インフィニット・デスゲーム 作:ホラー
「フン! ハァッ!!」
あれから数時間後の放課後、ここはIS学園から少し離れた場所にあるアリーナ。そこには疎らだが生徒達が少しいた。彼女等がいる理由はもうすぐ行なわれるクラス代表決定戦に備えてのことであった。
彼女等はクラス代表の者達ばかりであるがここにいるのは、練習するためでもあった。彼女等は専用機は愚か、学園にある量産機で練習しているが表情は険しい。
手を休めるどころは愚か、それをしょうとはしない。試合とはいえ、ある物が掛かっているからだ。女性なら誰もが憧れる物、それを賭けてのことであった。
自分はそれを手に入れるためであり、クラス中の期待も掛けられているからだ。少女達は部活を返上してでも練習していた。が、それは一部であるが殆どが、ある場所を見ていた。
彼女達の表情は恐ろしい物を見るように怯えているのと、あれと戦うのは嫌でもあった。しかし、それは一年に当てはまることであり、上級生には関係ないのであるが上級生達もまた、怯えていた。
彼女達が見ている視線の席には、一人の生徒がISを纏いながら、武器を展開しつつ練習していた。その生徒は学園でただ一人の男子生徒、織斑一夏であった。
彼はIS、ジャック・ザ・リッパーを纏いながら手に持ってるランスを軽く使って練習していた。突き、薙ぎ払い、振り下ろし、弾き返し、と、ランス特有の攻撃方法を身体で覚えようとしていた。
近くには、IS、霧纏の淑女を纏った楯無が見ており、会場席には簪と本音が心配そうに見ていた。虚はアリーナでISを纏いながら練習しているがクラス代表でもあるために、本来のクラスのために練習している。
そんな中、一夏はランスを使って練習を続けているが周りの視線を気にしていなかった。理由は他のことに目を逸らしてしまうと命を奪われかねないからだ。
彼はゲームを制するために自分のことしか考えていない。が、優しさを不要とする彼のアイデンティティーでもあるがゲームを理解しているがためであるだろう。
彼が練習しているのはクラスのためではない、彼はISを最大限に発揮できるように練習しているだけであった。ゲームを制するのには有利な物であると思っているからであった。
「……なかなかのランスさばきね」
そんな彼の練習を見ていた楯無はそう呟いた。彼のランスさばきに感服しているが警戒さえもしたのだ。彼はISを使って日は浅く、可動時間も浅い。
そんな彼がISを最大限引き出そうと練習しているとしか思えなかった。同時に彼はランスをなぜか上手く扱えている。ランスは槍とは違い、扱いが少し難しい。
それを玩具の如く扱っている。楯無から見ればであるが彼の主力武器はランスではないかとも思っていた。ランスは遠距離と中距離をメインとしている。
が、ジャック・ザ・リッパーならばメインはナイフである筈。しかし、ナイフは近距離でしか使えず、それ以外は弱い。他にも弓矢があるが遠距離では活躍してくれる。しかしそれも他の武器とは違い一番古く、一発しか射てず、次を準備するのに少し掛かる。
楯無はそう思っているがジャック・ザ・リッパーというISが縁起悪い名前であるのと同時に、見た目も不気味なISであることおを改めて認識した。
そんな中、楯無は一夏に声を掛ける。
「止めなさい、織斑君」
楯無の一声に一夏はランスを動かす手を止め、ランスを肩に掛けながら楯無の方を見る。眉をひそめているが楯無は眉をひそめている。一触即発の危険があるようにも思えたがそんなことは無い。
一夏が練習の手を一旦止めたのは、従者である立場が故のことであり、彼女が当主であることにも変わりは無い。
「……なんだ?」
「……織斑君、どう、使い心地は?」
「……悪くない、これは、な」
一夏はそう言いながらランスを眺める。ランス特有の白銀色に鋭い穂先、それだけでも危険なのにどこか美しい。一夏はそう思っていたが不意に楯無を見る。
「それだけか?」
一夏は楯無に訊き返すが楯無は首を左右に振る。
「いえ、そうじゃないわ」
「……じゃあ、なんだ?」
「貴方、ジャック・ザ・リッパーを使ってどう感じるのかしら?」
「…………」
一夏はジャック・ザ・リッパーを見る。禍々しいが一夏は直ぐに答えた。
「……悪くない、それにコイツは、俺のISに相応しい」
「……と、言うと、それはジャック・ザ・リッパーを相棒として認めたこと? ……奴の次に?」
楯無はそう言いながら軽く眉間に皺を寄せる。奴とはジェイソンのことであるが、あえて訊ねたのである。
「……奴と比べるな、奴はあることでは背中を預ける存在だが、この学園にいる間はコイツが相棒だ」
「そう……でも、いざという時は奴とそのISを同時に使うことにもなる時があるんじゃない?」
「……まあな、それも一理あるが相手が危険な奴ならばな」
一夏はそう言いながら思考を走らせる。確かに楯無の言葉には一理あった。が、それは武器しか展開しておらず、ウィングスラスターから噴かれる黒い煙以外、ISを展開している訳ではない。
レザーフェイスと、その殺人鬼を引き連れている青年との戦いではランス以外展開しておらず、ウィングスラスターは更識姉妹を守るために使ったに過ぎない。
それ以外は使っていないがこの先、レザーフェイスよりも強い奴等と戦うことになるが、ISとジェイソン……いや、ジェイソンとISがある限り、自分に負ける要素は無い。
一夏はそう思っていたが、そんな彼を呼ぶ者がいた。楯無だ。
「斑君……織斑君?」
楯無の言葉に一夏は我に返ると、楯無を見る。心配そうに見ていた。
「どうしたの?」
「……別に」
「えっ?」
一夏の言葉に楯無はキョトンとしていたが一夏は楯無から離れて、ランスを軽く振る。
「……悪いが、俺は時間をムダにしたくない、練習を再開する」
一夏はそう言った後、ランスを振る。楯無は一夏の言葉に驚くが彼は楯無を気にもせずにランスの練習をしていた。
もうすぐ始まる行事に備えてでもあった。あそこには他のクラスのクラス代表達が参加している。それなりの猛者達が集うのかもしれないのと、IS、ジャック・ザ・リッパーの相手に不足は無いとも思っていた。
そんな一夏の考えを楯無は理解していないが頭を抱える。彼はまた、何か良からぬことを考えている。そう思っていた。
しかし、彼は単に練習しているだけの簡単な考えを、楯無は難しく考えているだけであったことを、楯無は気づいていないだけであった。
楯無は一夏の行動に戸惑う中、一夏はランスの練習を止めなかった。周りの大半は怯え、簪と本音は心配そうに見ているにも関わらず、一夏は練習を続けていた……。
「いっくん……!」
その頃、ここは、とあるラボの一室。そこは十数のパソコンと、三つのキーボードがあるが部屋自体は暗い。しかし、パソコンに映し出されている画面が明かりの代わりをしていた。
そんな部屋には一人の女性がいた。束である。彼女は今、あるISの起動する準備をするためにキーボードを叩いていた。が、彼女の表情は憤りと哀しみが入り混じっている。
理由は一夏を思っての事であった。同時に彼の近くにいて、自分を驚かしたジェイソンに対しても怒りがあった。しかし今は一夏の方が優先であり、同時にある怒りもあった。
「あの姉妹、なんなんだよ? いっくんに近づいて、腹立つな!」
束はある姉妹にも怒りを隠しきれないでいた。それは更識姉妹のことであった。彼女等は一夏に守られているのと、常に一緒に行動しているからであった。
彼が一人になるのは愚か、彼には、束は名前を知らないがジェイソンがいるのだ。迂闊に近づけられないのと、あれと邂逅して以来、警戒さえもしているのだ。
束は悔しかった。自分には怖い物は無かった。が、あの一夏の変わりようとジェイソンの存在、更には更識姉妹と言う、千冬や箒とは全く違う少女達がいるのだ。
奴や彼女達には一夏の傍にいる資格は無い、一夏に相応しいのは自分の妹の箒である。束はそう思っていた。しかしそれは束がコミニュケーションが疎いだけであり、人とあまり接触しないからであった。
それが原因でもあるが束は怒りを隠しきれないでいるのも事実であった。束はキーボードを叩きながらあることを考えていた。それは、ある機体を使ってであった。
「待っててねいっくん!? この束さんが一君の周りにいる害虫は排除してあげるからね?」
束はそう言いながら顔を歪めていた。いや、目は笑っていない。不気味とも思えるが口元は笑っている。他は排除する、束はそれしか考えていなかった。
そして、束はキーボードを叩きながらそう考えている中、束がそのことをやるのは、クラス代表決定戦の日で、あった……。そして数日後、学園はクラス代表決定戦の日を向かえる。