インフィニット・デスゲーム 作:ホラー
「簪ちゃん!?」
楯無は、レザーフェイスの近くにいる簪を心配して叫んだ。しかし、簪はレザーフェイスを見て泣いている、腰を下ろしている。刹那、レザーフェイスは簪を見下ろしながら手に持ってるチェンソーを振り翳そうとした。
刹那、一夏は風のように消えると、簪の近くに風のように現れた。楯無は驚くが一夏は簪の肩に手を起きながら風のように消える……簪と共に。
楯無は再び驚くが一夏は楯無の近くに風のように現れた。簪は腰を下ろしたままであるが一夏の隣にいる。しかし、一夏は楯無を自分の方へと引き寄せる。
楯無は驚く前に一夏は三度、風のように消えた。簪だけでなく、楯無も連れて行くように風のように消えた。
「……ウガ〜〜」
そんな三人が消えた後のピット内ではレザーフェイスしかいなかった。レザーフェイスはチェンソーを振り翳したまま、声を上げていた。それは落ち込んでいるようにも思えたのである……。
ここは学生寮の一夏と楯無の部屋。この部屋には住人は居なかった。肝心の二人は出掛けており、部屋自体は静かであった。刹那、部屋の中央に風のように現れた者達がいた。
一夏、楯無と簪の更識姉妹の三人であった。一夏が風のように消えて、ここへと逃げてきた意味で移動してきたのであった。
「えっ!?」
簪は驚きを隠せない。いつの間にか、この部屋へと来たことに。が、楯無は二度目でありながらも驚きを隠せない。姉妹は部屋に来たことで驚いているが、この部屋へと連れて来たのは一夏である。
「…………おい」
しかし、とうの本人である一夏が姉妹に訊ねる。姉妹は突然のことで驚くが一夏は言葉を続ける。
「とりあえず、お前達はここにいろ、絶対に動くな」
一夏はそう言った。しかし、それを楯無が指摘した。
「う、動くなって……それは無理よ!?」
「……なぜだ?」
「なぜかって、あれはなんなのよ!?」
楯無は一夏を問いつめる。簪は心配そうに見つめていた。あれとは、さっきの大男、レザーフェイスのことである。彼女達はあれとは邂逅していない。
同時にジェイソンと同じではないかと思っていた。ジェイソンとはどういうい関係なのかは判らない。が、一夏なら何かを知っているのではないのかとも思っていた。
「織斑君、あれは……何か知ってるんでしょう?」
「…………」
「……答えなさい! あれはなんなのよ!?」
楯無は一夏を問いつめ続ける。知りたかったのだ、あれはなんなのかを。が、一夏は何も言わなかった。
「黙秘しても無駄よ……それに」
「きゃぁぁぁーーーーっ!!」
刹那、簪の悲鳴が木霊する。一夏は反応し、楯無は驚くが簪は窓の方を見ていた。二人が窓の方を見ると……楯無は戦慄した。
そこには、ベランダの方にはレザーフェイスがいたのだ。彼は笑いながらチェンソーで窓を割った。これには三人は驚くが簪は悲鳴を上げる。
「い、いやぁぁーーーーっ!!」
簪は泣きじゃくる。が、一夏は冷静に彼女達の口元を手で押さえながら引き寄せると。ウィングスラスターを展開する。刹那、ウィングスラスターから黒い煙が噴き出た。それは部屋全体を包むがレザーフェイスは驚く。
直後に、彼はISを解除すると、彼女等を巻き込む意味で再び風のように消えた。
「ウガァァ〜〜ウガァァ〜〜」
レザーフェイスはチェンソーを振り回しながら怒る。いや、混乱していた。黒い煙が彼の視界を遮り、撹乱させていた。レザーフェイスから見ればつらいが、黒い煙は引き寄せれるように徐々にベランダの外へと逃げていく。
換気と言う意味でもあるが、レザーフェイスの視界を助ける意味にもなっていた。レザーフェイスは部屋の中を見回す。しかし、彼等は既に逃げたのであった。
レザーフェイスはそれに気づくが彼は三人を捜そうと風のように消えた。部屋には誰もいない……訳ではなかった。
「行ったか……」
部屋の中にある浴室の扉が開く。内側から開いたのであるが、ある青年が出てきた。一夏である。それに続くかのように楯無と、楯無の背中に縋り付きながら泣いている簪が出てきた。
そう、一夏は逃げていなかった。彼はあえて部屋の浴室に居た。理由はレザーフェイスが無闇に暴れることはできないと思ったからだ。それにいる時間も限られている。
IS学園には多くの女子生徒がいる上、目撃されたら迂闊に行動できないからだ。最悪の場合、他のプレイヤー達にも気づかれることにもなるのだ。
一夏はそう考え……いや、思考を走らせていた。レザーフェイスは、まだ、この学園にいる。そう考えていた。近くにはプレイヤーもいる。
一夏から見れば千載一遇のチャンスであった。早速、網に掛かったからだ。その最初の……いや、三人目の獲物がレザーフェイスであり、レザーフェイスを半霊としているプレイヤーだ。
一夏は更に思考を走らせる……彼はレザーフェイスを連れてるプレイヤーの立場になって考えていた。彼か彼女がいそうな場所……それは学園ではバレる可能がなく、人が来ないような場所を考えていた。
もしも自分が同じ立場であるなら……一夏は眉をひそめる。あそこしかない、と。
「りむ……織斑君!」
すると、一夏を我に返す意味で呼ぶ者がいた。一夏はその声で我に返ると、声がした方を見る。そこには、簪を背中に隠しながら険しい表情を浮かべている楯無がいる。
彼女はさっきから彼を呼んでいた。レザーフェイスのことも気になっていたのだ。
「……なんだ?」
「なんだじゃないわ! あれはなんだったの!? それになぜ、私達を狙うの!?」
「……狙いは俺だけだ。それ以外に、ない」
「あるわよ!? 現に私と簪ちゃんは目撃者よ!? 最悪の場合、殺される危険があるのよ!?」
楯無は怒りながら言った。しかし、それは正論であった。一夏は兎も角、更識姉妹は目撃者となっている。それは口封じの意味で殺す危険もあるのだ。
楯無はいいが、簪はか弱い。彼女を守らなければならないのだ。姉としてでもあった。
「もしあれが貴方を狙っているのは構わないわ、私を狙っているのかもしれないけど……でも、簪ちゃんを巻き込まないで……」
楯無はそう言いながら怒りを隠せない。弱々しく感じるが楯無の願いでもあった。姉としてでもあった。簪を思うが故であった。
そんな楯無に簪は目を見開くが、楯無は言葉を続ける。
「それに……貴方は一人で行くつもりでしょう?」
「…………」
一夏は眉をひそめる。察知されたのだ。彼は一人で……いや、ジェイソンと一緒に奴等を殺すつもりであった。しかし、楯無はそれに気づいていた。
楯無はそれを指摘しつつも、あることを一夏に言う。
「織斑君……奴はどこにいるのかは判らないのよ!?」
楯無は一夏の胸ぐらを掴む。
「織斑君、一人で行くのは私が許さないわ! 行くのならば、私も行くわ! 私にはその権利がある! 生徒会長としてのね! 貴方の上司としてでもよ!」
楯無は一夏に怒った。が、楯無は自分の義務を果たそうとしていた。生徒会長として学園を守るためであるのと、彼の上司としてでもあった。
相手は未知の敵である。どんな力があるのかは判らない。彼一人では太刀打ちできるかどうかも判らないのだ。楯無は彼の戦力かつ、学園を守る者として戦うつもりであった。
「織斑君、私も一緒に行くわ……これは私の判断よ! それに当主としての命令よ!!」
楯無は一夏に警告した。が、一夏は楯無を見て何も言わなかった。いや、それを受け入れるつもりはなかった。なぜなら彼は楯無を巻き込むつもりはなかった。
理由としては利用する意味での守るべき者であるが妹も対象である。それに時間を無駄にしたくはなかった。逃げられるのと、再び襲いにくる危険もある。
逆に来ない危険もあった。一夏は楯無を見て何も言わない。が、楯無は険しい表情を崩さない。連れて行けと言う意味でもあった。自分なら何かを知っている。そう思っていた。
「……断る」
刹那、一夏はそう吐き捨てた。これには楯無も驚く。同時に、彼はウィングスラスターを展開すると、黒い煙を噴き出させる。楯無と簪は驚くが彼女達は突然のことで戸惑う。
しかし、楯無と簪は慌てて口元を押さえる。彼女達は咳をするが、黒い煙は辺りに充満していたが、外へと吸い込まれていく意味で逃げていく。
「……オ、織斑く……っ!?」
楯無は煙が微かに残りながらも驚きを隠せない。なぜなら、一夏はいなかった。それは彼が黒い煙で彼女達を困らせると、風のように消えたのだ。
逃げたようにも感じるが、楯無は……。
「そ、そんな……」
楯無は膝を突いた。彼は自分を信用していない。そう思ったのだ。そんな楯無に簪は驚いているが彼女は一夏が消えたことに驚いていたが、彼が一人で戦うのではないかと、思ったのだ。
しかし、彼がどこへ行ったのかは二人には判らない。そして、部屋には更識姉妹しかいなかった。が、同時に一夏の安否をも気にしていた……。
が、楯無は一夏が自分を信用していないと思い、目に涙を浮かべていた……。