成り上がりの息子と赤龍帝     作:ケツアゴ

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マテリアルで牛若丸の見て 意外と暗くて重いキャラなのを知った

あと、ナイチンゲールさん、史実を見てもあなた本当にバーサーカーです


マテでは南極だが元は北極らしい 北極で良いかな?


僕の休日と彼女の幸せ

「……あー、また気絶してたのか」

 

 休日の朝、節々が痛む体を無理やり動かして起き上がる。仰向けに倒れていた場所は実家の訓練室の中。組手の途中で良いのを貰って気絶してしまったようだ。

 

 僕ことジェイル・モリアーティは上級悪魔だ。と言っても父さんが出世して爵位を得たからに過ぎないけど。だからこそ僕には鍛錬が必要なんだ。

 

 人種によってアルコールの分解能力が違うように、獣と人の身体能力に差があるように、純血の上級悪魔とそれ以外にも明確な差がある。力が価値に繋がる悪魔なのに熾烈な鍛錬を積むケースが極稀だと言われるけど、其処まで努力しなくても高い能力への成長がある程度約束されているから仕方がない。

 

 その他にも特定の家が持つ特色や、本当に才能がある悪魔と凡才の絶望的な差、それを考えたら貴族のやるべき事の忙しさを加味して仕方がないんだろうね。領地経営や他の貴族との交流、上に立つって事は下の誰よりも急がしいって事だからさ。

 

 だけど、僕達みたいな成り上がりは純血悪魔以上に力を示さなければならない。力を示して地位を得たのだから、それは当然だ。引いているだけで敬意を払われるような高貴な血筋も、他を圧倒する特色も無いんだからさ。だから僕は学問以外にもこうして力を注いでいるんだけど……道は長く厳しいなぁ。

 

「若様、次は運動場です。時間は有限、遅れていますしお急ぎください」

 

 起きたとみるや指導者役の使用人に促されて外に出る。僕、一応後継ぎなんだけど扱いが雑な気がするよ。いや、甘やかされても困るんだけどさ。

 

 

 

「うおー! あと五十週追加っす!! 根性入れまくるっすよー!!」

 

「相変わらずだなぁ……」

 

 運動場には既に先客が居た。さっき組手で僕の顎に強烈なアッパーカットを叩き込んだ張本人にして、僕の眷属中で現在身体能力だけなら最強の女の子。銀髪のポニーテールを揺らし、身の丈の数倍の大きさを持つ岩を担いでトラックを爆走する姿は慣れていなければ奇異に映るだろう。

 

 名はゼスティ・チャンドラー。僕と同様に駒王学園に通う中学生だ。活発、脳筋、単純、豪快。ジャージ姿で土煙を上げながら走る彼女に抱く印象はそんな物だ。さて、見てないで僕も走るか。

 

 用意されていた重りを腕や足に巻き付ける。見た目は普通のリストウエイトだけど、巻き付けると魔力を吸い上げ重量に変換する特別性。吸わせれば吸わせるほどに重量を増すんだ。

 

「今日は一時間程でいいか」

 

 因みにこの一時間とは一時間したら切り上げるって事じゃなくって、魔力の枯渇と疲労で動けなくなるのが一時間後くらいになる様にするって事。悪魔の医療技術は進んでいるからオーバーワークで体が壊れる心配もないし、思いっきり酷使できる。

 

 

 

「よし! 今日は重量三倍に挑戦っす!」

 

 流石に彼女ほどのレベルは僕には無理だけど。あー、うん。生まれ持っての差って残酷だよね。色々な意味でさ。後、僕が来たんだからいい加減気づけよ。

 

 

 

「絶好調だね、ゼスティ」

 

「そりゃそうっす! 三食食べられるご飯に温かいお布団! そして毎日入れるお風呂! 自分、幸せいっぱいで絶好調っす! あっ、起きたんっすね、ジェイルさん。心配したんっすよ」

 

 並走して話しかけると天真爛漫な笑顔を向け、最後に漸く僕だと気付く。彼女って結構暗い過去の持ち主のくせに緊張感とか足りないけど、よく生きてこられたな。いや、こういった性格だからこそ生きていられたのかな?

 

「それはそうと勉強の方はどうなんだ? 聞いたよ。まーた点数が悪かったそうじゃないか」

 

「うぐっ!! べ、勉強は大好きっすし頑張るっすよ。あの頃は人数分数えられれば良かったから慣れていないだけっす。……気が沈んできたから根性で持ち直すっす! うぉおおおおおおっ!」

 

 サッと目を逸らし、誤魔化す気なのか口笛を吹く彼女の頬を冷や汗が流れる。家庭教師役のメイドに怒られるからだろうなぁ。そして直ぐに気分を切り替え、思わず耳を塞ぎたくなるような大声を上げながらゼスティは速度を増していった。流石人型の龍とでもいうべき存在。身体能力が異常だ……。

 

 

 

 そして約一時間後、僕が予定通り疲労で倒れ空を仰ぐ中、ゼスティは動き足らないと別の組手の相手を探しに行った。僕、情けないなぁ。

 

 

「もっとだ。もっと強くならないと……」

 

 空に向かって手を伸ばし、掴める筈のない空を掴むように拳を握り締めた。

 

 

 

 

「一休み一休み。休息も大切だよね」

 

 昼休憩の軽い睡眠は午後からの活動に必要だからと僕は中庭のお気に入りのスポットに向かって居た。木陰は涼しくって居心地が良いってのも有るけれど、この時間帯は彼奴が居るんだ。

 

 

「むにゃむにゃ。もう食べられないでござるよ~」

 

 ベタベタな寝言を呟きながら鼻提灯を膨らませているのは僕の眷属の『騎士』。足をグデッと伸ばしたその姿は大福みたい。そう、此奴は人型じゃない。元々は父さんの主の研究室で作り出されたキメラ。ただ、なんでこんなのを作ったんだろうと今でも疑問だ。

 

 蛇の様な鱗に覆われた長い尻尾だけなら魔獣って感じなんだけど、胴体は愛くるしい。ジャンガリアンハムスターを馬ほどの大きさに超巨大化したジャイアントジャンガリアンハムスターとでもいうべき存在。知能は……高い。ただし、獣にしては異常というレベルだけど、人なら阿呆の部類に入る上に呑気だ。

 

 名前はハムスケ。本人(人?)?が気に入っているから定着したけれど雌らしい。

 

「ウ!」

 

「やあ。先に来てたんだね、フラン」

 

 そんなハムスケに背中を預けて空を眺めていたフランが僕を見るなり右手を上げて存在をアピールする。ハムスケの毛は並の魔剣じゃ弾かれるほどに強固なんだけど、何故かフカフカモフモフしていて触り心地が良い。寝心地は何と言うか人を駄目にするクッションって感じなんだ。

 

 僕がフランの隣に腰を下ろし、地面に置かれた彼女の手に自分の手を重ねると肩に頭が置かれる。僕も同様に彼女に体を傾けながらハムスケに体を預けて睡魔に身を任せている内にウトウトとしだした。

 

「お休み、フラン」

 

「オヤ…スミ…」

 

 意識を手放す時、頬に柔らかいものが触れた気がしたけれど気のせいじゃなかったら嬉しいな……。

 

 

 

 

 

「お前は醜い化け物だ!」

 

「何と恐ろしい化け物なんだ」

 

「化け物が出たぞー!!」

 

 夢を見ていた。作り出した父親に捨てられた私でも、言葉を話せるようになれば受け入れて貰えると。化け物じゃなくて人間になれると。

 

 でも、所詮夢は夢。どれだけ幸せな夢を見たとしても、目覚めた時に不幸なら意味が無い。文字を覚えた、言葉を覚えた。私は化け物のままだった。

 

 

 だから父親を探し出して頼んだ。二度と人前に姿を現さないから共に生きる伴侶が欲しい、と。寂しいという気持ちは確かにあったけど、誰かと番いになって共に生きるのは『人間らしい』、そう思ったから了承された時、本当に嬉しかった。

 

 でも、約束は破られた。私が化け物だから、醜い化け物だからこれ以上仲間を増やさないようにと伴侶は目覚める前に破棄された。

 

 

 

 ああ、分かった。私が化け物じゃなくなるのが無理だと言うのなら、私が凶暴で醜い化け物だと言うのなら、そうなってやる。私を生み出した()の大切な者を殺し、追い掛けて追い掛けて追い掛けて、北極まで追い詰めた時、男は死んでいた。

 

 

 もう私には誰も居ない。一緒に居てくれる誰かも、憎しみをぶつける誰かも居ない。もう、生きている意味も無い。だから私は北極で自らを滅ぼした。その筈だった……。

 

 

 

 

「……?」

 

 目覚めた時、其処は知らない場所だった。頭は靄が掛かったみたいに上手く働かず、言葉は上手く発せられない。ああ、どういう理由か知らないが私は更に化け物らしくなって何処かに連れて来られたのだと、そう思った。

 

 

 

 拘束を引き千切り扉を破壊するとけたたましい音が鳴り響く。其れが非常に不愉快で、慌ててやって来た奴らの奇異な物や怖ろしい物を見る目が、化け物を見る目が腹立たしかった。そんな目で見られるのが、もっと怯えられるのが怖かった。

 

 だから逃げて逃げて逃げた先で私は幼い少年と出くわした。

 

 

「ウーーーー!!」

 

 どうせお前も私に怯えるんだろう、化け物と呼ぶのだろう。ならば化け物らしくしてやると威嚇の積りで唸る私に手が差し出される。簡単に握り潰せそうな小さな手。握手、それ自体は知っていた。でも、其れを向けられるのは初めてで、私を見る目は怯えていなかった。

 

 知らない。私はこんな目を知らない。でも、不思議と怖くはない。

 

 

「目覚めたんだね。僕はジェイル。君は?」

 

「……」

 

 嗚呼、ごめんなさい。折角名乗ってくれたのに。折角名前を聞いてくれたのに。折角歩み寄ってくれたのに私は貴方に何一つ返せない。握り返した手は小さく温かい。でも、私にはこの手を握る資格なんて……。

 

 

 

「ジェイル、其れから離れなさい!」

 

 声が響き、壮年の男が子供の名を呼ぶ。あの目は知っている。私を見た時、親が子供を守ろうとした時に見せた目だ。きっと彼はこの子の親で、必死に私みたいな化け物から守ろうとしているんだろう。

 

 

「大丈夫だよ、父さん。根拠はないけどこの子は大丈夫。握手にだって応じてくれたし、きっと知らない場所に居て混乱しているだけだよ」

 

 私から子供を守ろうとした親のように、ジェイルは私に背を向けて父親に言葉を投げかける。分からない分からない。この気持ちが何か分からない。でも、胸の温かさと頬を流れる涙は心地良かった。

 

 

 

 

 今の私はもう醜くて凶暴な化け物じゃない。『悪魔』でジェイルの恋人。私は好きという気持ちを知った。

 

 

 私は貴方のおかげで誰かを愛し愛する事の幸せを知りました。今の私は幸せです。だからずっと傍に置いて下さい。その為ならば私は貴方に尽くします。貴方の為なら何でもします。それが私の幸せだから……。

 

 

 私も少し眠ろう。愛しい人に持たれて私は睡魔に身を任せる。願わくば幸せなこの時同様に幸せな夢を見たい。

 

 

「ス…キ…。ダ…イ…スキ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……起きたのはよいものの、動くに動けないでござるなぁ。ご飯前に軽く眠るだけのつもりが昼ご飯を食べ損ねたからお腹減ってるのでござるが。いや! それでも主たる若様と姫様の大切な時間! このハムスケ、邪魔するような無粋な真似はしないでござる! ……でも、本当にお腹が減ったでござるなぁ)




伏線張るのに夢中になり、中々回収しないうちに説明不足とか言われるんですよね 一羽目とかで降り設定を説明してるのに原作の設定からするとおかしい、とか言われたことも有るけれど見逃したか分かりにくかったか。分かりやすい書き方を目指そう。 勿体付ける必要のないのは説明を早めにしていこう

FATEのフランとは元のフランケンシュタインの怪物との折り合わせで少し設定が変わる  アポでの発言とFGOでの設定だって少し違う気がするし平気平気

感想お待ちしています


次回 原作が進みます

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