成り上がりの息子と赤龍帝     作:ケツアゴ

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キャラ設定1

ジェイル・モリアーティ 

 主人公。アザゼル曰く人の好さそうな黒髪の少年。父親はアジュカの眷属の息子。父親にまだ未熟と言われるくらいに甘いが、領地と領民を優先して同情を向けた相手さえ見捨てる事もある

戦闘タイプ ウィザード

魔力と魔術の組み合わせ。魔力の効率的な運用で純血悪魔との差を埋めている

エロスは背徳感が必要との自論の持ち主。ただしヒロイン一筋。エロ本は別との事。メイド系が好み


悪魔と龍

 最近どうもついていない。変態扱いされたり、告白してもいないのに振られたり、気分は最悪だ。……あっ、全部一人が原因だな。

 

 だが、別に構わない。変態扱いされた帰り道、面白そうな組織にスカウトされたからだ。アースカルドの神々と戦いたくはないか、と禍の団とやらの使いは俺に告げた。勿論即答で了承したさ。アザゼルには悪いが俺は戦いが好きだからね。

 

 だからカテレアがオーディンの力を借りるといった時は組織のバラバラさに呆れたが、直ぐに嬉しい事が起きた。オーバーロードっていう聞いた事のないアンデッドの種族のモモンガ、彼から発せられるオーラに俺は恐怖を感じたんだ。まるで心臓を鷲掴みにされたような感覚。……凄く興奮したよ。

 

 俺に恐怖を与えるほどの存在の強さがどれほどなのか気になった俺は即座に背中に魔力を放つ。濛々と立ち込める煙の中、恐らく立っているであろうモモンガのいた場所を見る俺は笑っていた。

 

「ヴァ、ヴァーリさん、まさか……」

 

 最近が厄日続きだと感じる原因であるゼスティが俺を指差しながら顔を驚愕に染める。ああ、このタイミングで攻撃を仕掛けたんだから裏切り者だと分かるに決まっているか。しかし俺が裏切ると思っていなかったのか、信じられないって顔だな。

 

「貴方まさか……」

 

 うん? どうしてカテレアを指差すんだ?

 

『ヴァーリ、何か嫌な予感がするのだが……』

 

 アルビオンの言葉に俺も不安を感じる。何か決定的な勘違いをされているような気がした。

 

 

 

 

「あのオバさんは魔王の血を引いてるし、子供を産んで貰う為に助けたんっすねっ!? まさか熟女趣味っすかっ!?」

 

 ……ぎゃふん。予感が当たった。当たってしまった。おい、アザゼル。その、同じ年ごろの堕天使に興味を示さなかったが、とか誤解だからな?  年上に母性を求めてるとか、何を言っているんだ。

 

 

「……ヴァーリ。私にはクルゼレイという決まった相手が居ます。諦めなさい」

 

 カテレア、お前もかっ! このままでは俺は彼女に惚れて裏切ったと組織に噂が広がってしまう。流石に其れは居心地が悪そうだし、此処は俺は戦いにしか興味がないと言っておかないとな。

 

 

「勘違いするな。俺は女に興味は無い」

 

「……あ~。まぁ、趣味嗜好は人それぞれっすし、自分は否定しないっすよ?」

 

「ヴァーリ、お前……」

 

 おい、ゼスティ。君は俺に何か恨みでも有るのかい? 男性陣は微妙に距離を取ってるし。アザゼルもショックを受けたような顔をしないでくれ。何所で教育を間違えた、とか俺が信じられないのか? いや、確かに裏切ったけど。

 

 

 

 

「じゃれ合いは其処までにしておけ」

 

 俺への誤解で弛緩した空気が一気に冷え込む。消えていく煙の中、モモンガは何事も無かったかのように立っていた。俺の魔力の直撃を受けたにも関わらず意に介した様子すらない。

 

 

 

「やはり恒常的にダメージを減らす能力より、こっちの方が良い様だな。あの程度の攻撃など、まったく効かん。蚊が刺した程度、という例えが有るが……それ以下だな」

 

 一気に頭に血が上るのを感じる。奴は、俺が虫けら同然だと、そう言ったのだ。俺の今までの全てを否定された彼奴を許しておけない。ああ、存在する事すら許すものか。

 

「……禁手化(バランス・ブレイク)

 

「おい、ヴァーリ……」

 

 即座に『白龍皇の(ディバイン・ディバイディング)(・スケリトルメイル)』を身に纏い、止めようと伸ばされたアザゼルの腕をすり抜けてモモンガに迫る。怒れる龍の力、見せてやろうじゃないか!

 

「ゼスティ……」

 

 後一歩、後一歩で俺の拳が届く。一気に能力を半減し、その剥き出しの頭蓋骨を一撃で砕いてやろうじゃないか! 横から何か聞こえてきたが気にせず俺は腕を伸ばし……。

 

 

 

「ていっ!」

 

 あと数センチまで迫った瞬間に伸ばした右手をゼスティに掴まれて止められる。

 

「先日の一件と言い、今日と言い、君は俺をとことん腹立たせるな」

 

「いや、いきなりセクハラかまされた自分の方が被害者っすよ?」

 

 ゼスティは俺の左側から右手の手首を掴んでいて、当然左手は空いている。能力の使用を補助してくれる神器も持って居ない、能力を受け継いだだけの平和ボケした奴に禁手の能力は勿体ないと左手で掴もうとし、今度は左手の手首を掴まれる。

 

「これで能力を封じたつもりかい? 確かにこれなら触れないが、魔力を近距離から放てるんだ」

 

 魔力を放つ為の一瞬の溜め、避けられる筈の無い今の状況なら何一つ問題ない。俺は即座に魔力を放とうとし、背中に衝撃が走った。

 

「ぐっ!?」

 

 何が起きたか、それは周囲を見れば直ぐに分かる。散らばっていく砕けた壁の破片、そして外の景色。彼女は俺の手首を掴んだまま壁を突き破ったんだ。俺が視認出来ない速度で。予想とは違い、少しは楽しめそうだな。

 

 流石に少しはダメージがあったが、それでも魔力を放つのには問題がない。近距離からの魔力はゼスティを飲み込んだ。だが、腕の力が緩んでいない所を見ると……。

 

 

「ぶはっ!? び、ビックリしたっす! って、ああっ!?」

 

 少し痛そうに涙目になっているが、それでもゼスティに対して堪えた様子はない。だが、着ていた服は破けて平坦な胸と色気皆無のブラが見えていた。彼女の顔が羞恥に染まる。同時に彼女の口の中も赤く発光する。ブレスかと思い咄嗟に引き剥がそうとするも掴まれた腕は固定されてビクともしない。

 

『如何やら舐めていたのはお前の様だな、ヴァーリ』

 

 半減の力を使う暇もなく俺の視界は赤一色になり、途轍もない熱量が体を包み、呼吸こそ止めたが鼻腔から入り込んだ熱で肺が焼けそうになる。

 

『Divde! Di...』

 

 直接触れなくても周囲の空間に連続で半減の能力を使うのが禁手の能力。半分の力は俺に吸収され余分な力は排出口から吐き出される。周囲の木々が半分の大きさになる中、ゼスティはたった一回の半減を食らっただけで既に射程外に居る。しかし、アルビオンの言うとおり、侮っていたのは俺の方だったな。

 

 体に漲る力と排出口から聞こえる軋む様な音に彼女の力を感じ取る。俺の力はたった一回で大幅に上がり、排出量に神器の能力が限界近くまで酷使されて居るとはね。

 

「俺の勝ちだ、ゼスティ。弱くなり続ける君に俺は倒せない」

 

「え? なんで弱くなるままだと思ってるっすか?」

 

 俺の言葉に心底疑問を感じている彼女の様子に違和感を感じ、悪寒が走る。そして次の瞬間、その理由が判明した。

 

 

「ゼスティ! 六回まで倍化を許可する!」

 

 響いたのは彼女の主の声。この時、俺は気付いた。彼女は一度も赤龍帝の力を使っていない事に。

 

「それじゃあ......行くっすよぉっ!!」

 

 ゼスティの肉体が変化する。肘と膝から先が龍の物へと変わり背中からは龍の翼が出現した。感じる力強さに思わず頬が緩む。ああ、さっきまで全然本気じゃ無かったのか。

 

「ブーストブーストブーストブーストブーストブーストォ!!」

 

「禁手を使っていないのに連続で? ......いや、当たり前か」

 

『お前達所有者は人や悪魔が龍の力を道具を介して使っているが......あの小娘は龍が己の中の龍の力を使っている。使いこなせて当然だろう。......矢張り慢心していたのはお前だったか。いや、あの小娘の力が予想を上回り過ぎたか。まさに子供のドライグと言ったところだな』

 

 構え、何時でも半減の力を使える様にするがゼスティの姿が視界から消えると同時に俺は地面に叩き付けられる。うつ伏せになった俺の鎧の背中の排出口周辺が無残に砕け、真上に視線を向ければ拳を振り抜いた状態のゼスティの姿。あの一瞬で俺の背後に回って殴り飛ばしたのか。

 

 こうなったら奥に手を使うしか勝ち目がないが、流石に其れを許す相手では無いだろう。この距離からでも分かる発射前のブレスの熱量を感じ取りながら俺は笑う。赤い龍との戦いの中で死ねるなら本望だと。だが、心残りが無いこともない。

 

「もう一度だけ母さんに会いたかったな......」

 

 そして俺に向かってブレスが放たれ......無かった。

 

 

 

 

「其れ、反則っすよ」

 

 拗ねた子供の様な声が耳に届く。俺が戸惑う中、突如人影が俺の前に現れた。

 

 

 

「ドライグが増えてる? ......何故?」

 




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