成り上がりの息子と赤龍帝     作:ケツアゴ

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エクスカリバーについてのオリ設定登場です


興味と居場所

「何と言うか貴女って……自由ね」

 

 私は出掛ける用意をしながらモードレッドに言葉を投げかける。得意そうな顔が返ってきた。

 

「おうよ! 俺様は其の辺の凡人とは違うからな」

 

 嫌味で言ったつもりなのだけど、どうやら彼女には通じないみたいだと私は痛む頭を押さえる。クーラーが故障したから修理の間部屋でゴロゴロさせてくれ、これはまだ良いわ。でも、下着同然の姿でベッドに寝転んでアイスを食べられるのはちょっと気になる。

 

 同性(って言ったら怒るから口にはしない)だからと言っても最低限の羞恥心とか有るでしょうに、際どいパンツにブラみたいな布だけって……。

 

「何処か行くのか? なら、俺も付き合ってやるよ」

 

 私が出掛ける準備を続けているとモードレッドも出掛けたくなったのか、体のバネを使ってベッドから飛び上がる。私としては一人でのんびりしたかったけど、多分そういったら駄々を捏ねるので本当に厄介ね、彼女って。

 

「アーシアに武器を届けに行く序でに街を散策するだけよ。研究は楽しいけど、そればかりだと気が滅入るもの」

 

 思えば長い長い階段を昇らないと太陽の光を拝めなかった研究所に籠り続けた両親は気がどうにかしていたのではと疑ってしまう。最初からあの場所で生まれた自分は兎も角、二人は生まれた場所は普通だったらしいのだから。

 

 

「じゃあ、出掛けようぜ!」

 

 ほぼ着替え終わっていた私が着替え終わった時、既にモードレッドは持って来ていた服を着終わっていた。って言うか暑いからってダラダラしてたのに出掛けるのね。

 

「着替えるの早いわね。……そして相変わらずの露出の高さ」

 

 どうしてこうも女扱いが嫌なくせに女をアピールするような服装を好むのか理解に苦しむ。さすがに仲間の頭を解剖して脳を調べる訳にもいかないし、叛逆するなら今すぐしてくれとの考えが脳裏を過ったが、まぁ無理だと思うので直ぐに忘れる事にした。

 

 

「レライ様、モードレッド様、行ってらっしゃいませ」

 

「おう。行って来る」

 

「夕食前には戻るわ」

 

 出掛ける際に使用人達にお辞儀で送られるのは未だなれない。どうも傅かれるのってはむず痒いわ。モードレッドやジェイルはよく慣れているわね。慣れた上でそれに相応しい振る舞いも要求されるんだから貴族って苦労してそう。

 

 

 やっぱり私は研究職で一生を終えるのが性に合ってるわ。明日は何を解剖しようかしら……?

 

 

 

 

「この店が美味いんだよ」

 

「……私、少食だって知っているわよね?」

 

 アーシアに武器を渡す前にショッピングを済ませ、渡した帰りにモードレッドがお勧めの店を教えてくれるって言うから不安になりながら着いてくれば案の定。ビッグサイズが売りの『ステーキハウス ヘキサトライ』。頭以上の大きさのステーキを前にナイフとフォークを構えたパンダの看板が特徴の店。

 

「大丈夫だって。残したら俺が食ってやるから。マジで此処美味いんだよ」

 

「まさかとは思うけど、色々楽しみたいから少食の私を連れてきたんじゃないでしょうね?」

 

 モードレッドは私の問い掛けに顔を背けて口笛を吹きながら店に入っていく。このままバックレようかとも思ったけど、確かに良い香りがするし、日替わりレディースセットのメニューは大好物の豆腐ハンバーグだったので入る事にしたわ。

 

 

 

「ジャイアントステーキセット、ガーリックライス特盛りで。それとチキングリルプレート。飲み物はコーラな」

 

「後でエチケットガムあげるからニンニク臭い口で横歩かないでよ。レディースセットのライス小とアイスコーヒー」

 

 注文をとった店員(何故か着ぐるみ)が去っていくと私は妙に機嫌が良さそうなモードレッドに目を向ける。普段から悩みなんて殆ど無い単純明快な思考回路のくせに偶に思い悩む彼女は見ていて飽きない観察対象だ。心理学は専門外だけど、彼女を見ていたら興味が湧いてきた。

 

 アーサー王に向けた向けた感情は? 前世の記憶が戻るってどんな気分? 実に興味深い。それがトラウマでも根ほり葉ほり聞き出したい!

 

「にしても教会の奴らも大変だよな。エクスカリバーとは名ばかりの贋作のガラクタを後生大事に抱え込んで、盗まれたら必死扱いて取り戻しに来るなんてよ」

 

 モードレッドの言葉からは教会ではなくエクスカリバーへの・・・・・・いえ、正確に言うならばマーリンがアーサー王の息子の為に作った聖剣へ向けた物に思えた。王家の権威の為だったようだけど、モードレッドからすれば現状は実に滑稽に思えるのでしょうね。

 

 ・・・・・・研究対象にしたいし、どうにか一本だけでも手に入らないかしら?

 

「手に入った剣があんなガラクタって時点で彼奴より俺の方が後継に相応しかったって事だよな。クラレントだって再び俺の手に戻って・・・・・・アーサー?」

 

 得意そうに笑うモードレッドの顔が急に固まる。視線に先に目を向ければ教会の悪魔祓いらしい二人と共に眼鏡の青年が入店してきた。

 

 

 

 

 

 

 

「危なかった。これだから信仰の薄い国の国家権力は嫌なんだ・・・・・・」

 

 空きっ腹を押さえながら呟くが、腹に何も入っていないので声に力が入らない。相棒のイリナも限界が近いらしく、座り込んでいた。

 

「ゼノヴィアが剣なんか見せるからよ。ブザーから逃げる時も抜いたままだったし、目撃されてて特徴が広まっていたから、寄付を集めている最中に職務質問されたのよ」

 

「何を言う。イリナが騙されて経費を落書きに使い込まなければ目立つ真似をしてまで寄付を募る必要なんか無かったんだ」

 

 今まで数多くの修羅場を潜ってきた私達だが、今最大級の困難に突き当たっている。貧困と空腹だ。相棒のイリナが怪しい画商に騙されてあろう事か食費さえも使い込んだ為に絶賛空腹中。これでは戦闘など無理だ。

 

 

「昨日は会えなかったがお前の幼なじみとやらから借りられないか? 本部に送金して貰うのにも時間が掛かる。いや、国際電話を掛ける金もない。・・・・・・誰かのせいでな」

 

「何よっ!」

 

 空腹から苛立ち嫌味が口から飛び出るが、言い返そうとしたイリナと私の腹が同時に鳴る。もう口論さえ出来ないか・・・・・・。

 

 

「流石に小学校に入る前に引っ越したのに無理よ。其れよりは異教徒から・・・・・・」

 

「だから今の私達なら警察のご厄介になるだけだ。本当にカツ丼でも出して貰えるのか、うん?」

 

 それ以前に許して貰えるかどうかとか主を試す不敬な考えではと思ったが、また口論になるだけと言葉を飲み込む。そろそろコンビニか飲食店のゴミ捨て場でも向かおうとさえ思いかけた時、背後から声が掛けられた。

 

 

 

 

「初めまして、教会の悪魔祓いのお嬢さん達。早速ですが相談があります。お食事でもしながらお話だけでも聞いて下さいませんか?」

 

 神が遣わした救いの手だとさえ今の私達には思えた。何より、名刺代わりに見せられた聖剣が疑うことさえさせなかった・・・・・・。

 

 

 

「クラレントが見つかった?」

 

 空腹が限界だからとちゃんとした店に入る前に買って貰ったたこ焼きを食べながら聞いたのだが男の名はアーサー、アーサー王の子孫だそうだ。

 

「アーサー王って子供居たんだ。知らなかったわ」

 

 ソースを口の周りに付けたイリナの言うとおり、私もアーサー王の子供については詳しく知らないから驚いた。流石に子孫の前で言うのはどうかと思うし、苦笑いされているぞ。

 

「ええ、王妃との間に、他国に嫁いだ娘が一人、息子が二人。私の家は国が滅びた後、次男が娘の嫁ぎ先で興した家だと伝わっています。モードレッドの叛逆後の混乱で多くの国宝が紛失しましたが、最近になって私が懇意にしている占い師がクラレントと・・・・・・十年以上前に行方不明になった妹の手掛かりがこの街にあると言いまして」

 

 アーサーの話では行方不明になった妹は素行不良で幼くして当主である父親に嫌われていたらしい。だが、彼と下の妹は彼女を好いていて、戻ってくると信じ、居場所が有るようにと父親に従いつつ家内での力を付けてきたそうだ。

 

「クラレントが今まで察知されなかったのは誰も僅かでさえ力を引き出せなかったから。・・・・・・恐らく妹がと思うと矢も盾ももたまらず」

 

 私には実の姉弟は居ないが、姉同然の人はいる。だから彼の気持ちは何となく分かった。

 

 

 

「恐らくエクスカリバーに関わろうとするはずです。ですから私も関わらせて下さいませんか?」

 

 

 

「まあ、君は強いって見れば分かるし戦力はあった方が良い。よろしく頼むよ」

 

「有り難うございます・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

「「じゃあ、早速で悪いけどご飯にしよう(しましょう)! あのステーキ店でっ!」」

 

「・・・・・・はい」




別の件で他の作者さんから聞いた子供の件 私もびっくり

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