インフィニット・デスゲーム 作:ホラー
(最初はヒロインは更識姉妹でしたが、最初のやり取りは楯無とのやり取りが多い為でした。なのでここからは、IS学園編からは簪もメインにする予定でもありました)
「…………」
四月の初旬。桜が咲き乱れ、儚く散っていく中、ここはIS学園。
今日は門出を祝うように、この日から新入生がIS学園に入学する事になった。
彼女達は試験を突破した優れた者達ばかりであった。が、逆に落第してしまった者達は仕方ないのかもしれない。
ここは入学するのは厳しくいのだ。名門なのだ。選ばれた者達はその力量があるからこそ、合格できたのだろう。
そんな中、ここは一年一組の教室。この教室にいる者達は皆、新入生であり、今日から行事や勉学に励む者達ばかりであった。
が、その室内は異様な雰囲気に包まれていた。この学園は女子校であるが女子高生が当たり前だった。
なのに、その教室には例外の者が一人いた。それは女子高生ではない、男子生徒だったのだ。
言わずとも、その生徒の名は織斑一夏。この学園で勉強を励む生徒として入学して来たのだ。
彼がいる席は教卓の前であった。彼は腕を組みながら目を閉じている。少し怒っているのか眉間に皺を寄せている。
理由は、さっき行なった体育館での入学式での事だ。十蔵の話や、これからの学校生活での話等が目安だが、視線が痛かった。
周りは女子高生であるのは当たり前だが好奇や憎悪等のそれぞれの視線に晒されていたからだ。
それが理由でもあるが単独行動を好む彼にとって、集団での行動は好きではない。
一夏はそう思いながらも誰とも会話をしょうとはしない。勿論、孤立している訳でもない。
このクラスには仲間である本音と、守るべき者の更識姉妹の妹の方、簪もいるのだ。
彼女等は一夏に護衛される立場にあるが、楯無が一夏なら安心だと思い、同じクラスにしたのだ。
勿論それが生徒会長の権限を使った事を、一夏は知らない。
「…………」
一夏は今、後ろや左右に突き刺さる視線に何も言わず、その場で待機していた。
関わるつもりは無かった。したらしたで余計にややこしくなるからだ。
突き刺さる視線は好奇と憎悪であるが、気にもしない。
肝心の本音と簪は彼の後ろから三列目の席にいる。
二人は一夏の様子に気づき、互いを見合わせる。が、困惑していた。
彼が同じクラスである事ではない。彼が何かを考えていると思ったからだ。最悪の場合、暴れるか、もしくはジェイソンが教室に現れたら、大混乱になると思っていた。
それにジェイソンは今、ここにはいない。どこにいるのかも判らないのだ。
二人から見れば逢いたくない。あれはトラウマの対象であった。一夏の部屋に勝手に入ろうとした以来、どこかで逢う事もあるのだが二人は怯えていた。
簪と本音はジェイソンに怯えつつも、一夏の様子を伺う。彼はいまだ動く気配はない。静かに待機していた。
「…………」
が、一夏は瞼を開くと視線を横へと向ける。後ろにいる簪と本音に向ける意味でもあった。
二人は何かを話しているようにも思えた。しかし、今の自分は簪を守り、本音は仕方ない意味として守るべき従者の立場であると考えていた。
本音で言えば利用する意味でもあるが一夏は二人の様子に気づきつつも無言を貫く。
「……?」
刹那、一夏は視線を横に向けたせいか、ある人物に気づく。
窓際の一番前の席であった。同年代であるが黒の美しい長い髪を後ろ高く束ねている。黒く澄んだ瞳をしているが日本人であった。
大和撫子のような見た目だが、その表情はどこか凛としているよりも、つらそうで寂しそうであった。
彼女は自分を見ているのだ。その瞳には困惑と悲痛が見える。いや、そう感じた。
が、一夏は彼女をから目を逸らす。知り合いであった。が、今は関係なかった。
彼女と話なんて無い。話す切っ掛けさえも無いのだ。
一夏はそう思って目を逸らしたのだが、彼女は一夏を見て何かを言い掛けようとした。
しかし、直ぐに哀しそうに項垂れた。
刹那、教室を出入りできる扉が開き、一人の女性が足を踏み入れる。
一夏や窓際の彼女を覗き、教室に居た女子生徒達が扉の方を見やる。
女性は教卓の方へと歩くが、女子生徒達は彼女を追う様に視線を動かす。
そんな中、一夏は不意に教卓の方を見る。一夏は眉間に皺を寄せた。
女性が顔見知りであったからだ。それも、入学試験の一つ、実技試験で自分の相手として選ばれた教師、山田真耶であった。
黄色を基準とした服に茶色いブーツを履いていた。手には出席簿を持っていたが彼女は嬉しそうであった。
新人であるが、このクラスを受け持つ教師の一人に選ばれたのだ。
「皆さん、入学式お疲れさまです……あら?」
真耶は教卓の前にいる一夏に気づく。彼は無言で見ていた。
誰から見ても普通であるが、真耶は苦笑いしていた。それもその筈、彼の相手は自分であった。
が、あの時は緊張のあまり、壁に激突する形で負けたのだがあれは真耶にとって、にがい思い出でもあった。
真耶は一夏を見て苦笑いを浮かべるが、何かに気づき慌てて教室内にいる生徒達を見渡す。
彼女等は真耶を不思議そうに見ていた。これには真耶は自分が一夏の相手をしていた事に後悔しつつも口を開いた。
「み、皆さん! わ、私がこのクラスの、皆さんの副担任である山田真耶といいます!」
真耶は自己紹介した。が、何故か反応は少々であった。さっきの事でもあるがこれには真耶も泣きそうになった。
自分のせいであるが、反応がないと流石に堪えるだろう。
真耶は何も言えず困惑する中、一夏は突然、拍手した。
「えっ……!?」
一夏の行動に簪は驚く。本音は目を見開いていた。彼の行動は真耶を気遣うような事をしているのだ。
真耶は一夏の行動に驚くが何故か更に驚く。彼女は一夏の顔を見て驚いたのだ。彼は無表情で拍手していた。
それは祝いではなく、先を進めろと脅しているようにも思えたのだ。
真耶は一夏を見て怯えつつ直ぐに気を取り直し、先に進める。
「で、では皆さん、自己紹介をお願いします! 皆さんが見渡せるように教卓の前で立ちながらです。まずは、あいうえお順で『あ』からお願いします!」
真耶はそう言いつつも、出席簿を開くと、目を通す。
「で、では相川さんからお願い致します! 相川さん!」
真耶はそう言いながら相川という人物を捜す為に見渡す。
すると、一人の女子高生が手を挙げると、立ち上がり、教卓の前に立つ。真耶は退く意味で下がっていた。
教卓の前に立った女性は薄紫色の髪に薄赤色の目が特徴かつ活発的な少女だった。
「相川清香です! 趣味は」
清香は軽く自己紹介した。周りは静かに耳を傾ける。自己紹介は大切な事であった。
お互い顔見知りに、三年も一緒に学園生活をやるのならば名前を覚えておいた方がいい。
なんともくだらない事で、なんとも当たり前の事だろう。
一夏はそう思いながらも思考を走らせていた。ふと、彼はある事を思い出す。
「……何やってんだ……ジェイソンの奴」
一夏はジェイソンの事を思い出す。彼は今、ある理由で学園にいる。
彼は他のプレイヤー、特に夢見一彦やブギーマンを半霊としている青年がいないかを探索してもらっている。
命令したのだが、この学園は広い為、どこかに潜伏しているのかもしれない。一夏は彼にそう言うと、彼は無言で頷き、学園内をうろついている。
一夏はそう思いながらもプレイヤー達がいないかを警戒していた。
すると、真耶に声を掛けられ、一夏は自分の番だと思いながらも嫌々ながらも自己紹介しょうと教卓の前へと立った……。
「良し、後は新入生達の為に調理しなきゃね!」
その頃ここは、学園内にある食堂。そこはとても広く、生徒達の為に造られた場所であった。
白を基準としつつも、綺麗な場所であった。そんな中、食堂の奥には厨房があった。
そこも少し広いが四十代の女性が四、五人いた。料理するおばちゃん達であった。
彼女達の目の前には色んな種類の食材があった。野菜、肉、魚といったどこにでもある物ばかりであった。
「先ずは何を作ろうかしらね?」
「取り敢えず、トンカツや鯖味噌等、簡単な物から作りましょう!」
「スパゲティやラーメンはどうするの?」
おばちゃん達は作るべき料理は何からすればいいのかを話す。勿論、重要な事であった。
直ぐ食べなければならない物や作っておかないと困る物が多いからだ。
簡単でも難しい物である為、そこは悩ましい。それに今日は新入生達がいるのだ。腕がなるのだ。
おばちゃん達は料理の事で話し合う中、食堂のとある窓。そこは厨房がよく見える場所にそこには一人の大男がいた。
ジェイソンだった。彼は厨房にいるおばちゃん達をじっと見ていた。
しかし、おばちゃん達は料理の事で楽しそうに話をしている。それ以上に彼の存在に気づいていない。
「……キ、キ、キ、マ、マ、マ……」
ジェイソンは微かに呟くとそこから離れた。あれは殺しても何の利益も無い。そう思ったからだ。
と言うよりも、一夏から善人は殺すなと言われた為でもあるが、ジェイソンはその後、再び学園内を歩き出した。
誰かに見つかったら悲鳴が上がるが、ジェイソンはそれを気にもしなかった……。
「…………」
すると、ジェイソンは外を探すのに飽きたのか、今度は学園内に移動した……。