成り上がりの息子と赤龍帝     作:ケツアゴ

34 / 63
キャラ設定 4

倉木遊佐様 提案

レライ・エイプラル 僧侶

肩まで空色の髪を伸ばした常に白手袋に白衣、黒いパーカーの少女。でかい研究用メガネで頭頂部の癖毛を押さえつけている。常識人ではあるが研究が関わるとマッドになる。最近ではマッドになる機会が多い。

異世界の魔法を解析したり黒歌の毒霧を即座に解析して解読薬を作り出す紛れもない天才

元教会の違法研究所研究員の娘・地下にあった施設は証拠隠滅のために埋められてレライだけ脱出した


成長と感謝

 夜風を浴びに外に出れば少し先の離れ小島の上を無数の蝶が飛んでいるのが見えた。様々な色に輝く蝶で、正確に言うなら蝶の姿をした魔力、ジェイルの特訓だ。

 

 彼奴はモモンガさんの夜釣りに付き合って沖まで出ているからあの小島は視界に入らない。でも、蝶は一定の動きを繰り返し、互いにすれ違いはするけどぶつかりはしなかった。正確無比な遠隔コントロール、それが純血悪魔に比べて少ない魔力を補う為に身に着けさせられた武器だって言っていた。

 

 

『ぶっちゃけ、純血の上級悪魔とそれ以外じゃ、別の生き物レベルで差が有るからね。対して鍛えていない人だって少し前の君の四千倍近くに倍化した状態レベルの力を出せるしさ。無茶だろうが何だろうが徹底的にしなきゃ駄目なんだ』

 

 幼い頃からトレーニングを受けさせられ、今じゃ学校に行っている間、住んでいるマンション内で魔力の蝶を動かすようにしているって聞いてる。何でも薄い霧みたいに魔力を散布して、それで周囲を感知するんだとか。……ぶっちゃけ、俺には絶対無理だと思う。彼奴も彼奴で天才って奴なんだよな。

 

「他の皆もすげぇ奴ばっかりだ。なのに俺は足が止まってしまってるなんて……」

 

 俺は魔力が異常に低いとか才能がない部類だけど、それでも恵まれいる事は自覚している。生まれ持った神器に恵まれた。人に恵まれた。環境に恵まれた。行きたい場所があって強く願っても行く権利を与えらえれない人が居る中で、俺は本当に多くの物を貰っていると思う。

 

 与えられた恩に報いたい。期待に応えたい。でも、俺は今、成長が止まっていた。

 

『そう落ち込むな、相棒。別にスランプという訳ではあるまいに』

 

 出現させた籠手を撫でながら呟くとドライグの励ましの声が聞こえて来る。ただ、それでも俺の心は晴れない。俺の力の殆どを占める神滅具『赤龍帝の籠手』、毎日の訓練や最近行うようになったゼスティちゃんやモモンガさんとの組手(ただし一方的でギリギリ避けられる手加減付き)を熟し、俺の神器は成長した……んだけど、禁手に至るか強化するか定まらない状態なんだ。

 

 何かの切っ掛けで何方かに転ぶから今は大事を取って訓練は休み。一歩も進めない状態に心のモヤモヤが溜まる中、気晴らしに外に出たんだけど全然晴れない。

 

 

「あっ、イッセーさんも夜風に当たりに出ていたんですね」

 

「アーシア……」

 

 アーシア、俺が好きな子。なんか強くなっているけど、この子を守る為にも俺は力を欲した。皆みたいに圧倒的な破壊の力じゃなくて、手の届く範囲で良いから大切な人達を守る力が……。

 

 

「あの、イッセーさん……ごめんなさい!」

 

 その踏込は鋭くて咄嗟に動けず、アーシアは俺の懐に入り込んで顔を近付ける。次の瞬間、歯と歯がぶつかって痛かった。

 

 

「あ痛っ!? でも、イッセーさんとキスしちゃいました。……思い悩んでいるようですけど、イッセーさんは強いですよ? じゃ、じゃあお休みなさい!」

 

 顔を真っ赤にして去っていくアーシア。励ましてくれたのか……。

 

 

 

 

『……信じられん。おい、相棒。今ので至ったぞ』

 

 今のでっ!? いや、嬉しいけど……。

 

 

 

 

 

 

「あぁん? 若手の顔合わせぇ? んなの純血貴族様方の為に有るもんだろ」

 

 別荘から帰った俺達はモリアーティ領の屋敷で過ごす事になっていた。若手悪魔はテロリストと戦わせないってのが上層部の判断らしいけど、どうせ大切で貴重な純血悪魔を守る為の物で、元々戦いの駒な俺たち転生悪魔とかの成り上がりは別だろうからって訓練に取り込むためだ。

 

 

「まぁ付き添いだよ、付き添い。()()()したディオドラ君の代わりに遠縁の子が次期当主に選ばれたけど幼くてネ。でも、次期当主達に今後の方針を逸早く伝える場にベルゼブブ派だけ行かないのも政治的に不利だからと、最近大躍進中の君達が同行する事になったんだ。面倒だネ、ははははは」

 

 暢気に笑っているオッサンだけど、隣のジェイルの表情から何か企みがあると察してやがるな。いや、わざと企みがあるって顔に出しているんだろうけど。

 

「それにしても色々と大変そうだね。一誠君の禁手が亜種だからってレライ君が性能テストの準備をしたり、ハムスケが水中でも行動出来るように改造のプランを考えたりと費用が膨らんでいるそうじゃないか。勿論君が出すよね? 君の眷属なんだから」

 

「分かってるよ、僕が出す。……最近領地で発見された金山の収入がパァだけど仕方がないか」

 

 貴族ってのは大変だよな。俺も父上に遠征中の政務を任されるくらいには政治に精通してるから分かるけどよ。ブリテンの統治は荒れ果てた土地やら侵攻してくる蛮族やら脳筋の騎士やら不貞野郎やらで無理ゲー状態だったもんな。

 

 てか派閥とか何とか面倒くせぇ。頭を分散するから余計にバラバラになるんだよ。王は一人で良い。まぁ俺を後継者に据えなかった以外は完全無欠の父上でもねぇと国は収めきれねぇけどな。

 

 

「うっし! 出掛けるぞ、ジェイル! 気晴らしだ気晴らし」

 

 ウジウジ考えていても仕方ねぇ。俺はジェイルの襟首を掴むと其のまま引き摺って行く。何か文句を言って来たけど拳骨をお見舞いして黙らせた。

 

 

 

「其れで何所に行くのさ? 言っておくけど他の領地は手続きが居るからね?」

 

 バイクの後部にジェイルを乗せ、俺はアクセルを吹かして一気に駆け抜ける。景色が矢みてぇに後ろに去っていき、風を切る感触が堪らねぇ。やっぱバイクは最高だよな。

 

「そーだな、まずは町中に行って決めようぜ。何か旨そうな飯屋探してよ。まぁガウェインの野郎が作るマッシュポテトに比べりゃ大体のモンは美味いんだけどな」

 

 ってか、あの時代のブリテンはテーブルの上に直接置いた肉をナイフで削ったりとか色々雑だったからなぁ。この時代の美味い料理に慣れちまった舌じゃもうあの頃に戻れねぇよ。戻れても戻る気もないけどな。

 

 情けなくて目が離せねぇ弟分や妹分も居るし、一応俺は此奴の騎士だし? どうせなら悪魔の中で最高の騎士の称号を得たいからな、まぁ才能で言うなら俺が一番で間違いねぇけど、神器やら何やら戦ったら面白そうなのも多いし退屈はしねぇ。

 

「あっ、お前が主なんだからお前の奢りな」

 

「いや、それなら主らしい扱いをしてよ。……あっ、想像したら寒気がしたからしなくて良い、ごふっ!?」

 

「次言ったらもう一発な」

 

 生意気な弟分に肘鉄を叩き込む。今のはキレーに決まったなぁ。そうこうしている内に目当ての街が見えて来たけど、今日は妙に人が多いな。祭りでもやってんのか?

 

 流石に通行量が多くてバイクを飛ばせないのでユックリ走りながら人の動きを目で追うと劇場の方へ向かって行く。なんか今日面白い出し物でもあったっけ?

 

「……ああ、アレだよ、モードレッド。ほら、サーゼクス様とグレイフィア様の……」

 

「ちっ! アレかよ。俺、あの劇あまり好きじゃねぇんだよ」

 

 確かに思い出してみれば今日は何度も映画や舞台になった恋愛劇の初日。サーゼクス・ルシファーと女王であり妻のグレイフィアが敵対関係から夫婦になるまでを描いたそれを目当てに集まったのか。まぁ上映中は店が空いてそうで良いか。

 

 

「モードレッドは恋愛って柄じゃないもんね。……ギブギブッ!!」

 

「悪うございましたねぇ、そんな柄じゃなくてよ!」

 

 確かにその通りだけど、言われるのは腹が立つからヘッドロックで締め上げると、腕を叩いて開放してくれと頼んできたので放してやる。……まっ、色々今後の事で悩んでいたようだけど元に戻って何よりだ。ったく、俺やゼスティみてぇな馬鹿が黙って突っ込みやすくする為にもテメェが悩んでいても仕方ねぇだろ。

 

 

「よし! あのバイキングに行こうぜ」

 

「え? いや、あんな高そうな店に入ったらフランとのデート資金が……仕方ないなぁ」

 

 丁度良い店を見つけたからジェイルの背中を叩いて促す。あ~、フランには悪い事したな、なぁ、此奴らは何所でも二人で居られるならそれで良いって奴らだしセーフだよな?

 

 

 

 

 

 やっぱベーコンつったらカリカリに焼き上げた奴だよな。焦げる寸前まで熱したのが堪らねぇ。他にもマッシュルームや三種類のチーズを入れたオムレツにコクが深いビーフシチューにはトロトロに煮込まれたミノタウロスの肉がゴロゴロと入ってやがる。

 

「よく食べるねぇ……」

 

「俺は食事が趣味って知ってるだろ。お前ももっと肉食え、肉」

 

「僕はシーフードの方が好きなんだよ」

 

 山盛りに料理を持ってテーブルに戻れば大して盛ってねぇ皿を手に戻ってきたジェイルが呆れたような顔を向けて来やがった。全部食べるんだから構わねぇだろ。

 

 フォークとナイフを手にガツガツと食う。美味ぇ美味ぇ。やっぱ高い店は良いな。人の金で食うと更に良い。あっという間に大盛りの料理を食い尽くし、次の料理を取りに行く、さてと、次は何を取るかな?

 

「ラッキー。まだ有るぜ」

 

 ステーキにするかフライにするかパスタにするか迷い、まずはフカヒレスープを取りに行く事にした。ここの大人気メニューらしく、丁度二人前程残ってる。ジェイルの分も取って来てやるか。彼奴、フカヒレスープ好きだしよ。ったく、仕方ねぇなぁ

 

 後でパンのコーナーでクロワッサンでも取りに行こうと考えながら手を伸ばすと別の手と重なる。確か塔城だったか、このチビ?

 

「……どうも」

 

「ん。おっす」

 

 さて、スープスープっと。何か言いたそうにしているチビから視線を外して取り皿を二つ取ってスープを注ぐ。次新しいのが補充されるのは……三十分後か。

 

 

 

「あの、ギャー君は元気ですか?」

 

 ギャー君? ああ、あの吸血鬼か。此奴の元仲間……だよな?

 

 

「最近じゃキャンプに行ったりゲームの限定版を買いに徹夜で並んだらしいし、元気なんじゃね?」

 

 そりゃ悪化する問題を解決せずに閉じ込めて放置じゃ治るもんも治るかよ。特に心の問題ってのは……よく知らねぇけど難しいんだろ? 騎士の中にも戦争で心が壊れちまった奴が居たしよ。

 

 あの偽乳カウンセラーも腕は良いらしいし、専門家に任せるに限るよな。

 

 

「……そうですか。ギャー君が……」

 

「彼奴も何とか人生が充実してきたみてぇだし安心しろよ、まぁだ自室に引き篭もる時間が結構有るみてぇだけどな」

 

 それはそうとチビも何か悩んでるっぽいな。やっぱ姉ちゃんと会ったからか? どうでも良いけど。

 

 

 

 

 

 

「ほれ、フカヒレスープだ」

 

「モードレッドって意外と気が利くよね。……何時も有り難うね。君を眷属に出来て良かったよ」

 

「へへっ! そりゃそうだろ。俺は最高の騎士だからな」

 

 意外と、は余計だよ馬~鹿! 俺はちゃんと気遣いが出来るんだよ。何所かの珍獣と違ってな! にしても俺を眷属にして良かった、かぁ。まぁ、此奴も少しは主として成長したか? 俺に比べりゃまだ未熟だけどな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「へっくし!」

 

「ハムスケ、風邪っすか? サーフィン中に落ちて溺れかけたからっすからねぇ。さて、水練の開始っすよ!」

 

「別に風邪じゃないけど鬼でござる!!」

 

「ハムスケは馬鹿っすね、自分は鬼じゃなくて悪魔っすよ?」

 

「馬鹿っ!? ゼスティ殿がそれがしに向かって馬鹿っ!? 酷いでござるよぉおおおおおおっ!」

 

「ゼスティ姉さん、ハムスケに謝って。ほら、ハーリーハーリー!」

 

「二人の方が酷いっすっ!?」

 

 




感想お待ちしています


評価者が一人消えていた なぜだろう? 評価って無評価の状態に出来ましたっけ?


さて、FGOはもうすぐ800日キャンペーンのはずですよね 何も発表無いけど

故障でログインできない日が10日ほどある私でさえ790日近くだし、明日か明後日くらいだが、此処まで発表無いってことは前日発表でショボいのかな?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。