インフィニット・デスゲーム   作:ホラー

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第80話

「えっ、逃げられた!?」

 

 その頃、ここはIS学園の森林地帯。ここは一目につかず、人も余り寄らない所。そしてそこには金髪碧眼の青年がいた。彼は腰にはショットガンを携えている。人の皮で縫合して作ったマスクを被っているレザーフェイスに呆れながらも怒っていた。

 

「ウガ〜〜……」

 

 レザーフェイスはチェンソーを片手で持ちながら落ち込む。その仕草は人と同じようにも思えるが青年は頭を抱える。

 

「まあ、お前を行かせた俺にも責任はあるしな……」

 

 青年は頭を抱えながら言葉を続ける。理由は彼はレザーフェイス一人に行かせた。自分が行くよりも、レザーフェイス一人で暴れさせる方がいいと思ったのだ。

 彼は主催者が選んだ殺人鬼であり、力もあり、巨躯でありながら足も速い。バランスタイプのようにも思えた。しかし、一夏の殺害は失敗に終わったのだ。

 手痛い打撃でもあるが仕方ない、失敗は失敗であるが今は別のことを考えなければならなかった。

 

「とりあえず今は逃げるぞ、いつまでもここにいる訳にはいかないからな?」

 

 青年がそう言うとレザーフェイスは唸る。

 

「それは無駄だ」

 

 刹那、近くから声が聞こえ、青年とレザーフェイスは声がした方を見やる。そこには一本の木が生えているが、そこから声が聞こえたのだ。

 

 誰だ!? 青年はそう叫ぶと身構える。レザーフェイスはチェンソーを持ち構える。二人は警戒する。目撃者なのか、と。それが本当ならば殺さなければならないのだ。

 すると、木の後ろから一人の青年が横から出てきた。それは、一夏であった。彼はISスーツを纏っていない。いや、その上に黒い上着を羽織り、黒いズボンを穿いている。腰には、鉈を携えている。

 

「お、お前は織斑一夏!?」

 

 青年は驚く。しかし、一夏は眉間に皺を寄せながら彼等を睨んでいる。

 

「そうだ、貴様等が捜している織斑一夏だ」

「っ!?」

「ウガっ!?」

 

 一夏の応えに青年とレザーフェイスは驚く。無理もない、目の前にいるのが自分達が捜している者であるからだ。青年は驚きつつも警戒する。

 が、一夏は彼等のいる場所はここだと気づいていた。ここは一目がつかず、人も寄り付かない。更には夕日も沈みつつある頃であり、不気味だからだ。

 隠れるのにはうってつけの場所なのだ。一夏は青年の対場になり、IS学園の隠れる場所を考えていたからであった。この場所を思い出したのも、それが理由であった。

 一夏は二人を見るが青年は微かに笑う。

 

「まあいい……織斑一夏、俺はお前を殺しにきた……! そのために来たんだからな!」

 

 青年はそう言った後、腰に携えているショットガンを手に取ると、ショットガンの銃口を一夏に向けると、引き金を引いた。刹那、大きな破裂音を立てる。

 同時に一夏は風のように消えたがショットガンの弾は辺りに飛び散るが、近くの木の端に数発の穴ができた。

 

「チッ! 外したか!」

 

 青年は舌打ちする。

 

「っ!?」

 

 が、何かに気づき振り返る。一夏は青年の後ろに風のように現れていたが青年はショットガンを盾代わりにした。同時に一夏の鉈がショットガンの銃身に当たる。

 いや、青年は一夏が攻撃してくるのを察知していた。が、一夏は無言で眉間に皺を寄せていた。仕留められなかった、そう悔しがっていた。

 が、彼の鉈と青年のショットガンの互いの軋む音が微かに響く。

 

「おいレザー、手伝え!!」

 

 青年はレザーフェイスに命令する。レザーフェイスは頷くと、手に持ってるチェンソーを動かそうとした。

 

「……ジェイソン」

 

 一夏はそう呟いた。

 

「なっ!?」

 

 青年は聞き逃さなかった。同時に何かの殴る音が聴こえた。刹那、木の薙ぎ払われる音が聴こえた。青年が音の方を見るが音は奥にまで続く。

 そして、そこにはレザーフェイスはいなかった。代わりにジェイソンがいた。誰かを殴ったように右腕を前に出していた。そう、彼は殴ったのだ、レザーフェイスを。

 レザーフェイスは奥へ吹っ飛ばされるが、あの巨体は奥にいる。彼は仰向けに倒れているが少し先にはチェンソーが落ちてる。

 

「れ,レザー!?」

 

 青年はレザーフェイスを見て驚く。が、一夏はその隙にショットガンを弾き返す。青年は驚くが一夏は鉈で青年を切り捨てようと縦に振る。

 しかし、青年は下唇を噛むと、風のように消えた。咄嗟の判断であるが正しかった。同時に鉈は青年ではなく、宙を斬る。

 

「…………」

 

 一夏は辺りを見回す。気配はない。が、不意に奥の方を見る。奥には、ジェイソンが吹っ飛ばしたレザーフェイスが倒れている。気を失っているが一夏はジェイソンに訊ねる。

 

「ジェイソン」

 

 一夏はそう言うと、ジェイソンは頷いた。彼はレザーフェイスを一時的に足止めするつもりで止めを刺そうとしていた。彼は近づく。が……。

 

「…………」

 

 ふと、ジェイソンは立ち止まった。彼は、ある物を見ていた。それは、レザーフェイスが落としたチェンソーであった。それは古いがまだ動く。同時にジェイソンはそれを見据え続けていた。が、何かを思ったのか、彼はチェンソーを拾おうと手を伸ばす。

 彼はそれを使おうとした。そのチェンソーで彼のはらわたをぐちゃぐちゃにする意味で抉ろう考えた。直後、レザーフェイスの近くに青年が風のように現れた。ショットガンは腰に携えているが、手にはグレネードランチャーを持っている。

 刹那、青年はグレネードランチャーの引き金を引く。

 

「!?」

 

 一夏は目を見開くが同時に破裂音が響き渡る。グレネードランチャーの銃口から、榴弾が放たれる。

 

「ジェ……!」

 

 彼はジェイソンを呼んだ。しかし、言い終わる前にジェイソンは吹っ飛ばされる。榴弾はジェイソンに直撃したが彼は四散はしていない。代わりに右腕と左足がもげている。

 同時に大きな音を立てながら仰向けに倒れた。が、一夏は青年を見る。青年は不敵に笑っていたがその間にグレネードランチャーの榴弾の装填をしていた。

 そして、彼は一夏に狙いを定めるようにグレネードランチャーを一夏に向けると、引き金を引く。

 一夏は顔を引き攣らせながら風のように消えるのと同時に、グレネードランチャーから放たれた弾は彼に当たるどころか、木に直撃する。刹那、木は爆発し、四散した。木片は辺りに飛び散る。

 

「チッ!!」

 

 青年は舌打ちするが一夏は青年の前に現れる。青年は驚くが一夏の周りからウィングスラスターを展開すると、黒い煙を噴き出す。煙は辺りを包むがとても軽い物であった。

 

「うあっ!?」

 

 青年は黒い煙に怯むがグレネードランチャーを落とし、口元を腕で覆い隠すように押さえる。

 

「ど、どこだ!?」

 

 青年は辺りを見渡す。しかし、辺りは黒い煙で視界を遮られており、一夏がどこにいるのかを妨害している。が、青年から見れば、突然のことだろう。

 

「っ!?」

 

 刹那、青年は目を見開いた。が、彼は脹ら脛に激痛を感じていた。なぜなら、一夏はランスで青年の脹ら脛を刺したのだ。これには青年は目を見開くが激痛さえも感じている。

 一方、一夏はランスを引き抜くと、再び風のように消えた。

 

「うぐっ……!?」

 

 青年は脹ら脛に激痛を感じ、膝を突く。

 

「あぁぁ……!」

 

 青年は刺された方の脹ら脛を押さえる。ジーパン越しとはいえ激痛は治まらない。青年は汗を流すが、逃げることはできなかった。顔を知られたからでもあった。

 それが青年を追い詰めているのと、暫くは活動できないからだ。青年はそう考えている中、一夏は現れた。手にはランスを持っている。が、青年の前に黒い煙の前から姿を見せるように現れたのだ。

 青年を刺そうとランスを突こうとした。目標は、青年の腹であった。

 

「っぐっ!?」 

 

 青年は驚く。が、一人の大男が青年と一夏の間を割って入るように黒い煙の中から出てきた。それは、レザーフェイスであった。彼は気がついたが、青年の危機に駆けつける意味で青年の近くへと来たのだ。

 そして彼は、音を立てながら動いているチェンソーを持っている。一夏は驚くがレザーフェイスはチェンソーで一夏のランスを弾き返す。

 

「……!」

 

 一夏は歯を食い縛ると、バックステップして、青年とレザーフェイスから離れると、身構える。黒い煙は軽く噴き出されたために二人の影が見える。

 そして、黒い煙は微かに残りながらも、レザーフェイスと青年が姿を現す。しかし、どちらも身構えていた。

 レザーフェイスは未だ動いているチェンソーを両手で持ちながら威嚇し、青年は落としたグレネードランチャーを拾うことなく、腰に携えているショットガンを手に取る。

 青年は激痛を堪えながら立ち上がると、ショットガンの銃口を一夏に向ける。

 

「…………」

 

 しかし、一夏は二人を見てランスを持ちながら身構える。しかし、どちらも臨戦態勢であった。が、どちらも不利であり有利であった。

 一夏はジェイソンはもう少ししたら復活するが今は一夏一人で戦うしかない。相手は青年とレザーフェイスの二人であるがISもあるのだ。

 一方の青年とレザーフェイスは二人であるが数では有利だった。しかし、青年は怪我をしているために足手纏いである。が、どちらも引こうとはしない。

 一夏は険しい表情を浮かべているが、青年は激痛を堪えながら険しい表情を浮かべている。レザーフェイスはどんな表情をしているのかは判らないが怒っている。

 そして、戦いはどちらかが死ぬか退くまで終わらない。それがデスゲームの一番の厳しくも呪われた掟である……。




 次回は土曜日の投稿はお休み致します。次回は日曜日からの投稿となります。

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