インフィニット・デスゲーム   作:ホラー

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第5話

「…………」

 

 翌日、ここは東京のとある、幾つものビルが立ち並ぶ交差点がる某所。今の時間帯は昼頃であるが平日であり、道行く人達は皆、会社員やバイト先へと向かう若者達や、学校へと行く生徒達、観光目的化仕事へと向かう外国人達がいた。

 そんな中、一人の青年が街の中を歩いていた。水色と白のチェック柄のシャツに青いズボンを穿いている青年であった。一夏だ。一夏は無言で街の中を見ていたが無表情である。

 怒り、哀しみ、楽しみ、喜び、と言った感情が読み取れない。彼が何を思っているのかは彼自身にしか判らない。しかし、一夏は街の中を歩いていたが何処か懐かしみを覚える。

 道行く人達に街の中を走る沢山の車のタイヤの擦る音。砂埃が舞う様にも感じるが風は起きず、車の排気ガスの臭いが微かに鼻に突く。それでも一夏は街の中を歩く。

 ジェイソンは、周りが湖で囲まれている小さな孤島らしき場所で留守番している。連れてこようとしても街の中で歩いてたら注目の的である以前に警察沙汰になる事も目に見ている。

 幾ら半霊的な存在でも街の中で殺戮を起こすのは御法度であり、一般市民を殺すのも禁じられている――デスゲームのルールには入ってないが一夏自身が決めた事であった。

 殺していいのは犯罪者のみであり、特に殺しをした者達である。が、一夏が街の中を歩いているのは訳があった。単に散歩しに来た訳ではない。

 彼は街へ来たのは、ある物を買いに来る為でもあった……。

 

 

 

 

 

「これは……無理だな」

 

 あれから少し経った頃、一夏は、あるデパートに来た。そのデパートにある雑貨品をメインとしたフロアに来ていた。其処は雑貨と言っても日常品等が置かれている。

 一夏が見ているのは裁縫等をメインにした裁縫に必要な物が揃えられている場所に居り、ある物を手にしている。それは、縫う時やいとを通す時に要る針であった。

 その針は十本もあるが小箱で纏められている。一夏は小箱を見ているが彼は服を縫う為に購入しょうとしている訳ではない――彼は他のデスプレイヤーに使うとしていた。

 針でどうするのかと言うと、相手の目を抉る事であった。針では相手の目を抉る事は出来ないが小さな穴を空く事ぐらいは出来ると思っていた。

 その為、必需品としても、武器としても購入しょうとしていた。包丁は愚か、拳銃の購入は自殺行為である。針なら裁縫セットと持って行ってもバレない。

 いざという時の隠し道具であるが一夏は肝心の武器になる針を見つけられず舌打ちする。何れも鋭い刃物であるが日常品の一つとしても活用されている為、問題ないと言う訳ではないが、こんな危ない物を普通の授業や家庭で使われている方がよっぽど変だ。

 一夏はそう思いながらも小箱を見る、刹那、一夏は眉間に皺を寄せる。

 ――これを一つに纏めれば……――一夏はそう考えると、あるアイデアを浮かべる。それは一か八か、功を奏するのかは判らないが一夏は針の入ってる小箱を手にすると、レジの方へと向かう。

 お金は一応持ってるが、これは殺した者から奪った物である。金目当てとも思わせる様にも思えるが一夏は資金が必要の為に奪ったのである――勿論、半分しか盗っていない。

 

 

 

「取り敢えず……なんとか必需品は一通り揃えた」

 

 一夏は買い物を終えると帰路に着いていた。と言うよりも未だデパートの中であるが彼の手には袋がある。中には針の他にスプレー型の消臭剤やネジ等の必要とも思える様な物とは言え難い物ばかりであった。

 しかし、一夏には必要な物ばかりであり、彼が何故揃えたのかは理由があるが今は帰路に付くのが先であった。一夏はエスカレーターで一階に降りる。其処はエントランスであるがとても広く、店もあり、人も沢山居る。大抵は買い物が目的だろうが一夏もその一人であった。

 今の彼は帰路に付くのが先であり、エントランスを出ようとしていた。

 

「……あれは……」

 

 不意に人だかりが出来ている事に気付く。其処は大抵が女性であるが一夏は女性達の視線を追う様に見る――一夏は下唇を噛んだ。そこにはISが二機展示されていた。何方も同じであるが量産機とも思える。

 何処から拝借したのかは見当はついた。何故なら、その量産機があるのにはあるイベントがある為であった。それは、IS委員会主催による適性検査――それは未来のIS操縦者、もしくは研究者を育成する為の検査でもあった。それだけでなく、何処かのテレビ局かは判らないが報道記者も来ていた。理由は丸見えでもあるが一夏はISには良い印象は無い。

 憎悪の対象としても見ていた。あれが全ての元凶である――あれが無ければ自分はあんな目に遭わなかった。何も悪い事もしてないのに苛めを受けた。

 姉も仕事とかで自分を見てくれなかった――あれが、ISが全ての元凶である事に気付き袋を持つ手に力を入れる。が、今の自分にはISを破壊するよりも、他のデスプレイヤー達を殺し、死のバトルロワイヤルを制し、願いを叶える為に殺しあいをしなければならなかった。

 一夏はそう考えるとエントランスを出る為に歩き出す。

 

 

 

「うがああああああ!!!!」

 

 刹那、近くから男性の叫び声が聴こえ、一夏と周りの者達は声がした方を見る。声を、叫び声を上げたのはベンチで寝ていたであろう二十代の青年であった。その近くには恋人らしき女性がいたが喧嘩とは思えなかった。

 青年は叫び声を上げなら暴れ出す。目は酷く充血しているのか真っ赤になっており、涎を流しながら叫び声を上げている。

 

「どうしたのねえ!? ねえってば!?」

 

 女性が青年を宥めようとしているが青年は奇声を上げ続けている。周りは突然の事で驚き、怯えている。一夏は彼を無言で見ていたが青年と目が合う。

 

「うがあああああ!!」

 

 刹那、青年は口や目から血を流し始める。――キャァァァ!! ――。女性の悲鳴がするが周りの一部も悲鳴を上げる。刹那、今度は青年の身体から血が噴き出る。

 血は当たりに飛び散るが青年の目は抉られたかの様に潰れ始め、身体の至る所から切り傷が出来始める。更なる悲鳴が木霊するが青年はベンチから転げ落ちると、そのまま悲鳴を上げな続けていた。

 

「い、嫌あああああああ!!」

 

 女性は青年の様子に恐怖で顔を歪めるが涙を浮かべているが顔や服には血が飛び散っている。周りも突然の事で逃げ始めるが中には子供もいた為に泣いている子も居り、失禁したりする子もいた。

 トラウマ物の出来事であるが周りは突然の事で逃げ惑う中、一夏は眉間に皺を寄せながら青年を睨んでいた。可笑しい――あんな死に方、今までに無い――。

 一夏はそう気付くと同時に辺りを見渡す。周りは逃げ惑う者達や吐いたりする者達、子供の泣き声も聴こえるが二階に居た者達も逃げ始める。

 

「……!?」

 

 刹那、一夏は視線を二階の方へと向けたがある場所に、とある人物がいる事に気付く。その人物は二階からであるが男性である事にも気付く。

 しかし、顔は見えなかった――彼は帽子を深々と被っていた。が、茶色いコートに赤と緑のチェックの柄のポロシャツに黒いズボンを穿いていた。

 なのに彼は冷静に青年の方を見ていた。普通の者なら逃げる筈なのに彼は逃げようともしなかった。可笑しい――一夏はそう気付くが同時に彼はそのまま二階の方へと消えて行く様に踵を返した。

 

 一夏は追い掛けようとしたが周りが邪魔しているせいで追い掛ける事は出来なかった。辺りは騒然としている――周りは人が突然死んだ事に理性や冷静さを失っているのだ。

 一夏はそれに気付き下唇を噛むが怒りが収まらない。これでは追いつけない――そう思っていた。同時に、ある事にも気付いていた。

 あれは自分と同じようにバトルロワイヤルに参加した他のデスプレイヤー――一夏はそう直感した。出来る事ならジェイソンを呼びたかったが周りに見せる様に呼ぶ訳にもいかなかった。

 その為、一夏は追い掛けるのを止めると、その場を離れる為に走り出した。今のままでは勝てない――相手がどんなデスプレイヤーであり、どんな殺人鬼を半霊としているかは判らないからであった。

 もしさっきの殺しが、何かの殺人鬼であるのならば対策を練ればならない。一夏は冷静にそう考えるとエントランスを出ると人気が無い場所へと走り去って行った……。

 そして、エントランス内は未だ騒然としていた……。


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