好きな言葉はパルプンテ   作:熱帯地域予報者

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主人公、ちょこっとキレる。

ようやく出てきた人気のキャラが崩壊っぷりをお披露目

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許されざる者

ファントムの件が過ぎてから数ヵ月が経った。

あれからギルド情勢も大分変わった。

 

まず、フェアリーテイルがギルドを新調することとなった。

発端はガジルの襲撃によって半ば倒壊させられたことにある。ガジルが破壊せずとも度重なるメンバー同士の激突(主にナツたち)のせいでガタが来ていたことを知り、この際に全て新調しようという意向となった。

現在は総出で工事中である。

 

そしてもう一点、私を議長としたエリックたちを交えてルーシィを魔女裁判にかけた。罪状は勝手にS級を受けたことへの罰である。

フェアリーテイルでは既にマカロフが罰したというが、余所は余所、ウチはウチの精神で然るべき罰則を与えることとなった。

というよりも、今のままだと彼女が将来的に色々とヤバいということで仲間として彼女の力になろうということだ。家の敷地内に祭られている祭壇……パルプンテ神を祭る祭壇に触れた状態でパルプンテを唱えれば希望通りの魔法が100%発動する。それを利用してルーシィの運勢を占ってみた。

 

「このままだと将来ボコボコにされる。鍛えろ」

「え」

「これからの課題は魔力量のアップだゾ。黄道十二門を三つ持っててもいざという時に使えなきゃ意味がない……ぶっちゃけえげつないほど弱いゾ」

「えげつない!?」

 

彼らの説得でルーシィの強化合宿を開始した。フェアリーテイルの討伐系クエストマラソンを毎回こなしている。たまにギルド内でルーシィが気合の雄たけびを上げている、やる気に満ちた姿を見るとこちらも勇気づけられる。付き人のソラノも上手くやっているようで安心した。

 

 

そして、もう一つがガジルだ。

彼はしばらく家の屋根裏部屋に閉じ込め、自力で出てこれるまで放置した。

私たちに初めて姿を現したのが半月後だった。ほぼ半死半生だったため、食事を与えてその日は寝かしつけた。

だが、かなりヤンチャなのか起きた瞬間に暴れ始めた。錯乱しただけならともかく、子供たちにまで魔法をぶっ放そうとしたため、久しぶりに私も憤った。

フェアリーテイルへのケジメとドラゴンスレイヤーとして飛躍的に成長させてみたいという想いから、とある儀式を行った。

 

 

『プチ斬首刑』

 

 

説明しよう、刃物でガジルの首を刎ねた。ポーンと空高く首が跳ばすだけの罰である。

だが、目的は殺すことではないので、跳んだ首を即座に首に縫い付けて縫合した。出血多量で頭に酸素が届かずに脳死するまでに血管や切断面組織を縫い付けるだけなのだ。

コツとしては切断面の組織を潰さずに鋭い斬撃で斬らなければならない。気の迷いとかで力加減を間違えたら即お陀仏だが、失敗しなければいいのだ。

 

とりあえずやってみたら、その日以降、ガジルが大人しくなった。

一度死を体感した後で復活したものは強大な力を手に入れたという事例がある。それだけでなく擬似的にも死を体験したことは一生に何度もないだろう。この貴重な体験をガジルには活かしてほしい。

ただ、斬首を街中でやったのは少し失念だった。普通に大騒ぎだった。

 

傷跡も残らないくらいに縫合して問題なかったのに。解せぬ。

ガジルはフェアリーテイルに加入すると決めていたので、後にわだかまりがないようにギルドの前でやった。

 

 

 

 

阿鼻叫喚から始まる大騒動が勃発した。

そんなこんなで鎮めた後、ガジルは特にモメることなくフェアリーテイルの一員となった。

 

 

ガルナ島付近で回収した謎の水を家の地下にある研究室に保管することにした。

ビンの中に入っている物を眺めてもただの水にしか見えないので、子供たちやエリックには触らないように厳重に注意しておいた。

 

気になると言えば、水に含まれているエネルギーが異常に高いということだ。

扱い方を考えてから調べようと思っているので今のところは保留となった。

 

 

 

 

 

 

気が重い。俺は重くなる足を引きずって郊外の山に建っている屋敷へと向かっている。

屋敷に近づくにつれて帰りたくなるが、鋼の精神で己の体に鞭を打つ。

 

屋敷を前にすると、家そのものから説明しがたい“何か”を感じる。明らかに普通の家ではないことは分かるが、並みの感性さえあったら購入する気もなくなるはずだが。

そう思いながらも扉をノックしようとしたとき、作業着と麦わら帽子を身に着けた“彼”が姿を現した。

 

「ようやく帰ってきたのか」

 

庭の手入れをしていたであろう姿で声をかけると、私にリンゴを投げて挨拶を返した。

リンゴを受け取り、懐へしまうと彼は収穫したリンゴの入った籠を置いて私をジェラールと呼ぶ。

これも彼なりの挨拶だ。

 

「ミストガンだ。私は“あっち”から来た方のミストガンだ」

 

どこに目があるかもわからない所で自分の秘密を軽くバラすのは止めてほしいが、彼の勘は凄まじく魔法なしでも特定の個人を特定する術を身に着けている。

おそらく大丈夫だろう。

 

俺も彼もダベってから本題に入るような性格じゃない。

簡潔に本題へ移る。

 

「各地に点在するアニマはあらかた塞いだ。その場所はもう問題はない」

 

 

彼はアニマのことを知っている。一時期、顔を晒さずに眠りの魔法を使う俺のことを怪しみ、尾行したことで俺の秘密や故郷であるエドラスの存在、そしてアニマのことを知った。

 

別の世界から魔力を回収する魔法でアースランドの魔力を奪っている。

俺はそれを防ぐためにこの地に移り、アニマの破壊のためにギルドに入った。

 

 

彼は情報網としても戦力としてもかなりの戦力だと期待して彼に協力してもらっている。

だが、それがこのクエストの最大の問題だった。俺は肝心の結果を伝える。

 

 

「巨大なアニマ……この場所に関してはまだ方法を探している……もう少し待って―――」

 

その先の言葉が出なかった。目の前の農夫の恰好をした“彼”から発せられる気配に俺はその場に跪いた。

呼吸するだけで精一杯で、闇に落ちかける意識をつなぎとめる。

 

(あぁ、分かってはいたが……これはつらい)

 

 

 

 

 

彼は『エドラス』が嫌いである。いや、嫌いどころか消したいほど憎んでいる。

その世界に住まう人たちのことなど考えず、このアニマ計画を立てた王国と賛同する民衆を既に見限っている。

 

 

彼は味方には情に厚く、敵には慈悲はおろか最大級の力を以て生きていることを後悔させるほどの力を振り下ろす。

まさに怒れる神のようだ。

 

(彼を怒らせれば……王の行く末は破滅だ)

 

ただ、その怒りを収めてくれとは言わない。言えるはずがない。

 

アースランドは確かに魔力に溢れ、それこそ空気のように漂っている。

しかし、アニマはそれよりも質のいい媒体を魔力に変換させ、結晶化する。

 

アニマの狙いは『人間』だった。

 

魔力の多い人間を周囲の物質ごと巻き込んで取り込む。取り込まれた人間は事実上、死ぬこととなる。

 

 

それを“彼”が許すかと言えば、答えはNOだ。

 

“彼”は民衆に、そして子供たちに深い慈愛を持っている。そんな子供たちに命の危機が迫っていると言って納得するはずがない。

一度だけアニマの残滓を見たことがある彼は既にエドラスへの行き方に心当たりをつけた。

後はアニマさえ見つければ彼はあっちの世界に渡り、暴虐の限りを尽くす。

フェアリーテイルの面々が止めても決してやめる気がないのは今までの反応から見て明らかだった。

 

エドラスを潰すことを責めるつもりはない。元々は世界の枠を超えて干渉するあちらの責任だ。そのことを擁護するつもりはない。

 

ただ、それでも自分の故郷だ。生まれ育った地であり、心許せる“エクシード”……友もいる。

そして何より、自分たちの都合で彼の手を血で汚すこととなる。少し常識がなくて過激ではあるが、根は優しい青年に違いはない。

そんな彼が修羅になる姿を見たくはなかった。それに、彼の標的となっている民衆たちにはあまりにも酷である。

 

「あともう少し待ってくれ……俺も手を尽くすから……任せてほしい」

 

だからこそ、彼に幾つか条件を付けた。

 

1.アニマ封印はミストガンに一任する

2.アニマの全封印が完了したらエドラスには手を出さない

3.クエストが失敗してマグノリアがアニマに飲まれたとき、ミストガンは彼への干渉はしない

 

 

これは賭けだ。俺がクエストを失敗すればエドラスは滅びる。

民衆の命さえ担保に入れる俺はきっと地獄に落ちるだろう。幸いにも俺やエクシードであるハッピーに敵意はない。最悪、リリーだけでも助命してもらえないかと考える。

 

(なおさら、早くエドラスに帰らないとな)

 

俺はフェアリーテイルに相応しくない。彼を説得してエドラスとアースランドの両方を救うことを放棄しかけている。

ナツたちなら彼を説得するだろうがな。

 

俺の答えに一応の納得をしたのか色濃い気配を抑えた。ようやくまともに呼吸ができるようになった。

体が欲していた酸素を思いっきり取り込み、噴き出た汗を拭う。

 

「エドラスの件は引き続き、俺に任せてくれ」

 

とりあえず、頷きはするも、異変さえあればすぐにでも動くつもりだ。

首の皮が一枚つながっただけ……状況は何も変わっていない。

 

俺もできる限りのことをしよう。

 

 

背中に身に覚えのない重みがのしかかる。その重みは文字通り、何万もの人の命そのものだ。

 

マグノリア上空に渦巻く魔力のうねりを見上げ、再び足を進める。

 

 

 

 

 

 

 

 

評議員は荒れていた。

円卓を囲んでの協議はいつののように、フェアリーテイルのことだった。

 

「またフェアリーテイルがやらかしたか」

「フン! ハン! フン! ハン!」

「いや、今回はファントムが先に仕掛けたと聞く」

「フン! ハン! フン! ハン!」

「だが、奴等は戦いの準備をしていた。それだけでマグノリアをどれだけ不安に陥れたか」

「フン! ハン! フン! ハン!」

 

主題はファントムとフェアリーテイルとの戦争についてだったが、既に両者の間で解決しているうえにファントムは既に解体が完了し、ジョゼも聖十を自主退位してから行方を眩ませた。

そのため、今回の責任をフェアリーテイルになすりつけようという魂胆しか見られない会議にヤジマは頭を抱えた。

 

「今回の件はかの“超越者”が収めたとか」

「フン! ハン! フン! ハン!」

「それを功績として何らかの称号を与えるのはどうだろうか」

「フン! ハン! フン! ハン!」

「それは既に前任者が強行したが、失敗に終わった。その後から超越者は明らかに我々を警戒している―――おい、いい加減にジークを黙らせろ!! 腕立て伏せを止めないか!!」

 

そして、時折聞こえてくるガチムチ筋肉の喘ぎ声にたまらず声を出した。

指さした先には話し合いに参加せずに顔だけ端正なガチムチが狂ったように腕立て伏せに没頭している。

 

さっきから無視してもよかったのだが、既に無視できないほど鬱陶しくなっていた。

 

「ウルティア! ジークの目付け役だろう!! 何とかしろ!」

「っさいわね! 聞き分けがいいなら今更こんな筋肉ダルマになってないわよ! 何なのこいつ、どこで間違えた……ゼレフに興味持たないし、怪しげな研究しかしないし……死ねばいいのに」

 

全ての責任としてウルティアになすり付けるも、いつものようにキレた。最後は誰にも聞こえないようにブツブツと愚痴を漏らす姿にウルティアと未だ腕立てをするジーク以外は冷や汗を流す。

 

そもそもジーク、もといジェラールはウルティアが目をつけ、洗脳したはずだった。

闇に飲まれた心に付け込んでゼレフの幻影を見せたところまでは上手くいっていた。

 

 

だが、少し目を離した隙に彼は変わった。おかしな方向に

ゼレフしか頭になかった少年がいつしか脳みそまで筋肉にしたような脳筋へとなってしまった。

その時に噴き出してマスターハデスの顔面を牛乳まみれにしたときは本気で死を覚悟した。

 

 

そして幻影を飛ばして諭す度にジェラールは決まってこういう。

 

『魔法など軟弱なものに頼ってられるかーー!!』

 

 

ただの変態だった。

ウルティアはいい年して泣いた。

 

さらに厄介なのがジェラールを頂点とする怪しげな団体は思いのほか強大で強烈なためかのバラム同盟でさえも積極的に関わろうとしない。

死者を出しているわけではないが、彼らはゼレフ教に次ぐ迷惑な集団として認識されている。

 

その証拠にジークというウルティアが勝手に作り出した幻影は肉体美にこだわりを持つジェラールの性格を巧妙に再現したおかげでパンツ一丁で徘徊し、牢にぶちこまれたばかりなのだ。

一度だけストイックに筋トレし過ぎて餓死しかけたこともあった。

 

最近では地上のギルドに接触して怪しげなことに手を出しているが、もうウルティアの知ったことじゃなかった。

最初の刷り込みを失敗している時点で本来ならジェラールを見張るつもりはなかったが、マスターハデスがジェラールたちが変な横槍を入れてこないように見張れと言ってきた。

 

その命令を受けたときに死んだ目で睨め返したら「お、おう」とハデスが唸った。

 

(さっさと終わらせてメルディと遊びたい……)

 

評議会とマスターハデスの板挟み状態に陥ったウルティアは唯一の味方であり、癒しと言える少女を思い浮かべてため息を吐いた。

 

「うーん、今日の上腕二頭筋はいい仕上がりだ。三角筋はまだまだか」

「……もう放っておこうか」

「う、うむ……」

 

会議そっちのけで自分に酔うジークは最後まで筋トレをやりおおせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ファントムの一件が既に過去のものとなってきた時、私は久方ぶりにミラと一緒に電車に乗っている。

座席で向かい合うように座っているため、ミラの顔がよく見える。

 

「ふふ、何だかこういうのも久しぶりね」

 

ご満悦で何より。真っ白のワンピースに隠した抜群のプロポーションは隠せていない。幸いにも列車の乗客はそんなに多くない。マグノリアのホームからも早朝に出たために大騒ぎになることもなかった。

 

「こうしてあなたが付いて来てくれるなんて久しぶり……ね」

 

こっちが本日のスケジュールを確認しているときに髪をかきあげる仕草をされるだけでも集中力が乱される。

普通の仕草でも扇情的に見えるのはある意味すごい。美人とは得である。

 

ただ、今回の目的は新しくできたリゾートのPRを兼ねたグラビア撮影である。

私はあくまでもマネージャーであり、付属品でしかないと伝えるとミラはムっと眉間にしわを寄せる。

 

「あなたはずっと私のマネージャーとして私を助けてくれたし、ファン第一号って言ったじゃない。他人でも付属人でもない……大切な人なのよ?」

 

ミラが芸能界に入った時、私は彼女のマネージャーとなった。

入った当初のミラは男勝りで芸能界で生きていくしたたかさがなかった。

 

また、当時はリサーナを失ったショックから何か気を紛らわせてやりたいという気持ちもあった。

だからこそ支えようと思った。リサーナを守ることができなかった私なりの罪滅ぼしだったかもしれない。

後は、そういった仕事にも興味があったというのもある。

 

それ以来、私はミラのマネージャー兼ボディガードの役を担っている。

 

そういう言葉は存外の喜びと言えよう。

 

 

「むぅ……そういう意味じゃないのに……ふわぁ」

 

何やら不服そうに口を尖らせたと思えば大きく欠伸をかいた。

今日は朝早くに出たから眠いのだろう、今日の主役が寝不足とあっては撮影も滞る。そのまま着くまで寝ることを薦めると眠気が強くなっていくのか目をこすらせてウトウトさせながら首を横に振った。

 

「だって……あなたはいつも忙しくて、一杯、話したいな」

 

それを聞いて頭を鈍器で殴られたような感覚を覚えた。

思い返せば心当たりがたくさんあった。最近は長いクエストに行ったりで自分のことばっかりだった。

 

私の代わりに子供たちの面倒を見ていたことも決して楽ではない。思えば私は子供たちにも帰ってきてからというもの、あまり構ってやれなかった。

 

思い出し、この仕事が終わったら皆でどこかに遊びに行こうと伝えるとミラは満足そうに笑う。

 

「うーん、今はそれで許してあげる……皆、口には出さないけど寂しいのは一緒だから。我儘かもしれないけど解ってあげて」

 

そう言ってようやくミラは穏やかに眠る。

改めて自分の脇の甘さにため息が出る。

 

今思えば、半ば無理矢理に『言うことを3つ聞く』という約束もこういった話をするためだけに取り付けたのかもしれない。

それは無理やりでなければ私とそういう話もできないという暗示も含まれているように思えた。

ミラたちも立派に成長したということもあって向き合うことを疎かにしてしまった。

 

帰ったら久々にエリックたちに修行つけるとしよう。その後で子供たちに何かサービスしなければ。

 

 

 

 

 

そういえば、エルザたちもリゾートに行くと言ってたし、鉢合わせるやもしれないな。




パル神「異世界の奴らが調子のってるエドラス死ね」
私「子供に手を出して来たら蹂躙も止む無しエドラス死ね」

パルプンテ神との精神的シンクロを確認
シンクロ率10から25%UP

スキル『原初にして唯一の禍』効果発動

エドラスでの戦闘に限り戦闘力500%UP

エドラスでの戦闘に限り魔力消費量90%削減

エドラスでの戦闘に限り状態異常態勢500%UP

エドラスへの敵対行為に限りパルプンテの完全コントロールが可

エドラス所属の相手に限りダメージ特攻200%

エドラスへの怒りが続く限り身体能力、全ステータス1000%UP




エドラス『来ないでくださいお願いします』

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