インフィニット・デスゲーム   作:ホラー

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第196話

「ふん! たあっ!」

「てやっ! そらよっと!」

 

 廃工場の上空では一夏と一彦が一対一の死闘を繰り広げていた。一夏はランスを、一彦は槍を展開しているが互角だった。本来ならば一夏の負けが濃厚であるが彼は一彦に対して、持てる知識をフル活用していた。

 右腕がなければ、知識で補えば良い。必ず勝機が見えると感じたからだ。しかし、それでも彼は押されているが持ち堪えていた。

 

「てやっ!」

 

 一夏はランスを一彦の腹目掛けて突き出す。が、一彦はそれを槍で弾き返す。彼の槍は一夏のランスを高らかなに上げるように弾いているが一彦はその隙を突くように一夏の脇腹を撲ろうとした。

 刹那、一夏は風のように消え、槍の攻撃は空振りに終わった。一彦はそれに気付くが辺りを見渡す。近くにはいない。いるのは三門の砲身を相手にしている一也がいた。

 今は一夏を相手にしている為、彼に構っている暇はない。

 

「……上だ……!」

 

 真上から叫び声が聴こえ、一彦は上を見上げる。上には、かなり離れた所にはランスを前に突き出しながら自分の方へと迫っている一夏がいた。

 一彦は槍を構えるが彼は、一夏は一彦の直ぐ近くまで来た直後、また風のように消えた。

 

「えっ!?」

 

 一彦は驚くが、彼は直ぐに現れた。少し下の方へとだ。一彦は更に驚くが一夏はランスを突き出したまま一彦目掛けて突き進んでいた。一方の一彦はおいど路いている為に怯んでいた。刹那、一夏のランスの先端は一彦を叩いた

 

「うぐっ!?」

 

 一彦は腹に激痛を感じるが一夏はランスを使って一彦を撲ったのだ。一彦は廃工場の方へと落下していく。それだけではない、彼の身体を纏っているISは建物の天井を突き破り、床をも突き破っていた。

 そこから大きな音が聴こえるが当たりに響く程だった。

 

「ああっ!」

 

 一彦は悲痛の声を上げるが外にいる一夏には聴こえない。

 

「…………」

 

 一方で一夏は廃工場を見下ろしていた。廃工場は長年放置されている為に不気味であるが中には一彦や何も判らぬ化物達もいる。同時にはリーヴォーデンもいる。

 彼は何故来たのかも、何故生きているのかも判らない。しかし、彼は何をしているのかは判らないのと、今でも闘っているのかも判らない。

 一夏はそう思っているが彼は、ふと、一也の方を見た。一也は未だに三門の砲身を……破壊し終わっていた。恐らく、砲身の動きが詠まれたからだろう。

 一也はそれを突くように闘っていたのだが彼は汗をかき、走った後のように息を荒くしていた。疲れているのかも判らないがISを使って間もないからだろう。

 一夏は彼を見て溜め息を吐くが彼が、一也が一夏に気付く。彼は歯ぎしりするが一夏に対して良い印象はないからだろう。同時に彼は既に倒したからだ、一彦を。

 本当は自分が倒したかったが砲身のせいで時間をくらい、足止めされたのだ。一彦には借りがあるがそれが出来なかったからだ。しかし、一彦は死んでない。

 彼は未だに廃工場の方へといるがダメージが大きいからだ。一夏と一也はそれには気付かないだろう。刹那、爆発音が廃工場に響いた。

 

「「!?」」

 

 その音に二人は気付くが爆発音の正体は廃工場から爆発が起きたからだ、それも一回ではない、何回もだった。廃工場は爆発が何回も起きているが止む気配はない。

 工場から、そこには微かに油が残っていたのだろうか? それが原因で何かの摩擦で爆発……否、それは有り得ない。何か別の事で爆発したとしか思えなかった。

 一夏と一也はそう思っているが廃工場は爆発し、辺り一面炎に包まれる中、そこから何かが飛び出してくるように出てきた。一夏と一彦はそれに気付くがそれはISだった。

 そのISは一領の漆黒色の鎧を模したISだった。しかし、それは巨躯であり、両腕もデカい。右手には黒い無線畿らしき物を持っているが、そのISを見た一夏と一也は驚いていたがそれ以上に驚いているのは、それを纏っているのは一彦だった。

 彼は不敵に笑っているが彼等の少し離れた場所で止まると、彼等を交互に見た。

 

「どうしたの? 僕のジルドレを見たから?」

 

 一彦は二人を煽るように挑発しているが一夏は舌打ちし、一也は歯軋りした。無理もない、彼等は一彦のISの変わりようも気になっているからだ。

 同時にあの爆発、廃校女の爆発は何なのかを気にしていた。しかし、それは教えるように一彦が口を開く。

 

「それに君達も気になっているだろうけど、あれは僕とフレディが設置したC4爆弾だよ?」

「C4爆弾?」

 

 一彦の言葉に一夏は眉を顰めながら訊ねた。勿論、一彦はそれも教えた。廃工場の爆発は彼が廃工場に仕掛けたの数十の爆弾のせいでもあった。

 それはC4爆弾でもあるが彼の隠し玉でもあった。何か遭った時、最悪、自分が負けそうになった時に起動させる為でもあった。否、彼はそれをしなかったのもゲームを愉しむ為でもあり、快楽をも求めていたからだ。

 それだけではない、彼は更にとんでもないことを言った。

 

「それに君達が同盟とはね〜〜?」

「……!?」

 

 彼の言葉に一夏は目を見開く。彼は知っていたのだ、自分達が同盟している事やそれを教えている事に驚きを隠せないからだ。自分達が同盟している事を彼が知っているのは兎も角、枯れ、一彦が更に言った。

 

「あれは、あの時君達の会話を知っているからだよ? 盗聴器でね?」

「……盗聴器だと!?」

 

 一彦の言葉に一也は叫んだ。その声に一彦は彼を見ながら頷く。そう、彼が一夏と一也が同盟を知っているのは盗聴器を仕掛けたからだ。

 それは至る所に設置されているが殆どは室内に一つかつ、全てではないからだ。休憩室やボイラー室等もそうだが彼等の居場所を全て把握したのも彼がし掛けた盗聴器のお陰でもあった。内容を知っているのも盗聴器のお陰でもあった。

 つまり、彼等が廃工場にいる地点で彼に居場所を知られているからだった。長年放置されている為に電気類は使えないと思っていたが盗聴器は電気類ではない。電池で動く物を使ったからだ。

 一応使えるが彼はそれで一夏達の居場所を把握したからだ。スピーカーの、放送とかは彼が直したからである。一時的だがそれで彼等に教えたからだ。

 一彦はそれ等を全て教える中、一夏と一也は一彦に対し、警戒と怒りを感じた。彼は只者ではない、同時に自分達は彼の掌に踊らされていたのかとも思っていた。

 しかし、それ等を全て終えるように一彦は更にある事を教えた。

 

「それに僕が纏っているIS、ジルドレ、第二形態なんだ〜〜」

「なっ!?」

「!?」

 

 彼の言葉に一也は驚き、一夏は目を見開く。しかし、彼の発言は危険をも意味していたからだ。彼のIS、ジルドレは第二形態をも持っていたからだ。

 それは隠し玉とも言えるが真の隠し玉でもあった。彼はゲームを制する自信があったのだ。ジルドレを更に強くしていたからだ。それは一夏と一也にとって危険かつ、死をも意味させていた。

 今の強大な敵は夢見一彦、彼なのだ。彼を倒さない限り、ゲームに生き残れない事を意味していた。一夏と一也は彼を見て驚く中、一彦は笑いながら。

 

「……まあ、話はそろそろ、おわりにしょっか!」

 

 彼はそう言った後、一夏に迫る。一夏は突然の事で驚くが一彦は一夏の首を掴む。

 

「うぐあっ……!」

 

 一夏は首を掴まれ悲痛の声を上げるが一彦はそれを、一夏を一也の方へと投げた。

 

「なっ!?」

 

 一也は一夏が此方の方へと向かってくる事に驚くが彼と激突した。一也は微かな痛みを感じるが一夏も痛みを感じていた。刹那、彼等は突然、爆発する。

 否、爆発したのではない、二人の方に砲弾らしき物が突き進み、それが一夏の身体に直撃するや否や、爆発四散したからだ。一夏と一也は爆風で吹っ飛ばされるが砲弾を放ったのは、一彦だった。

 彼はある物を持っていた。それはグレネードランチャーだった。それも巨大な物であり、家一軒を破壊出来る程の火力を誇った物だった。第二形態のジルドレには相応しく、第二形態のジルドレでなければ、扱えない物だった。

 一彦は彼等を見て笑っていたが勝利の女神は彼に微笑んでいるとしか思えなかった。一方の二人は何とか持ち堪えるが一彦を警戒していたのだった。

 

 

「一美ちゃんお願い! 私をあの場所へと戻して!」

 

 その頃、此処はIS学園の屋上。そこには楯無と一美がいた。が、楯無は一美に対して、肩を揺らしながらお願いをしていた。彼女の表情は困惑で支配されている。

 理由は廃工場にいる一夏を心配しているからだった。彼は一人であの危険な場所に残っている。彼処には化物がうようよしており、彼が一人でどうこう出来るとは思えなかった。

 彼は右腕を失っているからだ。その状況で生き残れる確率は低く、死ぬ確率が高い。楯無はそれを危惧しているが一夏を助けたいからだった。

 その為には一美を説得するしか方法はない。自分がいけば良いが間に合わない。逆に一美の風のように移動出来る事で間に合うだろうと思っていた。

 

「一美ちゃん! お願い!」

 

 楯無は一美に対してお願いし続けるが彼女は泣きながら俯いていた。

 

「厭だ……厭だ……!」

 

 一美は泣きながら否定し続けているが闘うのを恐怖していたからだった。


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