インフィニット・デスゲーム   作:ホラー

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 一日振りの投稿です。


第7話

 その頃、ここは霧に包まれた草原地帯――辺りは草原で囲まれているが一本道はある。奥は霧で何も見えないが其処に人がいない訳ではない。

 中央にはその地帯を管理し、地主がいるであろう、かなり昔に作られた大きな二階建ての西洋風の家が建てられていた。

 木造型の家であるが白を基準としている。が、それはペンキで塗った物であるが所々剥げ落ちている。造り自体には問題ないが崩れ落ちる気配はなかった。

 そんな家の中にあるリビング。そこは細長いテーブルがあり、隅には台があるがその上にはテレビが設けられていた。今時では古い様にも思えるアナログ型のテレビだ。

 テレビは点いていない訳ではない。テレビにはちゃんと画面が映し出されている。チャンネルも変える事が出来る。そして、リビングには一人の青年がテーブル近くのイスに腰掛けながらテレビと向き合う様に観ていた。

 しっかりとした顔立ちに肩まで掛かる金髪に青い瞳の白人青年。白いシャツに黒い上着を羽織り、肌色のジーパンを穿いている。が、青年はテレビに釘付けであるが険しい表情をしていた。

 青年が見ているテレビには、ある内容が流れていた。

 

『昨日、日本で起きた謎の変死事件――その現場の一部始終を捉えた映像です』

 

 ニュースが流れていた。その内容はグロくも吐き気を催す。刹那、映像が切り替わる。そこにはエントランスらしき場所が映っていた。しかし、青年らしき物が叫び声を上げながら身体中から血を噴き出し、近くには恋人らしき女性が怯えながら泣きじゃくり、周りは騒然としながら逃げ惑っている。

 人が逃げ惑うせいで青年の姿が隠れたりしている事が何度もあったが仕方ない事なのだろう。

 遠くからであるが確かに変死とも言える映像であった。と言うよりも、それを平気で流すのは珍しい――普通だったら映像を切る筈であるにも関わらず、そのまま撮っていた。

 大抵の理由は視聴率を稼ぎたいからだろう――何処のテレビ局も共通の理由だろう。青年はそう直感していたが何処のテレビ局もそうであると思いながら溜め息を吐く。

 

「……それにしても、アイツ何をやってんだ?」

 

 青年は不意にそう呟きながら顔をテレビから他の方へと移す。そこはリビングを出入り出来る所であった。向こう側は通路であるが横切る様にあり、奥には階段が見える。

 しかし、青年が見ているのは通路でもなく、階段でもない。通路の奥にある横に開く、白い扉であった。此所からでは見えないが青年は家の構図は知っているからだろう。

 音は聴こえないが青年は再びテレビの方を見る。映像は既に切り替わっていたがニュースキャスターらしき女性は青褪めている。戦慄の映像と共に異様な光景なのだろう。

 新人か、もしくは玄人かは判断出来ないが変死の瞬間を目の当たりにしたら誰だってそうなるだろう。青年はそう感じながらも再び通路が見える方へと振り返る。

 同時に、扉の開く音が通路内に響く。足音が聴こえたが何者かが姿を現す様にリビングへと足を踏み入れる。

 二十、もしくは三十代ぐらいの少し太めの大男。髪は見えるが顔には色が落ちている様にも思える縫い目がある肌色の布を被っている。両目や鼻、口の部分はちゃんとあった。

 縦縞の半袖にシャツに短い青いネクタイ、黒いズボンにローファを履いているが帰り血が付着している薄汚れた黄色いエプロンを着けている。が、右手には誰かの手を持っていた。

 手首から下――全体は無い。切断されていた。女性の物であるが大男の仕業であった。エプロンに付着している血は女性の物であるが大男はさつき、女性を解体していたのだ。

 バラバラ殺人――誰もがそう言うが大男の今晩の食材でもあるからだ。人が人を喰う――狂っているとしか思えないが青年はテーブルの上に頬杖を突くと溜め息を吐く。

 青年は大男が女性を解体している事に驚いてはいない――最初は驚いていたが三年も一緒にいれば自然と慣れてきた。怖い物だ――青年はそう思いながらも慣れてきた自分もどうかしていると思いつつも、仕方ないと思っていた。

 

「レザー……解体だけに時間かかり過ぎじゃないのか?」

 

 青年はそう言うと大男、レザーは右手に持ってる女性の手を見ると青年に差し出す。青年は顔を引き攣らすが拒んだ。

 

「やめろ――人が人を喰うのは俺にはごめんだ――それに俺は魚とか、そう言った小さな生き物で充分だ」

 

 青年は苦虫を噛み締めた表情を浮かべるがレザーは笑う。

 

「ったく……まあいい、レザー、さっき面白い物があったぜ?」

 

 青年は不敵に笑いながらテレビでやっていた事をレザーに話す。

 

「と,言う訳だ」

 

 少し経った後、青年はテレビの向こう側、日本で起きた出来事をレザーに一通り話した。レザーは青年の言葉に驚いているのか少し後退りしていた。

 日本で起きた凄惨な変死事件――それはレザーから見れば驚きよりも自分の人間の解体の方が凄惨と自負したいがそれ以上に驚いていたのが変死事件である事だろう。

 青年はレザーの様子に噴き出しそうになるが彼が喋る事はあるが無言の方が多いレザーを可愛くも思った。しかし、青年は不敵に笑うと、ある事を訊ねる。

 

「さっきの変死事件――レザーはどう思う?」

 

 レザーは首を傾げるが青年は頭を抱えながら呆れる。

 

「おいおい勘弁してくれよ……あれは俺達の他にもデスプレイヤーがいたかも知れないってことだよ」

 

 青年は呆れながらそう言い放った――そう、青年もデスプレイヤーの一人であった。そしてレザーも――否、彼の名はレザーフェイス。

 一夏のジェイソン、黒で統一された服を着た青年のブギーマンに続く、四人目の殺人鬼であった。そして彼等の実力は彼等自身しか知らないが、他の殺人鬼であり、既に脱落したデスプレイヤーの一人を倒し、共にいた殺人鬼ゴーストフェイスを倒したのである。

 青年はレザーに対して呆れながらも説明を続ける。

 

「俺達の他にも殺人鬼がいると言う事は近くにデスプレイヤーがいると言う事だよ?」

 

 青年は確信していた。と言うよりも殺人鬼達は自分の半霊とも言える存在のデスプレイヤー達から離れる事は出来ない、離れる事が出来るのは自分達がいる、霧に囲まれた場所だけである。

 青年が確信していたのはそれが理由であるが青年は一つ、大きな事を見落としていた。

 

 それは、デスプレイヤー達は世界各国を移動出来る事だ。日本で殺人を起こしたのには理由があるのか、或いは何らかの理由で起こしたのかは判らない。

 しかし、青年は日本へ行こうとしていた。それは罠か、或いは確信がるからこそ行こうとしているのか青年にしか判らない――後者が濃厚であるかも知れないが青年はある事をも考えていた。

 

「上手く行けば他のデスプレイヤー達をおびき寄せる事が出来る。何人来るかは判らないがな?」

 

 青年は鼻で笑うがレザーも首を傾げる。青年は何人来るかは判らないのと、レザーは青年の自信に疑問と大丈夫なのかも疑っていた。

 

「どうしたレザー? 俺の言葉に反論するのか?」

 

 青年は不機嫌そうになるがレザーは慌てて首を激しく左右に振ると、手に持ってた女性の手を青年の方へと投げる。青年はそれを受け取るが未だ微かに硬直しているだけであり、少し柔らかい。

 

「わっ馬鹿!? 何で投げるんだよ!?」

 

 青年は手を受け取るが慌ててレザーの方に投げ返すがレザーは受け取る所か上手く受け取れず落としてしまう。

 

「はははっ!! 俺に投げるから罰が当たったんだ、ざまあみろ!!」

 

 青年はレザーを指しながら笑うがレザーはカチンときたのか女性の手を拾い、青年の方へと再び投げると、青年はさっきとは違い、上手く受け取れなかった。

 青年は突然の事で戸惑うがテーブルの上に落とす。不気味であるが断面には肉と骨が見える。青年の様子にレザーは腹を抱えながらもう片方の手で青年を指しながら笑う。

 

「あっ、レザーてめぇ!! 怒ったぞ!!」

 

 青年は立ち上がるとレザーに詰め寄ろうとしたがレザーは慌てて子供の様に逃げる、彼はリビングを出ると家を出て、草原を走る。

 その少し後に青年も家から出るとレザーを確認する。レザーは少し遠くにいたが彼は追い掛ける。体力的に差がある様にも思えるが青年は彼の直ぐ近くまで迫る。

 

「ははは馬鹿め! 三年前とは違うんだよ! 今の俺ならお前の足の速さには追いつけられるんだよ!!」

 

 青年はレザーの直ぐ近くまで迫る、自信はあるのか勝ち誇っている表情をしていたが笑っていた。が、彼は腕を伸ばせばレザーの服にまで届く範囲内であった。

 刹那、レザーは突然止まり、青年は驚きながらも直前に背中からぶつかる。音が微かに響くが彼は鼻を押さえる。一方、レザーは振り返ると青年を見て笑っていた。

 彼はワザと止まったのだ。これには青年も鼻を押さえながらもレザーの笑いとわざとらしくも思える行動に青年は……。

 

「こ、この馬鹿殺人鬼――っ!!」

 

 青年は自分よりも一回り大きいレザーの頭をひっぱたく。レザーは青年に頭を叩かれ「う〜〜」と声とも思えないような言葉を上げながら屈むが、青年はレザーを見て笑っていた。

 そのやり取りは喧嘩と言うよりも、むしろ楽しんでいる様にも思えた……。


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