成り上がりの息子と赤龍帝     作:ケツアゴ

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一応補足  ここのモードレッドはFATEのモードレッドがHSDDに転生した訳では有りません


そして三巻に向けて少し・・・・・・

後一話で二巻あたりは終わり  介入する理由もないし、ゲームも起きていないから

だってイッセーは主人公側で堕天使も戦ったのは主人公 急に速まったのは一巻が関係と考えています


閑話 叛逆の騎士と忠義の誓い

「今この時をもってその聖剣は貴殿の物だ。努々騎士たる自覚を忘れぬように」

 

「了解致しました父上」

 

 ああ、またこの夢か。俺がまだ自分の出生を知らなかった頃、兜と鎧で正体を隠した俺は連なる騎士の一人としてその光景を眺めていた。王は俺の憧れで、仕えるだけで幸せだったけど、羨ましいと思ってしまった。

 

 王が携える聖剣エクスカリバーはあの人にだけ許された品。だから俺は自分が王の子だと知った時、本当に嬉しかった。同じ様に自分の子だと多くの騎士の前で呼んでくれて、同じ様に聖剣を下賜してくれると思っていたんだ。

 

 

 

 

「憎い憎い! なんで! 何でお前だけ!!」

 

 あの戦の時、俺は王への憎しみだけで戦ったけど、彼奴だけは彼奴への憎しみで殺した。王を殺すために邪魔者を切ったんじゃない。彼奴を殺すために彼奴を切ったんだ。

 

 

 

「・・・・・・夢か」

 

 メイドがドアをノックする音に目を覚ます。気分は最悪だ。ムクリと身を起こして飛び起きた俺は寝間着を乱暴に脱ぎ捨てると手早く着替える。

 

「もう入って良いぞー!」

 

 寝起きでボサボサの髪の毛を手櫛で整えてから声を出すとメイドが入ってくる。チラリと見た鏡に映った俺の顔は碌なもんじゃ無かったけど何も言われなかったのは有り難い。今は心配される方が辛いからな・・・・・・・。

 

 

 

 

「盗賊退治? ウチの領地に俺まで出る必要のある盗賊なんか居るのか?」

 

朝食を食べている最中、頼まれた仕事の内容に思わず聞き返す。オッサンは善政を敷いているし、ガゼフとかの警備隊の奴らが頑張って居るから賊なんか滅多に発生しねぇ。精々働くのが嫌で賊になった落伍者が数人集まる程度で直ぐに鎮圧されるんだけどな。

 

「其れがまたしても他領から流れて来たようなのですよ。栄えているなら獲物には困らないとでも思ったのでしょう。数が多いので被害が出る前にとの事です」

 

 今回仕事を持ってきたのはオッサンの腹心の部下だったセバスチャン大佐の子孫でオッサンの眷属、ジェイルの補佐官と政治全般の教師も兼ねてる奴だ。見た目は何か企んでいそうな癖に忠誠度が高いんだよな、此奴。

 

「はっ! どうせ元居た場所の貴族は金を惜しんでまともに退治する気が無かったんだろ。屑が!」

 

 どうせ次期領主が民のために体を張ってるってアピールも兼ねているんだろうけどよ、まぁ、良いや。丁度ムシャクシャしてた所だ。

 

 

 

 

 

 

 

「くたばりやがれ!!」

 

 兜と鎧を身に纏って戦場に立てば嫌な事を忘れらと思ったけどイライラは収まらない。八つ当たりとばかりに賊を切り伏せていくと怯えたような顔で及び腰だ。なんだ? 俺の居る領地の民を食い物にしようとした癖に自分達の命が危ないと分かると簡単に逃げるのかよ。

 

 ああ、不愉快だ。

 

「畜生! 転生悪魔の領地なら楽だと思ったのに」

 

「まさかこんな野郎が……いや、声からしておん……ぎゃぁああああっ!!」

 

 不愉快な事を言おうとした奴の胸を剣で貫くと悲鳴を上げて絶命した。そのまま剣に纏わせた赤雷で死体を焼き尽くし原型すら残さない。

 

「俺を女と呼ぶからだ」

 

 もう一人の首を切り飛ばし、焼け焦げた死体に唾を吐き掛ける。ったく、今日は本当に不愉快だ。舌打ちをしながら空を見上げると冥界独自の空の色を掻き消すように無数の蝶が飛んで居た。

 

 

 一匹の水色の羽を持つ蝶が先頭に居た賊に触れると其の野郎だけが凍り付く。足元も少し凍り付いているだけで、周囲には全く影響を及ぼしていねぇ。普通の貴族なら周囲ごと凍り付かせるからだろうか、奥に居た賊の一人ジェイルを舐めたような顔になった。

 

「一匹一匹は大した事ねぇ! 避けて近寄ってぶっ叩け!!」

 

 馬鹿が。周囲に影響を及ぼせねぇんじゃねぇ。及ぼさないようにコントロールしてんだよ。確かに彼奴は純血の貴族に比べたら生まれ持った魔力の量は少ねぇが……。

 

 

 

 

「なんだ? 蝶が周囲を取り囲んで。だが、合計しても大した魔力の量じゃ……」

 

 残った賊は放とうとした魔力ごと凍り付く。本来ならば其処まで魔力が込められていないのにだ。

 

 彼奴は徹底的にコントロールと高燃費化、そして魔法との併用を鍛えてんだ。同じ魔力の使用量でも、生まれ持った力に胡坐をかいている奴とは威力に雲泥の差が有るんだよ、ボケ。

 

 

 

「おい、トドメは俺にやらせろ」

 

 さっき通信機でリーダーは既に捕らえたって聞いている。なら、ぶっ殺しても構わねぇよな? 俺は返事を聞く前に剣に最大限の魔力を纏いぶん投げる。激突の瞬間、内包した雷が周囲を嘗め尽くすと同時に凍り付いた賊共を粉々に砕いた。

 

 

 

「この程度で俺の前に立つんじゃねぇ」

 

 地面に刺さった剣を引き抜くと妙に軽い。刀身が半ばから折れていた……。

 

 

 

 

 

「モードレッド、少し良いかな?」

 

 別に愛用していた訳じゃなくって、俺の魔力放出に耐えられる頑丈なだけの剣だって認識だったけど、騎士として剣を失うのは思うところがあった俺は部屋でふてくされていた。メイド長がおっかねぇから普段はしねぇけど、スナック菓子とシードルをベッドに寝ころびながら口にする。

 

 帰り道、誰とも口を利かなかったのは少し悪かったと思う。特に心配そうに俺を見ていたフランに対してな。会った当初は何が言いたいか全く理解できずに苛ついたけど、今じゃ声色や表情、僅かなジェスチャーで理解出来るようになった。

 

 そんな事を考えていた時、ノックの音と共にジェイルの声が響く。最初は無視してたけど、立ち去る様子がないので仕方なくドアを開けると嬉しそうな顔をしてやがった。ったく、調子が狂うぜ。大体、此奴は昔から・・・・・・。

 

「何の用だ?」

 

「ほら、もう直ぐモードレッドがウチに来て十年目でしょう? 少し早いけどお祝いの品をあげたくって。父さんの伝手で凄い物が見つかったんだ!」

 

 確かにジェイルの手には布で包まれた剣が収まっている。何か懐かしいような気が・・・・・・。

 

「おい、まさかコレって・・・・・・」

 

 思わず奪い取るように受け取り、乱暴に布を剥がすと真新しい鞘から剣を抜く。其処にあったのはどんな銀よりも眩く輝く刃。王位継承を示す剣。俺が本当の意味でモードレッドだった時に父上を殺めた剣、クラレントだ。

 

「・・・・・・はは、すっげぇ。あのオッサン、どういう人脈持ってるんだよ」

 

 今の俺が俺の記憶を取り戻す前、この剣は失われたと教えられた。だが、それが今俺の前に存在する。他の誰でもない、このモードレッドの手の中に有るんだ!

 

「気に入ってくれた?」

 

 ああ、気に入った。・・・・・・でも、少し不満があるし得意顔も少し腹立ったからクラレントを置いて両の拳で頭をグリグリ締め付けてやった。昔は何度もしたから少し懐かしいな、おい。

 

 

 

「あのなぁ、俺は騎士なんだぜ。騎士に剣を授与すんならやり方が有るだろ、普通」

 

「?」

 

 まだ理解できねぇみたいなのでその場で膝を付いて恭しく頭を下げると漸く理解したようだ。

 

 

 

「えっと、我が騎士モードレッド。誉れ有る汝の働きに対し、感謝を込めて剣を授ける。・・・・・・これで良いのかな?」

 

「やるなら最後までちゃんとやれ。ったく、何時までも情けない弟分だな、オメェは。・・・・・・我が王よ。俺の剣を預け、名誉を預け、命を捧げる。騎士としては三流の身だが、立ちふさがる困難辛苦は全部俺が薙ぎ倒そう。・・・・・・こんな風にやるんだよ、覚えておけ」

 

 直ぐに立ち上がりジェイルのデコに凸ピンをお見舞いする。・・・・・・俺もこう言うの向いてねぇな。

 

「うん! やっぱりモードレッドは格好いい騎士だね」

 

「当たり前の事を一々言うな、うざったい。小腹も減ったし厨房に忍び込んで何か食おうぜ」

 

「コックやメイド長には見付からないようにだね! 行こう行こう」

 

 二人して悪巧みの時の顔をしながら厨房へ向かっていく。今朝見た夢なんざ何時の間にかどうでも良くなっていた。

 

 

 

 これは多分忠義とか忠誠とかとは別だけど、此奴や今の仲間達を守る為ならさっきの誓いは嘘じゃねぇ。俺が支えてやるんだからお前ももっと頑張れよ、ジェイル。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えばあの人にモモンガさんとの仲を取り持つようにって頼まれたよ」

 

「お前の母ちゃんの従姉妹のサキュバスだろ、確か。あの人も変わった趣味をしてんなー」

 




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モモンガさんラブの親戚のヒドインは一体誰でしょう? 出番は無い予定

次回、私の作品では恒例のネタが入ります

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