「事故死か・・・・・・貴族とは面倒だな。我が子の死を普通に悲しむ事すら出来んとは」
ディオドラの死後、コカビエルの部下らしき白髪の少年の記憶を書き換えた俺は、転移魔法陣の痕跡から其方に向かった筈という捜索依頼を受け、適切な時間を置いて捏造した証拠を提出した。確証はないがコカビエルによって殺された可能性が高いと・・・・・・。
結果、功を焦って返り討ちになったと判断されたんだけど、それをそのまま公表する訳にはいかないらしい。まず、今の政権は戦争が嫌で前政権に反旗を翻した事。他派閥の管理者が聖剣の一件には不干渉だと既に約束している事。何よりも実力差も弁えず負けたなど恥だと思われたらしく、事故死として発表し、事態を見て悲劇の主人公として演出すると聞かされた。
「貴族にとって面子は飯の種だからね」
この体では精神の高揚が抑えられるけど、今回みたいに女王として同行する必要のある場では口調に気を付けなきゃ駄目だし、疲れるよなぁ。今だって誰の目があるか分からないから演技をしているしさ。
「しかし管理者であるグレモリーの令嬢の責任を追求するためにも人に被害が出ることを望む声が大きいとは・・・・・・多くの悪魔にとって人は利用し搾取する為の存在なのだな」
「人でさえ人から搾取するからね。劣悪な環境で学ぶことすら出来ずに重労働をさせられる子供達。信仰や因習による差別や迫害。・・・・・・ニュースやドキュメント番組でさえ多くのケースを知ることが出来る。他国や別の人種に対してさえそれなんだから、ましてや別の種族ならね」
「さもありなん。当然の帰結か。・・・・・・いや、アンデッドの精神を持つ私も場合によっては支配し搾取する側に回っていたかも知れんな」
「実際は違うし、気にしなくて良いよ。・・・・・・それよりも今後の事を考えよう」
ジェイル君に励まされながらも考えてしまう。もしかつての仲間と作ったあの場所と共に別の世界に来ていたら俺はどうしていたのだろうかと。・・・・・・いや、無駄な考えだな。失った物よりも、今の俺にとって大切な仲間や居場所を守らないと。この体はそれが出来る力を持っているし、きっと大丈夫だ。
「ふぅー。やっと気が休めるよ」
迎えの車が発進し、漸く俺は口調を戻すと息をしていないけど息を吐き出す真似をする。こういった人間の頃の残滓は抜けきらないなぁ。
「そうそう。さっきベルゼブブ様に耳打ちされたんだけど、彼奴は私の理想の邪魔だったし、手間を掛けさせて悪かった。今度何かの形で謝礼をするよ、だって」
「・・・・・・モリアーティさんの主なだけあるな」
怖っ! 色々な意味で怖っ!
「・・・・・・またか。君とは勝負が付いたはずだけどね」
聖剣の探索中、私達の前に現れた悪魔の少年を見るなりゼノヴィアさん達は辟易とした顔になる。人目のない所で現れた上に、瞳に宿る憎悪を見れば目的は察せますが、悪魔とは不干渉の筈と聞いたのですがね。
「彼はリアス・グレモリーの眷属で聖剣計画の被験者だ。・・・・・・聖剣計画は知っているかい?」
「ええ、それはもう・・・・・・」
私の疑問を察したのか説明がなされ、心が痛む。あの計画はエクスカリバーの使い手を作り出す計画でしたが、私の一族が例の話を広めていれば起きない悲劇だったかもと思えば・・・・・・。
「僕の復讐は終わっていない! エクスカリバーを破壊するまで終われないんだ!!」
彼、木場君の手に突如魔剣が出現する。アレは恐らく魔剣創造。動きからして騎士の駒を使ったのでしょうが動きは悪い。怒りに支配されて本来の力を発揮出来ない様ですが・・・・・・。
横目で見た二人は非常に戦いにくそうな表情。自分達の組織の人間が起こした悲劇の被害者だからでしょうが、私は妹を見つけなくてはならない。実家から持ち出した国宝にして家宝であるコールブラントを抜いて一気に懐に潜り込むと、剣の柄頭で魔剣を砕いて峰打ちを脇腹に叩き込む。
「がふっ!?」
聖なるオーラを極限に抑えた一撃ですが、さほど頑丈でない彼には効果的だったのか膝から崩れ落ちて立ち上がれそうにない。そして私は残酷と思いながらも彼に耳打ちをして秘密を教えました。
「実は貴方が憎むエクスカリバーは・・・・・・」
「なっ!? 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ・・・・・・」
絶句し譫言のように否定の言葉を呟く彼は縋るような瞳を私に向け・・・・・・私が静かに顔を左右に振ると完全に心が折れた顔で黙り込みます。これで邪魔は入らないでしょう。
「行きましょう。時間が惜しい」
「え、ええ。行きましょう」
流石にトドメを刺す気にはならないのか彼を放置する二人。そのまま私達が去った後も彼はその場に居続け、急に笑い出しました。
「あハはハハハハは! そうダね、皆。僕達のする事は変わらナイ! 復讐だ! 復讐をシよう!」
この時、彼には存在しない何かが見えているようでしたが、その場に居ない私には分かるはずも有りませんでした。
「明らかに罠でしょうが・・・・・・」
コカビエルは聖剣計画の首謀者であるバルパーの他にも聖剣を使うはぐれ悪魔祓いの協力者が居るはずなのですが、教会関係者の格好をしても一向に襲ってくる様子が無く、効率を考えて二人と別行動をした私は突如目の前に現れて道案内をするかのように飛ぶ鳥に誘われて町外れの森まで来たのですが、散策中に聖剣の波動を感じ取りました。
「さて、二人を呼ぶべきかどうか・・・・・・行きましょう」
二人には悪いですが堕天使の幹部相手に
「・・・・・・中々できそうだ。小僧、名を名乗れ」
宙に浮く椅子に座って私を見下すコカビエル。さて、正直に名乗らせて頂きましょう。
「私の名はアーサー・ペンドラゴン。アーサー王の末裔にして、最強の聖剣コールブラントの天然の適合者です」
「コールブラントだとっ!? コカビエル、アレを調べたい! 小僧の体もだ!」
唾を吐く勢いで私を指さしながら叫ぶバルパー。情報通りに聖剣に固執しているようですね。
「無理ですよ。この聖剣は貴方達が盗んだガラクタとは次元が違うのですから」
ガラクタ、その言葉を聞いたコカビエルが興味深そうな顔になり、バルパーは顔面を真っ赤に染める。神父は私の隙を窺っている様だ。静寂の中、それを破ったのはやはりバルパーでした。
「ガラクタだと、ふざけるな!! 私が貴様の祖先の物語にどれほど憧れ、どれほどの時間を人生を研究に費やしたとおもっているのだ!!」
血管が切れそうな程に大声で叫ぶバルパーに対して私は嘲笑さえ浮かべそうだった。あの彼なら兎も角、目の前の老人には哀れみは感じない。
「そのエクスカリバーは偽物ですよ。湖の乙女に聖剣を貰えなかった王子の名誉の為に国民には貰えたと嘘を付いてマーリンが作り、ブリテンが滅びた後に湖の乙女から再び貰ったと家名を残す為に亡命先の国に嘘を付いて差し出した嘘で塗り固められた剣。本当の名前さえ忘れられたそれをガラクタと呼ばずなんと呼べと?」
目の前でバルパーが崩れ落ちる。その体を光の槍が貫いた。
「こうなっては其奴は役に立たんだろう。・・・・・・フリード、予定が変わった。おい、この街を任された悪魔に伝えろ。三十分後、貴様の学園で戦争を始めるとな」
豪雨の様に降り注ぐ光の槍を一撃で消し去った時、既にコカビエルとフリードの姿は消えていました。・・・・・・やれやれ、私としたことが失敗しましたね・・・・・・。
まだ一九箱 家でしか出来ないから大変だ 執筆もあるし 取りあえず過剰気味のライダー石目当てに二神とチアを三枚ずつで周回
アーラシュ育ててみようか・・・・・・
感想待っています