言したのは大王家の次期当主、一度追放されたが弟を倒して次期当主の座を手に入れた、だったな。

 

「くくく......」

 

 ついつい笑い声が漏れる。つまり彼は大王家の次期当主の座は魔王になる為の踏み台と言ったわけだ。次期当主の座を手に入れる為、体は鍛えたが、その分政治力や他の貴族との繋がりは不足してる彼がだ。確かに今は支援者も居るが、吹けば消えるような脆弱な繋がり。

 

 さて、仮に彼が魔王になったとしよう。政治のノウハウを学べず幼い頃からの他の貴族との繋がりも希薄。我を通すのは難しい。そして一度当主の座を奪われた弟も......。

 

 魔王になれなかったらなれなかったで......。

 

「どちらにせよ大王家は墜ちる。さてさて、他の派閥はというと......」

 

 

 

 

 

『私の夢はレーティング・ゲームの学校を作ることです』

 

 ソーナ嬢の夢に一瞬面食らうが、現存する貴族用の学校ではなく庶民や転生悪魔の為の学校らしいが、着眼点時点は悪くない。野に埋もれた才覚を発掘し、戦闘教育のノウハウを知らない貴族に代わって育てる事で全体の底上げを行う。

 

 

 だが、正直に言うのは頂けない。純血主義の既得権益にしがみつく上層部は下の者にチャンスが与えられるのを好まない。適当な気に入られそうな嘘を話せば良いのにネ。設立目的と実態が違う組織など珍しくもないのだから。戦闘以外の才能を見付ける役にも立つし、教育の一環とでも言えばいい。その辺、ケツが青い小娘と言えるだろう。

 

 

『会長! 俺達の夢を馬鹿にされたんっすよ!?』

 

 会長、ねぇ。......ケツが青いのは彼の方か。貴族を敬えず感情のままに行動する様なのが眷属の貴族が他者の眷属を含む民衆を教育したいと宣う。うん。危険視されるよ。育てた者が上に行った場合、シトリー家の息が掛かっている事になるしね。

 

『さっきからソーナちゃんを苛めて酷い! これ以上やるなら私が貴方達を苛めちゃうだから!』

 

 ......シトリー家だけでなくレヴィアタン派も今回の事で力を削がれるな。悪い噂など容易に広がるよ、魔王様? 公私混同甚だしい魔王と、もしもの時は姉に助けて貰う危険思想の妹、とね。

 

 レヴィアタン派との付き合いを減らしていこうと考えつつ、これ以上の茶番を見る気を無くして鏡を仕舞う。これ以降は息子に聞けばいい。まだまだ甘い我が子にね。長い付き合いの者に分かる感情の隠し方など呆れかえる。

 

 

「まっ、家庭教師時代のクソ探偵よりは教えがいがある。何だかんだ言って可愛いしね」

 

 

 

 

 だがまぁ、この後にジェイルから聞かされた話に流石の私も怒りを感じずには居られなかった。他者を利用するのは私の得意分野だが、下らぬ事に身内を利用されるのは我慢できないのだからね。

 

 

 

「おや、我が王から指令が届いている。居場所を見つけた奴だが......消せ、か。殺せ、でない所に好感が持てる。馬鹿は利用出来るから好きだが、力のある馬鹿は危険だから嫌いなのでね。力はあっても馬鹿でなくて結構だ」

 

 

 

 

 

 

「なぁ、若手同士のレーティング・ゲームが有るけど何時も通りの訓練で良いのか? ほら、彼女の代理で俺達が出るし、将来の為にも力をアピールしたいじゃん」

 

 顔合わせで最後にレーティング・ゲームの開催が告げられたからってイッセーは張り切っているけど別に特別な訓練を始める気はない。

 

「あのさ、イッセー。特訓ってのは今日やろう明日やろうって物じゃ無いんだ。毎日同じ事を繰り返して身に付けていく物だよ? 変に目新しい事をしても失敗するだけさ」

 

 話はお終いとばかりに僕は自分の特訓をしに向かう。イッセーも禁手の特訓メニューをこなしてまともに使える様になって貰わないといけないしね。ぶっちゃけ、日常的に行っている特訓内容も結構ハードだよ? 感覚麻痺してるよね。

 

 

 

「ふぅ。疲れた疲れた」

 

 何時もと同じメニューをこなし、風呂上がりの僕は心地良い疲労感に包まれて寝室に入る。例の包帯水着姿のフランが仰向けでこっちを見ていた。

 

「あっ、ジェイルー。もうつかれたからねよー」

 

 ゴロゴロとベッドの上を転がり、最終的に上半身だけ起こして両手を伸ばす。抱きしめて欲しいと言うようにね。勿論、僕は鼓動を高鳴らせながらもベッドに向かう。片膝をベッドの上に乗せて覗き込むように顔を近付けると僕の首にフランの手が回される。

 

「本当に直ぐ寝るので良いの?」

 

 少しの期待を込めて訊ねる。フランの肩に手を掛け、引き寄せられるがままに体重を掛けると上に覆い被さる様に身を預けた。

 

 

 

 ......危なっ!? 久し振りに角が刺さる所だったよ! 誤魔化す様に咳払いをして隣り合わせに寝転がり、フランを抱き締める。自然と笑いが漏れ、膨れ面のフランの膝がさっきから僕の太股に叩き込まれていた。

 

 

「だいなしー! もー、がっかりだよ」

 

「ごめんごめん。ほら、お詫び......」

 

 キスをすれば忽ち機嫌が良くなり、胸に顔を埋めて頬を擦り寄せて甘えてきた。何時もは犬っぽいけど、この状態は猫みたいに甘えてきてどっちも可愛い。うん。可愛いって言葉はフランの為に作られた言葉じゃないのかな? 未来予知的な能力でこの子の存在を察知したとか。

 

 

 あっ、エリザベートちゃんも可愛いけどね。フランとは別ベクトルで可愛いんだよねぇ。歌みたいな鳴き声だし、ベタベタ甘えてきたり、かと思えばお高く止まった振りをしながらこっちを気にして、遠ざかったら慌てて寂しそうな声を出したり。

 

 

 

「むぅ。わたしいがいのこと、かんがえちゃだめー」

 

「そうだったね。ほら、こうすれば僕は君だけしか見えないよ」

 

 強く抱きしめキスをすれば僕の視界にはフランしか入らない。嫉妬深くなったフランの機嫌を損ねない様にするのは大変だと思いながらフランを抱きしめる幸せを噛みしめた。

 

 

 キスで口が塞がっているからか、背中に指でメッセージが書かれる。だいすき、だってさ。僕も同じように指で字を書くとくすぐったいのかモゾモゾと動く。少し書きにくかったけど、ちゃんと伝わったかなぁ?

 

 

 

 あいしてる、ってさ。

 

 




感想お待ちしています

なお、モモンガさんと父親の付き合いは一五〇年以上 ギルメンより優先するような台詞があってもご勘弁を 

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