インフィニット・デスゲーム   作:ホラー

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第33話

「あっ!?」

 

 楯無は奥から銃声が聴こえるや否や、驚きを隠せない。一夏の身に何か遭ったのか、と。助けに生きたかったが自分は今、ジェイソンに胸ぐらを掴まれている為、動けないでいる。

 

「お、織斑君……っ!!」

 

 楯無は下唇を噛む。刹那、楯無、半蔵、ジェイソンの周りから水の様な空間が発生した。此れにはジェイソンは驚かないが周りを見る。

 辺りが歪んで見えるようにも感じていた。そして、そんなジェイソンを他所に楯無は自分の胸ぐらを掴んでいるジェイソンの手を両手で掴む。

 彼女は両手に力を入れた。これにはジェイソンは驚くが手が強く握られている事に気付くと同時に楯無の胸ぐらを放してしまう。

 その隙に楯無は着地するや否や、ジェイソンに体当たりした。ジェイソンは後ずさりするが怯んでいた。

 刹那、楯無の近く等から武器の様な物が展開された。白を基準としたランスであった。楯無はランスを片手で持つと、ジェイソンの腹目掛けて突いた。

 ジェイソンの腹は貫通された。ジェイソンはそれに気付くが痙攣しており、そしてそのままピクリとも動かなくなった……。

 その証拠に彼は項垂れていた。息は愚か、動く気配さえもなかった……。

 

「……っ」

 

 楯無はジェイソンが死んだのを確認すると、ランスを抜く。ジェイソンはそのままランスを抜かれるのと同時に引っこ抜かれるが腹には大きな風穴があったがそのまま膝を突くと、俯せに倒れた……。

 楯無はランスをジェイソンに向ける。生きているのかを確認していた。が、彼からは何の反応もない。ジェイソンの周りから血の海が出来つつあるが広がっていた。

 楯無はランスの先端で彼の頭をつつく。動く気配はなかった。楯無は死んだと判断したのか安堵の溜め息を吐くと、ランスは消え、空間は風のように消えた。

 

「……織斑君……!」

 

 楯無は一夏の事を心配する。が、何かを思い出した。

 

「半蔵さん!!」

 

 半蔵であった。楯無は半蔵の方を見る。しかし、半蔵の様子がおかしかった。彼は息を荒くしているが血の量は更に多くなっている。

 楯無は半蔵の近くに来ると、彼の身体を揺するが半蔵は微かに目を開けると、軽く笑う。

 

「お……お嬢……さ、ま……」

「半蔵さん! しっかりして!」

 

 楯無は屈むと半蔵の肩を揺らす。が、半蔵は微かに笑うと直ぐに項垂れた。

 

「あ……は、半蔵さん! 半蔵さん!」

 

 楯無は何かに気付くが、彼の肩を揺らし続けた。そして、彼の名を呼び続けた……。

 

 

 その頃、一夏は暗闇の中、青年と壮絶な死闘を繰り広げていた。彼は鉈を手にしているが物陰に隠れながら移動している。

 それに対し青年は暗視コーグルを頼りに、武器である二丁のハンドガンを手にしながら物陰に隠れている。

 本当ならさっき殺す事が出来たのだが発砲した瞬間、一夏は直ぐに姿を消し、そのまま青年の後ろに移動し、後ろから斬り掛かろうとした。

 だが、青年は瞬時に風のように消えると、そのまま一夏の目の前に姿を現したがハンドガンで彼を射殺しょうとしたのだがその前に一夏は風のように消えた。

 青年は眉間に皺を寄せるが直ぐさま近くの物陰に身を潜めると、辺りを窺う、と今に至った。

 青年は物陰に隠れながら辺りを窺うが彼は有利であり、不利に陥っていた。本来は一夏を標的にしたかったのだが第三者である夢見一彦というプレイヤーも乱入と言う形で現れたのだ。

 しかし、一夏は夢見一彦の存在は知らない。彼が知っているのならば彼もまた、夢見一彦を殺しに掛かるだろう。同時に、此れは千載一遇の好機であった。

 

 青年は思考を走らせる。此処には織斑一夏と夢見一彦の二人のプレイヤーがいる。上手く行けば二人を殺す事が出来る。

 が、相手が手を組んでいるのならば尚更危険だ。二対一となれば不利である。ブギーマンを入れても、相手は其々の殺人鬼を半霊にしている為、事実上の二対四だ。

 勝てる要素は少ない。しかし、勝つ為ならば仕方ないと思った。刹那、青年はある事に気付くが思考を止めると軽く頷いた。

 ある作戦を考えたのだ。その為には自分が囮になるしか方法はないのと、ある事を叫んだ。

 青年は何かを思いついたようだった。夢見一彦を道連れと、一夏を殺すと言う本来の目的での意味でだった。

 

「織斑一夏ーーっ! 聞いてるか!」

 

 青年は一夏を呼ぶように叫ぶ。これには一夏は眉間に皺を寄せるが青年は言葉を続けるように叫ぶ。

 

「お前にいい事を教えてやる! 実は俺やお前の他にも、俺達と同じプレイヤーがこの倉庫内にいる!」

 

 青年の言葉に一夏は眉間に皺を寄せる。他のプレイヤーが此処にいる? それは一夏にとって初めて知る事実と予想外の新たなるプレイヤーが現れた事に危惧していたのだ。

 他のプレイヤーがいると言う事は彼等が手を組んでいるのではないかと、言う事だ。そうなれば不利になるからだ。

 一夏は青年の言葉に彼等が手を組んでいるのではないかと不信感を抱く中、青年は更に衝撃的な事を叫んだ。

 

「だが俺は其奴とは手を組んではいない! 俺は奴とは敵対関係だ!!」

 

 青年の言葉に一夏は瞠目した。味方ではない? では何故、青年はその事を自分に話したのだろうか? 一夏は更に不信感を増していく。

 

「其奴の名は夢見一彦! 殺人鬼は知らないが奴は倉庫に紛れ込んでいる! 美川恵と言う女に変装している!」

「……では何故、其奴は、この倉庫にいる!?」

 

 一夏は叫ぶ意味で聞き返した。夢見一彦の事や、美川恵に変装している事は兎も角、倉庫にいる事に疑問を抱いていたのだ。

 逆に彼もまた、予想外の新たなるプレイヤーの存在に驚きつつもチャンスとしても考えていた。

 上手くいけば二人のプレイヤーを殺す事が出来る。捜すのには骨が折れるが二人いたとなれば逃がす手はない。

 逃げられたらおしまいであり、今度は狙われる危険もあるからだ。

 一夏はそう考えているが青年は答えた。

 

「それは俺にも知らねえな!! だが其奴は俺がやる! 貴様は……」

 

 青年は一旦口を閉ざすと、再び口を開いた。

 

「貴様はブギーマンの相手でもしてろ!!」

 

 青年はそう叫んだ。それを聞いた一夏は目を見開く。

 刹那、不意に近くから気配を感じ、振り返ると持っていた鉈を身構えながら立ち上がる。

 辺りは暗いが一夏は気配だけはする事には気付いた。彼は鉈を構え続ける。

 

「……!?」

 

 一夏は何かに気付き、振り返ると直ぐにバックステップした。同時に物陰だった場所が崩れ落ちる。

 否、向こうから何かの衝撃で破壊される形で崩れたのだ。大きな音が響く中、何者かが姿を現す。

 黒い作業着に白いハロウィンマスクを被っている大男だった。ブギーマンであった。

 ブギーマンは一夏の居場所を突き止めていたのだ。それは青年が一夏と話をしている間に、ブギーマンが一夏のいる所まで移動させていたのだ。

 青年が囮になったのもそれであるが、青年はブギーマンと共に従者の高橋、村上、神谷、佐藤……そして山川を殺した。

 青年はブギーマンを見た後、その場を離れた。美川を……一彦を捜す為であり、一夏はブギーマンに任せる為でもあった。

 

「お前は……っ!」

 

 一夏は鉈を構える。一方、ブギーマンは包丁を持っているが逆手であった。標的は一夏である事には気付いたが一夏は鉈をブギーマン目掛けて振る。

 しかし、ブギーマンは包丁で受け止めると、軽く振り払う。一夏は鉈を振り払われつつも押されるように後退りした。

 ブギーマンはその隙を突いて包丁を一夏目掛けて横に振り下ろすが、一夏は素早く躱す意味で後退ると、再び鉈を振り下ろす。

 が、ブギーマンは鉈をもう片方の手で掴む。一夏は驚くがブギーマンは鉈の刀身を掴んだままであった。

 

「ぐっ!」

 

 一夏は鉈を取ろうとしたがびくともしない。彼とは怪力差があり、効果はない。

 ブギーマンは一夏を見て首を傾げるが鉈を掴む手を軽く動かした。刹那、鉈はバキッと折れた。

 

「っぐ!?」

 

 一夏は驚くが鉈は使い物にならなくなった。刹那、ブギーマンは一夏を刺そうと包丁を振り下ろした。

 一夏は驚きつつも風のように消えた。ブギーマンの包丁は空気を刺すように空振りとなった。

 

「…………」

 

 ブギーマンは辺りを見渡す。彼は何処にもいない。気配さえも感じない。それでも彼は包丁を構えるが警戒している。

 直後、ブギーマンは頭を鈍器で撲られる。ブギーマンは頭を叩かれ怯むが今度は膝を撲られ、片膝を突くが直後に何かの物の落ちる音が響くが後ろから頭を掴まれ、そして……首筋をサバイバルナイフで切られた。

 首から血を流すがブギーマンには致命傷であり、ブギーマンは首筋を押さえようとしたがその前に包丁を落とし、そのまま俯せに倒れる。

 後ろにいたのは……サバイバルナイフを手にしている一夏であった、近くには鉄パイプが落ちている。

 彼は鉄パイプでブギーマンの頭や膝を撲ったのだ、サバイバルナイフは家に戻り調達し、鉄パイプは倉庫内にあったものを使ったのだ。

 一夏はブギーマンを睨むが彼は身体をピクピクとしていた。が、彼の身体は動かなくなった。

 そして辺りには血の海が出来るが、彼は死んだのだった……。




 次回の土曜日の投稿はお休みします。次回は日曜日に投稿致します。

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